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2018/10/18 (Thu.)

マーケティングの仕事と年収のリアル

私の友人でありマーケティングの同志でもある山口義宏さんが新著を出版されたとのことで献本いただきました(ありがとうございます)。

山口義宏 / マーケティングの仕事と年収のリアル

マーケティングの仕事と年収のリアル

山口さんはこの春にも『「ブランディング」 顧客体験で差がつく時代の新しいルール』を出版されたところで、本業や講演などにもお忙しいにも関わらず精力的に活動されていますね。特に宣伝を頼まれているわけではありませんが、いつもとはちょっと違うテーマの内容であり、長年仕事でマーケティングに関わってきた私としても「会社を離れたときの自分の市場価値ってどうなのか」というのは最近まさに気になっていた部分でもあるので、興味深く読ませていただきました。

本書は以下のような構成で書かれています。

  • 事業会社とマーケティング支援会社の違い(業務範囲や長所短所、年収レンジ等)を解説
  • マーケティング従事者の職務を 6 つのステージに分け、それぞれの役割と求められるスキルを整理
  • マーケッターを「8 つの流派」に分類し、自分自身のキャラや他流派との相性を把握
  • 社内外で評価されるスキルのポイントと磨き方
  • キャリアアップのための「見極め方」
  • 上記をふまえ、代表的なキャリア構築パターンとその歩み方を解説
私は自分自身があまりキャリア構築に積極的ではなかったこともあり、こういう整理の仕方で自分のキャリアを捉えたことがありませんでしたが、読めば読むほどなるほど、という話。自分もマーケティングに関わるさまざまな立場・スタイルの人を見てきたので、納得感があります。中でも流派の話はデフォルメされていて面白い(笑。 おそらく自分を分類するならば流派はブランディング派と実践知ストリートファイト派の中間くらいだろうし、キャリア構築に関しては今まではコミット型だと思っていたけど実際は王道キャリアアップ型になる必要に迫られているのでは?と思っています。キャリアステージがスペシャリストからブランドマネージャーの戸口あたりで足踏みしている状況が数年続いていてどうしたものか...と悩んでいたタイミングでもあり、そんな折に自分のキャリア構築に必要な地図を提示してもらえた感覚。しかも、キャリアステージや事業会社/支援会社、企業規模などに応じて目安となる年収のレンジがズバリ書かれていて、人生設計と照らし合わせながらどこを目指すべきか考えることもできる。下世話な話だけど年収って幸福度に大きく影響するので、自分や家族がどういう人生を送りたいか考える上では重要です。

タイトルにこそ「マーケティングの」とついていますが、ちょっと汎化させながら読むことができればかなり幅広い職種のキャリア構築に応用できる内容なのではないでしょうか。具体的な年収はあまり参考にならないかもしれないし、スペシャリスト筋のエンジニアにもちょっと違う話かもしれませんが、事業会社 or 支援会社、マネジメント or スペシャリスト、アラサーでの見極め、三年単位でのキャリアの棚卸しと見直し...多くの職種がこれらの観点でキャリア構築を考えることができるのではないかと思います。

私はかれこれ十数年マーケティングに携わってきましたが、主には仕事を通じて何を実現するか、自分の商品やサービスでどうお客様を喜び驚かせて成功に結びつけるか...に集中するあまり、自分のキャリア形成についてはそれほど興味を持っていませんでした。数年前、たまたまキャリアの節目と言える時期に声をかけてくれたヘッドハンターに話を聞きに行き、自分の市場価値を客観的に見たらいくらくらいになるのかを把握してみようとしたことはありますが、その程度。今にして思えば転機と言えるタイミングは何度かあって、あのときに異動なり転職なりといった選択をしていたら今どういう人生を送っていたのだろう...というのは、この歳になってようやく想いを馳せるところだったりします。
四十代に入り、ポテンシャルではなくほぼ経歴と実績だけで評価されるステージにある今、自分にはどういう選択肢があるのか。あるいは三十代のうちに何をしておくべきだったのか。そういうことを考えがちだった昨今の私にはタイムリーな内容だったと言えます。

マーケティングと一口に言っても様々な職務があるものですが、本書は何らかの形でマーケティングに関わっている人であれば一読して損はありません。特にマーケティング関係の仕事に就こうとしている学生さんから現職の三十代前半までの人は必読と言って良い(現職の人の方が納得感は強いでしょう)。私も十年前にこの本があればもうちょっと違ったやり方でキャリアを歩んでいたかもしれませんが、年齢的に選択肢が減ってきた現在でも勉強になり、勇気づけられる一冊でした。

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2018/10/02 (Tue.)

オールドレンズ・ライフ 2018-2019

澤村徹 / オールドレンズ・ライフ 2018-2019

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毎年この時期の風物詩となった澤村徹さんの『オールドレンズ・ライフ』最新刊が発売されたので、購入しました。

オールドレンズ・ライフ2018-2019 本日発売です!: metalmickey's blog

澤村さんのオールドレンズ本としては春先に総集編的な位置づけの『オールドレンズ・ベストセレクション』が出たところでもあり、今回はなんかスパンが短い感覚。しかし今回のは完全新作で、ここ一年のオールドレンズ界隈の動向を反映した最新刊。まあ、直前にニコン・キヤノンの参入に加えて L マウントアライアンスの発表と、この秋以降フルサイズミラーレスの選択肢が一気に増えた状況はさすがに反映されていませんが、そのあたりは本体と対応マウントアダプタが発売され、ある程度の検証が進んだ来年度版に楽しみを取っておくことにしましょう。それにしても十年前はデジタルカメラでのオールドレンズ遊びと言えば EOS(フルサイズは初代 5D くらいしかなかった)にマウントアダプタをつけて Y/C か M42 のレンズを楽しむのが関の山だったのが、今やほとんどのメーカーの最新ボディでフィルム時代のあらゆるレンズが使える時代が来ようとは、驚くべきことです。

第一特集は「キャラ立ちする中望遠オールドレンズ」。近年オールドレンズでのポートレート撮影が一部でブームになっているとのことで、それをふまえた特集です。最新のレンズはとにかく解像度重視でポートレート撮影には絞り開放からディテールまで写りすぎるとかボケが固い/うるさいといったデメリットも抱えがちで、あえてオールドレンズで撮った方が雰囲気が出ることも逆にあります。Y/C Planar 85/1.4 や New FD 85/1.2L のような超定番レンズから、ぐるぐるボケの出る Helios-40-2 85/1.5 のようなクセ玉まで。私も人物を撮るときにシグマ 85Art ではなくあえて Planar を使うことがあるので、とても腹落ちする特集です。ポートレートでぐるぐるボケはどうかと思うけど(笑。

第二特集は「復刻オールドレンズで撮ろう」。近年では主に趣味用として MF レンズ新製品のリリースも増えていますが、中でもかつての名レンズをメーカー自ら、あるいは元関係者が復刻するパターンも増えています。旧刊でも紹介されたことのある Kistar 55/1.2 なんかはその代表作だと思いますが、それ以外にもリリースされている復刻レンズに関して新旧の比較つきで紹介されている、かなり気合いの入った特集。

また私が個人的に興味を持っていたトピックについて二点掲載されていたのも嬉しい。一つは平凸レンズを使った G Biogon の周辺像流れ補正の件で、澤村さん自身の blog にも書かれている話ではありますが、正式に『オールドレンズ・ライフ』に収録される形となりました。これは α7 シリーズで G Biogon を使っている人は全員やるべきというくらい効果のある DIY テクで私も強烈にオススメ。
もうひとつは α7 III・II での広角系オールドレンズ色かぶり比較検証。私も α7 III への買い換えを機に G Biogon 28mm・21mm と SUPER WIDE-HELIAR 15mm Asph. II で試してみましたが、他の広角系オールドレンズだとどうなるのかは気になっていたところでした。ここではなんと 10 本ものレンズを使って α7 III・II の比較が行われており、自分が持っている/気になっている広角オールドレンズが α7 III でどうなるのか知ることができる貴重な特集です。
ちなみに広角系オールドレンズの相性という点では、同じ裏面照射型 CMOS を搭載するニコン Z 7・6 は α7 III と似たような傾向を示すでしょうが、表面照射型 CMOS と思われる EOS R や RGB 積層型センサを採用するシグマの L マウント機ではこの色かぶり問題に直面する可能性があります。そういう意味では、フルサイズミラーレス機の選択肢が大きく広がる今後においても、オールドレンズのベースボディとしては α7 III に引き続きアドバンテージがあると言えそうです。

また今までとはちょっと趣の違う特集「オールドレンズマニアかく語りき」はなかなか面白かった。写真メインではなく、オールドレンズマニアとしての澤村さんが撮影や機材選びに関して持っている哲学がちょっとポエティックな文体で読み物として綴られています。オールドレンズ遊びって実用ではなく情緒だと思うので、性能がどうとかじゃなく「誰がどう感じ、考えてこのレンズを使っているか」が重要だし、「レンズありきで被写体を選ぶ」ような本末転倒も楽しみの範疇。自分以外の人がどういう観点でレンズを選び、何を考えながら写真を撮っているのか...そういうのが垣間見れるのが面白い。こういうコーナー、もっとあってもいいんじゃないですかね。

「現行レンズより安いから」でも「ミラーレスのレンズの選択肢が少ないから」でもなく完全に趣味の領域を深めに来ているのが今のオールドレンズ界隈。一方で、一部インスタ女子の間でデジタルフィルタ的な位置づけとしてスーパータクマーが流行っているという噂も聞きます。以前はオールドレンズ初心者の道標的な役割も担っていた『オールドレンズ・ライフ』シリーズですが、ここにきて細分化するオールドレンズ沼の水先案内人になってきたなあ、と感じる一冊でした。私も最近はあまりレンズを買わなくなりましたが、買うつもりがなくても読んでいるだけでワクワクする、そんなムックだと思います。

投稿者 B : 22:18 | Book | Camera Mook | コメント (0) | トラックバック

2018/09/07 (Fri.)

飛びこめ!!沼 番外編 01:FOVEON センサーとは何か

先日発売された 04 巻の記憶もまだ新しいところですが、先月のコミケで発売された新刊をコミック ZIN で買ってきました。

安倍吉俊 / 飛びこめ!!沼 番外編 01:FOVEON センサーとは何か

飛びこめ!!沼 番外編 01

通常のナンバリングタイトルではなく番外編という位置づけです。サブタイトルは「FOVEON センサーとは何か」。
いつもは半分以上おちゃらけながらシグマのカメラやレンズをオススメし、写真(というかカメラ趣味)の楽しさを紹介するのが『飛びこめ!!沼』シリーズだと思っていますが、このサブタイトルからも分かるとおり今回は解説本に近い体裁。

飛びこめ!!沼 番外編 01

冒頭から「FOVEON センサーの解説をします」とあります。
自分では Foveon 搭載カメラは使ったことがないものの 70 万円もした初代 SD1 の頃からシグマを追いかけてきた私としては Foveon の仕組みについてはそれなりに理解しているつもりではいますが、『飛びこめ!!沼』のフォーマットで技術解説したらどういう表現になるのか気になっていました(笑。

飛びこめ!!沼 番外編 01

解説するふりしてほとんどおちゃらける本かと思ってましたが(ぉ)、実際は技術的に難しい部分は適度に省略しつつ、Foveon の構造から長所・短所までマジメに解説されていました。
ちなみにこの本で解説されているのは最新の Quattro 世代のセンサについてで、Merrill 世代については触れられていません。まあ基本的には同じ思想に基づいたセンサなんですが、Quattro センサ発表時のエントリーで書いたとおり Quattro センサの G/R 層は補間処理によって作られたものになるわけで、本来の Foveon が目指した「全色での完全な解像」を一部諦めた代わりに気難しさを緩和した現実的な落としどころ、というのが Quattro センサに対する私の理解。

飛びこめ!!沼 番外編 01

基本的に Foveon オススメ本だから良いところしか書かれていないかというとそんなことはなく、Foveon の弱点と言われる高感度性能の低さについて比較作例つきで紹介されています。
「ISO100 固定必須」と言われがちな Foveon ですが、こうしてみると RAW 現像前提なら ISO800 までは何とか使えそうですね。

飛びこめ!!沼 番外編 01

そして後半は例によってシグマユーザー自虐ネタ(笑。期待を裏切りません。

個人的にはカメラに求めている方向性が違うので Foveon 搭載カメラを買う予定はありませんが、レンズ以上に Foveon センサと sd/dp シリーズというカメラの存在が「シグマ」という光学メーカーの立ち位置を明示しているのだと思っています。単なる安価な互換レンズメーカーから脱却し、万能ではないけど突き抜けたこだわりを持つユニークなメーカーというブランド・ポジションは、単に高品質なレンズを作っていただけでは得られなかったことでしょう。『飛びこめ!!沼』シリーズは、ある意味そのユニークさを象徴する同人誌だと思います。これだけの愛と自虐をもって語られるカメラメーカーも他にありません。

シグマ、ならびに安倍吉俊先生の次回作にも期待しています。

シグマ / sd Quattro H

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2018/06/26 (Tue.)

小説『READY PLAYER ONE』

映画『レディ・プレイヤー 1』を観て以降、通勤時間等を使ってコツコツ読み進めていた原作小説を読了しました。

アーネスト・クライン / ゲームウォーズ(上)
アーネスト・クライン / ゲームウォーズ(下)

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映画版はエンタテインメント作品としてはとても面白かったんだけど、どうにも「はしょってる感」は拭えなくて。これだけマニアックな作品なら原作を読めばもっと掘り下げられるはず...と思い、サクッと電子書籍を購入して読みました。邦題は『ゲームウォーズ』というパッとしないものがついていますが、映画公開後は原題のほうを前面に出しているようですね。

食糧やエネルギー問題が深刻化して格差が拡大し荒廃しつつある「リアル」から逃避できる仮想世界「オアシス」と、その創始者であるジェームズ・ハリデーが残した莫大な遺産および「オアシス」の運営権を賭けて世界中のプレイヤー達が謎解きに挑む...というストーリーは映画と共通。だけど、小説と映画では細かい部分の進み方が全く異なる別の作品でした。謎解きは基本的にクラシックゲームにまつわるものが多く、「デロリアンと金田のバイクでレースする」みたいなのはあくまで映画のアイキャッチとして用意されたもの。でも原作をそのまま映像化したらマニアックすぎて間口が狭すぎるだろうし、2018 年時点で VR の世界観を分かりやすく見せ、2045 年として来そうな未来を提示するにはあれが必要だったんでしょう。

映画における「オアシス」は「中でゲームもできる、何でもできる仮想空間」という見せ方でしたが、小説では「VR ベースの MMORPG 的世界から発展し、何でもできるようになった仮想空間」として描かれています。そのためエリアによって PvP(プレイヤー対戦)の可否があったり、キャラクターごとにインベントリー(持ち物リスト)や視界の中にサブウィンドウを表示させたまま移動できたり、システムの設定がゲーム寄り。MMORPG は最終的にはストーリーを攻略することではなく仲間とのコミュニケーションが目的化することも少なくないですが、その延長線上にこの世界があることが分かります。
私は年齢的には本作のどストライク世代よりも五歳くらい下なので、本作で語られる 1980 年代のゲームや映画、アニメネタは半分も分からないのですが、今の技術の延長線の上に描かれた VR の世界観にはすごく納得感があります。

私は大学生だった 1997~8 年頃にごく初期の 3D チャットサービス「Worlds Chat/J」および「メタプラザ」(どちらも凸版印刷系のベンチャーが日本版を手がけていた)で初めて仮想空間上で見ず知らずの誰かとコミュニケーションをしたことがその後の人生に大きな影響を与えたし、2002~4 年頃に FFXI の世界にどっぷりと浸かっていましたが、「オアシス」はまさにそれらを VR 化して生活の一部にしてしまったようなもので、かつて自分が妄想していた未来像(ディストピアでもあるけれど)がここにある感覚。IT や通信に基づく多くの技術はコミュニケーションの効率化や多様化をもたらすし、VR も紛れもなくその重要な 1 ピースなんだよなあ。

映画版で最大の違和感だった終盤のメッセージ「リアルにこそ、仮想世界で得られない大切なものがある(うろ覚え)」にはどうにも取って付けた感というか、「ゲームは一日一時間」のような定型文感というか、がありました。この小説でもラストには同じようなメッセージが込められているんですが、そこに至る過程が全然違う。映画ではクライマックス前にパーシヴァル(の中の人)とアルテミスやエイチ(の中の人)がリアルであっさり合流していましたが、小説版では本当に最後の最後に至るまでリアルでは会わず、必要に迫られて集結します。「ネットの向こう側にいる相手と普段のコミュニケーションを通じて信頼関係を築けていれば、相手の素性が何だって構わないし積極的にリアルで会いたいとも思わない」というのは長年ネットでのコミュニケーションを重ねてきた私の実感なんですが、登場人物たちが自然とこういう考えで動けている分だけ、小説版のほうにリアリティを感じました。
まあ、ネットでしか接したことがない人とリアルで会うと楽しいことが多いのは事実だし、ネット上ではできない話に価値があったりすることもまた事実なのですが。でも必ずしもネットが虚構でリアルが真実というわけではないし、自分の外見や肩書きに縛られないコミュニケーションにこそその人の本質が宿っている、ということはあると思うのです。おそらくそれが解っているパーシヴァルであれば、リア充(笑)になった後であってもハリデーから運営を受け継いだオアシスを停止させるという判断はしないに違いない。

さておき、「ちょっと先に、実際に来るかもしれない未来」を描いた小説としてはなかなか面白かったです。映像のイメージがあるほうが脳内補完がしやすい話でもあると思うので、映画を先に観てから小説を読むとグッと深みが増すのではないでしょうか。

投稿者 B : 23:01 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2018/06/05 (Tue.)

漫画版 野武士のグルメ 3rd

久住昌之、土山しげる / 漫画版 野武士のグルメ 3rd

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先月末、漫画家の土山しげる先生が逝去されました。

土山しげるが68歳で死去「喰いしん坊!」「極道めし」などで活躍 - コミックナタリー

68 歳とのことで、まだお若いのにと思うと言葉も出ません。昨年亡くなった谷口ジロー先生といい、続きますね...。
土山先生といえば『荒野のグルメ』『野武士のグルメ』で久住昌之先生原作の漫画化を担当された方でもありますが、それ以前よりグルメマンガの大家として有名でした。私は三年前の久住先生のトーク&サイン会でご本人のお話を伺ったことがありますが、料理を緻密に描く谷口先生とは違い、土山先生は「食べるときの表情」でおいしさを表現していると仰っていました。

本当に直近まで現役で描き続けていたようで、どれが遺作なのかはちょっと判りませんが、『野武士のグルメ』の 3 巻が最近出ていたことに気がついたので追悼の意を込めて買ってきました。

野武士のグルメ

主人公・香住武。久住先生の風貌を意識したと思われるドラマ版の竹中直人も面白かったけど、やっぱり漫画版のこの野暮ったいおじさんが心の中に「野武士」を住まわせているという設定がいいんだよなあ。

野武士のグルメ

質のいいうなぎに割り箸を立てたときの擬音に「サフ」!このセンスですよ。
土山先生自身は「表情で表現」と言っていたけど、この鰻や米の質感もなかなか、谷口ジロー先生にひけを取っていない。うなぎ食べたくなってきた(´ρ`)。

野武士のグルメ

そしてこの表情。おなじ「おいしい」の表現でも、喜んでいるとき、興奮しているとき、しみじみ味わっているとき、懐かしさを感じているとき...など少しずつ、ちゃんと違うのがいい。
あと『孤独のグルメ』と違って飲酒シーンがあるのも、飲んべえとしてはグッときてしまいます。

ちなみにエピソードの半分くらいは場違いな店を選んでしまったとか、店の雰囲気に飲まれてしまったとか、失敗寄りのエピソードだったりします。実在する店舗へのロケを伴うドラマだとそういう話は扱いづらいですからね(ドラマ版『野武士のグルメ』では失敗エピソードにも果敢にチャレンジしてましたが)。

野武士のグルメ

単行本の最後のコマがこれですよ。満面の笑みで「さ、こちとら酔う前に切り上げよう」。まさに野武士らしい潔さであると同時に、土山先生の遺作(の一つ)の最終コマとして見ると、なんだか意味深に思えてきます。

ご冥福をお祈りいたします。
こりゃあ、他の代表作も読んでみないといけないかなあ。

投稿者 B : 22:22 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2018/05/24 (Thu.)

ソニー E マウントレンズ 完全レビューブック

フォトヨド本のソニー E マウント版が発売されていたので、買ってみました。

ソニー E マウントレンズ 完全レビューブック

ソニー E マウントレンズ 完全レビューブック

二年前のキヤノン/ニコン版のときに比べると話題になっていない(?)ようで、私は発売されてから知りました。
純正・サードパーティ併せて 90 本のレンズが掲載されています。キヤノン版は 157 本掲載されていたのに比べると少ないですが、マウントの歴史からすればかなり健闘していると言って良いでしょう。しかもこのムックにはマウントアダプタの話は一切入っていませんからね。E マウントならキヤノン/ニコン版に掲載されているほぼ全てのレンズがアダプタ経由で使えてしまうわけで。

ソニー E マウントレンズ 完全レビューブック

フォトヨド本なので例によって印象的な作例にポエティックな解説が添えられています。
ネガティブ評価が基本なし、どれでもとりあえずオススメする内容なのはさすが販売店の販促コンテンツといったところ(褒めてます)。あくまで「プロ写真家ではない人が撮った作例」という身近さがありながらこちらの物欲を鷲掴みにしてきます。自分も G MASTER レンズを買ったらこんな写真が撮れるんじゃないか、そんな錯覚に陥ってとりあえずカートに入れてしまいそうになりますが、紙媒体だからその場でポチれない安心感があります(ぉ。

ソニー E マウントレンズ 完全レビューブック

いや待てよ相手はフォトヨドバシだ、奴らは初代 NEX-5 のキットレンズでこんな写真撮る奴らだぜ...。この写真を見ると否応なしに我に返ります(;´Д`)ヾ。

長年の E マウントユーザーとしては既に所有しているレンズも少なくないわけで、同じレンズを使って何故こうも写真の出来が違うのか、自分も手持ちの機材でもっと撮りようがあるんじゃないか。じっと手を見る。

ソニー E マウントレンズ 完全レビューブック

E マウントはアダプタ経由で使えるレンズの選択肢は死ぬほど多いですが、E マウントネイティブのレンズはまだ純正とツァイス(Batis、Loxia)が中心で最近 SAMYANG が精力的にリリースしてきている、という感じ。でもシグマが Art ラインの短焦点レンズを E マウントネイティブ化し始めたところですし、タムロンやトキナーも注力し始めました。今でこそこのムックに掲載されているのは 90 本にすぎませんが、半年後・一年後にはまた全然違う状況になっているのではないでしょうか。

それはそれとして、Batis はやっぱり欲しいなあ...。

ソニー E マウントレンズ 完全レビューブック

そういえばキヤノン版にはフォトヨドバシ制作裏話的なコラムが書き下ろされていましたが、今回のソニー版にはありませんでした。代わりにソニーのレンズ開発者インタビューにけっこうページを割いていて、これはこれで面白かったのですが、販促色が強くなってしまってどうも。個人的にはむしろ Web には書かなかったフォトヨド担当者の想い的なものが読みたかったです。

私のカメラ機材欲は一段落したつもりでいたのに、こういう熱量の高いムックで機材情報をまとめ読みするとまた欲しくなってきてしまいますね(;´Д`)ヾ。とりあえず写真撮りに出かけて気を紛らわすか...。

ソニー E マウントレンズ 完全レビューブック

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2018/05/16 (Wed.)

飛びこめ!!沼 04

シグマの優先度の高い重要書類の委託販売が始まったので入手しました。今回はたまたま新宿に行く用事があったため、初めてコミック ZIN のリアル店舗で購入。

安倍吉俊 / 飛びこめ!!沼 04

飛びこめ!!沼 04

おお、今回はなんか表紙の雰囲気が違いますね。過去三巻は表紙から濃さ全開だったのに、今回は恋愛ものかというような柔らかさがあります。手にしてるカメラは sd Quattro だけど。

でもページをめくると

飛びこめ!!沼 04

「直感でピンと来たレンズに有り金全部ぶっ込む!!」

はい、これテストに出ます(ぉ
冗談抜きで、シグマユーザーでなくてもこんな感覚で機材買ってる人は少なくないんじゃないでしょうか(←

ま、私も 85mm F1.4 は去年買いましたが、まさに「直感でピンと来たレンズに有り金全部ぶっ込む」に近い状態だったと言えます。昔は「自分の持っているレンズと撮りたい被写体を考えながら、持っていない焦点距離のレンズから選ぶ」という買い方だったのが、ある程度揃って来ると「このレンズはどんな描写なんだろう」という見方になってスペックや作例をチェックした挙げ句最後は直感でエイヤッと買う、という感じになりがち。もう手元に 35・50・85mm 付近のレンズが何本あるかも分かりません(ぉ

飛びこめ!!沼 04

でも 85mm F1.4 は描写性能だけで言えば私が持っている全てのレンズの中で最高と言って良く、後悔はしてません。重いから使用頻度それほど高くないけど。
シグマ山木社長が言う「85mm はツァイス Otus をベンチマークにした」というコンセプトは伊達ではありません。描写のために小ささ軽さを捨てたという意味ではシグマの [Art] 単焦点シリーズはツァイスレンズに通じるところがあり、まさに「一般人でも買える Otus」だと思います。まあ普通の一般人は Otus 欲しいと思わないだろうし安くてもこの鈍器の如きレンズを買う人は既に一般人ではなくなっているのかもしれませんが(ぉ

飛びこめ!!沼 04

そして「FOVEON 物件」。全然別の被写体撮りに行ってるはずなのにメインそっちのけで錆とか葉脈とか撮る人、身の回りで何人も心当たりある(笑)シグマのカメラボディを買った人がほぼ例外なく浸かっていく方向です。
逆に言えば、そっちにだけは行かないと決めている私はシグマユーザーの中では邪道なのかもしれません。

あ、でも「写真が好き」と「カメラが好き」の比重は人それぞれ、全員が尊重されるべきだと思っているので、そっちの沼を覗き込んでいる人がいたら私は迷わず背中を押しますよ(ぉ

飛びこめ!!沼 04

「ドイツ製のレンズには『ズミター』とか『ビオター』みたいなかっちょいい名前があるのに、シグマ(を含む日本メーカー)のレンズにはそういうのないよね」というカメラユーザーなら誰もが一度は抱くであろう疑問への、シグマの回答が「ボケマスター」(違

最近のシグマは新製品に「ライト・バズーカ」とか「ボケマスター」といった微妙にカッコ良くないニックネームをつけて売り出すことが増えてきていますが、この絵↑のように彫り込まれたらちょっとイヤだ(;´Д`)ヾ。

このシリーズ、巻を重ねて正直少し勢いがなくなってきたかな?と感じていたのですが、シグマの新製品群に煽られる形で再びパワーを取り戻したと感じた 4 巻でした。
新生「カミソリマクロ」も間もなく発売されるし(ちょっと気になってる)、「ボケマスター」も店頭に並ぶまでもう少しかかりそうなので、今年はまだしばらくシグマ製品の話題が続きそうですね。

シグマ / [Art] 85mm F1.4 DG HSM

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2018/05/15 (Tue.)

ミライのつくり方 2020-2045 僕が VR に賭けるわけ

GOROman(近藤義仁)、西田宗千佳 / ミライのつくり方 2020-2045 僕が VR に賭けるわけ

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おそらく国内で最も影響力のある VR エヴァンジェリスト GOROman こと近藤義仁氏による「VR のこれまでとこれから」についてまとめられた本です。本書の構成とライティングはおなじみ西田宗千佳氏が担当。内容的には GOROman 氏がご本人の Twitter でここ数年発言されている内容を網羅したものですが、発言頻度も高い上にハイコンテクストな同氏のツイートを追いかけるよりも一冊の本として分かりやすく整理されているのはさすが西田さんといったところ。

本書の内容は大きく分けて「マイコンオタク少年がいかにして GOROman になったか」「VR との出会いとオキュラス・ジャパン入社から退社までの顛末」「これから VR が社会に与えるインパクト」の三部構成になっていると言って良いでしょう。第一部の「父親が買ってきたマイコンで『タダでコンピュータゲームを遊ぶため』に雑誌に書かれていた BASIC を意味も分からずに打ち込んでゲームを作った」とか「インターネットと出会って世界中の人とコミュニケーションを取り、マイナーな趣味でも世の中にこれだけ同好の士と繋がることができることを知って人生が変わった」というくだりは、IT に関わっている四十代の方なら(中でもたぶんこの blog の読者の方は特に)同様の体験をしてきているのではないでしょうか。
ちなみに本書を読んで初めて知ったのですが、GOROman 氏がかつて NTT 製のターミナルアダプタ「MN128-SOHO」用のユーティリティ「SOHOman」(シェアウェア)を開発していた人だったとは!私は当時ヤマハ製の ISDN ルータを愛用していましたが、それでも SOHOman の名前は知っているくらいメジャーなシェアウェアでした。この経緯を知ったことで、なんかいろいろと繋がった気がしました。

第二部とも言える同氏がクラウドファンディング時代の Oculus と出会い、日本からラブコールを送る形でオキュラス・ジャパン社を立ち上げてから退社までの流れは、私も Twitter でフォローしていたのである程度知っているつもりでしたが、ちゃんと時系列にまとめて(かつ当時は書けなかったことも)書かれていることで、ようやく経緯が理解できました。と同時に、VR プラットフォームとしては先駆者でありながら、こと日本での展開を見る限り商業面では完全に HTC の後塵を拝する状況になっている理由についても解った気がしました。Oculus と言えばこの GW 頃にスタンドアロン型 HMD「Oculus Go」を発売し、これまでの PC ベース VR から裾野を広げようとしているのがどう世の中に影響を与えるかは興味深いところです。Facebook 傘下としての Oculus ならば PC ベースよりも安価なスタンドアロン HMD でとにかくユーザーの裾野を広げ体験の底上げをすることが重要なはずで、その意味では正しい方向性と言えます。一方で Oculus が B2B のビジネスをほぼ無視している点はネックになるのでは...とも思っていますが。

第三部はいわば VR/AR がもたらす未来のあり方について。タイトルにもある「2045」という数字は、まさに映画『レディ・プレイヤー1』の舞台となっている時代。あの世界観が念頭にあって、現代から四半世紀後にあたる 2045 年までに何が起きるかを予言する内容になっています。ある意味、1980 年代のコンピュータやゲーム、アニメに触れて育ち VR 世界に浸っている GOROman 氏のあり方は『RP1』の OASIS 創始者であるジェームズ・ハリデーと通ずるところがあるし、それが本書に説得力をもたらしているようにも感じます。
現時点での VR 機器が体験の質や大きさ重さの点でまだまだ黎明期のデバイスであることは間違いがないですし、仮にそれが誰でも日常的に身につけられるように技術/デザインが進化して(その場合は VR に限らず AR 機器として使い物になるようになっているはず)、現在のスマホの代替になったとしたら。拡張現実(≒AR)と仮想現実(≒VR)の比率を任意に切り換えて使うことができるようになったとしたら。我々の生活は間違いなく変わるだろうし、情報入手やコミュニケーションのあり方も変わってくるでしょう。
その意味で視覚の VR/AR と切っても切り離せなくなってくるのが音声情報と「アバター」です。「音の AR」については私も以前から何度か書いているとおり、今後 1~2 年のうちに Bluetooth イヤホンのトレンドとして VR 機器よりも早く一般化する技術だと予測しています。そしてアバターに関してはバーチャル YouTuber(Vtuber)の表現技術がまさに日進月歩で進化しているところ。現時点では Vtuber は YouTuber の延長線上で見られることも多く、VR と関連付けて語られることは少ないですが、ネットを介したコミュニケーションの軸ではいずれスマホで自撮りを「盛る」のと同じような感覚で使われるようになるはずだし、VR/AR と組み合わせることでコミュニケーションの円滑化に貢献することでしょう。これは今でも MMORPG 内の友人を持ったり何らかの形で「ネットで仲良くなったけどリアルではまだ会ったことがない人」という経験があれば、想像がつくのではないでしょうか。

VR はまだまだ「3D と同じような一過性のブーム」とみられることも多いですが、GOROman 氏と同じく私も次世代のコミュニケーションプラットフォームとして定着していく可能性を感じています。画像認識や音声認識といった周辺技術もちょうどいいタイミングで出揃ってきているし、ほんの三年後でも今とは随分違った未来が訪れているのではないでしょうか。『RP1』同様に 1980~2000 年頃のマイコン/パソコン時代を知らないと読みにくいくだりもありますが(笑)コンピュータがもたらす「技術が世の中を変えていく感じ」に熱狂した経験がある人ならば、読んでおいて損はない一冊だと思います。

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2018/04/06 (Fri.)

孤独のグルメ 巡礼ガイド 3

いよいよ今夜からドラマ『孤独のグルメ Season7』の放送が始まりますが、それに合わせて巡礼ガイドの新刊も発売されました。

孤独のグルメ 巡礼ガイド 3

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巡礼ガイド 2』から実に二年半ぶりの続刊です。
表紙は初代巡礼ガイドではコミック 1 巻のイラスト流用、2 冊目では谷口ジロー先生の描き下ろし(と思われる)でしたが、3 冊目にしていよいよ松重ゴローが登場。昨年谷口ジロー先生が他界されて新規作画がもうないためでしょうが、いよいよ『孤独のグルメ』がドラマ単体で回っていく時代になったことを象徴しています。

収録されている「聖地」はドラマ Season5 および 6 の全店。去年の Season6 はともかく、Season5 については既に二年半前になるわけで、ほぼリアルタイムで巡っていた私としてはむしろ懐かしくさえあります。
登場店舗については基本的に全店巡礼済みな私としては、本書の本編たる聖地解説は情報量が少なすぎて物足りないのですが、毎回買っているのはむしろそれ以外に収録されているインタビューが面白いから。

孤独のグルメ 巡礼ガイド 3

巻頭インタビューは番組のメインスタッフ(吉見 P、菊池 P、溝口監督、井川監督)への、主にお店探しにまつわるエピソードから。松重さんや久住さんへのインタビューは割とあちこちで目にしますが、スタッフの裏話的なエピソードはあまり目に触れる機会がなく、せいぜい Blu-ray BOX にメイキングとして収録されている程度でした。店探しの苦労はそういった素材からも十分に伝わっていたけど、改めてこのインタビューを読んでみると「店探しの期間は 20kg ぐらい太って、終わったら体重を戻してを繰り返している」というのがあり、その壮絶さにおののきました(;´Д`)。

また店選びはこれまで「街かぶり」(これまでの回に登場した街が再登場すること)をタブーとしていましたが、それを「解禁するかって話もなくはない」という発言も飛び出していました。私が今のところキャッチしている Season7 の撮影目撃情報によると、以前にも登場したことのある街が今回は再登場するっぽい?と疑問に思っていたのが一件あったので、どうやらそれが「当たり」になるのかもしれません。

孤独のグルメ 巡礼ガイド 3

二本目のインタビューは久住先生と、漫画『孤独のグルメ』の連載を起ち上げた編集者・壹岐氏への対談型インタビュー。谷口ジロー先生をどう口説いてどのように連載が始まったのか、から海外でも愛される漫画版『孤独のグルメ』の話、果てはドラマまでと話題が多岐にわたっています。漫画の第一話の資料として山谷の写真を撮る必要があったけど、街の怪しい雰囲気に怖じ気づいて自分では撮れずに後から若手に撮りに行かせたとか(笑)、現地の雰囲気を思い起こすと理解できる気がします(現在は当時と比べて随分とクリーンな街になっているようですが)。

孤独のグルメ 巡礼ガイド 3

巻末インタビューは満を持して松重さん。Season5・6 を中心に、撮影に行った中でも特にお気に入りのお店について語られています。松重さんが特に気に入った店や放送前に自分で再訪した店は私も二回以上行った店や遠くて行けないけどいつかまた行こうと思っている店ばかりで、自分の味覚が松重ゴローさんと近いことが分かって嬉しくなりますね。今まで行った中でおいしくなかった店はないけど、各シーズンで個人的にベストな一店を選ぶなら、Season5 はせんげん台の厨 Sawa、Season6 は茗荷谷の豊栄かな。どちらも、思い出すだけで涎が分泌されてきます。

孤独のグルメ 巡礼ガイド 3

それから、松重さんがプライベートで台湾に行ったときに聖地で巡礼者に会ったというエピソードがとても好き(笑)。私も台湾のにはそれぞれ二回行ったけど、二回とも自分以外にも日本人のお客さん(見ればだいたい巡礼者と察しがつく雰囲気の)がいたので、放送後も継続的に日本人の巡礼者が訪れているのだと思います。

というわけで、あと数時間で Season7 の放送が始まります。私もぼちぼち新たなる巡礼の計画を立てなくては。

■関連リンク
【Season6巡礼完了】『孤独のグルメ』聖地巡礼 全店レポート Season1~6&原作 - NAVER まとめ

投稿者 B : 21:56 | Book | コメント (0) | トラックバック

2018/03/29 (Thu.)

『ブランディング』 顧客体験で差がつく時代の新しいルール

私の友人であり、尊敬するマーケッターの一人でもある山口義宏さんの新著を献本いただきました。まあいただかなくても購入するつもりだったので、自分で Kindle 版を買って移動時間や空き時間を使って読了。

山口義宏 / デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 「顧客体験」で差がつく時代の新しいルール

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仕事で携わったことがない人からすると「ブランディング」と「マーケティング」って実際何をやっているか分からない仕事の上位に入る業務ではないでしょうか。ブランディングといえばロゴやタグラインの作成、あるいは半分 CSR みたいな活動のイメージが強いし、マーケティングも市場調査と販促・キャンペーン程度に捉えられていることが少なくありません。長年マーケティングに携わってきた私からしても、「ブランド●●」と名のつく部署の仕事は何をやっているか分からない(本書で言われるブランディング活動とは少しずれている)ことも多い。でもブランディングもマーケティングも実際はどちらも営業活動や値引きをあまりしなくても自発的に商品が選ばれるようになるための企業活動全般に関わるという意味では近い概念だし、カバーする業務範囲もかなり広い。個人的には「ブランディング≒マーケティング」あるいは「ブランディング⊂マーケティング」だと理解しています。

本書の内容は山口氏の前著『プラットフォーム ブランディング』の趣旨と大きく変わるものではありませんが、内容的にはよりやさしく、かつ現場担当者の実践ベースを中心に書かれているので、非常に読みやすい。文章もセクションも短めにまとめられていて図も多く、ややこしく感じることなくスッと腹に落ちてきます。
中小企業や個人事業主で「ブランディングなんてウチには関係ないや」という話ではなく、そういう企業でもマーケット内で特定のポジションを築く上では口コミ等による局所的なブランディングが功を奏することは珍しくない。企業ブランディングや CI(コーポレートアイデンティティ)のような主語の大きい話はあえて割愛し、サブブランドやプロダクトブランドレベルでの施策の話が中心なので、中小企業の商品戦略やマーケティング担当者こそ読むべき内容になっています。だって「ブランド戦略の成功には関係者の巻き込みが重要」とか「広告代理店に依頼をする際の注意点」とかまで書いてあるブランディングの本なんてそうそうないと思いますよ(笑。そういう意味では「ブランディング」というタイトルではありながら、商品の認知や共感を軸としたマーケティング活動について基礎から教えてくれる一冊になっていると言えます。入門書的なためもうちょっと突っ込んで読みたい部分もありますが、そのあたりは知識として取り入れるよりも実戦経験との両輪が必要なんだろうなあ。

本書の内容については MarkeZine に掲載されていた山口氏のインタビュー記事がまさのイントロダクションの役割を果たしているので、購入する前に一読する価値はあると思います。

ブランディングは法則さえ覚えれば難しくない――CI・デザイン論ではないブランディングとは:MarkeZine(マーケジン)

個人的にはここに書かれていることは常に意識しているつもりではありますが、改めて自分の理解を整理させてくれる一冊でした。マーケティング経験者がときどき原点に立ち返って現在値を確認するのによくまとまったテキストだと思いますし、これからマーケティングやブランディング、商品企画に携わりたいという人には必読と言って良いでしょう。
私は Kindle 版を自分で買ったので、献本いただいた書籍は会社のマーケティング部署の担当者に読ませることにします。

投稿者 B : 23:29 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック