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2017/09/26 (Tue.)

正しいブスのほめ方

ある人に勧められて面白そうと思った本を読んでみました。

トキオ・ナレッジ / 正しいブスのほめ方

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タイトルと表紙イラストのインパクトが強くて、完全にネタ本の印象が強いですが、中身は半分くらいは真面目な本。褒めづらい人、褒めるところが見つけにくい人をいかに褒め、どうコミュニケーションしていけば良いかというテクニックや考え方について書かれたものです。
私はお世辞だったり社交辞令だったり、あるいは利害が一致しない相手とのコミュニケーションや自分が納得していないことについて表面的に取り繕ったりすることが本当に苦手で、たぶんそれで損してる部分は少なくないんだろうなと自覚しています。でも最近はそうも言っていられなくなってきたので、この本も先日の「ダークサイド・スキル」に通じるところがあるかと思って手を出してみました。

外見的なブス...に限らず、「見るからに損している人(≒見た目をほめづらい人)」「完全にウザい人(≒できれば関わりたくない人)」「限りなく残念な人(≒内面をほめづらい人)」「逆にほめづらい人(≒ほめられ慣れていてお世辞が効かない人)」「まあまあ浮いている人(≒価値観が独特な人)」の計 35 種類の人に関して、その生態とどう褒めるかについて解説されています。単にテクニック的な部分だけでなく、あるタイプの人がどんな思考回路でそういう行動を取ってしまうのかが解るのは確かにありがたい。別におだて上手になりたいとは思いませんが、他人を動かしたり協力を得たりするには「その人がどのようなモチベーションで動いているか」を理解する必要があるわけで、その認識の一助になります。またほめ方のテクニックについても、自分のように心にもないことを口先だけで言えないタイプだったとしても、「(○○だけど)●●ですよね!」「(○○にしては)●●だよね!」というように、心の中で前置きをしながらポジティブな部分だけを言葉にするという技を多用していて、これなら私も自分の気持ちを納得させながら他者を持ち上げることができそうだな、と思いました(笑

まあここに書かれていることを実践すると、確実に相手を見下しながら表面的に持ち上げるようなものの見方が身についてしまいそう。それに、自分自身が誰かから褒められたときに「でも内心はこう思ってるんじゃないの?」と疑ってかかりそうで、性格が悪くなる気もします(;´Д`)ヾ。
ちなみにこの本に書かれている内容を自分に当てはめると、私は典型的な人見知りタイプらしいです。うん知ってた(´д`)。

ネタ的な要素もあるため、全部が全部役に立つというわけではありませんが、人とのコミュニケーションを円滑にする上で必要な考え方が学べる一冊だと思います。サラッと読める内容だし、気分転換がてらに読むにもちょうど良いのではないでしょうか。

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2017/08/24 (Thu.)

ダークサイド・スキル 本当に戦えるリーダーになる 7 つの裏技

「悪いひと」になろうと思うんです。

木村尚敬 / ダークサイド・スキル 本当に戦えるリーダーになる 7 つの裏技

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私がマーケティングと経営の領域において尊敬する友人が少し前に薦めていて、まさに今の自分に必要とされていることに近そうだな、と感じたので買って読んでみました。

「ダークサイド」と言えば漏れなく『スター・ウォーズ』を連想することでしょう。かといって無能な同僚や部下に手も触れずに首を絞めたり、指先から紫色の稲妻を発したりするやり方が書かれているわけではありません(笑。でも、ハイスペック人材を多数抱えながらまともな情報収集も意思決定もできずに崩壊したジェダイ評議会は現代の大企業病そのものだし、対して労働環境はブラックだけどハイスペ人材二人だけで銀河帝国を急成長させた組織力と計画実行力、それに重要な局面では自ら現場に出る責任感からして、企業運営という視点ではシスのやり方のほうが理に適っているんじゃないか、と以前から Episode I~III を観ながら感じていました。
ああいうことを実現できる能力なのであれば、「ダークサイド・スキル」は身につける価値があるのではないか。

当初は、目的実現のために時には冷酷にならなくてはならない局面とか、人心掌握のためのアメとムチの使い分け方とか、近年ネットビジネスでよく見る「グレーゾーンを駆け抜ける」成長法とか、そういうことまで踏み込んで書いてあるものと思っていました。でも、実際に書かれていたのはもっと普通のこと。だけど、自分にとっては苦手意識があることだったり、必要とされているけどつい避けて通ってきたことだったり、そういうことが理路整然と並べられていたので、自分としては痛いけれど直視せざるを得ない内容でした。

私の仕事への取り組み方というのは、ロジカルな正しさを整えた上で正攻法で挑むようなやり方でしか今まではやったことがありません。政治力を駆使したり、何かをバーターにして本当に通したいものを通す、みたいなやり方はどうも苦手。そういう性格なんだから仕方ないだろ、と開き直っていましたが、万年下っ端でもそろそろそういうわけにもいかなくなってきました。理屈が正しいだけでは周りを動かせないときに、どうやって自分の味方を増やし、思ったように動いてもらうか。そのために必要な小手先のテクニックではなく、いかに普段からの振る舞いや立ち回りで協力者を増やしていくかについて、まるまる一冊をかけて説明された本です。共感した箇所は数多くありましたが、特に自分の心に刻んでおきたい部分を引用しておきます。


全部身につけた人がポジションにつくのではなく、ポジションが人を育てるのだ。そして、真のリーダーは自分に足りないところをきちんと認め、そこを埋めてくれる人を引っ張り上げて、チームをつくっていくのである。

私は、本当の意味での意思決定というのは、たいていが不完全情報下で行わなければならないものだと思う。逆に言うと、物事を判断する上ですべての情報がそろっていて、ある程度合理的に答えが出る類のものは、意思決定とは言わないといっても過言ではない。

あたかも自分が言い出したかのように言うのだが、そうなれば、シメたものだ。自分の発案だと勘違いしてくれていたほうが、自ら率先して動いてくれるからだ。これこそ人を動かすダークサイド・スキルである。

利益を出して社会に付加価値を提供しているのは会社ではない。そこで営まれている事業だ。その事業にしがみつくのはまだわかるが、会社にしがみついても、真の意味での見返りがあるわけではない。

事業の成長や組織改革を成功に導くために必要なことばかりで、そういう意味では「ダークサイド」でも「裏技」でもないとは思います。でも正攻法だけでは物事が進められないことも少なくありません。『スター・ウォーズ』でも最終的にフォースにバランスをもたらしたのは、ライトサイドのフォースを身につけ、ダークサイドの影響を受けながらもそれを克服したルークでした。この本には、自分が性格的にどうしてもできそうにないこともいくつか書かれていましたが、できる範囲からでも、普段から意識して動いていこうと思います。

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2016/11/15 (Tue.)

ポケモン GO は終わらない

みなさんポケモン GO はまだ続けてますか?私は時々「まだやってんの?」と言われながらも、地道に続けています。今日の時点でトレーナーレベル 26、日本で収集可能な 142 のポケモンのうち集めた数は 138。けっこうがんばってるでしょ(笑。

西田 宗千佳 / ポケモン GO は終わらない 本当の進化はこれから始まる

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そんなポケモン GO をテーマにした西田宗千佳氏の新著が発売されたので、私も早速読了しました。マスコミを巻き込んだ、国内サービス開始時の熱狂は過ぎ去り、ブームはもう落ち着いたように思われます。が、街中では今でもそれなりの割合でポケモン GO の画面が表示されたスマホを持っている人を見かけ、お台場にはまだまだレアポケモンを求める人々が集まっています。ポケモン GO が誕生した経緯とブームの正体、そしてポケモン GO が与えた世の中への影響を一度総括するという意味では、いいタイミングなのではないでしょうか。

位置情報ゲームも、キャラ収集ゲームも、ネット対戦系の携帯/スマホゲームもそれぞれは以前から存在したものでした。それがこれだけ世界的に、しかも垂直立ち上げ的に広まったのは、ひとえに『ポケモン』という IP の強さと『Ingress』をベースとした位置情報の網羅性にあります。中でも「身の回りに存在するポケモンを捕まえる」という行為は本来の『ポケモン』が持っていた要素そのもの。今まではゲーム機の中のフィクションの世界で表現していたものを位置情報や AR を使って拡張現実の中に作り上げたことがポケモン GO の強さの秘密であり、他の IP で同じことをやってもここまでのヒットには繋がらなかったと言えます。本書ではさらに、携帯ゲーム機版のポケモンでも「思い出のポケモンは『公園で交換したポケモン』であり、『校庭で手に入れたポケモン』だった。人の記憶は、画面の中にだけあるのではない」と指摘しています。私はゲーム機版のポケモンをプレイしたことがないのでその視点がありませんでしたが、であればなおのことスマホの位置情報ゲームと相性が良かった、ということが言えるでしょう。

まあ、サブタイトルに「本当の進化はこれから始まる」とつけられたタイミングでようやく基本的な DAU(デイリーアクティブユーザー)施策が初めて導入されたり、まさに現在行われている東北復興イベントで超レアポケモンのラプラスがフィーバー状態で、これまでに苦労してゲットしたユーザーのモチベーションを殺ぐ結果を招いていたり、正直言って運営面は素人なんじゃないかと感じてしまう場面も少なくありません。が、言い換えればこれまでは運営の拙さが問題にならないほどのブームを起こせていたということであり、そのためのインフラ増強などに運営側の工数が割かれていた結果だということでもあります。

本書は Google の一部門に過ぎなかった Niantic(ポケモン GO の開発・運営元)がいかにしてポケモン GO を生み出し、世の中に大きな影響を与えたかという話にとどまらず、スマホアプリとしては他のゲーム等とは異なる特異な普及・使用・収益状況にあること、ドラマやアニメの聖地巡礼ブームとも絡めた「コンテンツ・ツーリズム」の話、さらにはこれから立ち上がってくる AR/VR との関係性、と多岐にわたる分析がなされています。ゲームライターではなく「電気かデータが流れるもの全般」を取材対象とする西田氏ならではの観点で、単なるポケモン GO の現状解説ではなく 2016 年時点での技術トレンドや社会動向を押さえるという点でも一読の価値があると言って良いでしょう。

個人的に興味深かったのはコンテンツ・ツーリズムの話。近年のアニメでは舞台となった土地の聖地化の成功例・失敗例には枚挙に暇がありません。その本質を突いているのが、まつもとあつし氏によるこのインタビュー記事ではないかと思います。

ASCII.jp:ガルパン杉山P「アニメにはまちおこしの力なんてない」 (1/6)|まつもとあつしの「メディア維新を行く」

コンテンツ自体の面白さと「聖地」になる地方の魅力、それに地元の人々の理解が全て揃わないと成功例とはなりにくく、再現性を求めることが難しいのが実際ではないでしょうか。ポケモン GO における初の公式コンテンツ・ツーリズムである東北イベントは先述のとおり必ずしもポジティブな要素ばかりではないのも事実ですが、少なくとも東北に人を呼び込むことには成功しているようです。また、今回のイベントとは直接関係ありませんが、震災で失われた東北のランドマークを「記憶のポケストップ」として拡張現実空間上に再現されていて、私も先日の東北聖地巡礼のついでにそのいくつかを実際に目にしました。本書を読む前に、たまたま別のコンテンツ・ツーリズムに乗っかった際に遭遇したというのも何かの縁でしょうが、震災から復興するにあたり「以前とは別の風景」が作られていく一方で、失われたものを追体験できる、というのは貴重であり、同時にとても重い体験でした。これは何もポケモン GO に限らず、他のアプリやソリューションにも今後波及していく可能性があり、そういう意味では「実質的にポケモン GO が世の中に与えた影響のひとつ」となることでしょう。

ポケモン GO 自体、現時点で実装されているコンテンツはゲームボーイ版の初代ポケモンの内容に過ぎず、これから新ポケモンや新機能の追加、あるいは運営の改善などを経てまだまだ進化する余地を残していると言えます。しかし、それよりも重要なことは、ポケモン GO が一般的なスマホゲームのヒット作とは(量的にも質的にも)異なる形で浸透し、一気にキャズムを超えたことで、今までは一般化してこなかった技術やその使われ方が世の中に定着する可能性を示したということだと思います。「ポケモン GO で交通事故」みたいなネガティブな事件も含めて(それはスマホ自体の使い方の問題であって「どのアプリだったか」は本質ではないと思うけど)、数年後に振り返ったときに「ポケモン GO がひとつの転換点だった」と言われるようになっているのではないでしょうか。
ある技術や概念が世の中に浸透していく瞬間に立ち会えるというのは稀有な経験です。私もここまで規模は大きくなくてもいいから、そういうことを起こせる当事者の一人になれるよう頑張らなくては、という思いを強くしました。

投稿者 B : 22:50 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2016/10/18 (Tue.)

はじめての社内起業 「考え方・動き方・通し方」実践ノウハウ

先日読んだ『ソニー復興の劇薬 SAP プロジェクトの苦闘』からの流れで...というわけでもないのですが、新規事業立ち上げ系のビジネス書を一冊読んでみました。リクルートで情報サイト「All About」等の新規事業立ち上げを多数手がけた石川明氏の著書です。

石川 明 / はじめての社内起業 「考え方・動き方・通し方」実践ノウハウ

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ここ数年、日本でもハードウェア・スタートアップなどのベンチャー企業が注目を集めています。クラウドファンディングにより以前よりも資金調達と露出の場を兼ねられるようになったことが大きな要因だと思いますが、その場を提供しているのがサイバーエージェントや Yahoo!、DMM といった影響力のあるネット企業であることも無視できません。
しかし一方で、国内の経済状況が以前よりも好転したためか、ベンチャーの起業と同じかそれ以上に、企業内での新規事業検討が行われているのも事実だと思います。ソニーの SAP なんかはその代表的な例だと言えるでしょう(SAP はソニーグループ内の R&D や製造の協力が得やすかったり、新規事業起案者向けのトレーニングを行うなどのバックアップを組織として行っているのが、他社の状況とは大きく違うとは思いますが...)。この本は、そんな「企業内で新規事業の立ち上げを任された担当者」向けの一冊だと思います。

この書籍に書かれているのは、大きく分けて以下の要素です。

  • 新規事業の担当者になったときのものの考え方
  • 新しく踏み出す事業領域の選び方
  • その領域での差異化の考え方
  • 事業プランや事業計画書の作り方
  • 社内での事業計画の通し方
新規事業の担当者に抜擢されてから実際に事業計画の承認を得るまでのプロセスに関してやるべきことを丁寧に解説してくれています。
ベンチャーであれば「これを実現したい」という明確な目的があって起業することがほとんどだと思いますが(その後の経営状況や環境の変化によってピボットする例も多いにせよ)、企業内での新規事業立ち上げはいち社員が「新規事業を立ち上げろ。目標は●年に○円の売上/利益を達成すること」という数値目標だけを与えられて途方に暮れる、ということも珍しくありません。そのため、上記の内容だけでも大いにその指針になるとは思いますが、この本のいいところは具体的な手法よりもそういう「新規事業担当者が持つべきマインド」を教えてくれるところ。いかにして状況をポジティブに捉えるか、経営者や上司・同僚、ときには社内で壁となる相手を味方につけるか、の考え方について、自身の経験や実例をふまえて教えてくれるところにあると思います。漠然とした目標や社内の高い壁に心が折れそうになったり、ともすると事業計画を通すことそのものが目的化してその後の成功のための道筋をつけられなかったりしがちな新規事業立ち上げを「これなら俺にも何とかやれそうかな」と勇気づけてくれる内容になっています。

全くの新規事業立ち上げでなくとも、新商品の企画も既存商品の正統後継でもない限り、どこかしら新しい提案や挑戦の要素が含まれているはずです。そういう企画は程度の差こそあれ、どこかで必ず商品化の壁に突き当たるもの。そういうことに関しても、この本に書かれている「考え方・動き方・通し方」を実践することで実現に近づくことができるのではないでしょうか。
いち社会人として常に傍らに置いておき、定期的に読み返すことで前向きに挑戦する姿勢を保ち続けたい。そう思わせてくれる一冊です。

投稿者 B : 23:59 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2016/08/24 (Wed.)

ソニー復興の劇薬 SAP プロジェクトの苦闘

西田 宗千佳 / ソニー復興の劇薬 SAP プロジェクトの苦闘

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西田宗千佳氏の新著を電子版にて読了。一週間くらいかけるつもりで読み始めたら乗ってしまって、二時間ほどで一気に読み切ってしまいました。

「wena wrist」や「HUIS REMOTE CONTROLLER」といった新分野の商品やサービスを手がけるソニーの新規事業創出プログラム「SAP(Seed Acceleration Program)」の内側をまとめたルポルタージュです。タイトルにこそ刺激的な言葉が並んでいますが、実際の関係者への取材をもとに、西田氏自身が電機業界やハードウェア・スタートアップへの取材等を通じて得た知見を交えて、客観的にまとめた内容になっています。

「SAP」はソニー自身が大規模なリストラを敢行している段階で開始されたプログラムだけに社内外からの批判もあったようですし、「大企業がクラウドファンディングを利用するなんてただの宣伝行為だ」「SAP で生み出されている新規事業はいずれも小粒でお遊びの域を出ていない」といった言説も目にします。実際、同社の既存のエレクトロニクス事業は今後の成長が見込めるか高い利益が確保できる分野だけになってしまった印象で、IT/AV 機器の付加価値の多くをスマートフォンが吸収してしまった現在、「次のメシのタネ」を見つけるのに各社苦労しているのは事実。なので小粒でもいいから試行錯誤して、何が伸びてくるか見極めたい...というのも SAP の本音としてはあるのでしょう。
しかし、個人的には SAP の本質は次世代の事業を牽引できる人材の育成と、企業体質のゆるやかな変革にこそあると考えています。マーケティングや商品企画の仕事をしていると、「自分は新しい商品のアイデアを持っている。これは絶対売れる」と自称する人と出会うことが少なくないですが、そのほとんどが「単に自分が欲しい」の域を出ておらず、どんな人が買うのか、顧客層の規模はどれくらいあるのか、ちゃんと量産できるのか、販路や売場そしてユーザーサポートはどうするのか...ということに考えが至っていないものです。実際、世の中のハードウェアスタートアップの失敗は、大半がアイデアと原理設計・試作以降の部分に手が回っていないことが原因と言って良い。ものづくりというのは、本当はものを作ること自体よりも、それをちゃんと事業にできるだけの資金を調達して、必要な数を作って世に出すことのほうが大変なものです。

そういう意味で SAP は「ものをちゃんと作る」ための仕組みはソニーという大企業のプラットフォームを利用しながら(つまり、一般的なハードウェア・スタートアップでよくある失敗は避けられる可能性が高い)、小規模でもちゃんと事業を立ち上げて回せるだけの人材を発掘・育成するための仕組みと言って良いでしょう。人員や組織の役割を縦横に細分化した大企業では、現業は効率的に運営できても、こういう混沌とした時期に新しい事業を立ち上げる小規模なチームを組織することは難しい。一人あるいは少人数で全体を見通して事業を組み立てる経験を積むことで、たとえ今の新規事業は小粒でも、彼らが次、あるいはその次に立ち上げる事業は大きな花を咲かせるかもしれない。そういうことだと思います。ひとりの外野としては、そういうスタートアップ事業に大規模な R&D の成果を惜しみなく投入できる体制は羨ましすぎますが...。

でも、というのはあくまで SAP の目的と理念の話。現時点で世に出ているプロジェクトの中では、ちょっと面白いと思えても自分でベットしたくなるものはまだ出てきていないんですよね。
ただソニーの現業に関しても、金融とエンタメ以外はもうすっかりカメラとオーディオの会社になっちゃって、イノベーションよりは事業維持にベクトルが向いている印象。しかもどんどん高級路線に行っていて、俺の買うものがほとんどなくなってきたなあと感じてもいます。SAP から、「俺らをワクワクさせてくれるソニー」のタネがもう一度生まれてきてくれることを願ってやみません。

投稿者 B : 23:24 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2016/02/04 (Thu.)

ランチェスター戦略「小さな No.1」企業

先日転職もしたことだし、ちょっとマーケティングの原点に帰ってみようと思って、久しぶりにランチェスター関連の本を読みました。

福永 雅文 / 45 社の成功事例をリアルに分析! ランチェスター戦略「小さな No.1」企業

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私が以前、繰り返し読んでいた『ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』『ランチェスター戦略「一点突破」の法則』の著者である福永雅文氏による、同著の続編的な位置づけの著書です。

私がマーケティングを考える上で最優先の根拠としているのは、ランチェスター戦略とそれに基づいた差異化。とても汎用性の高い考え方であり、あらゆる分野に応用できるマーケティングの基礎だと思っています。どんな市場であれ、ひとつの勝者以外は全員が敗者であり、勝者には強者の、敗者には弱者の戦略が当てはまる。基本的に強者の戦い方はミート戦略(他社に対して同質な商品を出す)によるライバルの陳腐化であり、弱者の戦い方は市場のセグメント化と差異化に尽きる。それが解っていてもそう簡単に勝てないのがビジネスの難しいところですが、解っているのと解っていないのとでは戦略の組み方が天と地ほども違うわけです。
私の今までの経験上(他社事例の分析も含め)、ある市場では弱者あるいは新参者であるにも関わらず、過去に強者だった経験や別のセグメントで強者であるが故に弱い分野でも強者の戦略を採りたがり、失敗する例には枚挙に暇がありません。業界 2 位なのに 1 位と同じようなことをやっている万年 2 番手企業というのは、誰でも一社や二社は思い浮かぶものです。また、「ターゲットを絞る」とか「ニッチ市場を狙う」という単語に拒絶反応を示す人も少なくなく、万人受け施策を採らされた結果やっぱり失敗した...というのもよくある話。正直、自分で思い出しただけでも臍を噛む思いをした経験も一度や二度ではありません。それくらい、自社の強みを把握し、狙うべき市場を限定して、そこで確実に勝ちに行くための戦略こそが、マーケティングの根幹と言えます。

そう思っているので、自分の部署に若手が入ってきたときには、必ずと言っていいほど福永氏のランチェスター戦略の著書をはじめとするマーケティングの基礎の書籍をいくつか渡してまずは勉強してみてよ、ということを長年続けてきました。が、何人もの後輩に貸すうちに手元に返ってこなくなってしまったので、続編と言えるこの著書を買ってみたというわけです。

この本はそんなマーケティングの基礎であるランチェスター戦略に関して、中小企業の事例ばかりを 45 も集めた事例集です。ランチェスター戦略そのものに関する説明も後半に書かれていますが、入門者がまず最初に読むべきは同氏の『「弱者逆転」の法則』のほう。本書はその内容を理解した上で近年の事例に関して知識のアップデートを行うための本と言って良いでしょう。

紹介されている事例は配達酒販のカクヤス、町田・でんかのヤマグチ、ヘルスメーターのタニタ、H.I.S. に買収されて復活した長崎ハウステンボス、といった時折マスメディアでも紹介されるほど有名な事例から、今回初めて名前を聞いたような企業までさまざま。共通しているのはいずれも中小企業であり、厳しい環境においても差異化と一点集中を軸とした営業戦略で生き残ってきた、という点。ポイントは「勝ち残ってきた」ではなく「生き残ってきた」というあたりで、いたずらに規模の大を追うのではなく、限定された市場でも確実に自分たちが生き残り、顧客と良好な関係を築いている企業ばかりだという点でしょう。特に経済全体の成長が止まろうとしている現代では、どうやって生き残っていくか、こそが企業にとっての懸案と言えます。

ビジネス書としては一般的なボリュームの中で 45 もの事例を紹介しているだけあって、一つ一つの事例はせいぜい 4~6 ページ。もともと雑誌連載だったものを書籍化したものなので、成功のストーリーが完結にまとめてあるだけで、それほど分析が深いとは言えません。それぞれの企業が一発で鉱脈を掘り当てたわけはないし、成功に至るまでには数々の失敗や試行錯誤があっただろうから、むしろそのプロセスこそ知りたかった。まあ、有名な成功例のいくつかは他により詳細な文献があるでしょうし、この本をきっかけにして、自社に近い事例に出会い、自分なりに深掘りするのが正しい学び方なんでしょうが。
でもやはりこれだけ中小企業の事例を見てくると、差異化と一点集中は弱者戦略の基礎としては当然重要だけど、規模が小さければ小さいほど「大手には(投資効率の面で)やれないことを差異化ポイントにする」ことと「自分たちで売り切る営業力」こそが重要なんだなあ、というのが見えてきます。これは、以前の立場で弱者戦略を考えていたときにはあまり重視していなかった部分で、そこに気づけただけでもこれを読んだ意味はあったなあ。

やりたいこととやれることの間にギャップがあるのが現実のビジネスではありますが、自社の得意分野が活きる市場と差異化、それに徹底的に集中することを、今一度じっくり考えたいと思います。

投稿者 B : 23:59 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2016/01/25 (Mon.)

物欲なき世界

タイトルに惹かれて読んでみました。

菅付 雅信 / 物欲なき世界

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「モノが売れない時代」と言われて久しい現代。私がいる業界も例外ではなく、先細りの業界、と言われています。まあ世界はともかくとして、日本の内需向け産業全体に言えることだと思いますが、私なりにも原因はいくつか思い当たっていて、

  • 少子高齢化に伴い、消費欲の強い若者の購買力が落ちてきた
  • スマートフォンの普及で様々なものの価値がスマホに集約され、スマホと機能が重複する機器が売れなくなった
  • 適法/違法を問わず無料で消費できるコンテンツが増えた結果、コンテンツにお金を払う動機が薄れた
  • コンテンツの電子流通が普及したことを発端に、「所有しない」価値観が徐々に一般化してきた
  • 手軽で無料/安価な娯楽が増えた結果、旅行などの「金のかかる娯楽」への需要が減った
  • 日本人の価値観が多様化し、娯楽が多様化した結果、大ヒットが生まれにくくなった=あらゆるジャンルでフォロワー層が薄くなった
  • 娯楽が多様化し、時間消費が細分化した結果、好きなモノ・コトに対するこだわりが薄れた
  • 現代の若者は物心ついたときから物質的・情報的に過多な環境にあり、欲求のもとになる枯渇感がない
  • 「実質ゼロ円」「EDLP」などの販売手法が当たり前になった結果、モノの価値が認められにくくなった
といった要素の複合要因なんだろうなあと。もちろんこれ以外にもいろいろあるとは思いますが。 ただ、これらは私の感覚や仮説に過ぎず、誰かが社会構造の変化とそれに基づいた消費構造の変化についてまとめてくれないかなあ、と常々思っていたので、これは読まざるを得ないと思ったわけです。

読んでみた結果...お、おう。言わんとしていることは分からないでもないけど、結論は「反資本主義」。資本主義のど真ん中に生きている我々からすれば、だからどうしろと、という話に感じました。地球の大きさが有限である以上永遠の成長なんてないし、いつかどこかで規模の経済からは脱却しなくてはならないけど、特に成長もなく再生産を繰り返すだけの活動に経済は耐えられるのだろうかと。まあこれ自身が資本主義の重力に魂を引かれた奴の発想なのかもしれませんが...。
「モノからコトへ」とか「商品ではなくライフスタイルを売る時代」なんてのは業界によっては十年以上前から言われ続けていることだし、拝金主義・物欲主義から脱却して、自然回帰的なゆったりとした暮らしをすべき、みたいな話もいつの時代にもある(批判的な言い方をすれば)ファッションみたいなもの。もっと、世界的な産業構造の変化が最終的な消費行動にどう変化をもたらしているのかを語らないと、単なる事例紹介で終わってしまうと思います。

個別の事例の中にはいろいろと示唆に富んだものもありましたが、全体としてはちょっと求めていたものとは違ったかな。個人的には、本書の中で紹介されていたアスキー総研・遠藤諭氏の指摘が興味深かったです。要約すると、かつての我々世代の物欲というのは、所有すること自体が自己表現の一部だったし、情報源も限定されていたから自分自身が所有していることが重要だった。が、インターネットやソーシャルメディアを通じてコミュニケーションすることが一般的になると、情報源も多様化して自分自身の価値が相対的に低下するから、所有して見せびらかすことで自己顕示欲を満たせなくなってくる。そうすると所有することに価値がなくなる、というもの。そういう点では明らかに旧世代に入る私には理解しにくい話ですが(笑)、ロジックとしては分からなくもない。まあ、それを知りたければ本書よりも遠藤諭氏の著書を読むべきだったのか(ぉ。
私は「究極のエンタテインメントはプレミアムコンテンツでもアミューズメントパークでもなく、個人同士のコミュニケーションだ」というのが持論ですが、そういう意味で考えると、あらゆるモノもコンテンツも体験も、「コミュニケーションを通じて消費するためのネタ」に過ぎないのかもしれません。物欲なき世界、というのはある種、コミュニケーションそのものがエンタテインメント化した、成熟した世の中の姿なのかも。

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2016/01/09 (Sat.)

すごい家電 いちばん身近な最先端技術

西田 宗千佳 / すごい家電 いちばん身近な最先端技術

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暮れに発売されていた西田宗千佳氏の新著を、年末年始のお休みを使って読破しました。

ビジネス書や新書が多い氏の著作としては珍しい、講談社ブルーバックスからの発売。というわけで、読者もビジネスマンや IT/家電業界関係者よりはむしろ高校生くらいを想定し、かなり読みやすい文体と噛み砕かれた表現で書かれています。
タイトルの通り家電について書かれていますが、スマホや PC といった IT カテゴリではなく、純然たる家電がメイン。テレビやレコーダのような「黒物家電」も控えめで、ほとんどがいわゆる「白物」、つまり洗濯機や冷蔵庫などの生活家電のお話。

あらゆる分野の家電に関して、そのルーツから歴史、そして最新の製品に採用されている技術までを解説しており、これさえ読めば白物家電の基本的な部分は理解できてしまいます。もっと技術トレンド寄りなのかと思ったら、かなり基本的な部分から解説されており、業界関係者でなくとも理解しやすくためになる内容。

本書はパナソニックの全面協力を得て執筆されているため、競合他社が引っ張っているトレンドに関しては弱い部分もありますが、その分パナソニックの開発陣への綿密な取材に基づいて書かれており、表面的な解説にとどまらない深みがあるのもポイントです。昨年末の小寺西田メルマガの忘年会でご本人にお会いした際にご本人からこの本の執筆にまつわるお話をいろいろ伺ったのですが、たとえばトイレ(便器)の開発には排水効率を検証するために「疑似便」を使っており、(汚い話ですみませんが)さまざまな状態を再現した疑似便の開発にも、それぞれのメーカーごとのノウハウが蓄積されている...というような話を伺いました。飲み食いしながらそんな話をするのもどうかとは思いますが(ぉ)、最終的には平易な内容にまとめられているものの、各ジャンルにおいて開発陣にそういったレベルの取材を繰り返したからこその深みが溢れています。

私はスマホや PC、カメラならばまだしも、白物家電に関しては実際に買い換える段になってようやく最新のトレンドを調べることがほとんど。三年半前に引っ越した際に大物の家電類を買い換えましたが、それ以降の状況は追いかけていませんでした。が、これを読む限りでは、現在の家電のトレンドは「ヒートポンプを活用した高効率な熱交換」と「センサと内蔵コンピュータを使った緻密な制御」で、エネルギー消費を抑えつつユーザーの利便性を高める、というのが製品カテゴリを問わず共通した方向性のようです。ちょっと前だと NFC を使ったスマホ連携みたいな派手目な(割には実利が少ない)機能ばかりが持ち上げられていましたが、実際には地味だけれど実利のある部分も着実に進化しているようですね。
白物家電というのは基本的に「家事を楽にして、生活の質を高める」という普遍的な目的によって買われるものなので、あらゆる家電が普及した現代ではもう進化の余地が少ない、あるいは進化しても買い換える必然性を感じない、と見られることが多いのが実情でしょう。が、ロボット掃除機だったり羽根のない扇風機だったり、あるいは BALMUDA のスチームトースターであったり、人間の本質的な欲求を見つめ直して新たな価値軸を提示することで、イノベーションを起こせる余地はまだまだあるはずです。そういう意味では、いったん進化の踊り場に差し掛かったスマホよりもむしろ、白物家電が今面白いのかもしれません。

大人が読んでも面白いですが、これは理工系に興味を持ち始めた中高生にこそ読んでほしい一冊だと思います。

投稿者 B : 22:32 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2015/10/25 (Sun.)

ネットフリックスの時代 配信とスマホがテレビを変える

西田 宗千佳 / ネットフリックスの時代 配信とスマホがテレビを変える

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西田宗千佳氏の新著を読了。

タイトルにこそ「ネットフリックス」と入っていますが、Netflix の話題一辺倒ではなく、むしろ Netflix の日本上陸を契機としたデジタルコンテンツ流通に起きている変化の「今この瞬間」を総合的にまとめた書物、と言えるでしょう。
電子書籍における Kindle、音楽配信における Spotify(これはまだ日本参入できていませんが)と並び、「SVOD の黒船」と言われている Netflix。この上陸によって国内の動画コンテンツ流通は大きく変わるのでは、と言われていますが、数年前に Hulu が上陸したときにも同じように騒がれたものの、Hulu によって業界構造が大きく変わったかと言われれば、実際そうはなっていません。そこには地上波という無料放送が圧倒的に強い放送事情だったり、狭い国土の至るところに TSUTAYA があるビデオレンタル事情だったり、複雑なコンテンツの権利関係だったり、アメリカと日本のお国事情の違いが反映されています。しかし、FTTH や LTE といった通信網の整備、放送や光ディスクメディアに先駆けた 4K フォーマットへの対応など、VOD に時代の追い風が吹いているのも事実。すぐに放送レンタルビデオ店がなくなって VOD が主流になるとは言いませんが、個人的には 3~5 年の間には VOD が放送やビデオレンタル業から見ても無視できない市場に育ってくるのではないか、と考えています。そういう意味で、誰かが現状をまとめてくれないかなと思っていたところに、ちゃんと出してくれるのがさすがの西田氏(笑。

書籍の内容は、宅配型 DVD レンタルから始まった Netflix のビジネスモデルの変遷、Netflix のコアコンピタンスとも言われている強力なレコメンド機能の秘密、オリジナルコンテンツ製作に注力する理由、など Netflix の(主にアメリカでの)強みを分析。その上で、Hulu・dTV・TSUTAYA といった国内の VOD サービサーを分析し、誰が勝つかではなく業界としてどこを目指し、今後の主戦場がどこになりそうかといった視点でまとめられています。
また、VOD サービスの視点だけで見ていては市場として伸びるかは断言ができないところ。そこは見逃し配信等に関連した放送局側の事情や、各個人のメインウィンドウがテレビからスマホに取って代わられてしまった現状、そして業界動向として相似形をとる音楽コンテンツ流通で何が起こったか...といったあたりからまとめられています。正直なところ、音楽の「定額聴き放題制」も実質的には今年始まったばかりなので何とも言えない市場ですが、少なくとも「光ディスクを買う/借りる」という消費スタイルを過去のものにしたという意味では、VOD の未来を占う上で重要なヒントが隠されていると思えます。

個人的に Netflix と並んで注目しているのが、Amazon プライム・ビデオの動向。本書の中ではあっさりめにしか触れられていませんが、Netflix をはじめとする通常の VOD サービスが「コンテンツ配信自体を主軸とした真っ当なサービス」であるのに対して、Amazon プライム・ビデオは SVOD サービスでありながら、ユーザーによっては「Amazon プライムに加入していれば勝手についてくる SVOD サービス」という位置づけになるわけで、これが SVOD というサービスの価値にどういう影響を与えるか、にはとても興味があります。当初「お急ぎ便無料」から始まった Amazon プライムは今や様々な付加価値サービスの集合体となっており、単体のサービスに月額を払うのはもったいないけどこんなにあるなら ¥3,900/年 は全然高くない、という消費者も少なくないのではないかと。まあ、Amazon プライム・ビデオ単体に関しては、国内版 Netflix と同様にまだまだ始まったばかりであり、これからのサービスではあるのですが。

私自身は普段からたまに TVOD(単品レンタル相当の都度課金サービス)は利用しているものの、SVOD には加入していません。普段からドラマやアニメをそれほど観ていないということもあって、月額 1,000 円前後をペイするとは思えないのが理由なんですが、最近あまり観てない ANIMAX に月額払い続けてるよねとか娘たちが毎週借りてる TSUTAYA の DVD を SVOD に切り替えればそれだけでお釣りが来るよねとかセルフツッコミ要素がたくさんあるのも事実です(笑。まあ娘たちの TSUTAYA に関しては、物理的な上限を設けておかないといつまででも女児アニメを見続けるからあえてそうしているというのもありますが...。
ただやっぱり、個人的にもそろそろ普段から何かしらの SVOD サービスに触れていないと何かに乗り遅れるよなあ、と思っているフシもあったりして。そろそろ本気で何か検討しますかね。

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2015/01/16 (Fri.)

MOT ―テクノロジーマネジメント

グローバルタスクフォース / 通勤大学 MBA 〈11〉 MOT ―テクノロジーマネジメント

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「スマートフォンはあらゆる電気製品の価値を吸収した」と最近よく言われます。実際、スマートフォンとその先に繋がっているクラウドサービスが既存のハードウェアを代替し、スマホ一台あればかなりのことができる世の中になったことは事実でしょう。でも、IT やエレクトロニクスに携わっている人の多くが「もっと便利に、もっと効率的に、もっと楽しく」を目指していろんな価値をスマートフォンに集積していった結果、確かに便利で効率良くはなったけれどもなんだかつまらない、という状況に息苦しさを感じているのもまた事実だと思います。
一昔前だったら PC やモバイル機器に入れ込んでいた私やその周囲の人々が最近ではカメラと写真に熱を入れるようになったのも、おそらくそれがまだ物理的制約に囚われて電子化しきれない、昔ながらのハードウェアの愉しみがまだ残されているから、という側面があるのではないでしょうか。

「良いものを作りさえすれば売れた」時代はとうに過ぎ去り、技術とビジネスモデルを組み合わせてようやくモノが売れる時代。日本の製造業の凋落が叫ばれていますが、それは決して技術力が衰えたわけではなく、時代の変化に合わせたビジネスモデルを創造することと、それを推進できる経営がなされてこなかったことが原因でしょう。
ビジネスモデル創造について学んだら、次は技術を正しく活かす経営について学びたくなったので、この書物を手に取って(電子版だけど)みました。

この本は、MBA で学ぶような内容を通勤中に学んでしまおうというコンセプトで作られたシリーズのようです。これで MBA 相当の知識がついたらこんなにオイシイ話はないわけですが(笑)、概要を体系的に理解したい人にとってはちょうど良くまとめられた内容になっています。製品開発プロセスから技術戦略、R&D、知財、他社とのアライアンスや生産管理・資材調達まで、企業の開発・生産活動全般にわたってまとめられています。まあ 10 年以上前の書物なので、あくまで技術的優位性を軸にした製造業の話に終始しているのはちょっと物足りませんが、それでも現在も製造業が日本の主力産業であることは間違いないわけで、今でも十分通用する考え方だと言えます。
私自身も、今までに部分的にはいくつか関わったことがあったり知っているものはあっても、こうやって全体を俯瞰して見ることはなかったので、頭の中が整理される内容でした。

ただ、それほどページ数が多いわけでもないので、どの話も基本的にフレームワークの説明に留まっていて、具体例に乏しい=実感としての理解にはちょっと物足りないと感じました。このあたりは実際の MBA であればケーススタディやロールプレイ等を通じて腹落ちしていくところだと思うので、そのへんは独学の限界かもしれません。
あと、全体に書き方が教科書的すぎて、読んでいて眠くなるのは困りましたね(笑。

あとは自分で実地での経験をふまえ、いかに技術を活用して市場に受け容れられるビジネスモデルに結びつけるか、が勝負ですね。がんばらないと。

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2014/11/14 (Fri.)

ビジネスモデル・ジェネレーション

久しぶりにビジネス書。

アレックス・オスターワルダー、イヴ・ピニュール / ビジネスモデル・ジェネレーション

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最近の私の仕事は、純粋なマーケティングよりも戦略系とかビジネスモデル企画とかそっち寄りのものが中心になってきています。そのあたりは専門ではなかったのでいろいろと勉強ながらやっているところですが、この本に書かれている内容はその根幹とも言える部分。ビジネスモデル構築に必要な要素を分解し、客観的に評価できるフレームワーク「ビジネスモデルキャンバス」に表現した上で、そのビジネスモデルがどういった類のモデルなのか、その強みと弱みは何なのか、を把握しよう、というものです。

この手法は現代の新規ビジネス開拓においてはスタンダードになっているもので、この本で紹介されているビジネスモデルキャンバスは、多くのビジネスモデル研修等でも使用されています。聞くところによると、このフレームワークは専門領域が違ってもそのビジネスモデルの強みと弱み、リソースやお金の流れが一目瞭然に把握できるので、シリコンバレーのベンチャーキャピタルでは標準的に使われているとか。実際に私も書いてみましたが、確かに専門領域が違う人とフレームワークを見せ合っても、それのどこが強くてどこが弱点なのかが理解できます。また、自分の考えたビジネスモデルが自分では「ここがハードルだろうな」と思っていたのが、他の人からはむしろ違うところに弱点があると指摘されるなど、パワポで絵にしていただけでは分からなかった部分まで見えてきます。パワポだとどうしても自分に都合が良い前提条件で描いてしまうため、弱点が覆い隠されてしまいがちですからね。

ビジネス書とはいっても、一般的なビジネス書とはだいぶ体裁が違って、デザインや装丁が非常に凝ったものになっています。第一印象としては「広告業界系のコンサルが好きそうな体裁の本だな」という感じだったのですが(笑、ビジネス書なのに横長だしカラフルだし、内容を書かずにあくまでイメージのためのページまであるし、ビジネスにこそクリエイティビティと柔軟な発想が必要、と言われているように感じました。まあ、正直ビジネス書としては読みにくくて、独習のための本というよりはむしろセミナー用のテキストとして使うのがいいんじゃないかな、という雰囲気。フォーマットが自由すぎて、読んでて疲れます(笑。

さまざまな業界のビジネスモデルも事例として紹介されていて、近い業界でもビジネスモデルはずいぶん違うんだなとか、逆に違う業界なのにビジネスモデルとしては同じなんだなとか、そういう意味でもいろいろな発見があります。実務をやっていると、ついつい技術や商品、サービス単体の強さに依存したビジネスをやってしまいがちですが、そういうのは市場の成熟や長期戦、消耗戦に弱いもの。ビジネスモデルを周到に構築して利益をしっかり確保できる者が最終的に勝つのが現代のビジネスなわけで、私もそこをもっと磨いていきたいと思います。

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2014/03/15 (Sat.)

PlayStation 4 ができるまで -日本発売までの 367 日間

西田 宗千佳 / PlayStation 4 ができるまで -日本発売までの 367 日間

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ジャーナリスト西田宗千佳氏の新著を読みました。とはいっても前著『顧客を売り場に直送する』と同様、インプレス AV Watch の連載『西田宗千佳のRandomTracking』および MAGon『西田宗千佳のRandom Analysis』に掲載された記事の再編集で構成されたものです。電子版のみの販売で、主要な電子書籍ストアでの取り扱いがありますが、私は発売元のインプレス MAGon から直接購入。MAGon は DRM フリーの EPUB で配信してくれるので、取り回しが良いんですよね。

基本的には既出記事の焼き直しなので、MAGon を購読していればわざわざお金を払って買うほどのこともないのですが、私は去年あまりにも忙しくて IT 系のニュースを拾い切れていなかったし、MAGon もほぼ斜め読み状態だったので、改めてまとめ読みできるのはありがたい。
製品発表から日本発売までの 367 日間に、西田氏が SCE のアンドリュー・ハウス社長や PS4 アーキテクトのマーク・サーニー氏、ワールドワイドスタジオのプレジデント吉田修平氏らに対して取材したインタビューを中心に、時系列にまとめたものです。IT 系ジャーナリストの西田氏らしく、PS4 のプラットフォームやアーキテクチャ、ビジネスモデルなどが軸で、ゲーム内容に触れた話が少ないため、ゲーム好きな人よりもテクノロジー好きや業界関係者向けの内容と言えるでしょう。後半には MS の Xbox 関係者への取材も交え、PS4 と Xbox One が目指すものの共通点と相違点を整理してあるあたりも、業界が向かっていこうとする方向を把握するという点で興味深い。

PlayStation にしても Xbox にしても、PS3/Xbox 360 世代までは結局は「いかにゲーム機単体のハードウェア性能を高めてゲーム体験を向上させるか」の競争だったのに対して、スマートデバイス/ソーシャルゲームの隆盛とコンソールゲーム市場の縮小をふまえ、PS4/Xbox One では「いかにゲームを遊んでもらうまでの敷居を下げるか」「ビッグタイトル以外でもビジネスが成立するようなエコシステムを作るか」「ソーシャルネットワークをどう巻き込むか」「クラウド技術をどう利用するか」といった点に、各プラットフォームの工夫と差異化の軸が変化してきているのは事実でしょう。ソーシャルゲームに代表されるフリーミアムモデル中心のライトゲームからコンソールらしいコアゲームへのブリッジをどう架け、裾野自体は広がっているゲーム人口をいかにピラミッドの上の方に引っ張り上げるか、の戦いと言ってもいいのかもしれません。そういう意味では、プラットフォームやビジネスモデルの視点から俯瞰することで、ゲーム業界の次の未来を占う材料になる一冊と言えます。
また、既に PS4 が手許で動かせる状況で、この著書を読みながら PS4 を触ることで、発売前に示されていたビジョンがどういう形で具現化されたか、を改めて確認してみるのも面白い。

ただ、そうは言ってもまだまだ国内受けする PS4 のゲームタイトルが少ないことは事実なんですよね。買ってプレイした人たちは異口同音に『龍が如く 維新!』が面白い、と言っていたりするのですが、私は既にゲーマーでなくなって久しいからなあ...。PS4 がプラットフォームとして挑戦的であればあるほど、「自分にとってのキラータイトル」がまだ存在しないことが惜しい。ここはやはり、無料体験版や Live from PlayStation で自分が楽しいと思えるゲームを探してみるかな...。

投稿者 B : 00:40 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2013/12/15 (Sun.)

顧客を売り場に直送する ビッグデータがお金に変わる仕組み

西田 宗千佳 / 顧客を売り場に直送する ビッグデータがお金に変わる仕組み

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前著『スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場』から約 1 年半ぶりとなる(途中、既存記事の再編集+書き下ろしの『加速する日本の電子書籍』はありましたが)、ジャーナリスト西田宗千佳氏の新著を読了しました。今回は紙版・電子版同時発売だったので、Reader Store で電子版を購入。

タイトルからすると、西田氏にしては珍しくマーケティング・セールス寄りの視点の話かな?と思っていました。が、実際はデータとテクノロジーをどうビジネスに活かすか、そしてそんな時代に消費者としての我々はどういう姿勢で生活すべきか、という、いつもの同氏の視点の延長線上にあるもので、ある意味安心しました(笑。ただ、クラウドとスマートデバイスの発達により、製品やサービスの価値はそれ単体で完成するものではなく、その裏にあるデータをどう使い、どう見せるかが最終的な体験価値となるのが 2010 年代。ここ数年で西田氏自身の興味や取材の対象がコンシューマー向けの IT・家電業界のみならず、IT が世の中にもたらす変化全体に拡がってきているのは、そういう世の中の変化に呼応してのことだと思います。

本書の内容は、これまでに MAGon の『西田宗千佳のRandom Analysis』に取材記事として掲載されたものを「ビッグデータの活用」という文脈で再構成したものです。なので、MAGon を購読している私としては話そのものは知っている内容だったわけですが、これまで毎回バラバラなテーマで取材しているように見えていたものが、こうやって一本のストーリーに落とし込まれると、急に繋がって見えてくる。人々の行動履歴を収集・分析し、個人情報と紐付けない形で「属性」として扱うことで分かること/提供できる価値/それを扱うリスク、そういったことを俯瞰的に整理した一冊になっています。
こういうデータの分析ってマーケティングでは日常的に行っていることで、いかに効果的・効率的に認知を得て興味を喚起し、商品の名前を覚えてもらい、欲しいと思ってもらい、最終的に買ってもらうか...という命題に対して、ではどこに需要があって、ターゲットとなるユーザー層はどんな生活や消費行動を取っていて、どういう媒体に接しているのかを把握することは必須。ビッグデータの活用分野としては重要な領域なので、『顧客を売り場に直送する』という言葉は確かに重要なキーワードのひとつではありますが、この本書のタイトルは残念ながら中身の半分も表せておらず、それがちょっともったいないなあ、と思います。西田氏が本書で言いたいことは、おそらくそういうマーケティング観点でのビッグデータの活用だけでなく、自らの行動履歴を企業に提供する消費者側にも、大切な個人情報を提供する見返りに得られる利便性はあって、個人情報を渡すリスクを自覚・自衛した上でメリットを享受すれば、豊かな人生を送ることができる...ということなのでしょう。ただ、それを一言で、読者の興味を惹くタイトルとして表すのはとても難しい。

西田氏は出版にあたりこんなツイートをされていましたが、

これには確かに同意する部分があって、マスメディアによる画一的な情報提供の時代から、人々の多様性を加速するネットの普及によって、我々は情報の取捨選択を強いられ、結果として「自分が選んだ世界しか(その外の世界をあえて意識しない限り)見えなくなった」ということであり、自分にも確かにそういう瞬間はあるな、と自覚するところでもあります、ネットの普及によってテレビを見なくなったのか、社会の成熟化に従って生活スタイルや趣味趣向が多様化した結果テレビへの依存度が下がった(と同時にネットへの依存度が上がった)のか、むしろ双方が両輪として回ることで現在の状況を生み出してきたような気もしますが。
ただ、それでも「自分の視界が狭い」ことを自覚した上で自分の視界の外にあるものもあえて視ようとすれば視れるのも、今の時代でしょう。自分の世界の外にあるものを知り、世の中の仕組みや価値観の多様さを理解することで、より豊かな人生を送ったり、社会により大きな貢献をするための視点が身につけられるのではないでしょうか。

現代のビッグデータ活用に関する状況を俯瞰的、客観的にまとめた内容だけに話が広範にわたり、なかなかひとつの結論に帰結させるのが難しい著書ではありますが、クラウド時代を生き、クラウドを活かしていくためのヒントが鏤められた一冊だと思います。

投稿者 B : 00:24 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2013/04/25 (Thu.)

プラットフォーム ブランディング

川上 慎市郎、山口 義宏 / プラットフォーム ブランディング

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共著者の山口義宏氏から献本いただきました。

いただいたから誉めるわけではありませんが(笑)、山口氏とは今まで一緒に仕事をしたことはないながら、「日本の産業を再び競争力があり、かつ、消費者から憧れられる状態にしたい」という点で、同じ夢を持つ同志だと一方的に思っています。

「顧客体験」「UX」。Apple の iPhone が市場を席巻し始めた頃から多くの企業やメディアで盛んに使われ始め、言葉としてはそろそろ陳腐化して「ユビキタス」「CGM」「クラウド」といった単語と同様に「そういえばそんな実態のない言葉が流行ったよね」というワードの仲間入りをしようか、という段階にあると言えます。しかし、「ユビキタス」「CGM」「クラウド」といったものが、技術やインフラの進化により流行語ではなく現在では空気のような当たり前の存在として利用されているように、「UX」も単語としての流行の段階を終え、企業活動に必須な概念として定着しつつあるように見えます(企業によって温度差が激しいとは感じますが)。
いっぽうで「ブランド」という言葉の解釈にも幅があって、日本においてはバブル時代の高級ブランド・DC ブランドといった「ブランド」の印象や、トヨタに対するレクサス、あるいはファッションブランドのセカンドライン戦略、CI やタグライン...といったように「高級品の代名詞」や「デザインや外観、あるいは企業イメージに関わるもの」と理解されることが多いのではないでしょうか。私も「ブランド●●」と名のつく部署の人と仕事をすることはままありますが、そういう仕事ほど表面的で、企業ブランドに直接関与するようなものではないよなあ...というのが実感だったりします。

しかし「ブランド(商標)」は、「牛に焼き印を施し、他者が育てた牛と区別し、品質を保証するもの」が起源だと言われているとおり、その商品やサービスが提供する品質や安心感を担保する証、企業と顧客との約束とも言えるようなものです。企業側が一方的に「このロゴマークがついているものは高品質だ」と言うだけでも駄目で、消費者の側にもある程度共通した認識が必要。他者との関わりの中ではじめて「自己」というアイデンティティが確立し得るのと同様に、「ブランド」というのも顧客や見込み客との関係の中で成立するものです。とはいえ、企業の側が消費者の認識に対して何もできないわけではなくて、商品の品質を確保したりステートメントを発信することで、ある程度の方向性をつけることはできる。それが「UX によってもたらされるブランディング」というものだ、と理解しています。

そういう意味では、本書が「ブランド」という単語に与えた「顧客体験をデザインするプラットフォーム」という定義は、ブランドの本質を現代に即した形で的確に表現した言葉だなあ、と腑に落ちるわけです。

ただ、あえて本書が画竜点睛を欠く点を挙げるとすれば、この「プラットフォーム」の話と「ブランディング」の話に断絶があり、うまく連結し切れていないなあ、と感じたところでしょうか。「プラットフォーム」に関しては Amazon や楽天のような EC プラットフォームや、Facebook や GREE のようなソーシャルプラットフォームを例に挙げ、事業をプラットフォーム化して、自社の強みを活かしつつ弱みは他社の価値を取り込んで補うことで体験価値を最大化し、ブランド価値を高めることを説いています。それに対して「ブランディング」の話は、ブランドを戦略レベルから戦術、施策レベルまで落とし込み、どうやって事業関係者の上から下までにブランドを意識させながら効果的に事業を推進するか、というブランド戦略の考え方・進め方の教科書のような内容。共著者の二人の専門領域の違いがこのギャップに表れているということなのでしょうが、この二つをブリッジするための章があったほうが良かったのではないか、と感じました。
とはいえ、ブランディングに関する書籍の多くが参考になるんだかならないんだかよく判らない単なる成功事例集(こういう事例って、個別の事象ではなく成功・失敗の要因を抽象化して理解しないと意味がないと思っています)でしかない中、これだけブランド戦略の推進の手順について大真面目にブレイクダウンした書籍は稀有なのではないでしょうか。「ブランディングってヘッドクォーターのブランド担当部門が考えること」みたいな誤解もありがちですが、本書はむしろ(企業価値を高めたいと考えているならば)企業の商品・サービス企画やマーケティング、あるいは直接の顧客接点となる部門の実務担当者こそ熟読し、定期的に回帰すべき原点のような戦略書だと思います。やるべきことや手順、どういう構造で理解・分析すべきか、が図表で解りやすくまとめられているというだけでも価値があります。

ひとつ、本書の共著者に突っ込んで質問してみたいことは、前半のプラットフォームに関する記述の中で「事業をプラットフォーム化すること」について書かれていましたが、プラットフォーム化できるほどの事業規模や市場ポジションにない企業や事業カテゴリについてはどうすれば良いのか?ということです。皆が皆プラットフォーマーになれるわけではなく、App Store にアプリを提供するだけ、楽天のモールに店舗を出店するだけ、の規模の企業のほうが圧倒的に多い。あるいは自社プラットフォームを持ちたいけど OS や SNS をゼロから作ってもすぐにエコシステムができあがるわけではない。そういった場合に、自社がすがっているプラットフォーマーに価値を包含されずに強みを発揮し続ける、または逆に包含を狙っていくためには何をすれば良いのか。Amazon、Apple、Google、Facebook、Twitter といった米国発のメガプラットフォーマーに自分たちのビジネスを換骨奪胎されないためにすべきことは何か、といったことはぜひ問うてみたいですね。

最後に、終章に書かれていた内容は、個人的には 1~2 年前から悶々と思い悩んでいたことに対してヒントとなるようなメッセージをもらえたような気分です。いや、そうなんですよ。ブランドというのは「高い代金を正当化するためのマーク」ではなくて「企業価値の源泉の、その象徴」なわけです。私も特定企業という組織体のために働いているつもりはなくて、「自分を含む顧客に感動的な体験を提供してくれる存在」の価値を高めたいと思って働いているつもり。だからこそ、その価値の源泉は何で、顧客に対してその価値を高めるために何を強化しなくてはならないか、を常に考えていなければならないのです。この書籍は、私がそんな想いのよりどころにしていきたい、と思える一冊です。

投稿者 B : 23:59 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2012/05/16 (Wed.)

ソーシャルゲームのすごい仕組み

まつもとあつし / ソーシャルゲームのすごい仕組み

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西田宗千佳氏の『スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場』と同時発売され、一緒に買っていた本。私自身、MMORPG ならともかくソーシャルゲームはやったことがなく、でもどちらかというとスマートフォンとの親和性とかそういう観点で気になってはいた分野です。本書も買おうかどうしようか、という微妙な気持ちだったんですが、店頭でぱらぱらめくってみたら私の興味にフックするキーワードが多数目に入ってきたので、そのままレジまで持って行ってしまいました。

『ソーシャルゲームのすごい仕組み』って、いかにもソシャゲ万歳なタイトルなのがきになっていたんですが、内容はむしろソーシャルゲームの射幸心を煽る仕組みなどに対して批判的な見方が強かったり、ドラクエに代表される日本の伝統的ビデオゲームなどからソーシャルゲームに至る経緯、携帯電話キャリアやスマートフォンとの関係、SNS との関係・・・など、ソーシャルゲーム界隈をいたって客観的に見たもので、共感が持てるものでした。私はソーシャルゲームにはそこまで詳しくないので、改めての気づきが多かったのも収穫かも。
ソーシャルゲームがここ数年でここまで急激に大きくなった原因としては、ARPU の伸び悩みに苦しむ通信キャリアが請求スキームの一本化を利用してソーシャルゲームをうまく「利用した」ことや、ここ 1~2 年のスマートフォンの隆盛は無視できないでしょう。が、それ以上に、フリーミアム的な考え方やソーシャル性、ゲームクリアに対するインセンティブの与え方、確率に関して錯誤したくなる心境など、ゲームの要素をプリミティブなレベルまで分解して、そこに心理学的な要素を加えて再構築したことと、ネット企業的な巧妙なビジネスモデルが掛け合わされたことが大きいと思います。それが狙ってやったことか結果論かは判りませんが、負の側面を除いても、現在のソーシャルゲームは本書のタイトルが示すとおり「すごい仕組み」であることは確かでしょう。

今のソーシャルゲーム業界で「二強」といわれる DeNA と GREE、両社はともに最初からソーシャルゲームをメイン事業とした企業ではなかったところ、DeNA はインターネットオークション事業で Yahoo! オークションに、GREE は SNS 事業で mixi にそれぞれ敗れたことで、業態転換に近い形でソーシャルゲームに参入した、ということはよく知られた話ですが、私も特に GREE がいつの間にかケータイゲーム/ソーシャルゲームの会社に変わっていたことに気づいたときはちょっと驚きました。そして、両社ともにソーシャルゲーム事業においては訴訟であったり法的にグレーな部分で話題になることが多く、ダーティなイメージがつきまとっていることも興味深い。
まさにここ 1 週間ほどの間に話題になっているところですが、消費者庁がコンプガチャを規制するという報道→大手ソーシャルゲームプラットフォーマーが一斉にコンプガチャの廃止を発表、という流れになっているところですが、問題はコンプガチャだけなのか。今回はいかにも業界側が「従ってみせた」という姿勢に見えるので、今後消費者庁や警察がどう動くか。コンプガチャ規制は始まりにすぎないと思います。

現時点でのソーシャルゲームはどちらかというと負の側面のほうが強い。とはいえ、本書でも書かれていますが、問題点を是正することで、社会に貢献できる新しい経済圏を作り得る可能性を秘めてはいると思います。既存ゲームメーカーの多くがソーシャルゲームとの接点を持つようになってもきているところですし、そろそろ健全な体質と産業としての成長性を両立できるビジネスモデルを再構築した上で、日本発の新たな文化として外貨を獲得できる分野に育っていってほしいところですが・・・。

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2012/04/21 (Sat.)

スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場

西田 宗千佳 / スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場

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スマートテレビ。単語としては Google TV が出てくる前後くらいからありましたが、だいたい 2011 年の IFA あたりから頻繁に使われるようになったような印象です。IT/エレクトロニクスにおけるスマートフォン、(スマート)タブレットの次の潮流は間違いなくスマートテレビ、と言っても過言ではないくらいに最近スマートテレビに対する注目が高まりつつあります。
この『スマートテレビ』は、スマートフォンやタブレット、およびそれらの上で閲覧できるさまざまなコンテンツの電子流通周りを追い続けてきたジャーナリスト西田宗千佳氏の最新の著書。業界動向を表面的に追っかけたものではなく、スマートテレビが出現してきた背景を技術的、マーケット的、および業界構造的観点から掘り下げてあるので、それほど専門知識がない人でも「スマートテレビで今、何が起きているのか」をフラットに把握できるでしょう。

先日、鴻海(世界最大手の EMS として有名な Foxconn の親会社)がシャープの筆頭株主になったことを引き合いに出すまでもなく、今やテレビ事業は多くの経済誌に国内の電機メーカーの「お荷物」とまで評されるようになってしまいました。テレビにこれ以上の高画質化は求めていない、別にスマートテレビだといってアプリが使いたいとも思わない、「安ければそれで十分」という意見もあるでしょう。が、もしそれをジャーナリストや業界関係者が言っているのであれば、それは産業の「いま」しか見ていない、狭いものの見方だと思います。

スマートテレビとは何か?テクノロジー的な観点から言えば、従来よりも性能と汎用性の高い半導体と OS を搭載し、コンピュータ化してネットワークに接続されたテレビということになるでしょうか。用途の面から言えば、Web ブラウジングができるテレビ、動画配信サービスが受けられるテレビ、アプリが動かせるテレビ、従来の十字キーつきリモコン以外の新しいインターフェースで操作するテレビ、スマートフォンやタブレットと連携するテレビ、などいろいろあります。が、どれも正しいし、そのどれもが正しくない。いや、正確には「どれかだけでは正しくない」と言ったほうが良いでしょうか。
そういえば、1 年ほど前のイベントで「そもそもスマートフォンって何?スマートフォンって、ハードウェアだけ見たらそれ自体が賢いわけではなく、アプリやサービス、ネットワークとの組み合わせで賢くなれる電話」という問いかけがありましたが、それとほぼ同じことがスマートテレビにも言えると思います。

実は、用途の面から見ると、ここ 4~5 年のテレビはすでに「スマートテレビ」と言えるほどの機能性は備えていながらも、快適でない操作性、互換性の低いプラットフォーム、そして何より限られたハードウェアリソースのせいで「機能はあるのにほとんど使われない」ものがほとんどでした。この部分からしても、フィーチャーフォンとスマートフォンの対比によく似た状況にあると言えます。それが、スマートフォンの高性能化・低コスト化に伴い、テレビにも共通のプラットフォームを持ち込むことでユーザビリティと互換性の水準が一気に高まるのが、今起きようとしている「スマートテレビ」の本質と言って過言ではないでしょう。
ただ、私個人の見立てとしては、「電話機兼ハンドヘルドインターネット/メール端末」であった携帯電話からスマートフォンへのシフトや、「ノート PC のバリエーション的な存在、もしくは大画面化したスマートフォン」的なタブレットの位置づけのような明快さではなく、「基本的には放送を受像し、ときどきパッケージコンテンツを再生して楽しむもの」というテレビへの固定概念が強く、「テレビ画面を単なるディスプレイと認識して、そこで何をするか」というパラダイムシフトを起こすのに必要なカロリーが高いことが、スマートテレビの悩みの一つではないかと思っています。
とはいえ、スマートテレビにまつわる要素の全てを一気に認知させることは難しいでしょうから、その中からキラーとなり得る要素を見出して、それをテレビのパラダイムシフトの象徴にしてしまうのが最も近道でしょうが。個人的には、もしスマートテレビがスマートフォンと同じようなシナリオで普及していくとするならば、ユーザビリティ、つまり従来のテレビにはない気持ちの良い使い勝手や、常に持っているスマートフォンがそのままリモコンになるような操作性が鍵を握るような気がしているのですが。でもたぶん、それだけでも足りないような気もするし。

まあ、さっき「スマートテレビの悩み」とは書きましたが、現時点で国内において真の意味で今の「スマートテレビ」と呼べる製品は発売さえされておらず、これから、おそらく今年の夏から冬にかけて最初の製品群が出てくるでしょうから、現時点で悲観するのもどうかとは思います。実際の市場を見ると、スマートフォンは少なくとも今年はまだ成長基調にあるので、テレビ側がアナログ停波に伴う買い換え需要直後の冷え切った状況であることも併せて考えると、スマートテレビはスマートフォン市場が横ばいになる頃に初めて「ポスト・スマートフォン」的に需要が盛り上がってくるような動きをするのではないでしょうか。そういう意味では、日本におけるスマートテレビの普及は、もしかすると海外よりも遅い立ち上がりになる可能性もあると思いますし、通常のテレビの買い換えサイクルとスマートデバイスのハードウェアの陳腐化のスピードとのギャップをどう埋めるか、も課題になるでしょう。
汎用のプラットフォームと汎用のプロセッサを使う限り、スマートテレビもスマートフォンと同じく「Apple と Google 以外は誰も儲からない」市場になるリスクも高いと思います。でも、Google が今のように「UX で生活を変える」という部分に興味を持っていない限りは、それが実現できるのは Apple か、そのライバルとなる機器メーカーやサービスベンダーしかなく、それが実現さえできればメーカーもその顧客も幸せになれる目はある。そうでなければ、たとえ有機 EL テレビの低価格化が実現できたところで「安ければそれで十分」のスパイラルから脱することはできないでしょう。それはマクロ的な観点で見れば、みんなにとって不幸だと思います。

考えるべきことはたくさんあって、明確なゴールもない。潮流が来るのは判っていても、何が真の価値なのかさえ理解できていない人も少なくない。難しい分野だとは思いますが、少なくとも「進むべき方向の輪郭」は描かれている、そんな一冊だと思います。製造業に限らず、さまざまな分野でのコンバージェンスやクロスオーバーが進み、本質的な価値の再構築が求められている今だからこそ、むしろテレビ以外の産業に関わっている人に読んで、以て他山の石としてほしい書物だと感じました。

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2012/01/19 (Thu.)

リアルタイムレポート・デジタル教科書のゆくえ

西田 宗千佳 / リアルタイムレポート・デジタル教科書のゆくえ

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iPad VS. キンドル』『メイドインジャパンと iPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電』『形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組』など、ここ数年 IT/家電系で注目のカテゴリについて精力的に出版を続けられている、ジャーナリスト西田宗千佳氏の新刊を読みました。
同じ「スマートデバイス」という題材を扱ってはいるものの、「デジタル教科書」が起点になっているという点で、本書は同氏の iPad やスマートフォンといった切り口の既存書籍とは少し趣が異なっています。学校は今の私には直接関係がない場所ですが、PC やタブレット、スマートフォンといったデバイスが教育の場にどう導入されていくのか?という興味はちょっと前からあったところ。

本書は慶応大学教授の中村伊知哉氏、AV/IT 系ジャーナリストの小寺信良氏、ジャーナリストの田原聡一朗氏、など私も名前を存じ上げている方から、NEC やソフトバンクのグループ会社など IT やコンテンツ流通に関わる企業の担当者、あるいは実際に教育の現場にいる方々、など幅広い関係者に対するインタビュー形式で綴られています。
中でも興味深かったのは、いろいろな立場の人が登場しているにも関わらず、大まかな方向性としては問題意識を持っている部分がほとんどの登場人物の間でかなり似通っていたこと。その山への登り方には差異があれど、「単に教科書をデジタル化すればいいという問題ではない」という点が共通だったことは、単にインタビュアーである西田氏の問題意識に引きずられてのことではないと思います。

その問題意識というのは「単に教科書をデジタル化すること」ではなく、「校務や児童生徒とのコミュニケーションに IT を導入し、効率と効果を上げること」が必要で、教育の現場においてはむしろそっちのほうが重要度が高い、ということです。単に教科書がデジタルになっただけでは、ランドセルが軽くなったり調べ物がすぐにできるようになったり、資料がインタラクティブになったりはすれど、それ以上のことは少なく、紙でなくなることで逆に失うものもある。それよりは、教材としては紙とデジタルを共存させつつ、教育のプロセスそのものに IT を取り込んでいくことのほうが、意味があると考えられます。
個人的には、「デジタル教科書の本を読んでいたはずが、いつの間にか教育論、学校経営論、教育行政論の本を読んでいた」ような状態になりましたが(笑)、設備や機材を導入して機器メーカーにお金を落として終わり、というのは今までの IT 教育行政でもさんざん行われてきたことであり、これから求められていくのはそういう話ではない、ということは理解できます。確かに、私も中学の頃に学校にコンピュータ室が作られ、そこに数人に 1 台の割合で FM TOWNS(懐)が設置されましたが、数回の授業で使ったっきり、後に続くものがなかったことを憶えています。結局、道具は使い方次第で役に立ちもするし、無用の長物と化しもする。悪用すれば悪者にもなる。そういうことなのでしょう。

インタビュー内容の解釈が読者に委ねられている本書において、数少ない西田氏ご本人の見解が直接書かれている終章でのこの一言が、本書の内容を象徴しているのではないでしょうか。

機械を変えるのでなく「プロセスを変える」こと。
そういえば、私がかつて携わっていた SI という仕事も、SIer(システム提供者)の立場からすれば「機器やソフトウェアを導入してもらい、その対価を得ること」ですが、クライアントの立場からすると「業務プロセスを改善して業務の効率や効果を上げることが目的であって、機器やソフトウェアの導入はその手段」。システムエンジニアはまずクライアントの業務プロセスを分析し、効率の悪い部分の情報フローを変えたり、機械化できるところは自分たちの機器やソフトウェアを使って機械化することを目標に、要件を定義して新しいプロセスやシステムを実装していくのが仕事でした。つまり、プロセスを変えることこそが目的であり、システム化はそれを実現するための手段にすぎません。
個人的には、教育の場を聖域としてアンタッチャブルにするのではなく、産業界と連携してより費用対効果の高い教育を目指していくことが必要(もちろん、企業の都合で教育の方向性がねじ曲げられることはあってはならない)だと思っています。が、それは「機器/サービスベンダーの目線で商品を売り込むこと」ではなく、SI のように「教育の場に求められていることを客観的に定義して、それに最適な製品を機器/サービスベンダーが提案する」という順序でなければ、成功しないのだろうなと思います。

学校教育というのは、言い換えれば「この国の未来を担う人材を育成する行為」です。その目的は予め与えられた正解を導く手法を憶えさせることでも、単に子どもを偏差値の高い大学に入れることでも、逆に半端な教養しか植え付けないことでもありません。大人たちが、10~20 年後のこの国にどんな人材が必要か?その人材を生み出すためにどんな教育が適しているか?を考え、それを実施するためのプロセスを今一度基礎から練ることが求められているのではないでしょうか。つまりは、「未来のこの国のカタチをどうしたいか」というところからスタートしなくてはならない話なのだと思います。新しい時代を創るのは老人ではない。

世代ごとの投票率に偏りがあるせいか、とかく高齢者保護的な政策ばかりが目立つ昨今ですが、若者が自立できる国にならなければ、あとは移民を受け入れるくらいしか高齢者を支える術はいずれなくなってしまいます。そういう意味で、今後のこの国の教育のあり方を考えさせてくれる本書はすごく意義のある一冊ではないでしょうか。それなりに IT 用語も出てくるので読むにはある程度のリテラシが必要ではありますが、教育の現場に関わっている人だけでなく、子どもを持つ親御さん、あるいは IT カテゴリで少しでも教育に関係しそうな仕事に就いている人であれば、一読を勧めたい書物だと思います。

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2011/09/17 (Sat.)

形なきモノを売る時代

西田 宗千佳 / 形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組

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ジャーナリスト西田宗千佳氏の新刊を読了しました。最近、電子書籍やスマートデバイス、あるいはコンテンツのデジタル流通絡みの記事では必ずと言って良いほど名前をお見かけする西田氏ですが、本書はまさにそれらの取材の集大成といえる内容にまとまっています。また、ある意味では昨年の『世界で勝てるデジタル家電』の続編と言っても良いかも。

毎度毎度、西田氏と本田雅一氏の取材範囲の広さと掘り下げの深さには感嘆しますが、今回も内容は幅広く、スマートフォンやタブレットの話に始まって、スマートテレビ、サブスクリプション型のコンテンツ配信やクラウドサービス、グリーやモバゲーなどのソーシャルゲーム業界の話、販売・マーケティング観点でのノンパッケージコンテンツ流通の話、というように、クラウドとスマートデバイス時代に考えておくべきほぼ全てのことを網羅しています。

私はこのあたりの業界動向をかなりフォローしているほうなので、どちらかというと「識っている話を分かりやすく整理してくれる」というような意識で読んでいましたが、それでもソーシャルゲーム方面はあまり追いかけていなかったので、とても勉強になりました。ビジネスモデルを理解しているつもりでも、市場規模とか海外での状況とか知らないことも多かったので、「貧困ビジネス」と高を括らずに学ぶ必要があることを思い知りました。
実は昨日、東京ゲームショーを見に行ってきたのですが、初出展となったグリーは TGS の会場ではどう見ても異質。明らかに浮いており、客の入りもイマイチでしたが、PSP や DS のゲームにもソーシャルの要素が取り入れられたり、ソーシャルゲーム出身でありながら PSP 版が発売されるようなタイトルも増えてきているので、そう遠くない未来にソーシャルゲームと従来型ゲームの垣根はなくなっていくでしょう。

個人的には最近、クロスオーバーとかコンバージェンスといった単語でよく表現しているのですが、デバイスやソフトウェア技術の進歩、そして何よりクラウド化・・・というと大げさですが、とにかく「ネットワークに繋がること」で、いろんな製品やサービス、コンテンツのボーダーレス化が進んでいると感じています。
例えば、ひとつの動画を観る際、それがクラウドから提供されるものであれば、コンテンツを観るためのディスプレイとしてはテレビやタブレットの間で「使用時間の取り合い」が発生する(つまりテレビとタブレットが競合している)ことになるし、でもその動画が「どこまで観たかの『しおり』」を機器間で共有し、自宅のテレビで観ていた続きを外出先でタブレットで観るのであれば、テレビとタブレットは連携することになります。そんなことが普通になっていく時代に、「テレビだから、これはこういうもの」というように自分で自分に枷をつけていては、競合(それは競合他社のテレビにかもしれないし、タブレットやスマートフォンにかもしれません)に敗れることになる。自分の守備範囲を自分で規定せず、真にあるべき UX を起点としてハードウェアやソフトウェア、サービスの実装に落とし込んでいって初めて競争する資格を与えられる。そう思います。

ちなみに、この本は英題が『The Tablet Age(タブレットの時代)』となっていますが、それについて共感したのは特にこのくだり。

ネットワークの世界になり、低価格に大量のコンテンツを楽しめる世界がやってくるのは間違いなく、その受け皿として「タブレット」はきわめて有望だ。タブレットは、ディスクというメディアの存在を想定しない、史上初の「ネットネイティブ・コンテンツプレイヤー」となる。その際、メディアやデータを「所持しない」「所持できない」世界が同時にやってくることになる。
快適ではあるが今までと違う常識とルールの中で、我々はコンテンツを楽しむことになる。

日本においてはタブレットの市場はまだ立ち上がったばかりで、今後本当に成功するかどうかすらまだ判らない状況にあるのは事実だと思います。が、個人的には去年 iPad を買ってみて、多くの家庭においては PC よりもタブレットこそが主な生活空間で使うコンピュータとして相応しい、と確信しました。逆に、iPad に飽きた/使いどころがない、と言っている人は、多くがモバイル PC の代わりとして使おうとし、PC と同じことができないことに失望した人ではないでしょうか。
でも、個人的には家庭内ではタブレットが、外出先ではスマートフォンが、コミュニケーションや情報検索、コンテンツ流通の受け皿になっていくことは間違いないと思っています。いや「タブレット」「スマートフォン」とカタチを規定してしまうことさえ適切ではないのかもしれず、今後ディスプレイを備えた機器の多くが「スマートデバイス的な何か」になっていくのではないか、と思います。そこには物理的なディスプレイの大きさの違いのみが存在し、テレビ、タブレット、スマートフォンというのは機能的な差はなく、名前は大きさを示すだけの言葉になっているのかもしれません(まあ、2~3 年でそれが現実になる、とは言いませんが)。

なんか書物の感想とは直接関係のないことばかり書いてしまいましたが(笑)、本書は、本田雅一氏の最新刊『iCloud とクラウドメディアの夜明け』と似たところも多いですが、内容的にはちょうど良い補完関係にあり、まとめて読むと何かが見えてくるような気がします。この先の 2~3 年を考えるならともに必読の一冊、と言えるでしょう。

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2011/08/19 (Fri.)

iCloud とクラウドメディアの夜明け

本田 雅一 / iCloud とクラウドメディアの夜明け

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テクニカル(だけじゃなくなりつつありますね、最近は)ジャーナリスト本田雅一氏の新書を読んでみました。
従来は Web メディアへの執筆が多かった氏も、ここのところ『3D 世界規格を作れ!』『これからスマートフォンが起こすこと。』と書籍の出版が相次いでいますね。メディアの逆行というよりは、現在の世の中が単発の記事ではなく書籍として残しておくべき転換点に来ているということなのかもしれません。また、近著 3 点ともにずいぶん違う方向性のタイトルではありますが、デジタル機器とコンテンツ流通の関係性、およびそれに関わる企業動向を追ったジャーナリズムであるという点で共通しており、繋がったストーリーになっています。個人的には、3 冊の中ではこの本が最も自分が今向いている方向性に近かったかな。

タイトルには「iCloud」が冠されていますが、本田氏ご本人曰くこれは出版サイドがつけたタイトルで、特に iCloud だけをフィーチャーした著書ではありません。主に Apple の iCloud とソニーの Qriocity の対比を軸にしながら、Google や Amazon のクラウドサービスを絡めて今後のクラウドメディア――クラウド化するメディア、ではなく、メディア化するクラウド――を読み解く内容になっています。

個人的に強く同意したのはこのくだり。

そこでアップルは、パソコンをデジタルハブとして使うことをあきらめ、従来はパソコンのコンパニオンであったデバイスと同じ位置づけとし、パソコンを含む各デバイス間の情報共有の中心をクラウドの中に置くことにした。このことをジョブズは「パソコンの格下げ」と表現した。もはやデジタルワールドはパソコンを中心に回ってはいないというのだ。

従来の iOS デバイスは「Mac の周辺機器」だったのが、iOS と Mac OS X の垣根が低くなり、iPhone や iPad と Mac でできることの差が小さくなっていくに従い、独立したデバイスとしての性格が強くなってきました。このあたりは、(iPhone や iPad が初期セットアップに Mac/PC 必須なのとは対照的に)Android が PC を必要としないデバイスとして生まれてきたことの影響も少なくないでしょう。が、先日の iCloud の発表によって、クラウドそのものを機器のハブとみなし、Mac も iOS デバイスも「クラウドのコンパニオンデバイス」として同列に扱われていくことが明らかになりました。
このあたりは PC や Android デバイスの観点から見るともっと明らかで、クラウドから見ると PC もスマートデバイスも、表示能力が違う程度で概念的には同じような情報端末にすぎません。スマートデバイスはリアルタイムコミュニケーションやコンテンツ消費に向き、PC はよりクリエイティブな作業に向いているから違うものだ、という異論はあるでしょうし、それはその通りなのですが、クラウドから見たときのクライアントとしてのレベル感は同じ。「クラウド・ブラックホール」とも表現されるように、今後あらゆる付加価値はクラウド側に吸収され、多くの人にとって PC の利点は「ハードウェアキーボードがついていること」だけになってしまう日が来ても、おかしくありません。そういう意味では、中期的には「PC」「スマートデバイス」というカテゴリ分けも、適当なものではなくなっていくのかもしれません。

では、あらゆる価値がクラウド側に吸い込まれていくと、クライアントとしてのハードウェアに残された価値は何なのか?単なるコモディティ化の未来が待っているだけじゃないのか?という話になってきますが、その問いに対する答えの一つはこれでしょう。

ソニーは特定の技術に縛られる形でコンテンツが流通する現状を是正し、ハードウェアメーカー間の競争環境を促す形でクラウドを活用しようとしている。利用者を特定のエコシステムへの依存から解放することで、新たな競争環境を作れると考えているからだ。一方、アップルは現在のダウンロード型デジタル配信での支配的な位置を引き継ぎつつ、情報リポジトリとクラウドメディアを組み合わせ、情報やコンテンツの管理からユーザーを解放しようとしている。それぞれの道を歩んでいるが、最終的に消費者の得られる利が大きい点は同じだ。

iTunes のようにサービスとハードウェアが密結合した状態は、アーキテクトの視点で見れば最も美しいですし、その囲い込みを甘受している限りはその中で過ごすのが最も気持ちが良い。ただ、例えば iOS が「Apple が作った箱庭」と呼ばれるように、不自由も多く、App Store のように自由競争が制限された環境でもある。つまりそれはある面では進化が阻害されているということでもあります。
それよりは、サービスとハードウェアの結びつきは多少緩めにして、サービスとハードウェアそれぞれの選択権をユーザーに委ね(場合によっては複数のサービスを利用しても良い)、サービスはサービスの、ハードウェアはハードウェアの完成度やコストで競争できるほうがより良い未来に近づける(あるいはハードウェア開発が得意なソニーのような企業の場合、現在の状況よりも自社の強みを発揮しやすい)、という考え方。言い換えれば、iTunes で買った曲をウォークマンで聴ければ今よりもっと嬉しいし、逆に iPhone で SME の楽曲も聴きたいでしょう?という話でもあります。以前はカセットテープなり CD なり共通のメディアがあって、どのメーカーのハードウェアでも問題なく使えていたのに、デジタル配信になって不便になったよね?という話です。

現在の iTunes のようなダウンロード型コンテンツ販売の時代は終わりを告げ、これからはサブスクリプション型のストリーミング配信の時代が来る、と言われても、多くの人にはまだまだピンと来ないかもしれません。しかし、テレビがコンテンツ配信の王者だった時代が終わり、CD や DVD といったパッケージメディアの終焉も近づき、情報端末のほとんどで Wi-Fi 搭載が当たり前になり、ハードウェアの付加価値や「ものを持つこと」の意味がどんどん認められなくなってきた今、世の中の流れは確実にそこに向かっていると言えます。私もハードウェアやパッケージメディアを収集・所有することに喜びを覚える世代なので、そんな時代が来てしまったら寂しいという思いもありますが、価値が所有から体験に移ってきていることは間違いがありません。
本書は『これからスマートフォンが起こすこと。』と同じく、2~3 年後には「もう当たり前になったことが書かれている本」になってしまうのだろうと思います。が、PC やスマートデバイスが好きな人、コンテンツ流通に関わる人、あるいはもっと大きく「ものづくりと産業」のこれからに興味がある人、であれば、一読しておく意味のある書物ではないでしょうか。

投稿者 B : 23:35 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2011/06/01 (Wed.)

これからスマートフォンが起こすこと。

本田 雅一 / これからスマートフォンが起こすこと。 ―携帯電話がなくなる!パソコンは消える!

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去年の『3D 世界規格を作れ!』がとても良い本だったので、引き続き期待していた本田雅一氏の新著。個人的には、高画質高音質方面よりも(こっちはこっちで趣味としては好きなんですが)むしろモバイルやコミュニケーションの世界にこそイノベーションを感じる志向性なので、発売を楽しみにしていました。

内容的には例によってとても本田さんらしい、業界を幅広くかつ深く取材した上で、フラットに現状と少し先の未来を整理したものと言って良いでしょう。フィーチャーフォンとスマートフォンの違い、ハードウェア/ソフトウェア面からみたスマートフォンの性質、タブレットの台頭、PC とスマートデバイスの今後の変遷、クラウドと 4G モバイル通信、Facebook をはじめとしたソーシャルメディアの存在感が増すこれからのインターネットについて、パッケージメディアからサブスクリプション型のコンテンツ配信モデルあるいは UltraViolet などを利用した新しいコンテンツ流通モデルへの変化、そしてそれらをふまえて各分野で誰が今後の勝者になるのか・・・といったように、スマートフォンやモバイルデバイスに関わるあらゆる事象を網羅的にまとめた一冊になっています。この分野は IT 産業の中でも現在もっとも進化のスピードが速い分野なので、2~3 年後には本書の内容はもう古い、つまり現実のものとなっている可能性が高いですが、そういう意味ではある種予言的でもあり、仕事/趣味的興味を問わずこのあたりの世界に携わっている人であれば、漏れなく読んでおくべき書だと思います。
個人的には、自分自身がこのあたりの事象の渦中にいることもあって、ほとんどが知っていることではあったのですが、個々の内容としてはよく知っていることであっても、こうやって全体の構造を改めて理解させてくれるという意味で、読む意義があったと感じました。内容の深さという点では少し食い足りない部分も多かったですが、ちょうど先日のスマホ業界 楽屋裏トークが結果としてそこを掘り下げる内容だったこともあり、併せて非常に勉強になりました。

フィーチャーフォンの多くがスマートフォンに取って代わられる・・・というか、スマートフォンがフィーチャーフォン化していく流れは、端末コストの面から言ってもネットワークとサービスの独立性(による自由競争の活発化)という面から言っても理にかなったものであり、止めようがないことだと思います。また同様に、PC の多機能/高性能をそこまで必要としない多くのユーザーにとって、スマートデバイスのほうがよりライフスタイルに適した製品であることも事実だと思います。本書のサブタイトルにもなっている「携帯電話がなくなる!パソコンは消える!」というのはいかにもキャッチーさを狙ったもので、さすがに極論であり反語ですが、それでもある面での真理を突いていると言えるのではないでしょうか。コミュニケーションに PC を使わずにすべてケータイで済ませてしまう世代がいるように、フィーチャーフォンも PC も買わずにスマートフォン(またはスマートデバイス)ですべてを完結させるユーザー層、あるいは世代というものは、間違いなく出現するでしょう。

また、本格的なクラウド時代が到来し、スマートデバイスの台頭によってハードウェアそのものの存在感は薄れていく、だから Apple のようにそこそこの原価で UX に関わる部分にはコストをかけ、少品種大量生産で稼げるビジネスモデルこそ正義だ、みたいなことは最近よく言われますし、それはある種の真理ではあると思います。でも、「おわりに」に書かれていたこの言葉には、私も確信を持っていたい。

わたしはこれからしばらくの間、消費者が"装置そのもの"に強い興味を抱かなくなる時代が来るだろうと考えている。スマートフォンを通じて得られる価値は絶大だ。しかし、その価値の多くは通信の"向こう側"にある。(中略)しかし、時が経てばハードウェア、ソフトウェア、サービスが一体化することで、消費者の興味が"製品"そのものに戻ってくるとも確信している。

これは当然、「ハードとソフト、サービスが一体化した先のこと」であり、現状のままハードウェアだけを豪華にすればいいという話ではありませんし、すべてを Apple がデザインした箱庭的世界観(で、多数の熱狂的ファンを抱える現在の状況)こそこの理想的な状態だという考えかたもあるでしょう。が、我々はまだ「ハードとソフト、サービスが完全に一体化した未来」を見ていない。そのときにどんな世界が待っているか、いや、どんな世界を創れるか。

その競争は、すでに始まっています。

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2011/01/24 (Mon.)

ヤマダ電機の暴走

立石 泰則 / ヤマダ電機の暴走

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人に勧めておきながら自分で読み切れていなかった書籍を、ようやく読了。

日経ビジネス・週刊ダイヤモンド・東洋経済などの経済誌でここ数年、よく特集が組まれるようになったこともあって、私もヤマダ電機の仕組みについてはある程度知っているつもりでした。この書物はそういった既知の情報が網羅されているのに加えて、創業者の山田昇氏(現会長)の生い立ちから創業期に至る話まで掘り下げられているので、知らなかった情報や観点が得られて非常に興味深い内容でした。

専門学校を卒業後ビクターに就職し、組織の限界を感じて独立、松下電器(現パナソニック)系列の販売店を経て総合家電量販店化。群馬県に生まれて現在では全国ネットワークを網羅するようになった「国内家電流通の王者」は、「安さこそ価値」という信念のもと規模の拡大と調達コストの圧縮を両輪に、ひたすら拡大路線を突き進んでいます。それは、「タイムマシン経営」という言葉が認知されるようになる遙か以前から、アメリカ最大の家電量販店 Best Buy の経営手法を日本で再現しようとしていたのかもしれません。

いっぽうで、いち顧客として見たときのヤマダ電機は、私の自宅から最も近くにある大手家電量販店の一つであり、価格も(量販店としては)最安値クラスであるにも関わらず、これだけ電気屋好きな私がなぜか積極的には行きたいと思えないお店です。それはおそらく低価格にこだわるあまり、「売れ筋のものを大量に調達して仕入れ価格を下げる代わりに、売れ筋でないものはバッサリ切る」というヤマダ電機の売り方に私の好みがあっていないからだと思います。
私はどちらかというと売れ筋 No.1 でとにかく安い商品よりも、最先端であったりハイエンドであったり何か人と違うものであったり、ニッチ商品(よく言えばこだわりの強い商品)を好む傾向があると自覚しています。それに対してヤマダ電機には「ヤマダ電機が売りたい商品」しかないから、行っても楽しくないのでしょう。こう感じるのは私や私の親しい仲間うちくらいのものかと思っていたら、本書の中にも「ヤマダ電機に行って目当ての商品がなかったらヨドバシに探しに行くけど、最初にヨドバシに行って売っていなかったらヤマダには行かない」という消費者の例が挙げられていて、そういう顧客は案外少なくないんだなあ、と改めて気づかされました。電気製品にこだわりがなく、壊れたら初めて電気店に行って、置いてある選択肢から選ぶ・・・という高齢者が多い地方(ヤマダ電機も地方発祥の電気店)と、リテラシが高く指名買い顧客の多い都市部(カメラ系量販店の出自)とで顧客(全てではないにしろ)の行動が大きく異なる、ということに気がついていないか、気がついていてもどう対応して良いか分からないのかもしれません。もしくは、そういう顧客であっても価格になびく、と考えているのか。

まあ、価格差が一定以上に大きくなれば、嗜好品以外はコモディティ的要素が強くなり、低価格に流れる顧客の割合が大きくなるのは経済の原理だと思うので、それは否定してもしょうがないですが。
でも、例えばユニクロが価格以外の価値を提案するようになって、多くの顧客がもつユニクロのイメージが変わってきたのに対して、ダイソーを「ブランド」と認知している顧客がどれだけいるか?を考えれば、「価格が最大の価値」という戦略は、諸刃の剣であると思います。

さておき、本書は家電業界関係者のみならず、家電業界(の流通寄りの部分)に興味がある人や、マーケティングや経営戦略に興味がある人も読んでおいて損はない一冊だと思います。いろいろな観点で読める本だとは思いますが、私はこの本を読んで「価値」とはどういうことか、改めて考えさせられたなあ。

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2010/10/18 (Mon.)

世界で勝てるデジタル家電

西田 宗千佳 / メイドインジャパンと iPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電

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記憶に新しいところではこの春に『iPad VS. キンドル』を出版したジャーナリスト・西田宗千佳氏の最新の著作が発売されたので、読んでみました。

本著もキャッチーなタイトルではありますが、多面的でフラットな業界分析はさすがの一言。同じく最近出版された、本田雅一氏の『3D 世界規格を作れ!』とは扱っているテーマこそ違え、どこかのメーカーだけに肩入れすることなく(肩入れしているとしたら日本の電機メーカー全てに)、世界における日本の電機産業の現状を的確に分析した上で応援している、という点で非常に似ていると感じました。

内容的にはタイトルどおり「iPad/iPhone は何がすごいのか」をビジネス/設計/プラットフォーム/開発思想それぞれの面から分析し、Apple が仕掛ける製造業の王道「少品種超大量生産」と日本企業の「高付加価値」の対比、今後の家電産業の鍵を握るプラットフォーム戦略の重要性、日本企業の「品質」の考え方と消費者の多くが考えるプライオリティ、そしてゲームの「ルールを変える」ということ。よくもまあ、これだけ多岐にわたる事柄を整理して一冊の本にまとめた、というくらいにまとまっている本です。私も、この本に書かれていることのほとんどは知っていましたが(特によく知っていることも多く書かれていましたが)、こうやって全方位的に整理してドン!と突きつけられると、何か見えてくるものがあるような気がします。
少なくとも、ここ数年の日本メーカーが取り組んできた「多品種少量生産」による多様なニーズへの対応は、一部の市場では成功しているけれども、それだけで全ての市場をカバーできるわけではない。むしろ圧倒的マスに向けたプロダクトで量産性(裏を返せばコスト)と品質を両立することができなければ縮小均衡しか残っていない、というのは、認めざるを得ない事実だと思います。

また、最終章に書かれていた「ルールを変える」という話は、私の中でずっとモヤモヤとしていて『なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか』という書物にその答えを求めてみたけど全然書かれていなかったことがここに書かれており、胸の中が晴れ渡るような快感を覚えました(だからといって、それを実践するのは並大抵のことではないけども)。

最近は Apple の一人勝ちのような状況が(一部市場では)起きていて、大手経済紙/誌でも「強い Apple とイノベーションを起こせない日本企業」のような対比で語られることも少なくありません。ある意味、いろんな状況が重なって日本の電機産業が自信を失っているのが現在だと思いますが、これだけ客観的かつ多面的に取材を行っている西田氏に、こう断言されていることが、微かな自信に繋がるような気がします。

日本の競争力が失われた、と多くの人が言う。
しかしそれは、日本の技術力が失われたからではない。(中略)日本にはまだまだ技術力があるのだ。だが、それを日本国内で消費されるデッドエンドで浪費したことが間違いだった。
そして、こういうエールを送ってくれている下りで、私は本当に涙が出てきました・・・。
今後、家電製品や IT 機器の多くが iPhone や iPad のようなルールで作られ、販売されていくのだとすれば、勝つためには量が必要だ。その上で品質の追求をせねばならない。
日本も、高度成長期には「外」で戦ってきた。今も、ゲーム機や 3D で勝負をかける人びとは、明確に世界を視野に戦っている。
われわれに必要とされているのは、そういったジャンルをもっといくつも見つけること、そして、戦おうとする人びとの足を、無関心やつまらない利権でひっぱらないことだ。(中略)日本の技術は、僕たちが思っているほど弱くなんかない。お願いだから、彼らを全力で戦わせてあげてはくれないだろうか。
日本の製造業が再び世界で強い競争力を得るには、越えるべきハードルがいくつも存在します。また、自分たちの努力だけではなく、政府が「未来のこの国のカタチをどうしたいか」にも大きな影響を受けることも事実です。ただ、少なくとも現状に嘆き、諦めていては始まらない。再び自信を得て、(Apple や Google の真似ではない)世界で戦う戦略を編み出すことによってのみ活路が見いだせることを肝に銘じ、明日からまた歩んでいかなくてはなりません。

最後に、この一枚を貼っておきたいと思います。著者の西田氏ではなく、先日行われた本田さんの『3D 世界規格を作れ!』の発刊記念セミナー(Ustream で録画を試聴できます)において、本田さんが「伝えたかったこと」。きっと西田さんも同じ気持ちであり、日本のメーカー関係者であれば、誰もが元気になれる言葉。

僕からお伝えしたいこと:ニッポンの電機屋さん、想像するよりずっと強いんです

投稿者 B : 23:59 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2010/10/08 (Fri.)

インサイド・ドキュメント「3D 世界規格を作れ!」

本田 雅一 / インサイド・ドキュメント「3D 世界規格を作れ!」

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今週の CEATEC もまさに 3D 祭りの様相を呈していましたが、今年の家電業界全体が盛り立てようとしている 3D のこれまでを詳細にまとめた本です。といっても技術解説や製品比較ではなく、主に 3D をリードするパナソニックとソニーの製品発売に至るまでのドキュメンタリー形式になっています。

書籍のタイトルは「3D」を冠していますが、実際にはここ 7~8 年の映像業界の動きを描いた内容となっていて、実に前ページの 1/3 は Blu-ray と HD DVD が争った次世代 DVD 戦争の経緯を記したもの。この内容自体は以前東洋経済誌に掲載された同氏の記事にも書かれていたことがあり、大まかな経緯は私も知っていましたが、それをさらに詳細化した内容になっています。
映像業界がここまで 3D を志向するのは、フル HD 化をほぼ完了させた業界が 4K2K に向かっていく前のステップとして踏む必要があるためで、必然性のあるもの。それにプラズマと液晶のテレビの技術競争が絡んで現在の状況に繋がっています。そういうことが、DVD~Blu-ray 時代の家電業界とハリウッドの関係や韓国メーカーとの競争関係なども踏まえながら綴られており、非常に興味深い内容となっています。まさに 2000 年前後からこれらの業界を渡り歩き、それでいてフラットな視点で取材と執筆を続けてきた本田氏でなければ書けなかったドキュメンタリーと言えるでしょう。

しかしこの著書の特筆すべきは、3D 人気に乗って発売された技術解説書でも、メーカーの内情の暴露本でもなく、本田氏自身があとがきにおいて

日本の家電メーカーで名前も知られずに働き、日本の大きな外貨獲得手段となっている家電産業を下支えしている多数のエンジニアたちがいる。本書は、彼らがどんなことを成し遂げようとしてきたのかを記すために書き始めました。

と述べているように、日本の家電メーカーが彼らにしか生み出せない価値を実現するために努めている事実を事例として著すことで彼らを励まそうとしていることにあるのではないでしょうか。最後のくだりで、

重要なのは、手がけた技術がビジネスとして成功し続けるように画策することではない。かつての成功体験に安住せず、夢を見続けることだ。懸命に汗をかきながら、前へ前へと進む努力が"魔法"を生み続ける原動力なのだから。
(中略)われわれの想像をはるかに超えて、日本の電機メーカーが持つ底力は大きい。彼らは現代の魔法使いとして振る舞う術を、世界でもっとも知っているはずなのだから。

という一節を読み、私でさえ失いかけた自信を取り戻させてくれるような熱さを感じました。

残念ながら最近の私はあまり思うような仕事につけていないのですが、近いうちにきっとまた業界の先端、切っ先の部分で世の中の(一部でも良い)パラダイムを先に進めるための仕事についていたい。その渦中において、人類の進歩に少しでも貢献できた実感が得られるならば、この著書に描かれているエンジニアやビジネスマンたちのような過酷な状況で働くことになっても構わない、とすら思います。

3D や AV 家電に興味がある人に限らず、国内の製造業やハイテク産業に何かしらの形で携わっているならば、一読して損はない良著ではないでしょうか。

ちなみにこの書籍は、購入者限定で全文 PDF の無償配布を行っています。入手には購入者のみに提供されるダウンロードコードが必要ですが、ダウンロードさえしてしまえば PDF なので、後の取り回しは非常に自由度が高いです。

たとえば iPhone/iPad への持ち出しならば、iTunes に PDF ファイルをドラッグ&ドロップするだけで、

3D 世界規格を作れ!

自動的にライブラリに追加されます(「ブック」カテゴリがない場合は自動的にカテゴリが追加される)。あとは iPhone と同期すれば、

3D 世界規格を作れ!

「iBooks」アプリに表示されるという仕掛け。

3D 世界規格を作れ!

ただ、iPhone 3GS ではちょっと画面の解像度が低すぎて、ページ全体表示では可読性に難あり。ピンチインで拡大すれば読めますが、そうするとスクロールの回数が多くなってしまうので、それはそれで読みづらい。iPhone 4 の Retina Display なら読めそうな気がしますが、私は結局紙の本+PC 上の PDF で読みました。ただ、今後は電子書籍に適したモバイル端末がいろいろと出てきそうなので、この試みには素直に賛同します。

3D が題材であるだけでなく、国内の書籍としては珍しいこうした試みまで含めて、まさに「今」が凝縮された一冊ですね。

投稿者 B : 22:48 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2010/07/23 (Fri.)

マーケティングはつまらない?

関橋 英作 / マーケティングはつまらない?

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元 docomo の夏野剛氏のツイートで知って読んでみた著書。マーケティング全般に関わる本で、もとは日経ネットマーケティング内の連載「マーケティング・ゼロ」を要約し書籍化したもののようです。
内容に関しては徳力さんの読書メモが秀逸にまとまっているので省きますが、これを読んで私が感じたことなどを少し。感想文というよりも、むしろ私のマーケティング観みたいな話になりますが。

そもそもマーケティングとは何のことかというと、教科書どおりに説明するならば、「企業の活動の全て」。私は「マーケティングは経営そのもの」と理解しています。
といっても抽象的ですかね。はてなキーワードの解説がとても端的に表していたので引用すると、

マーケティングとは - はてなキーワード

製品、流通、価格、販促・広告、これら全ての要素をいかに組み合わせるかが「マーケティング」である。
とのこと。つまりは「何を」「誰に」「どうやって」作って売るか、という企業活動全般を指すことだと分かるでしょう。

でも、「マーケティング」と名のつく会社や部署は実際には広告宣伝やマーケティング・リサーチ、販売などといった、得てして狭義の「マーケティング」業務しか負っていないことが多いのが現実だと思います。逆に言えば、「マーケティング」的な考えかたは、「マーケティング」と名のつく会社や部署に所属する人だけでなく、その事業に携わる全ての従業員が持っている必要がある、と私は考えています。
さらに言えば、単に自分に与えられた目先の仕事だけでなく、その企業の思想や市場にもたらす価値といった創業者/経営者的な視点をどれだけ多くの社員が持てているか、が企業の競争力、もしくは社会的価値を決めると言っても過言ではないと思います。以前読んだ『ランチェスター戦略「一点突破」の法則』に書いてあった言葉を引用するなら、「企業の持つ理念こそが最大の差異化要素であり、最強の武器」だと思っています。

話を本書の内容に戻すと、そういった広い意味での「マーケティング」の観点から、広告宣伝や PR、コミュニケーション戦略といったことを語っているのが本書。紹介されている事例が多い割に説明がシンプルなので行間を読まなければちょっと理論が飛躍して感じる部分もありますし、Web 連載からの抜粋再編集なのでやや話題が散漫な印象も受けます。また、著者の出自ゆえか「代理店の人」っぽい言葉遣いが慣れない人には鼻につくかもしれませんが、変に奇をてらった内容ではなく、真っ当なことが平易な言葉で表現されているため、確かに腹に落ちるものが多いです。また、海外事例を多数挙げてトレンド紹介に終始しがちなこのジャンルにおいて、ほとんどが日本国内の事例で、日本人を相手にしたマーケティングに絞って書かれているのも、意外と珍しいながらも貴重だと思います。
中でも、私が特に共感したのはこのくだり。

もともとマーケティングとは、今生きている人が潜在的に欲しいと願っているものを具現化させて、世の中の役に立つこと。消費者に「うれしい!」「ありがとう!」と言ってもらえるものを提供すること。その行為を通して、メーカーと消費者が Win-Win の関係になること。私はそう思っています。
とすれば、メーカーが開発したものを効率的に売っていくことをデザインするだけではなく、消費者の心に眠っているものを探し出して実現することが求められます。

マーケティングの神髄は「緻密な人間観察」にある、という私の信念は間違っていないんだよね!と自信を持たせてくれる言葉です。そう、マーケティングとは「人間賛歌」なのだッ!(ぉ

いっぽうで、私も常に気をつけていなくてはならない・・・と思いながらも、気がつくと囚われているのが、これ。

これが、人間の敵であり、マーケッターの敵でもある「固定観念」です。(中略)もちろん、世の中には常識が必要です。それがなければ大混乱が起きてしまうでしょう。しかし、その必要な常識が、いつの間にか固定観念化して、マーケッターの脳をセメント状態にしているのです。

ちょうど、BS hi で放送中の『スター・ウォーズ』を観ていて、ヨーダの台詞に対して

固定概念を捨てる。やってみるのではなくやる。フォースもモバイラー道もマーケティングも同じだ(笑。

とつぶやいた直後にこれを読んだので、あまりのタイミングの良さに自分で驚きました(笑。

最近、また前職のシステム屋っぽい仕事の割合が増えていて、マーケティングや商品企画っぽいことを考える時間が減っているので、またいずれそんな仕事をする日のために、錆びつかないように自分を磨いておかなくては。

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2010/06/10 (Thu.)

iPad VS. キンドル

西田 宗千佳 / iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏

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電子書籍のまさに「今」を切り取った書物。読みたいと思っていたけど業界動向系の本はすぐに陳腐化するし・・・と思っていたら図書館にあったので、借りて読んでみました。

内容はざっくりこんな感じ。

  • Kindle のビジネスモデル
  • Sony Reader および iPad との比較
  • 電子書籍がこれまで歩んできた歴史
  • 電子書籍のビジネスモデルについて、アメリカの事例を引用しながら整理
  • 日本の電子書籍/出版業界が置かれた現状と、今後の展望
『iPad VS. キンドル』といういかにもキャッチーなタイトルがつけられてはいますが、そんな表面的でうすっぺらい内容の本ではなくて、電子書籍の過去現在未来についてかなり多角的かつフラットに捉えた非常に良いテキストにまとまっています。

私も個人的に興味があって電子書籍関連の情報をそれなりに追いかけているので、もしかしたら知ってる内容ばかりかなというのを少し危惧していたのですが(実際ソーシャルメディア関連の書籍はそうやって買ってがっかりしたものが少なくない)、本書には私にとって新しい情報もけっこう充実していました。
電子書籍の歴史の話(アラン・ケイの Dynabook 構想から始まるとは恐れ入った)については過去の事例はほとんど網羅され、関係者にも直接取材を行っているほか、筆者とエンターブレインによるアンケート調査の結果、そして出版社側で始まっている動きに関する解説はなかなか他では読めない話。特に Web の情報に頼ると出版社側の動きの実態は正確には見えにくいので(出版社=既得権者=悪もしくは旧態保守という構図で表現されがち)、そのあたりまでしっかり取材して、機器やサービス提供側/出版社側/消費者側のいずれにも寄らずに客観的に示したという点では、非常に価値のある書物だと思います。

また、主題とは少しずれますが、「著作権は『銭金の問題』だ」とハッキリ書かれていることも重要だと思いました。著作権が単に金銭の問題かどうかは議論の余地があるとは思いますが、著作権が問題になる原因のほとんどは金銭。他業界で起きている「銭金と文化のすり替え」ではなく「収益の再分配」に主眼を置くことが、その業界がビジネスとして存続していくために必要なのだろうと思います。

本書に関しては筆者の主張がない、という批判もあるようですが、個人的にはこの書物は西田氏らしく客観的かつフラットに電子書籍の現状を分析したことに価値があり、そこから何を考えるかは読者に委ねられているのだと感じました。
ビジネスで関係する/しないに関わらず、電子書籍やコンテンツの電子化といった問題に興味がある人ならば一読して損はない良著だと思います。私も業界動向本ならお金を払うまでもないかなと思っていましたが、手元に置いて何度も参照する価値はあると思いました。この本こそ電子書籍で欲しいんですが、どうやら発売が遅延しているよう。電子書籍版が発売されたら、改めて購入したいと思います。

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2010/05/19 (Wed.)

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

岩崎 夏海 / もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

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話題の著書、今さらではありますが私も読んでみました。

表紙のインパクトが強いですが、萌えライトノベルとかでは全然なくて、中身はとても硬派なビジネス書。そりゃドラッカーの『マネジメント』を題材にした著書なので、軟派になりようがないのですが(笑。

タイトルにあるとおり「もし高校野球の女子マネージャーが『マネジメント』を読んだら」という設定は単なるオヤジギャグですが(笑、リアルなビジネスに携わってる人じゃなく、普通ならマネジメントになんて縁のない若者がマネジメントに取り組んだら・・・という仮定なのが、逆に『マネジメント』の内容をデフォルメ化してこれだけ読みやすい(多少強引な設定もあるけど、それはそれ)内容にまとまっているんだろうな、と感じました。

本著で示されているのは『マネジメント』の中でも要点だけをさらっとなめたにすぎない内容だと思いますが、例えば企業活動は「顧客の要望を聞くところから始まる」「顧客の期待に応える」ことが最も重要ではあるけれど、でもそれは「言われたことをその通りにする」ではなく「本質的な欲求がどこにあるか」を見極めて、それに応えていくことが本質で、それを実現するための方法論が『マネジメント』には書かれているんだろう、ということがよく解りました。

この本のおかげで自分が今やっていることはきっと間違っていないという確信が持てたと同時に、これは改めてドラッカーを勉強してみる価値はあるなあ、と思ったのですが、一般論として書かれている(場合によっては単なる正論にしか聞こえないようなことを)自分の周囲に起きている具体的な事柄に当てはめて考えていくのってけっこう骨が折れるんですよね。私は転職したての頃、それでコトラーを途中でストップしてしまったので、今回も最後までいけるかどうか。とりあえず書店に行ってパラパラめくってみてこよう・・・。

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2010/05/07 (Fri.)

ずるい!? なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか

ここしばらくアウトプットするばかりだったので、ちょっといろいろなことを吸収したくなって、最近ひさびさにビジネス書を読んでいます。まずは Twitter で紹介いただいたこの本から。

青木 高夫 / ずるい!? なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか

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ホンダで海外営業を経験し、現在は渉外部で対政府関係の仕事もしている著者の経験に基づいた、主にビジネスの場での欧米と日本の「ルール」に対する考え方・取り組み方の違いに関して述べた本です。かいつまんで説明すると、日本人は「ルールはお上が決めるもので一般人は策定のプロセスに関与する必要はなく、一般人はそれを守るもの」という考えが刷り込まれているのに対して、欧米人は「ルールは策定する段階から参画するもの。場合によっては自分が有利になるようにルールを変更すべき」というマインドで、基本的には日本人ももっとルール作成プロセスへの関与を積極的にしていくべきだ、というお話。

ビジネスの場に限らず、例えばスポーツ界でもこういうことは日常茶飯事で、本書の中でも柔道の国際ルール変更の話や、1980 年代後半の F1 ターボ禁止ルール(当時はホンダエンジンの黄金期だった)など、「欧米は日本人が勝ち始めるとルールを歪めて欧米人に有利にする」という話はよく聞きます。最近ではフィギュアスケートの採点ルール変更が問題視されましたが、個人的には(フィギュアという「スポーツ」にとっての現行ルールには強く疑問を抱いているものの)とにかく金メダルを獲らせるために国を挙げて最大限のアプローチをした韓国と、選手に全て任せて何もしなかった日本・・・という対比を見るにつけ、やはり多くの日本人にとっての「スポーツ」って所詮その程度のものでしかないんだろうな、と少し絶望的な思いを抱いています。また、F1 からのホンダやトヨタの相次いだ撤退も、やはり「F1 の一員」としての自覚に欠けあくまで参加者にすぎず、ある面では F1 に体よくお金を奪われただけ、という見方もできます。
原理主義的に考えればそりゃスポーツに政治を持ち込むのはフェアではないのかもしれませんが、ある程度はそのスポーツに注目を集める活動(より観る側にとって面白くなるルール作りも含む)は必要で、そういうものも含めてそのスポーツの発展があるのも事実。まあ日本人は伝統的に「●道」というスポーツ、というより自己鍛錬のための競技が主流だったので、こういう考え方はそれこそ邪道と言われかねませんが。
でも、F1 で例えるならば、純粋にマシン+ドライバーの速さだけで予選も決勝もやったら今年の開幕戦のように全く面白くないレースばかりになるのも事実でしょうし、ある程度古くから F1 を観ている人にとっては「コース外での駆け引きまで含めて F1、むしろグランプリが始まるまでのプロセスが重要」というのも事実だと思います。

さておき、個人的には最近「ビジネスのルールを変える」ことをよく考えているのですが、私はこういう本当の意味での「ルールや法律」を変えることを考えているというよりは、むしろイノベーションによって生活や市場にパラダイムシフトを起こすという意味での「ルール変更」のほうに興味を持っています。例えば、音楽と言えば家で聴くものだった時代に「外で歩きながら音楽を聴く」という文化を創ったり、紙媒体やパッケージメディアを電子媒体化することで流通だけでなく言論やコミュニケーションのあり方を変える、といったような。それによって経済の構図が変わる=ルールが変わる、ということを考えています。既存のルールの中で最大限に勝率を上げるためのアプローチも重要ですが、そういうのを考えるのが得意な人は他にいくらでもいるので。

そういう意味では、本書は私が求めていた内容とはちょっと方向性が違ったのですが、それでも今まであまり持っていなかった観点が身についたり、ちょっとした発見がいろいろ得られたり、読んだ価値はありました。私はあまり政府や業界団体に関係する仕事をしていませんが、それでも例えば「自分がやりたい仕事をするために、社内の業務プロセスやルールを変えることを考える」ということに対して少し前向きになれたり、とか。

平易な文章で書かれていて比較的短時間でも読みやすい本なので、興味があれば一読をおすすめします。

投稿者 B : 01:38 | Book | Business | コメント (1) | トラックバック

2009/12/01 (Tue.)

Twitter 社会論

『Twitter 社会論』読了。

津田 大介 / Twitter 社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流

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Twitter のスピード感的には少し旬を逃したかなと思いつつも、一応読んでみました。

内容や感想については Twitter 上で津田氏本人に RT されてしまったので今更多くを語るものではないですが、Twitter の成り立ちから現状、社会に及ぼしつつある影響までを解説しつつ、いわゆる「tsudaる」テクニックや勝間和代氏との対談までを網羅した、現時点での(主に日本での)Twitter の現状をうまく輪切りにした書物だと思います。逆に tsuda 氏をフォローして氏のつぶやきを毎日目にしている読者の視点では、やや発言がおとなしすぎて物足りない側面はありますが(笑。

でも、読んでいる間ずっと感じていたのは、Twitter の歴史はインターネットが十数年の時間をかけて辿ってきた歴史の縮図であり、そしてこれからその先に向かおうとしているのでは?ということ。Twitter が築いてきたコミュニケーションのあり方は、CGM の観点から見た Web コミュニケーションのそれを凝縮したようなもので、違いといえば Twitter のほうがまだオープン性とボトムアップ性を強く保っていて、かつ時間の尺度がずっと短い(リアルタイム性が高い)ということくらい。
インターネット上のリアルタイムコミュニケーションが今後 Twitter に集約されるとは必ずしも言えず、Twitter を補完/代替するサービスが出てくる可能性も十分に考えられますが、Twitter が Web のリアルタイム性という点で新たなパラダイムをもたらしたと言っても過言ではないでしょう。1990 年代が ARPANET から Yahoo! に至るスタティック Web の時代、2000 年代が Google を中心としたダイナミック Web の時代、2010 年代は Twitter をはじめとするリアルタイム Web の時代、というのは大げさかもしれませんが、そういう観点で本著の『新たなリアルタイム・ウェブの潮流』というサブタイトルは、実によくつけたものだなと感心させられます。

そういう意味で、今までインターネットが辿ってきた歴史になぞらえて Twitter の歴史を振り返ってみると本著の内容はそれほど目新しいものばかりでもないような気はします。が、そこから先に期待される未来、という意味では、この本を読んで Twitter に限らずリアルタイム Web の可能性をもう少し探ってみたい、と思わせてくれるだけのものはありました。個人的にはその点、「あとがき」が一番面白かったかもしれません。

Twitter のヘビーユーザーで、ネット上のコミュニケーションの可能性だったりそこから発生するビジネスチャンスを(流行りとしてでなく)探りたいと考えている人なら、一読の価値ありかと思います。

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2009/05/27 (Wed.)

グランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略

シャーリーン・リー、ジョシュ・バーノフ / グランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略

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この分野で私淑する人たちが挙って奨めていたので、前々から気になっていた一冊です。2 月に買っていたんですが、流し読みではなく熟読が必要な内容だと感じたので、時間がかかってしまいました。
「グランズウェル」といっても何のこっちゃ、という人も多いと思いますが、Web 2.0 とか CGM/WOM と呼ばれているものをテクノロジーでもなく、「いわゆる」マーケティングでもなく、もっと企業活動全体に影響する大きなうねりとしてとらえる、といったあたりの意味です。

私もここ 2 年ほどこの分野の書籍を読み漁っていますが、単純な事例紹介のサマリーでお金を取る本が多くてうんざりしたのは事実。でもこの書籍は事例から抽象化して「企業はどうあるべきか」ということを、グランズウェル活用/共存の各局面に対してまとめてくれている、とても良いテキストだと思います。この種の書物の中では、『ウェブ進化論』と同じくらい共感し、勇気づけられたような気がします。自分自身で経験してきたことも多いので、ものすごく新しい発見があったというわけではありませんが(むしろその経験が間違っていなかったことを再確認した感じ)、企業人として会社のプロセスにどうやってグランズウェルを融合していったらいいか、ということについては、保証をもらえたような気がしています。個人的には、数年で陳腐化する技術の話よりも、経営的観点でどうグランズウェルと向き合うか・・・的な言論を読みたいと思っていたので、とてもためになりました。

分厚いハードカバーで内容も多岐にわたるため、個別の引用なんかは行いませんが、この分野について真剣に取り組む覚悟がある人なら、読んでみて損はないと思います。私も自分で貼った付箋をつけたまま、職場のマネージャー陣に回したいくらいの書物です。

投稿者 B : 23:45 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2009/02/27 (Fri.)

V 字回復の経営 ――2 年で会社を変えられますか

上司の薦めで読んでみました。

三枝 匡 / V 字回復の経営 ――2 年で会社を変えられますか

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「赤字事業を短期間でいかに建て直すか」にフォーカスした経営術の本。組織改革のメソドロジーをモデルケースで描いた書物で、ある企業の経営改革をサクセスストーリー的読み物としてまとめつつ、合間に要点を差し込む形で編集されているので、とても読みやすいです。

経営の本というと、ちょっと身構えなくては読めない小難しさを感じてしまいますが、この本が示す道は非常にシンプル。いかに社員の共感を得て、モチベーションを高めて改革を成功させるかに至るリーダー論と、そのためにはシンプルで明快なプロセスが示される必要があることを繰り返し述べています。
同じようなことでも、ロジックが通っていないと単なる浪花節になったり、体育会的な精神論だけに終始して実効は何もない・・・みたいなことは、ちょっと周りを見渡してみただけでも溢れかえっていますが、そういうケースは得てして「誰にでも納得できて実行可能な改革プランの提示」がないものです。

実話をもとにしたというモデルケースはちょっとあまりにもフィクション的展開すぎて、「できすぎ」と突っ込みたくなる部分も多少ありますが、大事なのはこの例で示されている考え方。この考え方をいかに自分の中で消化して、自分の会社に適用できるかという目線で読むと、たくさんのヒントが隠されています。あと、自分がいる組織の現状のダメさ加減も(汗。また、同時にそれを他人事ととらえるのではなくて、翻って自分自身に落ち度はなかったのか、を省みることができなければ、何も変えられないのも事実。

私は転職するときに、外部からの改革者のつもりで今の職場に飛び込んだつもりでしたが、いつの間にか単なる「状況の一部」となっていないか?正しいと信じていたことが、本当は全く間違っていたのではないか?
経済環境的には、ここ数年の不況なんて戯れ言に過ぎなかったくらい「未曾有の危機」が訪れている状況だから、もっと、あらゆることを根本から疑ってかかるくらいの気持ちで、根本的な改革を考える必要があるのだと思います。
いろんな企業で「お客様目線」が叫ばれる近年ですが、たぶんそれだけでは足りなくて、いち社員に至るまで、経営者視点と顧客視点の両方をもってひとつひとつの状況に対処する必要があるのだと思います。でも、口先だけでなく意識の根底にその考えを徹底させるには、多少のショック療法は免れないだろうなあ・・・。

この本に書かれていることは「至極まっとうなこと」ばかりですが、シンプルにわかりやすくまとまっているというだけで、ここまで多くの気づきを与えてくれる、という点では、ビジネスの世界に身を置く人間であれば一読して損はないと思います。

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2009/02/16 (Mon.)

次世代マーケティングプラットフォーム

最近、目先の大きな仕事がようやく一段落したので、次への仕込みを始めつつ、また自分の頭の養分を吸収するべくいろいろ勉強中。タイトルに惹かれてこんな本を読んでみました。

湯川 鶴章 / 次世代マーケティングプラットフォーム 広告とマスメディアの地位を奪うもの

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うーん・・・ちょっと物足りないというか何というか。「マーケティング」という企業活動の認識の違いですかね?
著者は新聞社の方らしいので、どうしても広告宣伝の側面が主になっているのだと思いますが、一般的に言っても「マーケティング」を「広告宣伝・販促関連だけに関わる仕事」と定義している企業もおそらく少なくないのでしょうね。むしろ、国内における一般論としてはそちらの認識のほうが多そうな気もします。ただ、個人的には、この内容ならばタイトルは『次世代マーケティングプラットフォーム』ではなくて、『次世代 Web アド・プロ・セールスプラットフォーム』としてくれたほうが、すんなり飲み込めたと思います。

内容的には、少し前に流行った Google・Apple 礼賛本に近い勢いで Omniture すげー、Salesforce.com すげー、Amazon すげー、というものです。具体例が多いので、既存のフレームワークを応用した Web セールス/プロモーションプラットフォームをこれから立ち上げよう、あるいは改善しよう、という人にはかなり参考になるような気はします。まだあまり日本には導入されていないアメリカでの事例が主なので、目新しいものも多いですし。

でも私が求めていたものはもうちょっと違って、どちらかというと、もっと全体を俯瞰した意味での「マーケティング・プラットフォーム」を期待したので、そういう意味ではあまり参考になりませんでした。具体的には、Web と既存媒体、マスコミュニケーションとカンバセーショナルコミュニケーション、イノベーターからラガードまでといったマーケット全体をより体系的にとらえて、どうクロスコミュニケートしていくか、そのときのプラットフォームや(もっと言うと)企業のあり方はどうあるべきか・・・みたいな内容を求めていたのですが、ちょっと大きすぎましたかね。

でも、参考になった話もいくつかあって、特にそれは序章と終章に集約されていました。序章の「イノベーションは周縁から起こる」という話は、まあ一般論ではあるのですが、確かにどんな世界でも革命というのはその世界のど真ん中ではなくて周縁から起こり、真ん中にいる人たちはそのイノベーションを受け入れようとせず、気がつけば立場が逆転している、という話。業界や社会の常識に縛られず、フラットな視点で流れを読む力を磨きたいものです。
また、終章の

ターゲットメディアになるということは、一方通行のマスメディアとは異なり、ターゲットとなる顧客と向き合うということでもある。(中略)一対多の関係であっても、一方的に情報を出すのではなく、メディア側が出す情報を核にユーザーが情報を交換し合うようなコミュニティを作る営みなのだ。
には、個人的に激しく同感。でも、それを実現するのがとてつもなく高い壁だったりもするので、むしろその壁を越えるヒントを書いてくれよ!!!と思いましたが・・・。

そういう意味では、全般的に至極もっともな話ばかりなのですが、もう一つ高いレイヤーであったり、もう一歩踏み込んでほしいところがことごとくその手前で止まってしまっているのが非常に残念でした。既存の事例や小手先の手法じゃなく、もっと普遍的な考え方について「共感」して「納得」しつつ、さらに「発見」がある書物こそ読みたいのです。何か良い本ないかなー。変に書物に頼るより、同じような分野で活躍している人と議論するほうが、最近は得るものが多いとは思っていますが。

投稿者 B : 23:35 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2008/11/01 (Sat.)

私塾のすすめ

齋藤 孝、梅田 望夫 / 私塾のすすめ ──ここから創造が生まれる

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最近よく読んでいる梅田望夫氏の著作、4 冊目。ここらで一段落かな。今回は齋藤孝氏との対談ですが、基本的に論旨は今までの 3 冊と大きくは変わりません。それに加えて教育論、リーダー論、みたいなものが付加された内容になっています。

何かを勉強しようと思うときに、その領域の本を全部入手して、あっちに行ったりこっちに行ったりしながら自分のスタイルで勉強したいと思うタイプの人は、ウェブの世界を、たいへんな能力の増幅器だと認識していると思います。

私はどちらかといえば、紙媒体を与えられると最後まで精読しようとしてしまうタイプなのですが、Web だと逆だったりします。Wikipedia なんかが良い例ですが、途中で他に知るべき情報があったり、興味を惹かれる話があったりすると、果てしなく寄り道して寄り道したほうを突き詰めてしまうタイプかもしれません。
そういう意味では、Web は人の学びのスタイルをも変える可能性を持ったツールだと言えますね。

インターネットがわれわれの能力の増幅器であるということですよね。蒸気機関や自動車が人間の筋肉の能力を増強したように、ネットが脳とか人間関係を増幅する。距離と時間と無限性の概念をゆるがしているわけです。リアルの限定されたコミュニティだけにとらわれず、未知との遭遇のありようががらりと変わってくると、いろいろな可能性が出てきます。

もはや言うまでもない話かもいれませんが、こういう話には深く共感します。インターネット上の誰かの知識や考えが、自分の知や学びの加速器になるという話。場合によっては、知識だけではなく精神的な救いにもなってくれたりする。まあ、必ずしもバーチャルでの出会いだけで全てが完結するわけではなく、リアルのやりとりとの補完によって成り立つものも多いですが。でも、それを体験したことのない人にはなかなか理解されない話であるのも事実だったり。

「ここにチャンスがあるんだし、一生懸命努力すれば・・・」と言ったときに、「そんなこと俺にはできないよ」「興味ないよ」という人のところまで下りていって、「さあやろうよ」とまで自分にはできないなと感じました。ウェブに取り組む態度でも、受動的にユーチューブをただボーっと見ているだけの人ではなく、じゃあブログを書いてやってみようという人、好きなことに能動的に取り組んでなにかをやっていこう、という人たち。そういう人たちなら、学校の勉強ができるできないにかかわらず、つきあっていけると思いました。

これは近年の私がかなり悩んでいることの一つ。最近は「そういうものだ」と少し諦めもつきましたが、興味のない他人を引っ張り上げることがいかに難しいか・・・そうしないと自分(たち)の目標が達成できない、となると特に。
こういう話は Web という大海を自分なりに流浪れて、自らと志向性を同じくする誰かと出会った人ならではの物言いだと思うので、そうでない人にとって見方によってはその気がない人は切り捨ててもやむなし、という話に聞こえてしまいそうですが、そこは志向性の違いなので自分の価値観を誰かに強制するのもどうかと思うし。だからこそ、そこで共感して一緒に何かを目指そうという人に出会えたときに、強い力になる実感を得られるものだとも思うので、最近はどちらかというと無理して手近な誰かに過剰な期待をかけるより「共感してもらえる仲間を見つける」ことのほうが重要なのだろうな、と考えるようにしています(もちろん、近くにいる人に同じ志向性を持ってもらえるよう、ある程度の種まきまでは自分がやる前提で)。

だから僕は、大組織にせよ、組織以外での仕事にせよ、自分とぴったりあったことでない限り、絶対に競争力が出ない時代になってきていると思います。朝起きてすぐに、自分を取り巻く仕事のコミュニティと何かやりとりすることを面白いと思える人でなければ、生き残れない。これが幸せな仕事人生になるのか、不幸なのかは一概に言えないのだけれど、いま、過渡状態で起きていることというのは、そういうことだと思う。自分の志向性とぴったりあったことをやっている人は、自然にすごい長時間仕事をするものだから、会社でもコミュニティでも重宝されるというか、「いい仕事しているな」ということになる。
僕が「好きなことを貫く」ということを、最近、確信犯的に言っている理由というのは、「好きなことを貫くと幸せになれる」というような牧歌的な話じゃなくて、そういう競争環境のなかで、自分の志向性というものに意識的にならないと、サバイバルできないのではないかという危機感があって、それを伝えたいと思うからです。

このあたりにも深く共感。近年の高度に複雑化した世の中では、様々なことが単純な数字やデータだけでは読み取れなくなってきており、同時にその仕事に対してどれだけ気持ちが込められているか、を世の中が敏感に感じ取るようになってきているのではないかと感じています。そういう世の中で、いかに知識や技術だけを身につけようと、「想い」を持たなければ人も企業も生き残れない時代になっているのだと思っています。
そうはいっても会社/社会はそういう人たちだけで回っているわけではない、というのも真理なのですが、自分の理想と現実に折り合いをつけるだけではダメで、少しでも現実を自分の理想に近づけようと足掻く、時にはポジションを変える諦めの悪さを、少なくとも持っていなくてはならないのでしょうね。それでも、転職する前の私であったら、そんなことを言われたら「そう言われても・・・」と言っていたか、「そうか、じゃあそういうことなら」となっていたか、判らないわけですが。

まとめとして、従来読んだ 3 冊と基本的な内容は変わっていないので特に新しく得るものはありませんでしたが(『フューチャリスト宣言』と同様に、人と違う生き方をしてきて成功した人同士の対談なので、志向性の異なる人が読んだらむしろネガティブな感想を抱くかもしれません)、今までと同じく自分が今やっていることについて自信を深めさせてくれる書物でした。対談ものはそろそろお腹いっぱいですが(脱線気味に展開する話も多いので・・・)、梅田氏の書き下ろしが発売されたらまた読んでみたいと思います。ってしばらく本出さないんでしたっけ・・・。

投稿者 B : 22:35 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2008/10/06 (Mon.)

ランチェスター戦略「一点突破」の法則

福永 雅文 / ランチェスター戦略「一点突破」の法則

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こないだ読んだ『「弱者逆転」の法則』の続編。「弱者逆転」のためのカギとなる「一点突破」の必勝法を伝授する・・・という内容を期待して読んでみたら、基本的な論旨は前著と大差なく、一部事例を最近のものに差し替えたアップデート版的な内容になっていました。
大筋は前著と同じなので、個人的にはちょっと期待外れ。事例としても「後付けで何とでも言えるよねー」と前から思っていたので、そういう意味でも目からウロコ的な発見は特にありませんでした。最初に手に取る一冊としてなら良いと思いますが、続編・掘り下げ編的な内容を期待すると、裏切られるかもしれません。

ただ、このくだりには少し勇気づけられましたね。

さらにもうひとつ、究極の差別化の方法を伝授しましょう。それは理念です。私は理念こそが究極の差別化方法、すなわち最強の武器であると主張しています。
理念とは企業経営の原点であり根幹です。何のために事業をなし自社は存在するのか、社会に対しての存在意義を表明するものです。顧客に対しても存在価値を伝え、愛され尊敬され信頼される企業になる。社員に対しても心の拠り所となり自信と誇りを与え使命感をもって働く"錦の御旗"になる。経営者にとっては創業の原点。(中略)
このように重要な理念はライバルに対しても最強の競争力となり、真似のされない本質的な差別化戦略となるのです。
多くの企業では、どうしても「儲かるかどうか」という観点ばかりでビジネス戦略が語られがちだと思いますが、企業価値とか企業としての存在意義みたいなもの(広報アピール的なものではなく、もっと根源的欲求みたいなもの)がもっとフォーカスされても良いと思うんですよ。少なくとも私はそういうことを求めて転職したつもりでいるので、カイシャでは実際には歯がゆい思いをすることも少なくない。なので、そういう考えを持って良いんだ、それこそが真実には差異化ための武器になるんだ、と言ってもらえたことで、ちょっと勇気がもらえた気がしました。

とりあえずもうちょっとそれを信じてやってみることとします。でも、まだまだいろいろ勉強しないとなあ。ただ、最近は自分の弱点を補うようなスキルを身につけていこうとしていますが、ランチェスター的に考えるとむしろ強みを伸ばす方向に舵を取り直したほうが良いのか、悩みどころだったりします(笑。

投稿者 B : 22:15 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2008/09/05 (Fri.)

ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則

しばらく Web 関連の書籍が続いてたんですが、今度は思いっきり現実路線のお勉強。

福永 雅文 / ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則

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大学時代はずっとエンジニアになるつもりだったので(いや、実際に一度なったわけだけど)、一般教養系のマクロ経済学とか輸送問題みたいな科目は軽くスルーしてたんですが、最近になってそういう文系スキルの必要性を痛感(ノ∀`)。マジメに勉強しておけばよかったー。
# まあ、経済学に限らず、大学時代の私は学校の勉強そっちのけで PC・ネット系と音楽の独学ばかりしてましたが・・・。

ということで、今年はそっち系のスキルも身につけないと、と思って雑誌や本を読んだり、Web で勉強したり、研修を受けたりしてます。このランチェスター本はこないだ読んだ『改訂 シンプルマーケティング』と『孫子の兵法』に続いて、読んでおくべきと思って手に取った書物。

シェアの考え方は『シンプルマーケティング』でも基礎的な部分を説明されていますが、これはそのあたりを掘り下げつつ、戦略的な「戦い方」についてより実戦的にまとめた本です。基本的には戦争の戦い方を理論化した法則を経済に応用したものなので、『孫子の兵法』と考え方が似ている部分も多いですが、やはりそれだけ普遍的な法則だということなのでしょう。

ランチェスター戦略自体はもう経営戦略のバイブルみたいなものなので、経営企画やマーケティングに関わる人ならば基礎くらいは知っているべき話だと思いますが、それにしても世の中「強者の戦略」と「弱者の戦略」のどちらを取るべきなのか見誤っている失敗事例がいかに多いことか。特に、2 位以下であるにも関わらずフルラインアップを揃えて戦線を全面展開する企業は枚挙に暇がありません。戦略の王道を知らない企業ばかりではないはずなのに、こういうことが起きてしまうのは、いかに理論を学んでいても、実はそれ以上にそれを応用すべき「局面の認識」が重要だからだろうな、と思います。
実際に、この本を読んでアタマで分かったつもりになっていても、果たして自社が置かれているのはどんな局面なのか?冷静に分析しようとすると、これが実は難しい。マクロ的に見れば確率戦の戦略に出るべきように見えても、ミクロ的には競合他社が絶対的な市場を作っており、むしろ弱者の戦略で武器効率を高める方向に行くべきに見えたり。

本書の中でも過去の成功事例(実際の企業の事例と、戦国大名の戦いにおける事例)が数多く挙げられていますが、やや後付け感があるかなと。特に戦国時代の話については、無理矢理っぽいものも見受けられます。まあ、「過去の成功者も改めて見てみると、こういう合理的な法則を体で解っていた」という話だとは思いますが。
ということで、この本を一冊読んでみて、むしろランチェスター戦略の応用の仕方であったり、逆を行った失敗例なんかを学んでみたくなりました。世の中往々にして成功事例よりも失敗例からのほうが学ぶべきことが多いものですし、どのようなシチュエーションで状況を見誤るのか?など、現状分析と把握、そして打つべき手の選択こそ重要かなと思うので、そういうケーススタディをしてみたいです。まあ、そのへんはむしろ実際に経験していくべきことなのかもしれないですが、かといって現代の企業でそうそう失敗が許されるようなこともないし。

ううむ、この分野は今まで手を出していなかったけれど、もう少し本気で勉強してみる必要があるかなあ・・・。

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2008/08/29 (Fri.)

「みんなの知識」をビジネスにする

珍しくタイトル買いしてしまった書物。

兼元 謙任・佐々木 俊尚 / 「みんなの知識」をビジネスにする

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「みんなの知識をビジネスにする」というと、「他人のナレッジを利用して一儲けする」という意味合いに聞こえがちですが、たぶんそういうことじゃなくて、Web 上に構成される「群衆の叡智」をもっと誰でも手軽に利用(受け取り側だけでなく、発信するという意味でも)できるような仕組みを提供して、運営側はその対価を何らかの形(広告モデル含む)で得ることによって生活の糧とする、くらいのニュアンスでしょう。嫌儲という言葉があるから、というわけではないですが、お金儲けよりもまずはみんなに便利なモノ・コトを提供して、でも完全なボランティアじゃ成り立たないから、ちゃんと回るように仕組み化する、くらいのニュアンスかなと。

さすがにこういう考えかたになってくると、なかなか仕事と絡ませることが難しいので個人的な妄想や夢みたいな話になってきますが、かつて個人の Web サイトをビジネスに昇華させたい、「Web の力を使って新しい『ものづくり』の形を作りたい」「企業とユーザーの関係を変えたい」と考えていた私には、けっこう響くものがある本でした。当時私が運営していたサイトはユーザー間の情報交換が中心だったので、もしかしたら OKWave の兼元氏とは目指していたところが近かったのかもしれません。
結局、(Web 系のサービスプロバイダーや ISP みたいな、コンシューマー向けサービスもやっている IT・ネット系企業でもない限り)大企業ベースではなかなかこういうことを本格的にやりたくても、実現が難しいのが事実。OKWave なんかは企業のカスタマーサポートの受け皿になりつつうまくやっているようですが、そういう感じでネットベンチャーや中小のサービスプロバイダーが大企業の Web コミュニケーションをアウトソースする、みたいなスタンスが現在は主流なんですかね。
私が転職に絡んでそういうこと(個人サイトのビジネス化)を考えていた 3~4 年前には「大きなうねり」と言えるほどのものはなかったんですが、今ならアジャイルメディアさんあたりがやりたいことに近いのかな。もう少し、タイミングが違っていれば・・・と最近ときどき思わなくはないです。

本書の内容的には、兼元・佐々木両氏がいくつかの「集合知」をビジネスにできている企業の代表や担当者にインタビューし、対談形式でまとめたものになっています。登場人物によって「集合知」やそのビジネス化のしかたに対する捉えかたが異なるので、やや内容が散漫になっている印象は拭えない(モデレーターの両氏がむしろ発散方向に話を振っている印象もなくはない)ですね。読む前はもっと明確な方法論が定義されているのかと期待していたのですが、少し肩透かしを食ったかも。
とはいえ、こういうビジネスの現状や将来像みたいなものが、おぼろげではあるけど感じられたのは確かです。業界や職種によって読みかたも変わってくると思いますが、私がいる業界で参考にできそうなこともいくつかありました。ただ、それを自分の仕事に取りこんでいこうとか、将来の事業化を視野に入れて個人ベースで活動するとなると、かなり大変そう・・・。とりあえず、淡い希望だけを抱きつつ、本書の内容は心の片隅に置いておくことにします。

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2008/07/29 (Tue.)

ウェブを変える 10 の破壊的トレンド

最近 Web 本に偏ってますが、これはタイトル買いした本。

渡辺 弘美 / ウェブを変える 10 の破壊的トレンド

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ウェブ進化論』からさらに直近のトレンドを掘り下げる本としては、比較的よくまとまっているのではないかと。
Web 上で広がるトレンドを「ダイレクト」「フリー」「クラウドソーシング」「プレゼンス」「ウェブオリエンテッド」「メタヴァース」「ビデオ」「インターフェース」「サーチ」「セマンティックテクノロジー」の 10 のカテゴリに分類し、それぞれに代表的な Web サービスやテクノロジーを紹介しています。『ウェブ進化論』と重複する内容もありますが、多くは補完的に各カテゴリを掘り下げるような内容になっています。
「破壊的トレンド」というとてもセンセーショナルなタイトルがついていますが、確かに従来も産業構造を変えるような破壊的革命は数多くあったものの、Web の時代になって源流が起きてから既存ビジネスを破壊する閾値を越えるまでの動きは確かにダイナミックになっているので、「破壊的トレンド」という表現は的を射ていると思います。

現在の Web に発生しつつある新しい萌芽をざっと一覧するにはとても良いテキストだと思いますが、個人的に残念なのはこれがアメリカ発のものがほとんどであること(Web の先端はアメリカにあるのはもちろんだけど、アメリカが全てじゃないよね?という)、サービスの紹介に終始して本質を突くような分析があまり見られないこと(まあ、意図的にそういうまとめ方にしたんでしょうが)、根本的にこれが紙媒体のテキストであるということ。常に動いている Web のトレンドの、ある一時点をキャプチャした情報でしかないので、出版されると同時に陳腐化が始まる紙媒体とはもともと相性が良い題材ではないのです。まあ、誰もが海外の Web サービスにまで常にアンテナを張っておけるわけではないので、一時点での情報であっても、こういう一覧性の良い紙媒体にまとまっている意味はあるのかもしれませんが。でも、こういうテキストこそ、梅田望夫氏の Web ブックのような編集手法が適しているのではないかなと思います。

個人的に、あまり新しい発見があったというわけではないですが、アタマの整理には良かったのではないかと。どちらかというと、これをふまえてこの先来るであろう流れを予見させてくれる(あるいはそのヒントをくれる)ところまで突っ込んでほしかった気がします。
うーん、最近読んでいる紙媒体は総じて、新しい知識の吸収よりも結果的に考えの整理になるものばかりで、ちょっと残念。でも、今はやっぱり新しい知識を得るのは Web のほうが適しているんでしょうねー。

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2008/07/19 (Sat.)

フューチャリスト宣言

梅田 望夫・茂木 健一郎 / フューチャリスト宣言

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ウェブ進化論』『ウェブ時代をゆく』に続いて。

梅田望夫氏と脳科学者・茂木健一郎氏の対談を書籍にまとめたものですが、これがなかなか Web の未来の正鵠を射ている。茂木氏のクオリア本は以前読んだことがあって、アハ体験以前から「感情の成り立ちを研究する脳科学の第一人者」というイメージはあったんですが、こんなに Web に入れ込んでいる人だとは知りませんでした。
この本には梅田氏の先の二冊以上に、私に気づきというか「自分がこうしたいと思っていたこと」を改めて自覚させてくれるポイントが多く記されていると思います。

以下、いくつか引用。

インターネット、それからリナックスのような「オープンソース」に若いときに触れた人は、その影響を強く受けます。インターネットの成り立ちのところに、利他性というかボランティア精神的なものがかかわっている。インターネットという素晴らしいものが毎日動いている裏には、いろんな人のただ働きがある、無償の奉仕をしている人がいる。

そう、こういう感覚は実際にネットの中に生きて、ネットの「善の側面」を体感してきた人じゃないとなかなか理解されないものです。
でも、こういう奉仕の精神ってリアル世界にも本当はたくさん転がっているものだと思うんですが。それが、一般的には「ネット=悪」みたいな縮図で表現されてしまうのは、ネットの反対側にいる表現者たち(もう少しネガティブな表現をすると、旧来の情報流通の利権を握った人たち)がネットに対する危機感を抱いているからに他ならないからじゃないでしょうか。

情報というのはもともと自らが流通したがるもの。(中略)一方、もちろんインフォメーションにはパワーがあるわけで、自分だけがあるインフォメーションを持っていることは自らの権威につながる。日本の学者はそれによって生きてきたわけです。

2001 年頃に「情報は情報のあるところに集まりたがる習性をもっている=『情報の万有引力』」に気づき、国内で情報の最も集まる東京に戻ってきた私には、ものすごく実感のある言葉です。ただ、情報というものには金銭と同じような価値・経済への影響力があるため、それを独占して利権につなげようという考えが生まれがちなことも事実。それをある程度自由流通させて、向上心のある人々で世界をより良くしていこう、というのが、「インターネットの意志」みたいなものなんじゃないかと思っています。

インターネットに個がぶら下がっているときの「ぶらさがり方のかたち」を考えたときに、僕のイメージは、日本はぶどうでアメリカはリンゴだというものなんです。(中略)組織の構造で言っても、日本はぶどうの房。アメリカはリンゴの木という組織に、個人が一個一個のリンゴ。そういう感じを受けますね。

そうか、私はリンゴになりたかったんだ。日本企業(前職は外資系でしたが、資本が海外というだけで組織構造はかなり日本的だった)の中での立ち振る舞いに妙な違和感を持ち続けている根本には、こういう思いがあったからだと気づかされました。ネット上で固有名詞(本名じゃないけど)をもって活動してきた結果、組織よりも個人志向が強くなってきたと言えばいいのか。
日本の社会も、もっと「組織の中の個人の生き方、考え方」にフォーカスを当てても良いような気がするんですが。でも、それは「個人が責任を取る」ことに直結するので、(悪い意味で)伝統的な日本社会には馴染まないんだろうとも思います。

ところが今は URL、ブログがあればいい。ネット上のプレゼンスがその個人を支えるインフラ。それを見てもらえばどういう人かわかるから。(中略)つまり、ある組織に所属するということで完結している人は、これからは輝かない。

上記のようなことを、簡潔にまとめてくれたのがこの文章。
リアル社会をそう簡単に変えることはできないから、当面できることと言えば blog などで個人(リアル社会での立場を明かすかどうかに関係なく)の考え方を発信して、自分の立ち位置をハッキリさせていくこと。それでも私はネット上での情報発信を比較的リアル社会への足がかりにできたほうだとは思いますが、こういうことってもっと当たり前になっても良いはずです。極論すれば、名刺代わりに blog の URL を交換するみたいなことが。

インターネットの一二年の歴史の中で、悪ってあちこちにありますが、それはこそこそやるもので、悪が連鎖して膨れ上がっていく感じがあまり無い。(中略)「知の喜び」「学習の喜び」のほうが奥が深く、普遍性があるから、トータルでインターネットのインパクトを考えたときに、善性が自己増殖してくるほうが表にでてくる。そういう仮説を僕はもっています。

あ、これ私も全く同じ立場。

ネットが人間の脳に対して、なんでそんなに相転移的に働くのか、ということについて考えていくと、一つのビジョンが見えてくる。それは、われわれの脳自体が、まさにウィズダム・オブ・クラウズだということです。というのは、脳の神経細胞は、一つひとつが、それぞれ一万くらいのシナプス結合を結んでいて、情報を自由にやりとりしているんですが、神経細胞一個一個のレベルは、たいした知恵はない。人間の脳って、これまでのフィジカルなコンテンツのなかでは、それほどの情報交換をしていないんですよ。(中略)ただ、ブログやメーリングリストやスカイプなんかを使いまくると、(中略)脳同士のインタラクションが、いままでとは比べものにならないくらいの複雑なネットワークを織り成すようになるんですね。そこで生まれてくるウィズダムというものが、人類を次のステージに連れて行く。

うわー、『ウェブ進化論』を読んで私が感じたことがそのまま活字になってる(笑。やっぱり進化の行く先は、全体が一つの「個」になるような繋がりが生まれることだと思うんですよ。人類全体にとっての神みたいなものがいるとすれば、きっとそれは人類の総体のことを指すんだと思うんです。近年の SF 作品で数多くこういったメタファーが用いられるのは、むしろ人間が潜在的にもっているそういう意識がもたらした預言と言ってもいい。

他にもいくつか気づきとなるフレーズはありましたが、ざっとこんなところ。別に私のために書かれた本ではありませんが、まさに「私のココロがわかるなんて」と言いたくなりました。

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2008/07/10 (Thu.)

ウェブ進化論/ウェブ時代をゆく

ワーたんが繰り返し勧めるので、読んでみました。

梅田 望夫 / ウェブ進化論 ――本当の大変化はこれから始まる

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梅田 望夫 / ウェブ時代をゆく ――いかに働き、いかに学ぶか

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正直言って、この本(『ウェブ進化論』のほう)は、当時流行っていた「Web 2.0 本」の類だろうと思って食わず嫌いしてました。どうせ Google とか Ajax とかの事例を並べて持ち上げた本だろうと。でも、実際は書き手なりの真摯な想いの込められた良書だと想います。

連作っぽくなっていますが、『ウェブ進化論』は 2006 年当時の Web の世界の状況を、単なるテクノロジーとかビジネスチャンス切り口ではなく、その先端を生きる人の観点でまとめた技術・企業論。『ウェブ時代をゆく』は、前作を受けてそんな時代を「個性」として生きる生き方を説いた職業・人生論。ベースは共通ながら、論調は大きく違います。

内容としては Google のビジネスモデルやインターネット的な企業姿勢を大きくフィーチャーしていますが、読み方によっては最近流行りの「Google 礼賛」と取れなくもないのがちょっと残念なところ。まあ、信じるネットの未来を「インターネット神」という絶対的なものとして捉えるか、インターネット自体を「そこに繋がる人々の思惟の集合体」と捉えて「インターネットの意志=人類の総体的/潜在的な意志」として考えるか、という立場の違いだけという気もしますが。Google も企業である以上、そして巨大な組織になってしまった以上、少なくとも創業者が去った後の企業姿勢は保証されていないはずです。
まあ、Google の未来はさておき、私もインターネットとの出会いによって人生を大きく変えられたクチなので、そのインターネット(特に Web 2.0 以後の)が掲げる「オープン化」と「マス・コラボレーション」の波はきっと今以上に大きなうねりとなってリアルの世界をも巻き込み、その先にある「集合知」が全ての人々にとっての福音になる、と信じています。そういう意味では、根本的な部分でおそらく私は梅田望夫氏に近い価値観を持っているのだと思います。私自身、大学生から社会人になるまでの時間をインターネットの成長と共にしてきたので、『ウェブ進化論』の内容はあらかじめ知っていたことのほうが多かったですが、『ウェブ時代をゆく』の考え方には共感するところが多くありました。

この 2 冊の書物で書かれている「Web の進化」というのは、究極の形を考えるとそれはある種「人類の種としての進化」を意味するのではないかと思います。こういうことを言うと何だか宗教じみてますが、個々の人間の知がそれぞれ一つのシナプスとなって互いに結合し、全体として大きな「知性」というべき集合知を形成する、というのが、「Web の進化」の究極の到達点なのではないかと。
私もネットに繋がったこの十数年の間に、こうやって何人もの人と知を共有するだけでなく、心を通わせられたと感じることが何度もありました。それはまるで脳味噌にケーブルを挿して直接ネットに接続する感覚、あるいは精神が肉体を離れてネットの海の中を泳ぎ回る感覚に近い。極論すると、「Web の進化」とはヒトの革新にも繋がっていく話ではないかと考えています。

ちょっと話が大きく飛躍したので、元に戻します。

でも、こういう想像が生まれ、『ウェブ進化論』がもてはやされた理由は、インターネットの魅力に取り憑かれた人々が、オプティミスティックにその可能性を信じ、そのような未来が訪れる「願望」を抱いたからだろうと思います。生まれつきの境遇など何も関係なく平等なスタートラインに立ち、その気さえあれば自分で自分をどんどん高めていくことができる。先入観や政治的なしがらみを離れて対等なコミュニケーションができる。
現実の社会に当てはめてみると、そういう願望は資本主義経済の原理や企業の体面や「モラル」といったある種脊髄反射的な防衛本能によって却下、もしくは否定されるのが現代の(少なくとも日本的社会の)壁ではありますが、インターネットの可能性はそれすら超えられるんじゃないかというオプティミズムを、それを信じる者に与えてくれる気がします。

転職して今の仕事に就くことを決めたときから、この仕事には(正直、やり甲斐を感じてはいるものの)おそらく骨を埋めることはないんだろうな、自分の区切りがつくところまでやったらネット上の「形のないもの」をつくる仕事、もしくは社内にそういう役割があればそこに移るんじゃないかな、ということを頭の片隅で考え続けています。でも、だからこそ、ネットの「あちら側」(この blog で表現する上では「こちら側」なのだろうけど、『ウェブ進化論』と表現を合わせてあえて「あちら側」)と「こちら側」(同じく、ここから見れば「あちら側」)の距離を縮めることが、今の仕事における自分のミッションだと思っています。そうしなければ、旧世代の企業はおそらく、Web 2.0 の先に来るべき時代を受け止めることができないだろうから。
ただ、それはものすごく骨の折れる作業で、自分の気持ちさえあればどんどん独りで先に進んでいくことができる「あちら側」に、ともすると逃げ込みたくなります。でも、仕事を離れてでも私に共感し、力を合わせようとしてくれる人が近くに一人でもいる限り、諦めずにやってやろう、と思えるのも、その同志がおそらくネットの可能性をオプティミスティックに信じているからなんじゃないかと思います。

組織だって人が作るもの。あまりそれに縛られずに、自分が正しいと信じることをやっていけば、(管理職の見る目が間違っていなければ)組織は後からついてくる。私も諦めずにやってみようと思います。

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2008/06/06 (Fri.)

Web コミュニティでいちばん大切なこと。

最近どうも、あがいている割に仕事が思ったような方向に進まなくて、悶々としてます。一歩一歩前進している感はあるんですが、もう少しドライブしてほしい。自分なりに何かブレイクスルーしたくて、代償行為じゃないけど本を読み漁ってます。本当はこういうときこそどんどんアウトプットしていった方が良いのかもしれませんが、まずは自分の中にいろんな経験を取りこんでいってレベルアップしたい、と思うのは性格なのでしょうか。そういう意味では、書物というのは他人の経験を手っ取り早く疑似体験して自分のものにできる、良いツールなんだと思います。

古川 健介 ほか / Web コミュニティでいちばん大切なこと。 CGM ビジネス"成功請負人"たちの考え方

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この本もそんな思いで読んでみたものの一つ。最近、Web コミュニティに再び積極的に関わりたい(SNS をやってお金にしたい、というわけじゃなく、そこに集まってくる人の力を前向きな方向で活かしたい)と感じている私にとって、興味を惹くタイトルだったので、手に取ってみました。
Web コミュニティビジネスで成功事例をもつ 8 人の著者が各々のテーマで論旨を展開する本です。ジャンルやステージの異なる 8 人がそれぞれの内容を発表し、全体として一つのテーマをなしているという意味では、本を読むというよりはカンファレンスに参加して有料セミナーを受講してきたような気分になります。「コミュニティ」と一口に言ってもさまざまな形態があるので、私には興味がないカテゴリやそれってどうなの?と思う部分も確かにありましたが、chapter 3 あたりまでは私もかなり共感できる内容でした。
私も Web の世界に足を踏み入れてもう 12 年になりますし、コミュニティ的サイトを運営した経験もあるので、特に新規性のある話はさほど多くありませんでしたが、いくつかの気づきと他人に説明/説得するための材料をもらえた気がします。ビジネス本の受け売りをするつもりはありませんが、ハードルを越えるためのヒントにはなったかな。

ビジネス/ライフワーク/趣味のどれであっても、「Web 上で人が集まって何かする」何らかの仕組みに関わっている人なら一読して損はない書物だと思います。

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2008/05/31 (Sat.)

孫子の兵法 ―ライバルに勝つ知恵と戦略

守屋 洋 / 孫子の兵法 ―ライバルに勝つ知恵と戦略

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「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」などで知られる孫子(孫武)の兵法書、の解説書。二千年以上も前に書かれた兵法ながら、現代にも通じる示唆が多く含まれています。といっても現代の日本ではそうそう戦う機会はないので、主にビジネスの場でということになりますが。
いかに戦いに勝つか(というより「負けないか」)、ということをとにかく冷静に分析して書かれた兵法ですね。また、この兵法から転用されている言葉や故事があまりにも多いため、さらっと読んだだけでは「当たり前のこと」が多くて一般教養の復習としか感じないかもしれませんが、視点を変えて自分の仕事や生き方の書として捉えると、学ぶべきものを確かに多く感じます。この本はそんな『孫子』の原文を紹介し、背景を解説しながら現代にどう活かすか、を説いた本で、原文じゃさすがに読めない『孫子』の考え方を簡単に身につけさせてくれる良書だと思います。ほんの¥500 で買えてしまう文庫なので、興味がある方は是非。

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2008/05/07 (Wed.)

そんなんじゃクチコミしないよ。

ビジネス書というか、ライフワークの参考書というか。

河野 武 / そんなんじゃクチコミしないよ。 ネットだけでブームは作れない!新ネットマーケティング読本

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なんか、いろんな意味で先日読んだ『その 1 人が 30 万人を動かす! 影響力を味方につけるインフルエンサー・マーケティング』とは対極にあるような本ですが、読み込んでみると同じことを正反対のアプローチで書いているだけだというのがよく分かります。要はネットを使ったクチコミって可能性はあるけれど、広報や広告などの認知プロセスと組み合わせた設計がちゃんとなされてなければ意味がなくて、なおかつ当初リーチできるセグメントも限られる(そもそもがイノベーター~インフルエンサーを中心にクチコミを広げていくためのものなんだから、そりゃそうだ)ということ。現実には、クチコミは未だにマス広告に代わる低コストなメディアか、認知アップの魔法かのような誤解がなかなか解けない部分があるのですが、偉い人にはそれがわからんのですよ。実際にアウトライン描いてみたら意外と工数がかかることが分かって尻込みされる、なんてことも少なくないし。でもそれこそ工数かけずにクチコミを起こす魔法なんてないんだから、というのがホンネだったり。

「クチコミ」って言うけど別に新しい分野でも何でもなくて、ツールとしてインターネットが使われるようになっただけで本当はずっと昔からある考え方に過ぎないわけで。こういう本を読めば読むほど「マーケティングのキソ」を改めて教わっているような気がしてなりません。ネットを媒介に One to One を改めて考える、というのはもう 2000 年頃から普通にある概念だし。でも実はそれがなかなか理解されないのは、ちょうど最近この方面がもてはやされているからなんですかね。

個人的には、こっち方面を学び&経験すればするほど CGM や WOM といったメディアをプロモーションツールとしてではなく CR/CS やフィードバックのためのツールとして活用すべきでは、という思いを強くするんですが、これもまた直接売上を伸ばすものではないというのがサラリーマン的にはつらいところ。本書にもありますが、一般的に企業の評価基準が半年~一年単位というのも、時間がかかる「クチコミ」を相手にする上では悩ましいですね。対象とする市場規模や社内コンセンサスの取りやすさ、という意味でもこういう分野はベンチャー企業のほうが手がけやすいんだろうなあ、と思います。

WOM メディアの目指すべきところや「身の丈」を知り、無謀なプランに陥らないようにする、という部分をきちんと押さえつつ、その上でクチコミの可能性を信じる、という意味では、本書は非常に良い文献だと思います。smashmedia の中の人が書いている blog を再編集した書物なので非常に読みやすい(文体や内容という意味だけでなく、blog の該当エントリーを拾って読むよりはるかに整理されているという意味でも)という点も○。たぶんこの分野に(仕事としてでなくても)多少なりとも携わった経験がなければ実感として理解するのは難しいかもしれませんが、この分野を仕事にするなら『その 1 人が 30 万人を~』の次に読んでおくべき良書だと思います。

投稿者 B : 00:15 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2008/04/09 (Wed.)

知識デザイン企業

紺野 登 / 知識デザイン企業 ART COMPANY

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昔からモノのデザイン(美装・加飾だけでなく、ユーザビリティとかアフォーダンスとかいった機能に結びつく部分、もっといえばより広いビジネスモデルまで)に興味を持ってきた私としてはちょっと読んでみずにはいられないタイトルの本でした。「iPod の裏はなぜきれいに磨かれているのか」という派手なキャッチコピーがオビに踊っていたのが心配でしたが、本質はもっと深いことを言いたいんだよね?と思い。

冒頭の「日本企業はモノづくりだけに『ひきこもって』いてはいけない」というくだりにものすごく肯けるものを感じたので、どんどん読んでいくつもりでいたんですが、この本ものすごく読みにくいですね・・・。他からの引用がかなり多く、それぞれにほとんど解説もないままどんどん進んでいくので、(私がこの本が想定する読者層ではなく、前提知識がなさすぎるだけかもしれませんが)関連文献を 10 本以上読んで理解していなければ本書の深いところは理解できない、という印象を受けました。

個人的に理解したところと言えば

  • 技術志向や品質改善にみられるような、いわゆる「モノづくり」的アプローチだけでは、企業は今後生き残っていけない

  • 企業はハードからソフト、サービスに至るまでを総合的にデザインし、「エクスペリエンス」として顧客に提供していくことが求められている

  • つまりボトムアップ的なアプローチよりもビジョンある経営者のトップダウン、あるいはナレッジワーカーのコラボレーションによって総体的なエクスペリエンスをデザインすべきだ

  • 企業の価値基準は経済的価値だけでなく美的価値、知識的価値、社会的価値、創造的価値にあり、今後はそれらの価値を重視する企業が支持される
といったところで OK?もしかしたら全然違っているかも。
なんだかインパクトのある言葉だけがどんどん踊っていくような印象で、言いたいこととしては良いと思うけど、本の書き方としてどうかなーと思います。何となく著者が考えていることは分かるような気はするけど、それぞれの意味するところの深いところが分からないので「納得」しながら読めないんですよね。あと、おそらくこの本自体が経営者向けに書かれたものだからだと思うんですが、これを読んで私自身が企業や社会に対して働きかけることができる要素が少ないのも、納得感に欠ける一因なのかも。

表紙のピクトグラムからして、私が知りたいことを分かりやすく書いてくれている本かと期待したんですけどね。求めていたものとは違い、ちょっと残念でした。

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2008/03/18 (Tue.)

改訂 シンプルマーケティング

1 年以上前に買っておきながら、忙しさにかまけて埃をかぶっていた本をようやく読破。

森 行生 / 改訂 シンプルマーケティング

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「勉強しなきゃ」と思って何冊か買った本のうち、コトラーから手をつけたのが間違いだったのかも。確かにマーケティングのバイブル的書籍ではあるものの、読んでみると「そりゃ、そうだよね」という一般論的な話が多く、半分ほどで挫折してしまいました。今思えば、こっちを先に読めば良かった。

この本はタイトル通り「シンプル」に、実例を交えながらマーケティングの基礎をまとめてくれる本です。この本のキモである「プロダクトコーン」「DCCM 理論」「クープマンの目標値」が理解できただけでも読んだ価値はあったかと。確かに今まで経験的に感じていたことばかりではありますが、こうやっていったん抽象化して理解すると以後は様々なケースに応用が効きます。

あえて言えばサンプルとして取りあげられていた事例の紹介の仕方がシンプルすぎて、もっと他にも成功/失敗の要因はあったんじゃないかと突っ込みたくなるのと、方法論を理解しても「いつ、どんな場合にどの方法論を適用すべきか」までは示してくれないので、ただ読んだだけでは応用の仕方はそれこそ勘と経験に頼りがちになりそうなところが気になりましたが、まあそれはこの本に限ったことじゃない(どんなに優れた武器を持っていても、使い方を身につけなければ意味がない)かと。
確かに周りを見回してみても、この本に書かれているような失敗例の典型のような商品戦略(いわゆる「ミニ大企業」的戦略)は枚挙に暇がないし、そういう意味では「マーケティングのプロ」と呼べるマーケッターって、日本に限って言えば正直あまり多いとは言えないんじゃないですかね。

まあ私も偉そうなことを言える身分ではなく、むしろこれから勉強しないといけない立場だったりしますが、全く違う業種・職種に転職した身としては、周囲より遅れているとも言えるわけで。そんな自分の付加価値って何だろう・・・と自問自答する昨今ではありますが、あえて挙げるなら今の仕事に関しては自分は「客のプロ」にもなれる(もちろん、すべての種類の顧客を代表できるわけではないけど)というところが最大の付加価値なのかな、と考えていたりします。そこに答えがあると思うから転職したわけでもあるし。

とにかく、もっと精進ですかね。この本に加えて、少なくともランチェスター理論と孫子の兵法くらいは読んでおきたいと思います。

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2008/03/12 (Wed.)

その 1 人が 30 万人を動かす! 影響力を味方につけるインフルエンサー・マーケティング

たまにはビジネス書も。

本田 哲也 / その 1 人が 30 万人を動かす! 影響力を味方につけるインフルエンサー・マーケティング

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このへんは今年の個人的テーマ。数年前からいろいろ考えてはいるけど、今年はより具体的に結果を出そうと思って公私ともにあれこれ動いています。まあ、本当はこういうセールスプロモーション系だけじゃなくて、もっと企業とユーザーのインタラクティブな関係を模索したいんですが、会社を動かすにはまず結果が客観的に見えやすい方向からアプローチする必要があるわけで。

内容的にはこれまで自分が独学+仕事等を通じて知っていることがほとんどで、それほど目新しいものはなかったんですが、具体例を挙げつつ平易な言葉でまとめられているので非常に読みやすく、頭の整理になりました。事例も「ああ、あれね」というメジャーなものからこれを読んで初めて知ったものまで列挙されていて、理解の助けになった感じ。確かに直接商品やサービスのプロモーションに結びつけたくなるのは心理だけれど、社会的な演出というか空気作りも大切だなあと。

インフルエンサー・マーケティングの入門書としてはとても良い本だと思います。マスマーケティングだけじゃだめだけど WOM マーケティングってどうやったら良いか・・・という段階の人なら必読の一冊。表紙は真っ赤だし、タイトルはセンセーショナルですが、中身はいたってマジメな本です。

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