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Lion と Windows 8 と

Mac OS X Lion の新機能詳細。App Store 専売で2600円、7月発売

今回の WWDC では iOS 5 とともに Mac OS X “Lion” も正式発表されました。私はあまり熱心な Mac ユーザーではないので、機能の詳細については触れませんが、今回の Lion はかなりモバイルデバイス(iOS デバイス)側からのフィードバックを強く受けて作り込まれているな、という印象です。
マルチタッチジェスチャやアプリのフルスクリーン表示、iOS デバイスライクなランチャである Launchpad など、ルック&フィールの多くで iOS 的な部分を取り込んでいますが、個人的にはそういう表面的な変化よりも、アプリのレジュームやドキュメントのオートセーブなどのように、「ハードウェアやアプリの起動/終了を意識しない」「ファイル操作という概念を意識しない」という、概念レベルでのスマートデバイス的なものの取り込みが意図されているあたりが非常に興味深い。このあたりの概念は、従来のコンピュータが本来はそうあるべきでありながら、ハードウェア/ソフトウェア/UI 的な制限により今までなかなか実現できなかったことを、スマートデバイス側からの投げかけによってようやくコンピュータでも実装しようということのように見えます。


スマートデバイスからのフィードバックを受けている、といえば連想されるのは Windows 8。別に Mac OS への対抗軸として引き合いに出すわけではありませんが、こちらも Windows Phone 7 の意匠を取り込んだ UI を使うことにより、主に操作性の面で従来の Windows とは一線を画すものとなっています。
が、Windows 8 の UI は、少なくとも現在開発中のバージョンのデモを見る限り(現時点のバージョンがどの程度製品版に近いか分かりませんが)、あくまで Windows 7 に WP7 的な皮を被せただけ、という印象が強く、Lion のようにスマートデバイス側に踏み込んだ印象は薄い。このあたりは、スマートフォンの上位デバイスであるスマートタブレットに iOS を搭載している Apple と、スマートタブレットに WP7 ではなく Windows 8 を搭載しようとしている Microsoft という軸足の違いに着目することで説明できるような気がします。

いずれにしても今後のデスクトップ OS はスマートデバイスからの影響を受けることは不可避ですし、いっぽうで様々な付加価値がクラウドに飲み込まれていくことで、リッチなデスクトップ OS 自体の重要性が相対的に下がっていっています。デスクトップ OS への期待値が下がったのは Windows Vista が失敗したことも一因でしょうが、クラウドの台頭によって、一部のコンテンツ生産層のユーザーを除けば、デスクトップ OS の価値は表面的な UX を除き、徐々に融けていくことになるでしょう。PC のポテンシャルに未来を感じ、今もそれを信じている私には寂しい話ではありますが、きっとそれは避けようのない変化なのではないかと思います。これからやってくるのは、モバイルデバイスを進化の原点とした、真のパーソナルデバイスの時代。
おそらくこれから 2~3 年の間に、デスクトップ OS のありようは従来とはガラッと変わったものになるでしょう。それはもしかすると 1998~2002 年くらいの OS の位置づけの変化に匹敵する大きさかもしれません。あるいは仕事以外で PC を使わない(スマートデバイスで全てを済ませる)ユーザー層の台頭かもしれません。でも、もしかしたら多くの一般的 PC ユーザーには、今まであまりにもオーバースペックすぎるコンピュータが与えられていた、むしろ大多数のユーザーには再生機器だけで十分だ、ということだとも言えます。

このあたりの流れを見極める意味では、Lion と Windows 8 という OS は、注目に値する「変化」をもたらすものになりそうです。

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