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私塾のすすめ

齋藤 孝、梅田 望夫 / 私塾のすすめ ──ここから創造が生まれる

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最近よく読んでいる梅田望夫氏の著作、4 冊目。ここらで一段落かな。今回は齋藤孝氏との対談ですが、基本的に論旨は今までの 3 冊と大きくは変わりません。それに加えて教育論、リーダー論、みたいなものが付加された内容になっています。

何かを勉強しようと思うときに、その領域の本を全部入手して、あっちに行ったりこっちに行ったりしながら自分のスタイルで勉強したいと思うタイプの人は、ウェブの世界を、たいへんな能力の増幅器だと認識していると思います。

私はどちらかといえば、紙媒体を与えられると最後まで精読しようとしてしまうタイプなのですが、Web だと逆だったりします。Wikipedia なんかが良い例ですが、途中で他に知るべき情報があったり、興味を惹かれる話があったりすると、果てしなく寄り道して寄り道したほうを突き詰めてしまうタイプかもしれません。
そういう意味では、Web は人の学びのスタイルをも変える可能性を持ったツールだと言えますね。

インターネットがわれわれの能力の増幅器であるということですよね。蒸気機関や自動車が人間の筋肉の能力を増強したように、ネットが脳とか人間関係を増幅する。距離と時間と無限性の概念をゆるがしているわけです。リアルの限定されたコミュニティだけにとらわれず、未知との遭遇のありようががらりと変わってくると、いろいろな可能性が出てきます。

もはや言うまでもない話かもいれませんが、こういう話には深く共感します。インターネット上の誰かの知識や考えが、自分の知や学びの加速器になるという話。場合によっては、知識だけではなく精神的な救いにもなってくれたりする。まあ、必ずしもバーチャルでの出会いだけで全てが完結するわけではなく、リアルのやりとりとの補完によって成り立つものも多いですが。でも、それを体験したことのない人にはなかなか理解されない話であるのも事実だったり。

「ここにチャンスがあるんだし、一生懸命努力すれば・・・」と言ったときに、「そんなこと俺にはできないよ」「興味ないよ」という人のところまで下りていって、「さあやろうよ」とまで自分にはできないなと感じました。ウェブに取り組む態度でも、受動的にユーチューブをただボーっと見ているだけの人ではなく、じゃあブログを書いてやってみようという人、好きなことに能動的に取り組んでなにかをやっていこう、という人たち。そういう人たちなら、学校の勉強ができるできないにかかわらず、つきあっていけると思いました。

これは近年の私がかなり悩んでいることの一つ。最近は「そういうものだ」と少し諦めもつきましたが、興味のない他人を引っ張り上げることがいかに難しいか・・・そうしないと自分(たち)の目標が達成できない、となると特に。
こういう話は Web という大海を自分なりに流浪れて、自らと志向性を同じくする誰かと出会った人ならではの物言いだと思うので、そうでない人にとって見方によってはその気がない人は切り捨ててもやむなし、という話に聞こえてしまいそうですが、そこは志向性の違いなので自分の価値観を誰かに強制するのもどうかと思うし。だからこそ、そこで共感して一緒に何かを目指そうという人に出会えたときに、強い力になる実感を得られるものだとも思うので、最近はどちらかというと無理して手近な誰かに過剰な期待をかけるより「共感してもらえる仲間を見つける」ことのほうが重要なのだろうな、と考えるようにしています(もちろん、近くにいる人に同じ志向性を持ってもらえるよう、ある程度の種まきまでは自分がやる前提で)。

だから僕は、大組織にせよ、組織以外での仕事にせよ、自分とぴったりあったことでない限り、絶対に競争力が出ない時代になってきていると思います。朝起きてすぐに、自分を取り巻く仕事のコミュニティと何かやりとりすることを面白いと思える人でなければ、生き残れない。これが幸せな仕事人生になるのか、不幸なのかは一概に言えないのだけれど、いま、過渡状態で起きていることというのは、そういうことだと思う。自分の志向性とぴったりあったことをやっている人は、自然にすごい長時間仕事をするものだから、会社でもコミュニティでも重宝されるというか、「いい仕事しているな」ということになる。

僕が「好きなことを貫く」ということを、最近、確信犯的に言っている理由というのは、「好きなことを貫くと幸せになれる」というような牧歌的な話じゃなくて、そういう競争環境のなかで、自分の志向性というものに意識的にならないと、サバイバルできないのではないかという危機感があって、それを伝えたいと思うからです。

このあたりにも深く共感。近年の高度に複雑化した世の中では、様々なことが単純な数字やデータだけでは読み取れなくなってきており、同時にその仕事に対してどれだけ気持ちが込められているか、を世の中が敏感に感じ取るようになってきているのではないかと感じています。そういう世の中で、いかに知識や技術だけを身につけようと、「想い」を持たなければ人も企業も生き残れない時代になっているのだと思っています。
そうはいっても会社/社会はそういう人たちだけで回っているわけではない、というのも真理なのですが、自分の理想と現実に折り合いをつけるだけではダメで、少しでも現実を自分の理想に近づけようと足掻く、時にはポジションを変える諦めの悪さを、少なくとも持っていなくてはならないのでしょうね。それでも、転職する前の私であったら、そんなことを言われたら「そう言われても・・・」と言っていたか、「そうか、じゃあそういうことなら」となっていたか、判らないわけですが。

まとめとして、従来読んだ 3 冊と基本的な内容は変わっていないので特に新しく得るものはありませんでしたが(『フューチャリスト宣言』と同様に、人と違う生き方をしてきて成功した人同士の対談なので、志向性の異なる人が読んだらむしろネガティブな感想を抱くかもしれません)、今までと同じく自分が今やっていることについて自信を深めさせてくれる書物でした。対談ものはそろそろお腹いっぱいですが(脱線気味に展開する話も多いので・・・)、梅田氏の書き下ろしが発売されたらまた読んでみたいと思います。ってしばらく本出さないんでしたっけ・・・。

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