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2018/09/07 (Fri.)

飛びこめ!!沼 番外編 01:FOVEON センサーとは何か

先日発売された 04 巻の記憶もまだ新しいところですが、先月のコミケで発売された新刊をコミック ZIN で買ってきました。

安倍吉俊 / 飛びこめ!!沼 番外編 01:FOVEON センサーとは何か

飛びこめ!!沼 番外編 01

通常のナンバリングタイトルではなく番外編という位置づけです。サブタイトルは「FOVEON センサーとは何か」。
いつもは半分以上おちゃらけながらシグマのカメラやレンズをオススメし、写真(というかカメラ趣味)の楽しさを紹介するのが『飛びこめ!!沼』シリーズだと思っていますが、このサブタイトルからも分かるとおり今回は解説本に近い体裁。

飛びこめ!!沼 番外編 01

冒頭から「FOVEON センサーの解説をします」とあります。
自分では Foveon 搭載カメラは使ったことがないものの 70 万円もした初代 SD1 の頃からシグマを追いかけてきた私としては Foveon の仕組みについてはそれなりに理解しているつもりではいますが、『飛びこめ!!沼』のフォーマットで技術解説したらどういう表現になるのか気になっていました(笑。

飛びこめ!!沼 番外編 01

解説するふりしてほとんどおちゃらける本かと思ってましたが(ぉ)、実際は技術的に難しい部分は適度に省略しつつ、Foveon の構造から長所・短所までマジメに解説されていました。
ちなみにこの本で解説されているのは最新の Quattro 世代のセンサについてで、Merrill 世代については触れられていません。まあ基本的には同じ思想に基づいたセンサなんですが、Quattro センサ発表時のエントリーで書いたとおり Quattro センサの G/R 層は補間処理によって作られたものになるわけで、本来の Foveon が目指した「全色での完全な解像」を一部諦めた代わりに気難しさを緩和した現実的な落としどころ、というのが Quattro センサに対する私の理解。

飛びこめ!!沼 番外編 01

基本的に Foveon オススメ本だから良いところしか書かれていないかというとそんなことはなく、Foveon の弱点と言われる高感度性能の低さについて比較作例つきで紹介されています。
「ISO100 固定必須」と言われがちな Foveon ですが、こうしてみると RAW 現像前提なら ISO800 までは何とか使えそうですね。

飛びこめ!!沼 番外編 01

そして後半は例によってシグマユーザー自虐ネタ(笑。期待を裏切りません。

個人的にはカメラに求めている方向性が違うので Foveon 搭載カメラを買う予定はありませんが、レンズ以上に Foveon センサと sd/dp シリーズというカメラの存在が「シグマ」という光学メーカーの立ち位置を明示しているのだと思っています。単なる安価な互換レンズメーカーから脱却し、万能ではないけど突き抜けたこだわりを持つユニークなメーカーというブランド・ポジションは、単に高品質なレンズを作っていただけでは得られなかったことでしょう。『飛びこめ!!沼』シリーズは、ある意味そのユニークさを象徴する同人誌だと思います。これだけの愛と自虐をもって語られるカメラメーカーも他にありません。

シグマ、ならびに安倍吉俊先生の次回作にも期待しています。

シグマ / sd Quattro H

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投稿者 B : 22:01 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2018/06/05 (Tue.)

漫画版 野武士のグルメ 3rd

久住昌之、土山しげる / 漫画版 野武士のグルメ 3rd

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先月末、漫画家の土山しげる先生が逝去されました。

土山しげるが68歳で死去「喰いしん坊!」「極道めし」などで活躍 - コミックナタリー

68 歳とのことで、まだお若いのにと思うと言葉も出ません。昨年亡くなった谷口ジロー先生といい、続きますね...。
土山先生といえば『荒野のグルメ』『野武士のグルメ』で久住昌之先生原作の漫画化を担当された方でもありますが、それ以前よりグルメマンガの大家として有名でした。私は三年前の久住先生のトーク&サイン会でご本人のお話を伺ったことがありますが、料理を緻密に描く谷口先生とは違い、土山先生は「食べるときの表情」でおいしさを表現していると仰っていました。

本当に直近まで現役で描き続けていたようで、どれが遺作なのかはちょっと判りませんが、『野武士のグルメ』の 3 巻が最近出ていたことに気がついたので追悼の意を込めて買ってきました。

野武士のグルメ

主人公・香住武。久住先生の風貌を意識したと思われるドラマ版の竹中直人も面白かったけど、やっぱり漫画版のこの野暮ったいおじさんが心の中に「野武士」を住まわせているという設定がいいんだよなあ。

野武士のグルメ

質のいいうなぎに割り箸を立てたときの擬音に「サフ」!このセンスですよ。
土山先生自身は「表情で表現」と言っていたけど、この鰻や米の質感もなかなか、谷口ジロー先生にひけを取っていない。うなぎ食べたくなってきた(´ρ`)。

野武士のグルメ

そしてこの表情。おなじ「おいしい」の表現でも、喜んでいるとき、興奮しているとき、しみじみ味わっているとき、懐かしさを感じているとき...など少しずつ、ちゃんと違うのがいい。
あと『孤独のグルメ』と違って飲酒シーンがあるのも、飲んべえとしてはグッときてしまいます。

ちなみにエピソードの半分くらいは場違いな店を選んでしまったとか、店の雰囲気に飲まれてしまったとか、失敗寄りのエピソードだったりします。実在する店舗へのロケを伴うドラマだとそういう話は扱いづらいですからね(ドラマ版『野武士のグルメ』では失敗エピソードにも果敢にチャレンジしてましたが)。

野武士のグルメ

単行本の最後のコマがこれですよ。満面の笑みで「さ、こちとら酔う前に切り上げよう」。まさに野武士らしい潔さであると同時に、土山先生の遺作(の一つ)の最終コマとして見ると、なんだか意味深に思えてきます。

ご冥福をお祈りいたします。
こりゃあ、他の代表作も読んでみないといけないかなあ。

投稿者 B : 22:22 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2018/05/16 (Wed.)

飛びこめ!!沼 04

シグマの優先度の高い重要書類の委託販売が始まったので入手しました。今回はたまたま新宿に行く用事があったため、初めてコミック ZIN のリアル店舗で購入。

安倍吉俊 / 飛びこめ!!沼 04

飛びこめ!!沼 04

おお、今回はなんか表紙の雰囲気が違いますね。過去三巻は表紙から濃さ全開だったのに、今回は恋愛ものかというような柔らかさがあります。手にしてるカメラは sd Quattro だけど。

でもページをめくると

飛びこめ!!沼 04

「直感でピンと来たレンズに有り金全部ぶっ込む!!」

はい、これテストに出ます(ぉ
冗談抜きで、シグマユーザーでなくてもこんな感覚で機材買ってる人は少なくないんじゃないでしょうか(←

ま、私も 85mm F1.4 は去年買いましたが、まさに「直感でピンと来たレンズに有り金全部ぶっ込む」に近い状態だったと言えます。昔は「自分の持っているレンズと撮りたい被写体を考えながら、持っていない焦点距離のレンズから選ぶ」という買い方だったのが、ある程度揃って来ると「このレンズはどんな描写なんだろう」という見方になってスペックや作例をチェックした挙げ句最後は直感でエイヤッと買う、という感じになりがち。もう手元に 35・50・85mm 付近のレンズが何本あるかも分かりません(ぉ

飛びこめ!!沼 04

でも 85mm F1.4 は描写性能だけで言えば私が持っている全てのレンズの中で最高と言って良く、後悔はしてません。重いから使用頻度それほど高くないけど。
シグマ山木社長が言う「85mm はツァイス Otus をベンチマークにした」というコンセプトは伊達ではありません。描写のために小ささ軽さを捨てたという意味ではシグマの [Art] 単焦点シリーズはツァイスレンズに通じるところがあり、まさに「一般人でも買える Otus」だと思います。まあ普通の一般人は Otus 欲しいと思わないだろうし安くてもこの鈍器の如きレンズを買う人は既に一般人ではなくなっているのかもしれませんが(ぉ

飛びこめ!!沼 04

そして「FOVEON 物件」。全然別の被写体撮りに行ってるはずなのにメインそっちのけで錆とか葉脈とか撮る人、身の回りで何人も心当たりある(笑)シグマのカメラボディを買った人がほぼ例外なく浸かっていく方向です。
逆に言えば、そっちにだけは行かないと決めている私はシグマユーザーの中では邪道なのかもしれません。

あ、でも「写真が好き」と「カメラが好き」の比重は人それぞれ、全員が尊重されるべきだと思っているので、そっちの沼を覗き込んでいる人がいたら私は迷わず背中を押しますよ(ぉ

飛びこめ!!沼 04

「ドイツ製のレンズには『ズミター』とか『ビオター』みたいなかっちょいい名前があるのに、シグマ(を含む日本メーカー)のレンズにはそういうのないよね」というカメラユーザーなら誰もが一度は抱くであろう疑問への、シグマの回答が「ボケマスター」(違

最近のシグマは新製品に「ライト・バズーカ」とか「ボケマスター」といった微妙にカッコ良くないニックネームをつけて売り出すことが増えてきていますが、この絵↑のように彫り込まれたらちょっとイヤだ(;´Д`)ヾ。

このシリーズ、巻を重ねて正直少し勢いがなくなってきたかな?と感じていたのですが、シグマの新製品群に煽られる形で再びパワーを取り戻したと感じた 4 巻でした。
新生「カミソリマクロ」も間もなく発売されるし(ちょっと気になってる)、「ボケマスター」も店頭に並ぶまでもう少しかかりそうなので、今年はまだしばらくシグマ製品の話題が続きそうですね。

シグマ / [Art] 85mm F1.4 DG HSM

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投稿者 B : 22:12 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2017/12/07 (Thu.)

飛びこめ!!沼 03

そろそろ定番となりつつあるシグマの重要書類、遅ればせながら私も読みました。

安倍吉俊 / 飛びこめ!!沼 03

飛びこめ!!沼 03

安倍吉俊先生はこの夏から『こどものグルメ』の連載も始まっていて、私の中ではすっかり人気作家の印象。私は『飛びこめ!!沼』で初めて知りましたが、複数作を読んでみると先生の持ち味が分かってきますね。イイ感じに力の抜けたタッチと独特の「間」がクセになります。

内容的にはいつもの通り、

飛びこめ!!沼 03

シグマユーザーの自虐ネタ満載。

シグマメインじゃないけど、明るい物を暗く撮る構図の達人なら知ってた(ぉ。いや、私はすごく好きですよ彼の写真。

飛びこめ!!沼 03

ここにきて唐突なガンダムネタ!「心のランバ・ラル」、なんというパワーワード。

今回のポイントは、シグマユーザーが α6000 を使ってみるシーンがある、というところでしょうか。シグマと α(中でも特に α6000)は対照的なカメラと言って良く、両方を使うと互いの良さと悪さが痛いほど解る組み合わせだと思います。しかし MC-11 が出たことで sd Quattro をメインで使いつつ、夕方以降の撮影やレンズ本来の画角を楽しみたいときには α7 シリーズに付け替えるという使い分けもでき、実はそれってすごく写真やカメラの世界観を広げてくれることだろうとも思うわけです。私は今からシグマのカメラボディに手を出す予定はありませんが(笑)、それでも MC-11(EF-E 版)を買ったおかげでボディとレンズの組み合わせが倍増し、撮影の自由度と機材選びの悩みが増えました。

本作も面白かったです。あえて物足りない点を挙げるとすれば、三巻目ともなると主人公(後輩くん)がだんだんカメラに慣れてきて、一巻の頃の「初心者を生温かい目で見守る気分」が少し薄れたことと、従来よりもページ数がちょっと減ってしまったことかな。
いずれにしても、ここまで突き抜けた特定メーカー愛を凝縮して本に出せるのは同人誌ならではだし、これだけ愛されるシグマというメーカーが羨ましくもあります。

自分が満足する写真さえ撮れれば機材なんて何でもいい、とは思っているけれど、こういう本を読むと好きな機材をうまく使えた悦びを味わうために撮るのもまた写真の楽しみなんだよなあ。そういうのも含めて「好きなものを好きなように撮る」ってことだと思うんです。

ああ、写真を撮りに出かけたくなりました。

投稿者 B : 23:33 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2017/07/24 (Mon.)

こどものグルメ

『孤独のグルメ』の久住昌之先生原作による新作漫画が Web コミックとして連載開始されました。

こどものグルメ - 無料マンガサイト pixivコミック

comic エスタスというのはソニー・デジタルエンタテインメント(主にモバイル向けコンテンツを手がけるソニー子会社)が pixiv コミックのプラットフォームを利用して展開する Web コミック誌のようです。こんな媒体やってたんですね...。

作画を手がけるのは、シグマの H 本こと『飛びこめ!沼』でカメラクラスタに話題を振りまいた安倍吉俊先生。私はこの同人誌で始めて知ったんですが、もともと同人作家ではなくプロのイラストレーター/漫画家とのこと。久住先生と安倍先生を掛け合わせるという発想はありませんでしたが、両方愛読している私には深く深く突き刺さりました(笑
カメラ系同人誌発、という意味では先日飯田ともき氏による『カメラバカにつける薬』がデジカメ Watch で連載開始されたところですし、急にこのあたりが盛り上がってきた印象があります。

漫画のほうは主人公の小四女子・蓬野杏(よもぎのあん)が子どもならではの視点で料理をする、というストーリーのようです。第一話のテーマは「ポテサラ丼」で、残り物のポテサラをご飯に載せてソースをかけてチンしただけ、という簡単レシピ。
設定上食材や手順にはあまりこだわれないだろうし、きっと『花のズボラ飯』の小学生版みたいな話なんだろうな...と予想していたところ、ほぼそのとおりでした。これ花ズボのエピソードにしても成り立ちそうな話ではありますが、安倍吉俊先生が描くことでキャラクターの動かし方がずいぶん違っていたり、これはこれで一つの世界観がありますね。

まだ一話なので今後の方向性もよく分かりませんが、基本的には冷蔵庫の残り物を活用しながら包丁や火は極力使わない工夫レシピ、という感じになりそう。子どもが主人公なだけに駄菓子を食材の一つに使う、というアイデアも出てきたりするかもしれません。いずれにしても、子どもだけでなく大人でも手軽に小腹を満たせるアイデア料理が中心になりそうなので、実用性は高そう(笑
また初回にて既に「くちのなかにすてる」という名台詞が爆誕していますが(笑)、子どもという設定はインパクトのある造語を生み出しやすいだけに、そっち方面での期待も高まります。

先日谷口ジロー先生が亡くなって漫画版『孤独のグルメ』の新作はもう読むことができなくなりましたが、代わりになるものではないとはいえ今後はこちらの『こどグル』を楽しみにすることにします。

投稿者 B : 22:23 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2017/05/10 (Wed.)

飛びこめ!!沼 02

私の周囲でやたら買ってる人が多い某シグマの重要書類、ウチには今日届きました。

安倍吉俊 / 飛びこめ!!沼 02

飛びこめ!!沼 02

先日のコミティアで発売されたものが早くも COMIC ZIN での委託販売が始まったようで、さっそく注文。本当は紙の本を増やしたくないので電子版も発売してほしいところではありますが...まあ文字通り「薄い本」だしいいか(ぉ

前作もかなり濃い同人誌でしたが、本作はさらに輪をかけて深い沼に引きずり込んでくる一冊です。

飛びこめ!!沼 02

冒頭からしてこれですからね...。
基本的にはシグマユーザーによるシグマユーザーのための自虐本です(ぉ

飛びこめ!!沼 02

「OS は『重くてスイマセン』の略」、これテストに出ます(ぉ

飛びこめ!!沼 02

シグマ製品につけられがちな略語、鳴り物入りで登場した「SFD」とは何の略か?答えは本を買ってその目で確認すべし(ぉ

飛びこめ!!沼 02

出た!Foveon ユーザーのとにかく何でもカリカリに撮りたくなる病(笑。合併症としてとにかく錆を撮りたくなる病を発症する場合があります(ぉ。

いやー、今作も前作以上に濃いネタ満載でした。シグマ、愛されてるなあ。
いくら SIGMA GLOBAL VISION のレンズの評価が高いとはいえ、レンズだけではシグマもここまで愛されるメーカーになってなかっただろうなあ。極端な製品バランスの sd/dp シリーズと山木社長のキャラ(笑)があったからこそ専門の同人誌まで発売される状況になったのではないでしょうか。あの規模の会社で、ファンに支えられながら一定のポジションを築く。なかなかできることではなく、羨ましくもあります。

それとこちらも購入しました。

ていこくらんち / カメラバカにつける薬 7

カメラバカにつける薬 7

同じくコミティア向けに発売された『カメラバカにつける薬』の新刊です。
こちらは PDF 版も発売されているので、私は電子で購入。

カメラバカにつける薬 7

もともと「レンズ沼病を治療するための病院」という設定で始まったこのシリーズですが、いつの間にか病院を離れて草野球なんかもするようになったのが、7 巻では釣りまで始めてしまいました。
それにしても「インスタ川でフォロワーを釣る」とか毒が強すぎる(笑

カメラバカにつける薬 7

釣り針(笑
個人的には釣り針が鈴なりになったような投稿はあまり好きではありません。

カメラバカにつける薬 7

「なんでも東京つければいいと思ってやがる」...ああなんかインスタじゃないけど身近に思いっきりそういう例があったような...。

カメラバカにつける薬 7

うっ、何故だろう目から水が。・゜゜(っд`)゜・。

ちなみにこれは今回新登場のキャラ、華為(ファーウェイ)ちゃん。ライカ警察と仲良しです。

カメラバカにつける薬 7

絞り 11...さっき別のマンガでも見たような...?
読者層が似ていることもあって、『沼』のほうとリンクするようなネタが散りばめられていて、そういう意味でも面白かったです。

そういえばここしばらく機材買ってないなあ。手持ちのラインアップで満足しちゃってるというのもあるけど。
友人とカメラ機材の話をすることも以前よりは随分少なくなりましたが、こういうの読むと久しぶりに飲みながらカメラ談義でもしたくなりますね。

投稿者 B : 22:22 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2017/02/20 (Mon.)

神々の山嶺

先日亡くなった谷口ジロー先生の追悼の意味も込めて、代表作を一つ読んでみました。

夢枕獏、谷口ジロー / 神々の山嶺

神々の山嶺

名作と呼ばれるいくつもの作品の中から、表紙に凄みを感じた『神々の山嶺(いただき)』を選びました。そういえばこれ、去年映画化されたときにちょっと気になっていたのですが、結局そのままスルーしてしまったんですよね。映画評なんかを読む限りではキャストは良いけど...という感じらしいので、観なくて正解だったかもしれません。
本作は夢枕獏氏の同名の小説を漫画化した作品で、夢枕獏氏自身からの指名で谷口ジロー先生の作画になった、と後書きに書かれていました。フィクションではありますが、実在する登山家をモチーフにした非常にリアリティと重さのある作品です。

何故山に登るのかとの問いに「そこに山があるから」と答えたという登山家ジョージ・マロリー。エベレスト山頂付近で遭難し、人類史上初のエベレスト登頂を果たしたかどうかは今でも謎に包まれています。そのときに携えていたと言われるカメラをネパールの首都カトマンドゥで偶然手に入れた日本人写真家・深町誠がその真相を追ううちに、行方不明となっていた伝説の日本人登山家・羽生丈二と出会い、彼の登山人生に引き込まれていくというストーリー。

神々の山嶺

羽生はその人生を賭けてエベレストを、それも単に登頂するわけではなく「誰も成し遂げたことのないルートと方法で」登ろうとします。作品の大半はエベレストのみならず日本や世界の険山(それも冬季)の描写に割かれます。暖房の効いた室内で読んでいても、まるで自分が冬山にいるかのような寒さや厳しさを感じてしまうほど描き込まれたコマが延々と続き、読むのにさえエネルギーを消費する感覚があります。これと比べると『孤独のグルメ』はあえて背景を白抜きにしているコマも多く、緊張感の出し方が全く異なることがよく分かります。

神々の山嶺

命を賭けるレベルの登山なので、遭難や事故による怪我や死とは常に隣り合わせ。凄惨な事故を生々しく描いたシーンも多く、読むと体力を削られる感覚。それでも物語はこちらをグイグイ引き込んでくる強さがあり、私は電子版の全巻セットを購入し、結局最後までほぼ休まずに読み切ってしまいました。そして読了後にはどっと疲れているという。

神々の山嶺

エベレストをはじめとした冬山の描写には目を見張るものがあります。『孤独のグルメ』の描き込みも半端なかったですが、その比ではない緻密さ。冬山を経験したことのない私は原作小説を読んでも情景が想像できなかったかもしれませんが、この「画の力」はやはり偉大だと思います。自然の偉大さと恐ろしさが同時に伝わってくる描写で、あまりにもちっぽけな自分を感じて涙が出そうになったほど。

神々の山嶺

ちなみに作中では、登場人物が何かに関して熱弁を振るうシーンがいくつかあり、この構図と同じようなコマがたびたび登場するわけですが、これを見るたびに

孤独のグルメ

『孤独のグルメ』のゴローの仕事仲間・滝山を思い出して吹く(笑。谷口ジロー先生的には定番の構図なんだろうなあ。

それにしても凄みのある作品でした。画力にここまで震えたのは井上雄彦先生の『バガボンド』と安彦良和先生の『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』以来かもしれません。
改めて、惜しい人を亡くしたものです。

『孤独のグルメ』とはまた違った谷口ジロー先生の世界。他にも何か読んでみようと思っています。

夢枕獏、谷口ジロー / 神々の山嶺

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投稿者 B : 22:00 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2017/02/12 (Sun.)

おくやみ:『孤独のグルメ』谷口ジロー先生

「孤独のグルメ」漫画家の谷口ジローさん死去 | NHKニュース

孤独のグルメ
(写真は『孤独のグルメ 巡礼ガイド 2』より)

漫画『孤独のグルメ』の作画で有名な、漫画家・谷口ジロー先生が昨日亡くなったとのこと。

『孤独のグルメ』ファンとしては、これで久住・谷口両先生による『孤独のグルメ』がもう読めなくなってしまうと思うと、本当に悲しい。谷口先生は 69 歳で、作家としてはまだまだ現役を張れる年齢だっただけに、残念です。

孤独のグルメ

今でこそドラマのほうが知名度が高まっていますが、そもそも『孤独のグルメ』の人気は漫画版の谷口ジロー先生によるハードボイルドな画風と「ただメシを食う」というギャップ、そして何とも言えない味わい深いセリフ回しによってジワジワと高まってきたもので、その結果としてドラマ化されたものです。原作の久住先生はご健在のため、作画担当を別の人に頼んで継続できなくもないのでしょうが、画が変わったらそれはきっと別物になってしまうんだろうなあ。ドラマ版でゴローちゃんが松重豊さんでなくなるようなものだと思います。

谷口ジロー先生

『孤独のグルメ』の魅力は井之頭五郎のキャラクターだけでなく、この緻密に描き込まれた料理や店内の再現性、風景の細かさにもあると言えます。実際に聖地巡礼してみると、本当にこの絵のまま出てくるから驚きます。実際には最近の料理作画は谷口先生ではなくアシスタントさんが描いているという話ですが、それも含めて谷口ジロー作品なわけで。

ちなみに、谷口先生は日本国内よりも海外(特にヨーロッパ)で高く評価されており、6 年前にはフランスの芸術文化勲章「シュヴァリエ」を受勲しているほどの人物です。ルイ・ヴィトンからヴェネツィアのトラベルブックも出版しており、一流の芸術家として認められていることが分かります。そう考えると日本では漫画ってまだまだ芸術作品ではなく娯楽作品としてしか見られていないのだなあ。

孤独のグルメ

遺作となった『孤独のグルメ 2』の最終話がフランス・パリ編、というのも改めて宿命めいたものを感じます。私は原作の聖地でまだ行けていないのは病院回とこのパリ回だけですが、これは何かのチャンスを見つけて巡礼するしかないかなあ...。

この機会に『孤独のグルメ』シリーズ以外の作品も読んでみようかと思います。
ご冥福をお祈りいたします。

夢枕獏、谷口ジロー / 神々の山嶺 文庫版 コミック 全 5 巻完結セット

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投稿者 B : 20:56 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2017/02/06 (Mon.)

飛びこめ!!沼 01

カメラバカにつける薬』に続いて、このカメラ系同人誌も購入しました。

安倍吉俊 / 飛びこめ!!沼 01

飛びこめ!!沼 01

通称「シグマの H 本」。あの人この人あんな経営者までも手に入れている、昨今のカメラ界の隠れベストセラーとなっている(?)一冊です。私はシグマのカメラは持っていませんが、シグマレンズファンとしては読んでおきたくて。表紙の二人からして sd Quattro とトンファーdp Quattro ですからね。シグマ純度高杉。
ちなみに『カメラバカ~』と違ってこちらは紙版しかなく、通販で買ったら少し時間がかかってしまいました。

それにしてものっけからいきなりこれですよ。

飛びこめ!!沼 01

間違いない、これは確かに H 本だ(←

カメラクラスタの人なら何のことを言っているか分かりますね。当代一の変態カメラのことです(誉め言葉

飛びこめ!!沼 01

『カメラバカ~』はカメラの(写真の、とは言わない)専門知識をベースとした機材マニアの自虐ネタを中心とした同人コミックでしたが、こちらはシグマユーザーの自虐ネタでありながら、専門知識よりもライトギャグ中心。でもシグマ愛、機材愛に溢れていてとてもイイ。
すごく力の抜けた作風ですが、全ページフルカラーでなかなか読み応えがあります。

飛びこめ!!沼 01

こっちにも出た!カメラクラスタにおけるフォトヨドバシ影響受けすぎ問題(笑
フォトヨドなあ。いいよなあ(遠い目

「01」ということで続刊の構想もあるようなので、こちらも『カメラバカ~』と併せて楽しみにしたいと思います。

シグマ / sd Quattro H

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投稿者 B : 22:00 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2017/01/30 (Mon.)

カメラバカにつける薬

カメラ界隈のタイムラインにときどき登場する同人誌『カメラバカにつける薬』。断片的に見たコマだけでも面白くて興味を持っていたのですが、先日の某集会で某氏に実物を見せてもらったらちゃんと通しで読んでみたくなったので、買ってみました。

ていこくらんち / カメラバカにつける薬

カメラバカにつける薬

同人誌ってバックナンバーは入手困難になるものですが、pixiv が運営する通販サイト「BOOTH」で電子版を販売しているんですね...安かったこともあり、思わず「ごーがいまとめ」も含めてシリーズ 8 巻全部買ってしまいました(笑。とはいっても「薄い本」なので、さらさらっと読めてしまいます。

あとがきによると blog や SNS での作中のコマ引用歓迎とのことなので、いくつかピックアップしてご紹介。

カメラバカにつける薬

この漫画は、カメラの撮影離れを止めるべく設立された架空の心療内科、通称「カメラ内科」の女医さん・看護師さんと患者たちの話。

「あなた、レンズ沼にかかっていますね」

...我々の後を追って沼に足を踏み入れた人を見かけたら、言ってみたいセリフナンバーワンの座をもぎ取っていきました(笑

カメラバカにつける薬

治療のためにツァイスレンズを投与してくれる病院!これは入院するしかない(ぉ

カメラバカにつける薬

カメラ機材によって思考回路を狂わされてしまった重病人達の話です。
基本的に Twitter のカメラクラスタ内で日常的に繰り広げられている会話的なものが漫画化されているわけで、ほとんど共感する話しかない。

ちょうどこれを読んでいるときに、Twitter でヨドバシのカメラ沼話が RT されてきて、ここにも患者が一人...と女医さん目線で考えてしまったのは内緒です。

ヨドバシカメラによって沼に突き落とされた人 - Togetterまとめ

カメラバカにつける薬

フォトヨドバシの攻撃力高杉問題はたびたびネタにされます(笑
まあ私もフォトヨドバシの影響で買わされてしまった機材は数知れず。「天使の両翼」みたいなガジェット系ポエムは苦笑しながら流せるのに、フォトヨドバシだけは的確に物欲を抉ってくるのは何故なんだぜ。やっぱり写真の力なんでしょうか。

カメラバカにつける薬

ページをめくったらいきなりこれで、つい画面を濡らすくらい吹き出した一コマ(;´Д`)ヾ。漫画にされると破壊力ありすぎる。

カメラバカにつける薬

ネットスラングも多いので、Twitter で日常的にカメラ話をしている真のカメラバカでなければ意味不明だろうと思いますが、少しでも共感できたならきっと面白いはず。
中でも特にキヤノン、ソニー、ペンタックス、シグマのいじられ度合いが高いので、該当メーカーファンなら必読です。

これはもっと早く買っておくべきだったなあ。続刊が出たらまた買おうと思います。

投稿者 B : 23:40 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

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