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アイルトン・セナ ~音速の彼方へ @TOHO シネマズ 六本木ヒルズ

あまり話題にもなっていないというか、F1 ファンでもなければ公開されていることすら知らないかもしれない映画ですが、観に行ってきました。

アイルトン・セナ ~音速の彼方へ

アイルトン・セナ ~音速の彼方へ

昔書いたとおり、私の思春期における最高のヒーローはセナであり、間違いなく私がテクノロジー志向の人生を選んだ最初のきっかけのひとつです。セナの記録のほとんどはミハエル・シューマッハーに破られ、現代ではアロンソやヴェッテルといった若い才能が新たな時代を創っていますが、私にとっての史上最高のレーシングドライバーはセナ。これはたぶん一生変わらないと思います。

HD や 3D といった今の映画のトレンドとは全く無関係な、古くは 30 年近く前の映像の蔵出し。テレビで放映された映像の録画と思われるソースも多数使われており、画質なんて望むべくもありません。ある意味淡々とセナのレーシングドライバー人生を綴っただけの映像で、ほとんどがセナの映像と実際にセナに関わった人々へのインタビューで構成されるため、変に作ったようなストーリー性もなし。果たしてこれが「映画」という体をとる必要があったかどうかわかりませんし、セナの偉業と人物像を知らなければ、何が面白いのか理解できないかもしれません。
でも、ナファンであれば、最近ではあまり観ることも少なくなったセナの写真以外の映像やその走りを改めて観ることができるだけでも、高い価値がある映画だ、と私は感じました。

内容はセナファンであれば知らないエピソードはほとんどないというくらい、よく知られた話ばかりで構成されていますが、元恋人シューシャとの映像をはじめ、ブラジル国内のテレビ番組(?)の映像は未見でしたし、F1 参戦初年度、雨のモナコを一人異次元のスピードで駆け抜けるセナのトールマン・ハートの凄まじさは、当時まだ F1 を見ていなかった私(私が知っているのはマクラーレン時代から)にとっては新鮮なものでした。
また、全般的にセナ・プロの確執と F1 の政治的側面に関するセナの苦悩を軸に描かれていて、逆にそれ以外の要素は大幅にカットされています。ホンダとのエピソードや、できれば観たいと思っていた 1992 年のモンテカルロでのマンセルとの激闘なんかも完全スルーだったのは、日本のファンとしては少し残念ではあります。


実は、私は 1994 年のイモラ(サンマリノ GP)の映像は正直、今まで観ることができませんでした。どうしても勇気が出なかったから・・・なのですが、この映画を観る以上は「その映像」は避けては通れないので、意を決しました。
なんというかもう、あの年のサンマリノの映像はそれだけで重苦しい空気が漂っていて、胸が締め付けられそうな、耐え難いものを感じます。金曜日のバリチェロの大クラッシュ、土曜日のラッツェンバーガーの事故死、それだけでも胸が苦しくなるのですが、この映画で初めて「その瞬間」をまじまじと観て、本当に涙が止まらなくなりました・・・。

・・・さておき。

久しぶりに目にした 1980 年代後半~1990 年代前半の F1 の映像は、改めて見ると現代の F1 とは大きく異なっていますね。オンボードカメラの映像は現代よりも振動が大きく、コックピットもドライバーの肩が剥き出さんばかり。スピードは今のほうが明らかに高いにも関わらず、当時の映像のほうが明らかにスピードの恐怖を疑似体験することができ、またドライバー自身が奮闘する様子が強く伝わってきます。今の F1 が「クルマをコントロールする」という感覚に見えることに比べれば、まさに「クルマをねじ伏せ、従えて走る」という形容が相応しい。いかに現代の F1 がレギュレーションで様々なハイテク装備が禁止されても、実体は電子制御の塊であることがよく分かります。
時代が違うから直接比較できないとは思いますが、あえて言うならば現代の F1 はドライバーさえも F1 マシンを構成する部品の一つにすぎないのに対して、当時の F1 はドライバーが暴れ馬のようなマシンを支配し、一体化することで異次元のスピードを実現していたような気がします。その中でもストイックに速さを追求し、勝つこと以上に「誰よりも速く走る」ことにこだわり続けたセナの姿は、今でも尊敬に値すると思う。

この映画はドキュメンタリー形式の語り口もあって、何か教訓とかメッセージが込められているわけではありませんが、アイルトン・セナという偉大なレーサーの足跡を記し、我々の幼い頃の憧れをまた呼び起こしてくれるという意味で、非常に深い意義があると思います。BD が出たら映像のアーカイブ目的で買ってみようかな、と思っています。

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