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シンプルなかたち展:美はどこからくるのか

六本木ヒルズの森美術館に、また行ってきました。

シンプルなかたち展:美はどこからくるのか | 森美術館

シンプルなかたち展

先日「スター・ウォーズ展」を見に行った際に隣でやっていて、気にはなったものの時間が足りずに諦めた美術展。その後、「MAKING MODERN ~原型づくりへの挑戦~」に触発されて、おそらく工業デザインにも繋がっているはずのこの展示会も改めて見たいと思い、足を運んでみました。

美術展の構成としては、まず「もののかたちを『美しい』と認識するということ」から始まって、天体や宇宙によってもたらされるかたち、力学的なかたち、幾何学的なかたち、自然界に存在するかたち、生きもののかたち、そして「かたち」と人の関係…という流れで展示が進みます。
展示内容的には私の琴線に触れるものとそうでないものが混在していましたが、まあ美意識は人それぞれ。それよりも、太古の時代や文明がさほど発達していない地域でも「美しいかたち」というものが見いだされてきて、しかもそれがある程度時代や地域を超えた普遍性を持っている、ということが興味深いです。私の娘を見ていると、ほんの三歳やそこらで「きれい」とか「好きなかたち」といった感情を持っていて、もうこれは知能とか知識とか関係なく、人間が本質的に持っている感覚のひとつなんだろうなあ、と思わされます。「美はどこからくるのか」というこの展示会のサブタイトルの深さよ。


シンプルなかたち展

美術展なので当然原則撮影禁止ですが、いくつかの展示は撮影 OK。この写真はオラファー・エリアソンの『丸い虹』という作品ですが、ゆっくりと回転するアクリルのリングに光を当てて、反射と透過によって生み出される光が虹のようにも、天体のようにも見えます。この「~~ように見える」というのが重要で、もののかたちの美しさというのはそのもの自体が美しいのではなく、それを見る人の心が何かを想起し、それによって「美しい」と感じるということを、この作品は示しています。

シンプルなかたち展

工業デザイン的な視点で見に来ている私としては、天体・力学・幾何学に関わるあたりの展示がストライク。展示の中には Apple のスティーブ・ジョブズにまつわる解説もあり、パブロ・ピカソの『雄牛』の連作(リアルな牛の絵からどんどん簡略化・記号化していき、最後には一筆書きのように単純な線のみの牛になる)が Apple 製品のデザインコンセプトに影響を与えた、というエピソードには深く納得するものがありました。
デザイン(加飾)のためのデザインではなく、機能性の象徴としてのミニマルで美しいかたち。工業デザインは突き詰めると、そこに行き着くものだと思います。先日「歴史を変え、時代に残る製品のデザインというのはシンプルな幾何学図形の組み合わせでできていることが多い」ということを書きましたが、そのルーツがこんなところにあったとは。

また、映画『2001 年宇宙の旅』への言及もあって。あの作品の中では、人類(に進化する猿)の知性に最初に影響を与えたのが、黒いモノリスという「シンプルなかたち」。映画史を代表する作品でそれが描かれているということが、もののかたちが人間の美意識や好奇心に働きかけ、創作活動を促すということを再帰的に証明していると言えます。

現代美術はあまり得意ではありませんが、この美術展はいわゆる現代美術とは一線を画し、人間の美意識や知的生産活動というのは何か?を考えさせてくれる展示でした。いい刺激をもらいました。

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