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2017/03/21 (Tue.)

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

フィリップ・K・ディック / アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

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映画『ブレードランナー』の原作となったフィリップ・K・ディックの小説、初めて映画を観たときに文庫で買って読んだのが 20 年近く前だったでしょうか。今ではあの文庫本もどこかに行ってしまいましたが、今年 11 月に映画の続編『ブレードランナー 2049』が公開予定ということで、復習も兼ねて電子書籍版で久しぶりに読み返してみました。映画のほうはもう今までに何度となく観ていますが、小説を読むのはこれで二度目。あらすじは憶えているけど細かい部分はさすがに忘れてしまったので、新鮮な気持ちで再読できました。

警官であり賞金稼ぎ(バウンティ・ハンター)であるリック・デッカードが脱走したアンドロイドを狩るというストーリーは原作小説も映画も共通していますが、描かれ方は大きく違います。リドリー・スコットによる映画版は東アジア的なサイバーパンクの世界観が印象的でしたが、原作小説は(文字だけだから当然だけど)映像美よりも SF 的な奥行きの深さや読者への哲学的な問いかけが印象に残ります。その対比は小説のタイトル『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』自体が哲学なのに対して、映画ではバウンティ・ハンターがタイトルでもある「ブレードランナー」に、アンドロイドが「レプリカント」というように、呼称が中二的な感じ(笑)に改変されているところにも現れています。

しかし両者に共通するのは「人間らしさとは何か」「本物と偽物を分けるものは何か」というテーマ。映画版はデッカードとレプリカントたちの追跡劇を軸に、それ以外の要素はほとんど切り落として構成されているのに対し(それは二時間という尺を考えればやむを得ないと思う)、原作小説はそれ以外にも複数の登場人物やエピソードを織り交ぜ、その哲学的なテーマに関してさまざまな角度から読者に考えさせるような内容になっています。映像でこれをやるとダレてしまったでしょうが、小説だからこそこういう掘り下げ方ができたと言えます。
我々の生きる現実社会では、ロボットはまだ人間と生活を共にするレベルには至っていませんが、その構成要素の一つと言える対話型 AI は着実にその精度を高めてきており、コンピュータやスマホのスクリーン越しに「人格」を感じられる程度には進化してきています。その相手を「人格」と認めるかどうかは人間側の認知の問題であるし、AI のほうが人間よりも親切な対応をしてくれる場面だってあり得る。人間の意識や行動だってそれまでの人生における経験の蓄積に立脚した判断に他ならないわけで、AI のビッグデータに基づいたアウトプットと何の違いがある?とも言えます。この疑問に、ロボットがほぼ空想の産物だった約五十年も前に取り組んだフィリップ・K・ディックという作家には改めて敬服するばかりです。

さて、映画版の続編である『ブレードランナー 2049』のほうはオリジナル脚本による完全新作とのことで、若干不安はありつつも(笑)非常に楽しみ。前作の主人公デッカード(ハリソン・フォード)も登場しつつ、新たな主人公を演じるのが『ラ・ラ・ランド』のライアン・ゴスリングというのも期待が高まるところ。果たしてあの『ブレードランナー』の 30 年後の世界を現代の CG 技術でより進化させた形で表現できるのか、あるいはやっぱり実写ベースのウェットな世界観のほうが良かったよね、となるのか。ひとまず 11 月の封切りを待ちたいと思います。

投稿者 B : 21:00 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2017/02/22 (Wed.)

『孤独の中華そば「江ぐち」』と「みたか」

『孤独のグルメ』の原作者・久住昌之先生のエッセイのひとつに『孤独の中華そば「江ぐち」』という作品があります(正式にはエッセイではなく小説らしい)。

久住昌之 / 孤独の中華そば「江ぐち」

孤独の中華そば「江ぐち」

もともとは 30 年以上前、久住さんが 26 歳のときに書いた本らしいですが、その後絶版と復刊を二度繰り返し、三度目の刊行が行われたのが 2010 年。『孤独のグルメ』が最初のドラマ化をされる前のことですが、その時点では既に知る人ぞ知る存在になっていた『孤独のグルメ』から引用する形で復刊版のタイトルがつけられたのでしょう。

この「江ぐち」というのは、三鷹にかつて実在したラーメン店のことで、三鷹生まれの久住さんが若かりし頃に日常的に通っていたお店とのこと。なんたってこんな本を勝手に出したり、久住さんのバンド・スクリーントーンズで勝手にテーマソングまで作曲してしまうくらい思い入れのあったお店のようです。この本が三度目の刊行を行われた年に閉店してしまったそうですが、本書ではその「江ぐち」の在りし日の思い出が生々しく綴られています。

孤独の中華そば「江ぐち」

といっても、エッセイの内容は久住さんと悪友たちが店員に「タクヤ」「アクマ」「オニガワラ」などという渾名を勝手につけていた話とか(それも「タクヤ」は顔が久住さんの弟に似ているから、というしょうもない理由だったりする)、基本的には大学生のだらしない日常の話と、そこから脱線(しかもかなり話題が飛ぶ感じで)した話ばかり。それでも久住さんや悪友たちがお店の様子をよーく観察し、そこから妄想を膨らませたり、自分なりの「食べ方の流儀」にこだわったりするあたりが『孤独のグルメ』の原点なんだなあ...というのがとてもよく分かるエッセイになっています。

まるでドラマの「ふらっと QUSUMI」コーナーで隣の席に座って久住さんの飲み話を聞いているような、スクリーントーンズのライブで久住さんの脱線だらけの MC を聞いているような、そんな感覚が文章を読んでいても感じられます。私は紙の本を読んでいて吹き出してしまうことってまずないんですが、この本は数ページに一度くだらなすぎて吹く(笑。

孤独の中華そば「江ぐち」

このエッセイの中でも「お店のカウンターの中で店員が険悪なムードだと、料理が全くおいしく感じられない」という話をつらつらと書いていたりして(ちなみにこのエピソードは「江ぐち」のことではなく脱線した他の店の話)、漫画『孤独のグルメ』に登場したアームロック回のような経験が本当に許せないんだなあ、というのがよく分かります。
でも基本的には全編にわたって馬鹿話と妄想と脱線が繰り広げられていて、久住さんが食事している間の頭の中を覗き込んでいるような感覚。

で、先日たまたま仕事で三鷹方面に行く用事があり、しかも帰りが半端に遅くなってしまいました。南東京の住人としては中野よりも西、というのは妙に遠くて、これは帰るまでもちそうもない。仕方ない、この辺で何か入れていくか...と考えました。三鷹周辺は久住さんのホームグラウンドだけあって『孤独のグルメ』では原作、ドラマともに登場している町だし、私も何度か聖地巡礼に訪れています(全くの余談だけどコンビニ回では跡地の写真を撮るためだけに三鷹まで行った)。
お茶漬けの「みさと」は昨年末に閉店してしまったらしいけど、久しぶりに「」に行くかなあ...というところまで逡巡したところで、この店のことを思い出しました。

中華そば みたか

「江ぐち」と同じ場所で、「江ぐち」の若手職人が、「江ぐち」の店舗を居抜きで使って、「江ぐち」の味を受け継いだ店をやっている、という話。
確かに三鷹駅の正面の道を少し歩いたところのビルの地下に、そのお店は入っていました。

中華そば みたか

中華そば みたか

階段を降りると真正面にある「中華そば みたか」。これがその「江ぐち」の後継店です。

近代的なビルの並ぶ三鷹駅前の地下に、ここだけ昭和がそのまま時間を止めているかのような空間が広がっています。
店内のレイアウトとか、調理器具の様子とか、本当に久住さんのエッセイに書いてあったそのまんまで、ちょっと笑みがこぼれてしまうほど。

中華そば みたか

とりあえず一日の仕事が終わったところなので、瓶ビールで自分にお疲れさま。
でもラーメン屋でガッツリ飲んじゃうのも粋じゃないと思い、小瓶にしてみました。

中華そば みたか

で、ラーメンをいただく前に久住さんなら軽くつまんでから本丸に行くんだろうなと思って、「竹の子」をツマミにいただいてみました。
ここが普通のラーメン屋だったら「メンマ」あるいは「シナチク」と呼ばれるところだろうけど、この店では「竹の子」。噛み応えのあるメンマに大量の白ネギ、それにラーメンの醤油だれが絡んで、これはいいツマミだ。焼豚(チャーシュー、ではなく、チャシュー)にも心惹かれたけど、これは竹の子で正解だったかも。

中華そば みたか

そしてメインはチャシューメン。ツマミを竹の子でガマンしたので、ラーメンにはガッツリチャシュー。
この店、普通のラーメンが 450 円、このチャシューメンでも 700 円。イマドキそこらのラーメン屋ならチャシューメンで 1,000 円取る店もザラにある中で、この値段は嬉しい。

中華そば みたか

スープは澄んだ色の昆布だし&野菜系。カウンター内の寸胴鍋で人参や玉葱、キャベツなんかがゴロゴロ煮込まれた、見るからに美味しそうなスープ。
味は自己主張が強すぎず、ややスッキリめのやさしい味。初めての味なのにどこか懐かしい、昭和を思い起こさせるスープです。
最近の私はガッツリ豚骨とか煮干しとかよりも、こういうシンプルな醤油スープのラーメンこそ食べたいと思います。

チャシューはしっかりと味がついているけど、あまり脂っこくなく飽きずに味わえます。これもおいしい。
エッセイには、ツマミのチャシューはラーメンのと違って脂が冷めているのが「レーズンバター的な感じでツマミにいい」という話があったけど、確かにこのチャシューならそういう楽しみ方もアリだな。

中華そば みたか

麺は角張った形の自家製・中太ストレート。こういう麺を出す店ってあまり多くない印象だけど、こういう食べ応えある麺、けっこう好き。そしてこのスープならこの麺しかないだろうと感じる相性の良さ。飽きの来ない、いくらでも食べていられそうな中華そば。
この麺、見た目の印象どおりボリュームがあるようで、食べ終わった後にはけっこうお腹いっぱいになってしまっていました。

ここは美味しかったなあ...久住さんが毎週のように通っていたのも分かる気がします。
決してインパクトのある味ではないけれど、ジワジワと良さの分かる、毎日でも食べたくなるラーメンだと思います。自分で撮った写真見てたらまた食べたくなってきた。

今度三鷹に来る機会があったら、ツマミチャシューと五目そば、いってみようかな。

久住昌之 / 孤独の中華そば「江ぐち」

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投稿者 B : 22:56 | Book | Gourmet | KODOGURU | Ramen | コメント (0) | トラックバック

2017/02/20 (Mon.)

神々の山嶺

先日亡くなった谷口ジロー先生の追悼の意味も込めて、代表作を一つ読んでみました。

夢枕獏、谷口ジロー / 神々の山嶺

神々の山嶺

名作と呼ばれるいくつもの作品の中から、表紙に凄みを感じた『神々の山嶺(いただき)』を選びました。そういえばこれ、去年映画化されたときにちょっと気になっていたのですが、結局そのままスルーしてしまったんですよね。映画評なんかを読む限りではキャストは良いけど...という感じらしいので、観なくて正解だったかもしれません。
本作は夢枕獏氏の同名の小説を漫画化した作品で、夢枕獏氏自身からの指名で谷口ジロー先生の作画になった、と後書きに書かれていました。フィクションではありますが、実在する登山家をモチーフにした非常にリアリティと重さのある作品です。

何故山に登るのかとの問いに「そこに山があるから」と答えたという登山家ジョージ・マロリー。エベレスト山頂付近で遭難し、人類史上初のエベレスト登頂を果たしたかどうかは今でも謎に包まれています。そのときに携えていたと言われるカメラをネパールの首都カトマンドゥで偶然手に入れた日本人写真家・深町誠がその真相を追ううちに、行方不明となっていた伝説の日本人登山家・羽生丈二と出会い、彼の登山人生に引き込まれていくというストーリー。

神々の山嶺

羽生はその人生を賭けてエベレストを、それも単に登頂するわけではなく「誰も成し遂げたことのないルートと方法で」登ろうとします。作品の大半はエベレストのみならず日本や世界の険山(それも冬季)の描写に割かれます。暖房の効いた室内で読んでいても、まるで自分が冬山にいるかのような寒さや厳しさを感じてしまうほど描き込まれたコマが延々と続き、読むのにさえエネルギーを消費する感覚があります。これと比べると『孤独のグルメ』はあえて背景を白抜きにしているコマも多く、緊張感の出し方が全く異なることがよく分かります。

神々の山嶺

命を賭けるレベルの登山なので、遭難や事故による怪我や死とは常に隣り合わせ。凄惨な事故を生々しく描いたシーンも多く、読むと体力を削られる感覚。それでも物語はこちらをグイグイ引き込んでくる強さがあり、私は電子版の全巻セットを購入し、結局最後までほぼ休まずに読み切ってしまいました。そして読了後にはどっと疲れているという。

神々の山嶺

エベレストをはじめとした冬山の描写には目を見張るものがあります。『孤独のグルメ』の描き込みも半端なかったですが、その比ではない緻密さ。冬山を経験したことのない私は原作小説を読んでも情景が想像できなかったかもしれませんが、この「画の力」はやはり偉大だと思います。自然の偉大さと恐ろしさが同時に伝わってくる描写で、あまりにもちっぽけな自分を感じて涙が出そうになったほど。

神々の山嶺

ちなみに作中では、登場人物が何かに関して熱弁を振るうシーンがいくつかあり、この構図と同じようなコマがたびたび登場するわけですが、これを見るたびに

孤独のグルメ

『孤独のグルメ』のゴローの仕事仲間・滝山を思い出して吹く(笑。谷口ジロー先生的には定番の構図なんだろうなあ。

それにしても凄みのある作品でした。画力にここまで震えたのは井上雄彦先生の『バガボンド』と安彦良和先生の『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』以来かもしれません。
改めて、惜しい人を亡くしたものです。

『孤独のグルメ』とはまた違った谷口ジロー先生の世界。他にも何か読んでみようと思っています。

夢枕獏、谷口ジロー / 神々の山嶺

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投稿者 B : 22:00 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2017/02/12 (Sun.)

おくやみ:『孤独のグルメ』谷口ジロー先生

「孤独のグルメ」漫画家の谷口ジローさん死去 | NHKニュース

孤独のグルメ
(写真は『孤独のグルメ 巡礼ガイド 2』より)

漫画『孤独のグルメ』の作画で有名な、漫画家・谷口ジロー先生が昨日亡くなったとのこと。

『孤独のグルメ』ファンとしては、これで久住・谷口両先生による『孤独のグルメ』がもう読めなくなってしまうと思うと、本当に悲しい。谷口先生は 69 歳で、作家としてはまだまだ現役を張れる年齢だっただけに、残念です。

孤独のグルメ

今でこそドラマのほうが知名度が高まっていますが、そもそも『孤独のグルメ』の人気は漫画版の谷口ジロー先生によるハードボイルドな画風と「ただメシを食う」というギャップ、そして何とも言えない味わい深いセリフ回しによってジワジワと高まってきたもので、その結果としてドラマ化されたものです。原作の久住先生はご健在のため、作画担当を別の人に頼んで継続できなくもないのでしょうが、画が変わったらそれはきっと別物になってしまうんだろうなあ。ドラマ版でゴローちゃんが松重豊さんでなくなるようなものだと思います。

谷口ジロー先生

『孤独のグルメ』の魅力は井之頭五郎のキャラクターだけでなく、この緻密に描き込まれた料理や店内の再現性、風景の細かさにもあると言えます。実際に聖地巡礼してみると、本当にこの絵のまま出てくるから驚きます。実際には最近の料理作画は谷口先生ではなくアシスタントさんが描いているという話ですが、それも含めて谷口ジロー作品なわけで。

ちなみに、谷口先生は日本国内よりも海外(特にヨーロッパ)で高く評価されており、6 年前にはフランスの芸術文化勲章「シュヴァリエ」を受勲しているほどの人物です。ルイ・ヴィトンからヴェネツィアのトラベルブックも出版しており、一流の芸術家として認められていることが分かります。そう考えると日本では漫画ってまだまだ芸術作品ではなく娯楽作品としてしか見られていないのだなあ。

孤独のグルメ

遺作となった『孤独のグルメ 2』の最終話がフランス・パリ編、というのも改めて宿命めいたものを感じます。私は原作の聖地でまだ行けていないのは病院回とこのパリ回だけですが、これは何かのチャンスを見つけて巡礼するしかないかなあ...。

この機会に『孤独のグルメ』シリーズ以外の作品も読んでみようかと思います。
ご冥福をお祈りいたします。

夢枕獏、谷口ジロー / 神々の山嶺 文庫版 コミック 全 5 巻完結セット

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投稿者 B : 20:56 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2017/02/06 (Mon.)

飛びこめ!!沼 01

カメラバカにつける薬』に続いて、このカメラ系同人誌も購入しました。

安倍吉俊 / 飛びこめ!!沼 01

飛びこめ!!沼 01

通称「シグマの H 本」。あの人この人あんな経営者までも手に入れている、昨今のカメラ界の隠れベストセラーとなっている(?)一冊です。私はシグマのカメラは持っていませんが、シグマレンズファンとしては読んでおきたくて。表紙の二人からして sd Quattro とトンファーdp Quattro ですからね。シグマ純度高杉。
ちなみに『カメラバカ~』と違ってこちらは紙版しかなく、通販で買ったら少し時間がかかってしまいました。

それにしてものっけからいきなりこれですよ。

飛びこめ!!沼 01

間違いない、これは確かに H 本だ(←

カメラクラスタの人なら何のことを言っているか分かりますね。当代一の変態カメラのことです(誉め言葉

飛びこめ!!沼 01

『カメラバカ~』はカメラの(写真の、とは言わない)専門知識をベースとした機材マニアの自虐ネタを中心とした同人コミックでしたが、こちらはシグマユーザーの自虐ネタでありながら、専門知識よりもライトギャグ中心。でもシグマ愛、機材愛に溢れていてとてもイイ。
すごく力の抜けた作風ですが、全ページフルカラーでなかなか読み応えがあります。

飛びこめ!!沼 01

こっちにも出た!カメラクラスタにおけるフォトヨドバシ影響受けすぎ問題(笑
フォトヨドなあ。いいよなあ(遠い目

「01」ということで続刊の構想もあるようなので、こちらも『カメラバカ~』と併せて楽しみにしたいと思います。

シグマ / sd Quattro H

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投稿者 B : 22:00 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2017/01/30 (Mon.)

カメラバカにつける薬

カメラ界隈のタイムラインにときどき登場する同人誌『カメラバカにつける薬』。断片的に見たコマだけでも面白くて興味を持っていたのですが、先日の某集会で某氏に実物を見せてもらったらちゃんと通しで読んでみたくなったので、買ってみました。

ていこくらんち / カメラバカにつける薬

カメラバカにつける薬

同人誌ってバックナンバーは入手困難になるものですが、pixiv が運営する通販サイト「BOOTH」で電子版を販売しているんですね...安かったこともあり、思わず「ごーがいまとめ」も含めてシリーズ 8 巻全部買ってしまいました(笑。とはいっても「薄い本」なので、さらさらっと読めてしまいます。

あとがきによると blog や SNS での作中のコマ引用歓迎とのことなので、いくつかピックアップしてご紹介。

カメラバカにつける薬

この漫画は、カメラの撮影離れを止めるべく設立された架空の心療内科、通称「カメラ内科」の女医さん・看護師さんと患者たちの話。

「あなた、レンズ沼にかかっていますね」

...我々の後を追って沼に足を踏み入れた人を見かけたら、言ってみたいセリフナンバーワンの座をもぎ取っていきました(笑

カメラバカにつける薬

治療のためにツァイスレンズを投与してくれる病院!これは入院するしかない(ぉ

カメラバカにつける薬

カメラ機材によって思考回路を狂わされてしまった重病人達の話です。
基本的に Twitter のカメラクラスタ内で日常的に繰り広げられている会話的なものが漫画化されているわけで、ほとんど共感する話しかない。

ちょうどこれを読んでいるときに、Twitter でヨドバシのカメラ沼話が RT されてきて、ここにも患者が一人...と女医さん目線で考えてしまったのは内緒です。

ヨドバシカメラによって沼に突き落とされた人 - Togetterまとめ

カメラバカにつける薬

フォトヨドバシの攻撃力高杉問題はたびたびネタにされます(笑
まあ私もフォトヨドバシの影響で買わされてしまった機材は数知れず。「天使の両翼」みたいなガジェット系ポエムは苦笑しながら流せるのに、フォトヨドバシだけは的確に物欲を抉ってくるのは何故なんだぜ。やっぱり写真の力なんでしょうか。

カメラバカにつける薬

ページをめくったらいきなりこれで、つい画面を濡らすくらい吹き出した一コマ(;´Д`)ヾ。漫画にされると破壊力ありすぎる。

カメラバカにつける薬

ネットスラングも多いので、Twitter で日常的にカメラ話をしている真のカメラバカでなければ意味不明だろうと思いますが、少しでも共感できたならきっと面白いはず。
中でも特にキヤノン、ソニー、ペンタックス、シグマのいじられ度合いが高いので、該当メーカーファンなら必読です。

これはもっと早く買っておくべきだったなあ。続刊が出たらまた買おうと思います。

投稿者 B : 23:40 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2017/01/10 (Tue.)

いいひと。

以前から電子版のリリースを待っていた漫画が、いつの間にか電子化されていたのに気がついたので買ってみました。

高橋しん / いいひと。 (1)

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もう二十年以上前の作品なので、今さら感はありますが。ビッグコミックスピリッツで連載されていて、高校~大学にかけてリアルタイムで読んでいました。今でもコミックは全巻持っているんですけどね、電子版ならどこにいても読み返せるじゃないですか。

架空の大手スポーツ用品メーカー・ライテックスに勤める若手サラリーマン、北野優二(ゆーじ)のお話。ゆーじが社内のさまざまな部署を異動しながら、多様な仕事に携わっていく話...なのですが、ゆーじは主人公でありながらあくまで狂言回しにすぎません。本当にスポットが当たるのはゆーじの仕事先で出会う多くの人々、会社の同僚や先輩後輩、顧客であり、仕事や人生について何らかの悩みを持っている彼らが、ゆーじとの仕事を通じて大切なものを見つけ、あるいは取り戻していく物語です。

漫画だけにご都合主義的な展開は多いながらも、登場人物の多くがただのお金儲けではなく働く意味や生き甲斐に悩みながら働いているのが印象的。ほわんと緩いタッチの画も作風も『島耕作』や『サラリーマン金太郎』といった典型的なビジネス漫画とは全く異なりますが、社会人として生きていく上で必要なポジティブさを、少し青臭いながらもストレートに伝えてくれます。
企業における女性社員の位置づけの違いや携帯電話が普及していないこと、代表的な野球選手がドジャース時代の野茂英雄など、今読むとさすがに時代を感じてしまう描写も少なくありませんが(笑、本質的な部分は現代でも変わっていません。私も、社会人になってからも悩んだときや岐路に立ったときになると読み返して、自分が働くことの意味を再確認しています。ある種、私が日々働く上での原点となっている作品、と言っても過言ではありません。そして、年齢や経験を経て環境や立場が変わるとまた違った見え方をしてきます。

この機会に数年ぶりに最初から読み返そうと思います。

投稿者 B : 23:11 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2016/12/25 (Sun.)

Kindle Paperwhite

小学五年生の長女へのクリスマスプレゼントはこれでした。

Amazon / Kindle Paperwhite 32GB マンガモデル (ホワイト)

Kindle Paperwhite

四年生くらいからけっこう本をよく読むようになり、当初は児童向け小説が中心だったのが、最近では『ハリー・ポッター』シリーズなんかも読んでいるようです。ただ本人は「本は図書館で借りるもの」という感覚らしく、紙の本を所有したい欲求は希薄な模様。以前からウチの奥さんが使っている Sony Reader(PRS-T2)を借りて使うこともあったので、それならと電子ブックリーダを買い与えました。
私自身はソニーの Reader Store をメインに使っていますが、これから専用機を手に入れて使い始めるのならばもはや Kindle 一択でしょう。どうせなら内蔵メモリ容量の大きなモデルを長く使ってほしいと思い、マンガはあまり読まないけどあえて 32GB 内蔵のマンガモデルを選択しました。

Kindle Paperwhite

E-Ink 方式の Kindle は五年前に自分で買った Kindle 4 以来ですが、外観は大きく変わっていなくても E-Ink の表示品位は上がっているし操作レスポンスも E-Ink 端末とは思えないほど高速(液晶ほどじゃないけど)。他車の専用端末は進化が止まって久しいですが、こういう違いを見せつけられてしまうと、ちゃんと開発が続けられている端末とサービスを使うのがユーザーとしては幸せだよなあ、と感じます。
ただ背面ロゴが Kindle ではなく Amazon になったのはちょっとどうかなあ。Amazon ベーシックのイメージが強いせいもあるけど、梱包箱ならまだしも製品に Amazon のロゴが入っているとどうも安っぽい印象を受けてしまいます。

Kindle Paperwhite

これは今後基本的に長女の専用端末となるわけで、アカウントの扱いはちょっと悩みました。私か奥さんのアカウントを使ってもいいけど、今後長く使うことを考えたらこれまでの購読履歴も含めて「自分のライブラリ」を持っておいたほうがいい。結局新規でフリーメールアドレスを用意し、長女の Amaozn アカウントを取得した上で使い始めることにしました。
機能制限に関しては、決済はクレジットカードを紐付けていないので今後必要に応じてコンビニでプラスチックカードタイプの Amazon ギフト券を買ってチャージさせることで使いすぎを防止することに。他には Web ブラウザの使用制限をかけた程度で、今後必要に応じて情報リテラシの教育はしていくことにしようかと。自宅では Xperia Z2 Tablet を家族共用にしていて、普段から Web や YouTube はある程度自由に使わせていますし。

Kindle Paperwhite

私も Kindle Paperwhite の実機をじっくり触るのはこれが初めてでしたが、コントラストの高い E-Ink ディスプレイはとても読みやすいですね。さらにフロントライトもついて、私もちょっと欲しくなってしまいました。が私は電子書籍はもうほぼタブレットかスマホでしか読んでいないので、専用機は必要ないかな。

長女にはもう少し文学系の作品を読んでほしいので、無料で入手できる青空文庫を中心に冬休みの課題図書にしようと思っています。愛用してくれるといいなあ。

Amazon / Kindle Paperwhite 32GB マンガモデル

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投稿者 B : 20:00 | Book | eBook | コメント (0) | トラックバック

2016/11/15 (Tue.)

ポケモン GO は終わらない

みなさんポケモン GO はまだ続けてますか?私は時々「まだやってんの?」と言われながらも、地道に続けています。今日の時点でトレーナーレベル 26、日本で収集可能な 142 のポケモンのうち集めた数は 138。けっこうがんばってるでしょ(笑。

西田 宗千佳 / ポケモン GO は終わらない 本当の進化はこれから始まる

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そんなポケモン GO をテーマにした西田宗千佳氏の新著が発売されたので、私も早速読了しました。マスコミを巻き込んだ、国内サービス開始時の熱狂は過ぎ去り、ブームはもう落ち着いたように思われます。が、街中では今でもそれなりの割合でポケモン GO の画面が表示されたスマホを持っている人を見かけ、お台場にはまだまだレアポケモンを求める人々が集まっています。ポケモン GO が誕生した経緯とブームの正体、そしてポケモン GO が与えた世の中への影響を一度総括するという意味では、いいタイミングなのではないでしょうか。

位置情報ゲームも、キャラ収集ゲームも、ネット対戦系の携帯/スマホゲームもそれぞれは以前から存在したものでした。それがこれだけ世界的に、しかも垂直立ち上げ的に広まったのは、ひとえに『ポケモン』という IP の強さと『Ingress』をベースとした位置情報の網羅性にあります。中でも「身の回りに存在するポケモンを捕まえる」という行為は本来の『ポケモン』が持っていた要素そのもの。今まではゲーム機の中のフィクションの世界で表現していたものを位置情報や AR を使って拡張現実の中に作り上げたことがポケモン GO の強さの秘密であり、他の IP で同じことをやってもここまでのヒットには繋がらなかったと言えます。本書ではさらに、携帯ゲーム機版のポケモンでも「思い出のポケモンは『公園で交換したポケモン』であり、『校庭で手に入れたポケモン』だった。人の記憶は、画面の中にだけあるのではない」と指摘しています。私はゲーム機版のポケモンをプレイしたことがないのでその視点がありませんでしたが、であればなおのことスマホの位置情報ゲームと相性が良かった、ということが言えるでしょう。

まあ、サブタイトルに「本当の進化はこれから始まる」とつけられたタイミングでようやく基本的な DAU(デイリーアクティブユーザー)施策が初めて導入されたり、まさに現在行われている東北復興イベントで超レアポケモンのラプラスがフィーバー状態で、これまでに苦労してゲットしたユーザーのモチベーションを殺ぐ結果を招いていたり、正直言って運営面は素人なんじゃないかと感じてしまう場面も少なくありません。が、言い換えればこれまでは運営の拙さが問題にならないほどのブームを起こせていたということであり、そのためのインフラ増強などに運営側の工数が割かれていた結果だということでもあります。

本書は Google の一部門に過ぎなかった Niantic(ポケモン GO の開発・運営元)がいかにしてポケモン GO を生み出し、世の中に大きな影響を与えたかという話にとどまらず、スマホアプリとしては他のゲーム等とは異なる特異な普及・使用・収益状況にあること、ドラマやアニメの聖地巡礼ブームとも絡めた「コンテンツ・ツーリズム」の話、さらにはこれから立ち上がってくる AR/VR との関係性、と多岐にわたる分析がなされています。ゲームライターではなく「電気かデータが流れるもの全般」を取材対象とする西田氏ならではの観点で、単なるポケモン GO の現状解説ではなく 2016 年時点での技術トレンドや社会動向を押さえるという点でも一読の価値があると言って良いでしょう。

個人的に興味深かったのはコンテンツ・ツーリズムの話。近年のアニメでは舞台となった土地の聖地化の成功例・失敗例には枚挙に暇がありません。その本質を突いているのが、まつもとあつし氏によるこのインタビュー記事ではないかと思います。

ASCII.jp:ガルパン杉山P「アニメにはまちおこしの力なんてない」 (1/6)|まつもとあつしの「メディア維新を行く」

コンテンツ自体の面白さと「聖地」になる地方の魅力、それに地元の人々の理解が全て揃わないと成功例とはなりにくく、再現性を求めることが難しいのが実際ではないでしょうか。ポケモン GO における初の公式コンテンツ・ツーリズムである東北イベントは先述のとおり必ずしもポジティブな要素ばかりではないのも事実ですが、少なくとも東北に人を呼び込むことには成功しているようです。また、今回のイベントとは直接関係ありませんが、震災で失われた東北のランドマークを「記憶のポケストップ」として拡張現実空間上に再現されていて、私も先日の東北聖地巡礼のついでにそのいくつかを実際に目にしました。本書を読む前に、たまたま別のコンテンツ・ツーリズムに乗っかった際に遭遇したというのも何かの縁でしょうが、震災から復興するにあたり「以前とは別の風景」が作られていく一方で、失われたものを追体験できる、というのは貴重であり、同時にとても重い体験でした。これは何もポケモン GO に限らず、他のアプリやソリューションにも今後波及していく可能性があり、そういう意味では「実質的にポケモン GO が世の中に与えた影響のひとつ」となることでしょう。

ポケモン GO 自体、現時点で実装されているコンテンツはゲームボーイ版の初代ポケモンの内容に過ぎず、これから新ポケモンや新機能の追加、あるいは運営の改善などを経てまだまだ進化する余地を残していると言えます。しかし、それよりも重要なことは、ポケモン GO が一般的なスマホゲームのヒット作とは(量的にも質的にも)異なる形で浸透し、一気にキャズムを超えたことで、今までは一般化してこなかった技術やその使われ方が世の中に定着する可能性を示したということだと思います。「ポケモン GO で交通事故」みたいなネガティブな事件も含めて(それはスマホ自体の使い方の問題であって「どのアプリだったか」は本質ではないと思うけど)、数年後に振り返ったときに「ポケモン GO がひとつの転換点だった」と言われるようになっているのではないでしょうか。
ある技術や概念が世の中に浸透していく瞬間に立ち会えるというのは稀有な経験です。私もここまで規模は大きくなくてもいいから、そういうことを起こせる当事者の一人になれるよう頑張らなくては、という思いを強くしました。

投稿者 B : 22:50 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2016/10/18 (Tue.)

はじめての社内起業 「考え方・動き方・通し方」実践ノウハウ

先日読んだ『ソニー復興の劇薬 SAP プロジェクトの苦闘』からの流れで...というわけでもないのですが、新規事業立ち上げ系のビジネス書を一冊読んでみました。リクルートで情報サイト「All About」等の新規事業立ち上げを多数手がけた石川明氏の著書です。

石川 明 / はじめての社内起業 「考え方・動き方・通し方」実践ノウハウ

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ここ数年、日本でもハードウェア・スタートアップなどのベンチャー企業が注目を集めています。クラウドファンディングにより以前よりも資金調達と露出の場を兼ねられるようになったことが大きな要因だと思いますが、その場を提供しているのがサイバーエージェントや Yahoo!、DMM といった影響力のあるネット企業であることも無視できません。
しかし一方で、国内の経済状況が以前よりも好転したためか、ベンチャーの起業と同じかそれ以上に、企業内での新規事業検討が行われているのも事実だと思います。ソニーの SAP なんかはその代表的な例だと言えるでしょう(SAP はソニーグループ内の R&D や製造の協力が得やすかったり、新規事業起案者向けのトレーニングを行うなどのバックアップを組織として行っているのが、他社の状況とは大きく違うとは思いますが...)。この本は、そんな「企業内で新規事業の立ち上げを任された担当者」向けの一冊だと思います。

この書籍に書かれているのは、大きく分けて以下の要素です。

  • 新規事業の担当者になったときのものの考え方
  • 新しく踏み出す事業領域の選び方
  • その領域での差異化の考え方
  • 事業プランや事業計画書の作り方
  • 社内での事業計画の通し方
新規事業の担当者に抜擢されてから実際に事業計画の承認を得るまでのプロセスに関してやるべきことを丁寧に解説してくれています。
ベンチャーであれば「これを実現したい」という明確な目的があって起業することがほとんどだと思いますが(その後の経営状況や環境の変化によってピボットする例も多いにせよ)、企業内での新規事業立ち上げはいち社員が「新規事業を立ち上げろ。目標は●年に○円の売上/利益を達成すること」という数値目標だけを与えられて途方に暮れる、ということも珍しくありません。そのため、上記の内容だけでも大いにその指針になるとは思いますが、この本のいいところは具体的な手法よりもそういう「新規事業担当者が持つべきマインド」を教えてくれるところ。いかにして状況をポジティブに捉えるか、経営者や上司・同僚、ときには社内で壁となる相手を味方につけるか、の考え方について、自身の経験や実例をふまえて教えてくれるところにあると思います。漠然とした目標や社内の高い壁に心が折れそうになったり、ともすると事業計画を通すことそのものが目的化してその後の成功のための道筋をつけられなかったりしがちな新規事業立ち上げを「これなら俺にも何とかやれそうかな」と勇気づけてくれる内容になっています。

全くの新規事業立ち上げでなくとも、新商品の企画も既存商品の正統後継でもない限り、どこかしら新しい提案や挑戦の要素が含まれているはずです。そういう企画は程度の差こそあれ、どこかで必ず商品化の壁に突き当たるもの。そういうことに関しても、この本に書かれている「考え方・動き方・通し方」を実践することで実現に近づくことができるのではないでしょうか。
いち社会人として常に傍らに置いておき、定期的に読み返すことで前向きに挑戦する姿勢を保ち続けたい。そう思わせてくれる一冊です。

投稿者 B : 23:59 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック