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PlayStation 4 ができるまで -日本発売までの 367 日間

西田 宗千佳 / PlayStation 4 ができるまで -日本発売までの 367 日間

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ジャーナリスト西田宗千佳氏の新著を読みました。とはいっても前著『顧客を売り場に直送する』と同様、インプレス AV Watch の連載『西田宗千佳のRandomTracking』および MAGon『西田宗千佳のRandom Analysis』に掲載された記事の再編集で構成されたものです。電子版のみの販売で、主要な電子書籍ストアでの取り扱いがありますが、私は発売元のインプレス MAGon から直接購入。MAGon は DRM フリーの EPUB で配信してくれるので、取り回しが良いんですよね。

基本的には既出記事の焼き直しなので、MAGon を購読していればわざわざお金を払って買うほどのこともないのですが、私は去年あまりにも忙しくて IT 系のニュースを拾い切れていなかったし、MAGon もほぼ斜め読み状態だったので、改めてまとめ読みできるのはありがたい。
製品発表から日本発売までの 367 日間に、西田氏が SCE のアンドリュー・ハウス社長や PS4 アーキテクトのマーク・サーニー氏、ワールドワイドスタジオのプレジデント吉田修平氏らに対して取材したインタビューを中心に、時系列にまとめたものです。IT 系ジャーナリストの西田氏らしく、PS4 のプラットフォームやアーキテクチャ、ビジネスモデルなどが軸で、ゲーム内容に触れた話が少ないため、ゲーム好きな人よりもテクノロジー好きや業界関係者向けの内容と言えるでしょう。後半には MS の Xbox 関係者への取材も交え、PS4 と Xbox One が目指すものの共通点と相違点を整理してあるあたりも、業界が向かっていこうとする方向を把握するという点で興味深い。


PlayStation にしても Xbox にしても、PS3/Xbox 360 世代までは結局は「いかにゲーム機単体のハードウェア性能を高めてゲーム体験を向上させるか」の競争だったのに対して、スマートデバイス/ソーシャルゲームの隆盛とコンソールゲーム市場の縮小をふまえ、PS4/Xbox One では「いかにゲームを遊んでもらうまでの敷居を下げるか」「ビッグタイトル以外でもビジネスが成立するようなエコシステムを作るか」「ソーシャルネットワークをどう巻き込むか」「クラウド技術をどう利用するか」といった点に、各プラットフォームの工夫と差異化の軸が変化してきているのは事実でしょう。ソーシャルゲームに代表されるフリーミアムモデル中心のライトゲームからコンソールらしいコアゲームへのブリッジをどう架け、裾野自体は広がっているゲーム人口をいかにピラミッドの上の方に引っ張り上げるか、の戦いと言ってもいいのかもしれません。そういう意味では、プラットフォームやビジネスモデルの視点から俯瞰することで、ゲーム業界の次の未来を占う材料になる一冊と言えます。
また、既に PS4 が手許で動かせる状況で、この著書を読みながら PS4 を触ることで、発売前に示されていたビジョンがどういう形で具現化されたか、を改めて確認してみるのも面白い。

ただ、そうは言ってもまだまだ国内受けする PS4 のゲームタイトルが少ないことは事実なんですよね。買ってプレイした人たちは異口同音に『龍が如く 維新!』が面白い、と言っていたりするのですが、私は既にゲーマーでなくなって久しいからなあ…。PS4 がプラットフォームとして挑戦的であればあるほど、「自分にとってのキラータイトル」がまだ存在しないことが惜しい。ここはやはり、無料体験版や Live from PlayStation で自分が楽しいと思えるゲームを探してみるかな…。

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