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2016/08/31 (Wed.)

オールドレンズ・ライフ Vol.6

澤村 徹 / オールドレンズ・ライフ Vol.6

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今年もこの季節がやってきました。澤村徹さんのムック『オールドレンズ・ライフ』の第 6 弾。こんなマニアックなムック本を年に一冊ペースで出し続けられるのにはただただ敬意を表します。

さすがにデジタル一眼市場も成熟の域に入り、これからオールドレンズ沼に足を踏み入れようという人はもうそれほど多くないはず。だから(一応今回もマウントアダプタの基礎知識コーナーはあるものの)初心者向け記事はそこそこに、どちらかというと中級者以上がより深みにはまるため(ぉ)のコンテンツが主軸になってきた印象を受けます。毎年新製品が出続ける現行レンズと違って、オールドレンズは急激に増えるということがないので、ともするとネタが枯渇して同じことを繰り返し言い続けるだけになりがち。ですが、本書はそういうワンパターンに陥らず、多種多様なオールドレンズの中から自分好みの一本に巡り合うための特集を中心に据えています。

第一特集は「マイ・ベスト・オールドレンズ」。著名なカメラマンや業界関係者(ユリシーズの魚住氏が登場されていたのには驚いた)がお気に入りの一本を紹介してくれています。ありがちなレンズメーカー別やマウント別といった選び方ではなく、描写の好みから選ぶための特集というのは今までありそうでなかったもの。とても興味深い内容になっています。
第二特集は「フィルムメーカー製レンズの彩り」。オールドレンズというとライカやツァイス、アンジェニューは定番中の定番。オールド ZUIKO や Takumar といったレンズ、あるいはロシアレンズあたりまではよく語られますが、フィルムメーカー製レンズというのは今まであまり語られることがありませんでした。が、近年では富士フイルムの現行 X マウントレンズが高く評価されていたり、フィルムメーカー製レンズも馬鹿にできません。フィルムで出したい表現から逆算して作られたレンズは、各メーカーの「フィルムの色」がデジタルのボディで使っても見えてくるもの。この特集では富士フイルムに加えて AGFA、Kodak、ILFORD のレンズが紹介されていますが、私も富士フイルムのオールドレンズは一度試してみたいなあ。

第三特集は「ゼロからはじめるレンズ構成概論」。ある程度カメラの知識がある人でも、レンズ構成の細かい部分までは理解できていないことが少なくありません。かくいう私も「ガウスタイプ」「レトロフォーカス」あるいは「プラナー構成」など代表的なものなら知っていますが、体系的に理解できているとは言いがたい。この特集は、オールドレンズでよく出てくるレンズ構成について、その成り立ちから特性まで網羅的にまとめられていて、とても勉強になります。現代のレンズは群も枚数も多くなりすぎて構成図を見ただけでは性格が分かりづらいことが多いですが、基礎知識を持っているだけでも多少は類推が効くというもの。

そして第四特集は「これが噂のボケモンスター」。ちょっと時流に乗ればいいってもんじゃないでしょというサブタイトルですが(笑)、いわゆる「スムーズなボケ」とは対照的にクセのあるボケ方をするレンズの特集です。バブルボケ、リングボケ、ぐるぐるボケといった通常ならば「汚い」と言われがちなボケも、使いようによっては幻想的な写真に演出するための武器になります。こういうのを好み始めるのは、日本酒で言えば純米酒や吟醸酒に飽きて癖の強い二級酒に手を出す呑兵衛の心境と似ていると思いますが(ぉ)究極の嗜好品としてのオールドレンズの楽しみ方なら、それもありかと。

近年ではオールドレンズだけでなく現行マウント向けの MF レンズがリリースされるなど、この世界もかなり成熟してきました。デジタルカメラ自体の販売はもう頭打ちになり、新製品は全体的に値上がり傾向だったりもして先行きに不安感はありますが、少なくともオールドレンズは逃げない(笑。長く楽しめる趣味として、今後も携わっていきたいと思います。

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2016/08/24 (Wed.)

ソニー復興の劇薬 SAP プロジェクトの苦闘

西田 宗千佳 / ソニー復興の劇薬 SAP プロジェクトの苦闘

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西田宗千佳氏の新著を電子版にて読了。一週間くらいかけるつもりで読み始めたら乗ってしまって、二時間ほどで一気に読み切ってしまいました。

「wena wrist」や「HUIS REMOTE CONTROLLER」といった新分野の商品やサービスを手がけるソニーの新規事業創出プログラム「SAP(Seed Acceleration Program)」の内側をまとめたルポルタージュです。タイトルにこそ刺激的な言葉が並んでいますが、実際の関係者への取材をもとに、西田氏自身が電機業界やハードウェア・スタートアップへの取材等を通じて得た知見を交えて、客観的にまとめた内容になっています。

「SAP」はソニー自身が大規模なリストラを敢行している段階で開始されたプログラムだけに社内外からの批判もあったようですし、「大企業がクラウドファンディングを利用するなんてただの宣伝行為だ」「SAP で生み出されている新規事業はいずれも小粒でお遊びの域を出ていない」といった言説も目にします。実際、同社の既存のエレクトロニクス事業は今後の成長が見込めるか高い利益が確保できる分野だけになってしまった印象で、IT/AV 機器の付加価値の多くをスマートフォンが吸収してしまった現在、「次のメシのタネ」を見つけるのに各社苦労しているのは事実。なので小粒でもいいから試行錯誤して、何が伸びてくるか見極めたい...というのも SAP の本音としてはあるのでしょう。
しかし、個人的には SAP の本質は次世代の事業を牽引できる人材の育成と、企業体質のゆるやかな変革にこそあると考えています。マーケティングや商品企画の仕事をしていると、「自分は新しい商品のアイデアを持っている。これは絶対売れる」と自称する人と出会うことが少なくないですが、そのほとんどが「単に自分が欲しい」の域を出ておらず、どんな人が買うのか、顧客層の規模はどれくらいあるのか、ちゃんと量産できるのか、販路や売場そしてユーザーサポートはどうするのか...ということに考えが至っていないものです。実際、世の中のハードウェアスタートアップの失敗は、大半がアイデアと原理設計・試作以降の部分に手が回っていないことが原因と言って良い。ものづくりというのは、本当はものを作ること自体よりも、それをちゃんと事業にできるだけの資金を調達して、必要な数を作って世に出すことのほうが大変なものです。

そういう意味で SAP は「ものをちゃんと作る」ための仕組みはソニーという大企業のプラットフォームを利用しながら(つまり、一般的なハードウェア・スタートアップでよくある失敗は避けられる可能性が高い)、小規模でもちゃんと事業を立ち上げて回せるだけの人材を発掘・育成するための仕組みと言って良いでしょう。人員や組織の役割を縦横に細分化した大企業では、現業は効率的に運営できても、こういう混沌とした時期に新しい事業を立ち上げる小規模なチームを組織することは難しい。一人あるいは少人数で全体を見通して事業を組み立てる経験を積むことで、たとえ今の新規事業は小粒でも、彼らが次、あるいはその次に立ち上げる事業は大きな花を咲かせるかもしれない。そういうことだと思います。ひとりの外野としては、そういうスタートアップ事業に大規模な R&D の成果を惜しみなく投入できる体制は羨ましすぎますが...。

でも、というのはあくまで SAP の目的と理念の話。現時点で世に出ているプロジェクトの中では、ちょっと面白いと思えても自分でベットしたくなるものはまだ出てきていないんですよね。
ただソニーの現業に関しても、金融とエンタメ以外はもうすっかりカメラとオーディオの会社になっちゃって、イノベーションよりは事業維持にベクトルが向いている印象。しかもどんどん高級路線に行っていて、俺の買うものがほとんどなくなってきたなあと感じてもいます。SAP から、「俺らをワクワクさせてくれるソニー」のタネがもう一度生まれてきてくれることを願ってやみません。

投稿者 B : 23:24 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2016/08/17 (Wed.)

CGWORLD 2016 年 9 月号

シン・ゴジラ』を観た興奮が冷めやらず、この本を買ってきてしまいました。

CGWORLD 2016 年 9 月号 vol.217

CGWORLD

CGWORLD なんて超久しぶりに読みました。かなり専門性が高い雑誌なので、門外漢が普段から読むようなものじゃないんですが、こういう技術面が気になる作品を観たときに特集が掲載されているとつい手を出してしまいます。
表紙からして全力でフィーチャーしていますが、冒頭から 26 ページにわたる大特集が組まれていました。

例によって未見の人はこのままブラウザそっ閉じ推奨します。





CGWORLD

ゴジラの造形は、いきなり 3DCG でモデリングしたわけではなく、まずは立体模型を作った上でそれを 3D スキャンしたデータからモデルを起こしてそれを動かしているとのこと。劇中のゴジラはカメラワークの速さもあってディテールをもっと見たい感覚があったので、ここで模型の写真がじっくり見られるのは嬉しい。こうして見ると、ゴジラの進化過程がよく解り、とても興味深いです。

CGWORLD

東京駅周辺の映像は実写に CG を合成しているのかと思ったら、実写の撮影に制限があるエリアなので全部 CG で作ったとか(!)。雑誌の属性的に特撮関連の内容がほとんどなく、CG にまつわる工程を中心に開設されていることを差し引いても、この作品は大部分が CG によって成り立っているんですね。それをあえて特撮っぽい見せ方で表現している、というのが逆説的で面白い。

CGWORLD

モニターグラフィックス好きとしては、こういうちょっとした素材まで掘り下げてあるのが嬉しい。

CG 関連の詳細だけでなく、(CG 部分中心ではあるものの)製作工程全体が解説されており、非常に興味深い特集でした。まずは全体のボリューム感やテンポを掴むためにラジオドラマを録り、それをもとに脚本を見直した上で全編のプリヴィズ(ビデオコンテ)を作成した上で本撮に挑むという、大変手の込んだ工程となっています。まあ上流に手間をかけた方が下流での手戻りが少なくクオリティも高まるというのはどんな仕事にも通じることではありますが。
このあたりの話は東洋経済オンラインにも一部掲載されているので、まずはこれを一読すると良いかも。

「シン・ゴジラ」が人々を惹きつける真の理由 | 東洋経済オンライン

劇場での展開は、来週後半からまさかの IMAX 上映が復活するらしいので、私も時間を見つけてもう一度観に行きたくなってきています(笑。

CGWORLD 2016 年 9 月号 vol.217

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2016/06/18 (Sat.)

キヤノン EF&EF-S マウントレンズ 完全レビューブック

フォトヨドバシのレンズレビューが本(別名:ヨドバシ版悪魔全書)になったよ!ということで、思わず買ってしまいました。

キヤノン EF&EF-S マウントレンズ 完全レビューブック

キヤノン EF&EF-S マウントレンズ 完全レビューブック

今までも我々の物欲を幾度となく刺激してきたフォトヨドバシ。レンズを購入検討する際には必ず参考にするサイトの一つであり、むしろこのレビューがきっかけで買ってしまったレンズも何本かあります(笑。メーカー公式作例のように「わざわざそこに行く労力をかけないと撮れない写真」ではなく、基本的には日常生活の延長線上で撮れるスナップが中心という点でユーザーの実使用感に近く、そういう意味でもとても参考になります。まあ現像で追い込んでるんだろうなと感じる部分もあるし、そもそも自分との撮影センスの決定的な差は感じますけどね!(泣
今でこそ、大手カメラ店が自社サイトにカメラやレンズの実写レビューを掲載する手法は一般的になりましたが、フォトヨドバシは掲載される写真の良さと文章のエモーショナル度で群を抜いていると思います。

これまで掲載されてきた膨大な作例の中には、「これはモニタじゃなくてプリントで見たい」と思うほどクオリティが高いものも数多くありましたが、まさかこれを本当に本にしてしまうとは。

キヤノン EF&EF-S マウントレンズ 完全レビューブック

しかし、これまでの膨大なレビューの数々を全て掲載できるわけでもなく。総ページ数 272 という分厚いムックながら、ほとんどのレンズについては写真・テキストともに抜粋版での掲載となっています。その結果、レンズの紹介ムックとしてはごく一般的な構成になってしまっているのはやや残念なところ。それでも一部のレンズに関しては数ページを費やして大判の作例が掲載されており、そうそうこうやって写真をじっくり眺めたかったんだよ、という欲求に応えてくれます。

キヤノン EF&EF-S マウントレンズ 完全レビューブック

ムックのタイトルからしてキヤノン製の EF/EF-S レンズしか掲載されていないのかと思ったら、EF/EF-S マウントに対応したツァイス、シグマ、タムロンなどの他社レンズまで網羅されている充実度。同スペックのレンズの中でどれが自分の好みに合っているかを見比べられるのはいいですね。チャートを撮ったり逆光性能をテストしたりしているわけではないのであくまで感覚として好みに近いものを、という感じですが、ヨドバシの担当者が「このレンズにはこういう被写体がいいと思うよ」というのを選んで載せているわけで、スペックで比べるよりも購入後の満足度は高そう。

キヤノン EF&EF-S マウントレンズ 完全レビューブック

このムックの内容自体は普段からフォトヨドバシを見ている人にとってはあまり新しいネタはありませんが、各章の間に挟まれているコラムは今回のための書き下ろし(たぶん)。フォトヨドバシの編集部メンバーがどのようにあのサイトを作っているかの断片が読み取れて、本編以上に興味深い(笑。

個人的には英語版サイトの翻訳担当者さんのコラムが面白かった。日本語版ではオーディオの評論にも似た抽象的な表現が多用されますが、英語版では海外のレビューサイトのようにストレートな言葉に変換されているようです。確かに、海外サイトに掲載されている「○○はこれまでで最もシャープなレンズのひとつ」みたいな表現って、国内のレビューサイトではまず見ないですからね。言われてみれば、海外では(まあ日本でも一部雑誌はそうだけど)とにかくチャートやベンチマークを使って解像度とシャープネス一辺倒なのに対して、日本は案外そうでもない、という違いはあるように思います。アマチュアの機材選びなんて結局は趣味なんだから、自分が使っていて気持ちいいと思えるものを選んだらええねん。

ちなみに今ならこのムック、EOS ユーザーだけでなく MC-11 持ちの α ユーザーにとっても、深遠な沼の入口となってくれるのではないでしょうか(笑

私もまだざっとしか読めていないので、この週末で読み込んでみたいと思います。きっと機材買ったり写真撮ったりしたくなるんだろうなあ。

キヤノン EF&EF-S マウントレンズ 完全レビューブック

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2016/04/03 (Sun.)

機動戦士ガンダム UC (11) 不死鳥狩り

本日からテレビアニメ版に再編集された『機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096』の放送が始まっていますが、これに合わせるかのように小説の第 11 巻が発売されていたので、読んでみました。

福井 晴敏 / 機動戦士ガンダム UC (11) 不死鳥狩り

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まさかこの期に及んで小説の続きが発売されるとは思っていませんでしたよ(;´Д`)ヾ。

しかし本作は書き下ろしではなく、四年前に発売された PS3 ゲーム、それと昨年発売された設定資料集、それぞれに付録として収録されていた作品を単行本としてまとめたものでした。でもどちらも相当のマニアでなければ手を出さないものだと思うので、コンプしていなくてもこうして手にできるのはありがたい。

収録されているのは、フル・フロンタル搭乗機の原型となる「シナンジュ・スタイン」強奪事件を描いた『戦後の戦争』と、サブタイトルにもなっているユニコーンガンダム 3 号機「フェネクス」にまつわるエピソード『不死鳥狩り』。『戦後の戦争』については以前書いているので省きますが、『不死鳥狩り』のほうはこれまでガンダムフロント東京関連のコンテンツとプラモでのみ展開されていたオリジナル MS が公式設定化された形と言えます。

GFT の「DOME-G」で上映されている、バンシィとフェネクスによる模擬戦の後の物語。あの後行方不明になったフェネクスを追う連邦軍の一部隊のお話です。フェネクスはどこへ消えたのか?そしてフェネクスを追う連邦軍のヨナ・バシュタ中尉とフェネクスの因縁とは...というストーリーですが、途中から全く予想もしていなかった方向にストーリーが進んでいって、かなり度肝を抜かれました。まあそのストーリーが進んでいく方向というのが、いきなり表紙を開いた後の口絵でモロにネタバレしてしまっている書籍の作りはさすがにどうかと思いますが(´д`)。
でも、戦闘シーンの描写は相変わらずの福井節で、一気に読まされてしまいました。基本的に小説版と OVA 版はパラレルワールド的な位置づけになっていますが、この小説がその小説と OVA の差違を埋める役割を担っている、と言えるでしょう。GFT の映像を観てから読むと映像を脳内補完しやすいのでオススメです。

テレビアニメのほうはまだ始まったばかりですが、どういった形で進んでいくんでしょうね。OVA 版のディテール違い程度になるのか、さらに新たなパラレルワールドが用意されているのか。これから半年ほどの放送だと思いますが、毎週楽しみにしています。

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2016/02/04 (Thu.)

ランチェスター戦略「小さな No.1」企業

先日転職もしたことだし、ちょっとマーケティングの原点に帰ってみようと思って、久しぶりにランチェスター関連の本を読みました。

福永 雅文 / 45 社の成功事例をリアルに分析! ランチェスター戦略「小さな No.1」企業

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私が以前、繰り返し読んでいた『ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』『ランチェスター戦略「一点突破」の法則』の著者である福永雅文氏による、同著の続編的な位置づけの著書です。

私がマーケティングを考える上で最優先の根拠としているのは、ランチェスター戦略とそれに基づいた差異化。とても汎用性の高い考え方であり、あらゆる分野に応用できるマーケティングの基礎だと思っています。どんな市場であれ、ひとつの勝者以外は全員が敗者であり、勝者には強者の、敗者には弱者の戦略が当てはまる。基本的に強者の戦い方はミート戦略(他社に対して同質な商品を出す)によるライバルの陳腐化であり、弱者の戦い方は市場のセグメント化と差異化に尽きる。それが解っていてもそう簡単に勝てないのがビジネスの難しいところですが、解っているのと解っていないのとでは戦略の組み方が天と地ほども違うわけです。
私の今までの経験上(他社事例の分析も含め)、ある市場では弱者あるいは新参者であるにも関わらず、過去に強者だった経験や別のセグメントで強者であるが故に弱い分野でも強者の戦略を採りたがり、失敗する例には枚挙に暇がありません。業界 2 位なのに 1 位と同じようなことをやっている万年 2 番手企業というのは、誰でも一社や二社は思い浮かぶものです。また、「ターゲットを絞る」とか「ニッチ市場を狙う」という単語に拒絶反応を示す人も少なくなく、万人受け施策を採らされた結果やっぱり失敗した...というのもよくある話。正直、自分で思い出しただけでも臍を噛む思いをした経験も一度や二度ではありません。それくらい、自社の強みを把握し、狙うべき市場を限定して、そこで確実に勝ちに行くための戦略こそが、マーケティングの根幹と言えます。

そう思っているので、自分の部署に若手が入ってきたときには、必ずと言っていいほど福永氏のランチェスター戦略の著書をはじめとするマーケティングの基礎の書籍をいくつか渡してまずは勉強してみてよ、ということを長年続けてきました。が、何人もの後輩に貸すうちに手元に返ってこなくなってしまったので、続編と言えるこの著書を買ってみたというわけです。

この本はそんなマーケティングの基礎であるランチェスター戦略に関して、中小企業の事例ばかりを 45 も集めた事例集です。ランチェスター戦略そのものに関する説明も後半に書かれていますが、入門者がまず最初に読むべきは同氏の『「弱者逆転」の法則』のほう。本書はその内容を理解した上で近年の事例に関して知識のアップデートを行うための本と言って良いでしょう。

紹介されている事例は配達酒販のカクヤス、町田・でんかのヤマグチ、ヘルスメーターのタニタ、H.I.S. に買収されて復活した長崎ハウステンボス、といった時折マスメディアでも紹介されるほど有名な事例から、今回初めて名前を聞いたような企業までさまざま。共通しているのはいずれも中小企業であり、厳しい環境においても差異化と一点集中を軸とした営業戦略で生き残ってきた、という点。ポイントは「勝ち残ってきた」ではなく「生き残ってきた」というあたりで、いたずらに規模の大を追うのではなく、限定された市場でも確実に自分たちが生き残り、顧客と良好な関係を築いている企業ばかりだという点でしょう。特に経済全体の成長が止まろうとしている現代では、どうやって生き残っていくか、こそが企業にとっての懸案と言えます。

ビジネス書としては一般的なボリュームの中で 45 もの事例を紹介しているだけあって、一つ一つの事例はせいぜい 4~6 ページ。もともと雑誌連載だったものを書籍化したものなので、成功のストーリーが完結にまとめてあるだけで、それほど分析が深いとは言えません。それぞれの企業が一発で鉱脈を掘り当てたわけはないし、成功に至るまでには数々の失敗や試行錯誤があっただろうから、むしろそのプロセスこそ知りたかった。まあ、有名な成功例のいくつかは他により詳細な文献があるでしょうし、この本をきっかけにして、自社に近い事例に出会い、自分なりに深掘りするのが正しい学び方なんでしょうが。
でもやはりこれだけ中小企業の事例を見てくると、差異化と一点集中は弱者戦略の基礎としては当然重要だけど、規模が小さければ小さいほど「大手には(投資効率の面で)やれないことを差異化ポイントにする」ことと「自分たちで売り切る営業力」こそが重要なんだなあ、というのが見えてきます。これは、以前の立場で弱者戦略を考えていたときにはあまり重視していなかった部分で、そこに気づけただけでもこれを読んだ意味はあったなあ。

やりたいこととやれることの間にギャップがあるのが現実のビジネスではありますが、自社の得意分野が活きる市場と差異化、それに徹底的に集中することを、今一度じっくり考えたいと思います。

投稿者 B : 23:59 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2016/01/31 (Sun.)

孤獨的美食家

ある方より海外土産としていただきました。

久住 昌之、谷口 治郎 / 孤獨的美食家

孤獨的美食家

漫画『孤独のグルメ』の中国版です。『孤独のグルメ』は世界的にも地味な人気を誇っていて、かなり多くの国で現地語版に翻訳されて発売されていると聞いたことがありますが、まさかその実物を目にする機会があろうとは。
中国語でのタイトルは『孤獨的美食家』。何かのインタビューで、久住先生自身は「ゴローは別に美食家なわけじゃないから、このタイトルはちょっとニュアンスが違う」ということを仰っていましたが、直訳するとまあこうなりますね。

装丁は表紙からして国内版をかなり忠実に再現しています。

が、

孤獨的美食家

なんと中国版の表紙は題字とゴローちゃんのみ光沢コーティング仕様!(笑
これ、オリジナルより明らかにコストかかってます。

孤獨的美食家

帯にはなかなか壮大な謳い文句が。私は中国語は読めませんが漢字だけでだいたいわかります。
とりあえずゴローちゃんの「薄薄ーい本」ということはわかりました(違

さて、原語版は私自身熟読したと言って良いこの漫画。ゴローちゃんの「名台詞」が中国語だとどんな感じ(漢字、でもある)になるのか、見てみましょう。

孤獨的美食家

不要著急、只是肚子餓了而已。(焦るんじゃない、俺は腹が減っているだけなんだ)

おお、やっぱり漢字だけでだいたい想像できる。オリジナルの台詞を知っているからというのもあるけど。
それにしても「腹が減っている」を「肚子餓了」と書くと、もうなんか餓死しそうな勢いになってきます(笑

孤獨的美食家

外帯!原来還可以這様。(持ち帰り!そういうのもあるのか)

「持ち帰り」って「外帯」って書くのか。日本語だと着物の帯っぽい雰囲気になるけど、確かに「外に帯びる(=持って行く)」だもんなあ。勉強になります。

孤獨的美食家

最後那両盤...是致命一撃啊。(ラストの 2 枚...あれが効いたな)

「致命一撃」www
カッコつけてタバコ吸ってる場合じゃなくなってきました(笑

孤獨的美食家

哇鳴、我好像人類火力発電廠!(うおォン、俺はまるで人間火力発電所だ)

これは完全にそのまんま(笑)。ゴローの比喩表現は言語の壁を越えるのか...!

このコマではむしろ注目すべきは「嚼嚼」「呑・咬」「呑・咬」じゃないでしょうか。原語だと「もぐもぐ」「はふ・はふ」「むしゃ・むしゃ」となっているのが動詞に置き換えられています。中国語は日本語に比べて擬音語や擬態語が少ない(というか日本語がやたら多い)と言われますが、体系が違う言語に翻訳するとこうなるという例なんでしょうね。勉強になるなあ。

孤獨的美食家

這種刻意的哈蜜瓜香料味!(このワザとらしいメロン味!)

日本語だと「ワザとらしいメロン味」とちょっと婉曲に表現しているのが、「蜜瓜香料味(メロンの香料の味)」と言われてしまうとミもフタもない印象になります(笑

孤獨的美食家

進食時的気分 應該是種 不被任何人打擾、自由的...該怎麼説、要有被救贖的 感覚才行。単獨的、安静的、豊饒的...(モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ。独り静かで豊かで...)

来ましたよ、こどグル随一の名言。「単獨的、安静的、豊饒的」...やはり日本語よりもスケールが大きい感。国土の広い大陸のなせる業でしょうか、このゴローちゃんの顔が孟子か老子のように見えてきました(笑。

他にも、大阪の屋台の客が全員関西弁じゃなくて中国語でしゃべっていたり(この方言のニュアンスを中国語でどう表現しているのかはさすがに理解できなかった)、「俺は駅弁を食べ始めるのはせめて新横浜を過ぎてからだな」という台詞が中国語で表現されているのが妙にシュールだったり、これは日本語版に勝るとも劣らない独特の空気感。日本語版を読んであっても、いろいろと新たな発見があります。

そのうちドラマの聖地巡礼で台湾にも行こうと考えていますが、これで予習していけば完璧だね!(違

投稿者 B : 22:56 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2016/01/25 (Mon.)

物欲なき世界

タイトルに惹かれて読んでみました。

菅付 雅信 / 物欲なき世界

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「モノが売れない時代」と言われて久しい現代。私がいる業界も例外ではなく、先細りの業界、と言われています。まあ世界はともかくとして、日本の内需向け産業全体に言えることだと思いますが、私なりにも原因はいくつか思い当たっていて、

  • 少子高齢化に伴い、消費欲の強い若者の購買力が落ちてきた
  • スマートフォンの普及で様々なものの価値がスマホに集約され、スマホと機能が重複する機器が売れなくなった
  • 適法/違法を問わず無料で消費できるコンテンツが増えた結果、コンテンツにお金を払う動機が薄れた
  • コンテンツの電子流通が普及したことを発端に、「所有しない」価値観が徐々に一般化してきた
  • 手軽で無料/安価な娯楽が増えた結果、旅行などの「金のかかる娯楽」への需要が減った
  • 日本人の価値観が多様化し、娯楽が多様化した結果、大ヒットが生まれにくくなった=あらゆるジャンルでフォロワー層が薄くなった
  • 娯楽が多様化し、時間消費が細分化した結果、好きなモノ・コトに対するこだわりが薄れた
  • 現代の若者は物心ついたときから物質的・情報的に過多な環境にあり、欲求のもとになる枯渇感がない
  • 「実質ゼロ円」「EDLP」などの販売手法が当たり前になった結果、モノの価値が認められにくくなった
といった要素の複合要因なんだろうなあと。もちろんこれ以外にもいろいろあるとは思いますが。 ただ、これらは私の感覚や仮説に過ぎず、誰かが社会構造の変化とそれに基づいた消費構造の変化についてまとめてくれないかなあ、と常々思っていたので、これは読まざるを得ないと思ったわけです。

読んでみた結果...お、おう。言わんとしていることは分からないでもないけど、結論は「反資本主義」。資本主義のど真ん中に生きている我々からすれば、だからどうしろと、という話に感じました。地球の大きさが有限である以上永遠の成長なんてないし、いつかどこかで規模の経済からは脱却しなくてはならないけど、特に成長もなく再生産を繰り返すだけの活動に経済は耐えられるのだろうかと。まあこれ自身が資本主義の重力に魂を引かれた奴の発想なのかもしれませんが...。
「モノからコトへ」とか「商品ではなくライフスタイルを売る時代」なんてのは業界によっては十年以上前から言われ続けていることだし、拝金主義・物欲主義から脱却して、自然回帰的なゆったりとした暮らしをすべき、みたいな話もいつの時代にもある(批判的な言い方をすれば)ファッションみたいなもの。もっと、世界的な産業構造の変化が最終的な消費行動にどう変化をもたらしているのかを語らないと、単なる事例紹介で終わってしまうと思います。

個別の事例の中にはいろいろと示唆に富んだものもありましたが、全体としてはちょっと求めていたものとは違ったかな。個人的には、本書の中で紹介されていたアスキー総研・遠藤諭氏の指摘が興味深かったです。要約すると、かつての我々世代の物欲というのは、所有すること自体が自己表現の一部だったし、情報源も限定されていたから自分自身が所有していることが重要だった。が、インターネットやソーシャルメディアを通じてコミュニケーションすることが一般的になると、情報源も多様化して自分自身の価値が相対的に低下するから、所有して見せびらかすことで自己顕示欲を満たせなくなってくる。そうすると所有することに価値がなくなる、というもの。そういう点では明らかに旧世代に入る私には理解しにくい話ですが(笑)、ロジックとしては分からなくもない。まあ、それを知りたければ本書よりも遠藤諭氏の著書を読むべきだったのか(ぉ。
私は「究極のエンタテインメントはプレミアムコンテンツでもアミューズメントパークでもなく、個人同士のコミュニケーションだ」というのが持論ですが、そういう意味で考えると、あらゆるモノもコンテンツも体験も、「コミュニケーションを通じて消費するためのネタ」に過ぎないのかもしれません。物欲なき世界、というのはある種、コミュニケーションそのものがエンタテインメント化した、成熟した世の中の姿なのかも。

投稿者 B : 23:59 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2016/01/09 (Sat.)

すごい家電 いちばん身近な最先端技術

西田 宗千佳 / すごい家電 いちばん身近な最先端技術

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暮れに発売されていた西田宗千佳氏の新著を、年末年始のお休みを使って読破しました。

ビジネス書や新書が多い氏の著作としては珍しい、講談社ブルーバックスからの発売。というわけで、読者もビジネスマンや IT/家電業界関係者よりはむしろ高校生くらいを想定し、かなり読みやすい文体と噛み砕かれた表現で書かれています。
タイトルの通り家電について書かれていますが、スマホや PC といった IT カテゴリではなく、純然たる家電がメイン。テレビやレコーダのような「黒物家電」も控えめで、ほとんどがいわゆる「白物」、つまり洗濯機や冷蔵庫などの生活家電のお話。

あらゆる分野の家電に関して、そのルーツから歴史、そして最新の製品に採用されている技術までを解説しており、これさえ読めば白物家電の基本的な部分は理解できてしまいます。もっと技術トレンド寄りなのかと思ったら、かなり基本的な部分から解説されており、業界関係者でなくとも理解しやすくためになる内容。

本書はパナソニックの全面協力を得て執筆されているため、競合他社が引っ張っているトレンドに関しては弱い部分もありますが、その分パナソニックの開発陣への綿密な取材に基づいて書かれており、表面的な解説にとどまらない深みがあるのもポイントです。昨年末の小寺西田メルマガの忘年会でご本人にお会いした際にご本人からこの本の執筆にまつわるお話をいろいろ伺ったのですが、たとえばトイレ(便器)の開発には排水効率を検証するために「疑似便」を使っており、(汚い話ですみませんが)さまざまな状態を再現した疑似便の開発にも、それぞれのメーカーごとのノウハウが蓄積されている...というような話を伺いました。飲み食いしながらそんな話をするのもどうかとは思いますが(ぉ)、最終的には平易な内容にまとめられているものの、各ジャンルにおいて開発陣にそういったレベルの取材を繰り返したからこその深みが溢れています。

私はスマホや PC、カメラならばまだしも、白物家電に関しては実際に買い換える段になってようやく最新のトレンドを調べることがほとんど。三年半前に引っ越した際に大物の家電類を買い換えましたが、それ以降の状況は追いかけていませんでした。が、これを読む限りでは、現在の家電のトレンドは「ヒートポンプを活用した高効率な熱交換」と「センサと内蔵コンピュータを使った緻密な制御」で、エネルギー消費を抑えつつユーザーの利便性を高める、というのが製品カテゴリを問わず共通した方向性のようです。ちょっと前だと NFC を使ったスマホ連携みたいな派手目な(割には実利が少ない)機能ばかりが持ち上げられていましたが、実際には地味だけれど実利のある部分も着実に進化しているようですね。
白物家電というのは基本的に「家事を楽にして、生活の質を高める」という普遍的な目的によって買われるものなので、あらゆる家電が普及した現代ではもう進化の余地が少ない、あるいは進化しても買い換える必然性を感じない、と見られることが多いのが実情でしょう。が、ロボット掃除機だったり羽根のない扇風機だったり、あるいは BALMUDA のスチームトースターであったり、人間の本質的な欲求を見つめ直して新たな価値軸を提示することで、イノベーションを起こせる余地はまだまだあるはずです。そういう意味では、いったん進化の踊り場に差し掛かったスマホよりもむしろ、白物家電が今面白いのかもしれません。

大人が読んでも面白いですが、これは理工系に興味を持ち始めた中高生にこそ読んでほしい一冊だと思います。

投稿者 B : 22:32 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2015/10/25 (Sun.)

ネットフリックスの時代 配信とスマホがテレビを変える

西田 宗千佳 / ネットフリックスの時代 配信とスマホがテレビを変える

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西田宗千佳氏の新著を読了。

タイトルにこそ「ネットフリックス」と入っていますが、Netflix の話題一辺倒ではなく、むしろ Netflix の日本上陸を契機としたデジタルコンテンツ流通に起きている変化の「今この瞬間」を総合的にまとめた書物、と言えるでしょう。
電子書籍における Kindle、音楽配信における Spotify(これはまだ日本参入できていませんが)と並び、「SVOD の黒船」と言われている Netflix。この上陸によって国内の動画コンテンツ流通は大きく変わるのでは、と言われていますが、数年前に Hulu が上陸したときにも同じように騒がれたものの、Hulu によって業界構造が大きく変わったかと言われれば、実際そうはなっていません。そこには地上波という無料放送が圧倒的に強い放送事情だったり、狭い国土の至るところに TSUTAYA があるビデオレンタル事情だったり、複雑なコンテンツの権利関係だったり、アメリカと日本のお国事情の違いが反映されています。しかし、FTTH や LTE といった通信網の整備、放送や光ディスクメディアに先駆けた 4K フォーマットへの対応など、VOD に時代の追い風が吹いているのも事実。すぐに放送レンタルビデオ店がなくなって VOD が主流になるとは言いませんが、個人的には 3~5 年の間には VOD が放送やビデオレンタル業から見ても無視できない市場に育ってくるのではないか、と考えています。そういう意味で、誰かが現状をまとめてくれないかなと思っていたところに、ちゃんと出してくれるのがさすがの西田氏(笑。

書籍の内容は、宅配型 DVD レンタルから始まった Netflix のビジネスモデルの変遷、Netflix のコアコンピタンスとも言われている強力なレコメンド機能の秘密、オリジナルコンテンツ製作に注力する理由、など Netflix の(主にアメリカでの)強みを分析。その上で、Hulu・dTV・TSUTAYA といった国内の VOD サービサーを分析し、誰が勝つかではなく業界としてどこを目指し、今後の主戦場がどこになりそうかといった視点でまとめられています。
また、VOD サービスの視点だけで見ていては市場として伸びるかは断言ができないところ。そこは見逃し配信等に関連した放送局側の事情や、各個人のメインウィンドウがテレビからスマホに取って代わられてしまった現状、そして業界動向として相似形をとる音楽コンテンツ流通で何が起こったか...といったあたりからまとめられています。正直なところ、音楽の「定額聴き放題制」も実質的には今年始まったばかりなので何とも言えない市場ですが、少なくとも「光ディスクを買う/借りる」という消費スタイルを過去のものにしたという意味では、VOD の未来を占う上で重要なヒントが隠されていると思えます。

個人的に Netflix と並んで注目しているのが、Amazon プライム・ビデオの動向。本書の中ではあっさりめにしか触れられていませんが、Netflix をはじめとする通常の VOD サービスが「コンテンツ配信自体を主軸とした真っ当なサービス」であるのに対して、Amazon プライム・ビデオは SVOD サービスでありながら、ユーザーによっては「Amazon プライムに加入していれば勝手についてくる SVOD サービス」という位置づけになるわけで、これが SVOD というサービスの価値にどういう影響を与えるか、にはとても興味があります。当初「お急ぎ便無料」から始まった Amazon プライムは今や様々な付加価値サービスの集合体となっており、単体のサービスに月額を払うのはもったいないけどこんなにあるなら ¥3,900/年 は全然高くない、という消費者も少なくないのではないかと。まあ、Amazon プライム・ビデオ単体に関しては、国内版 Netflix と同様にまだまだ始まったばかりであり、これからのサービスではあるのですが。

私自身は普段からたまに TVOD(単品レンタル相当の都度課金サービス)は利用しているものの、SVOD には加入していません。普段からドラマやアニメをそれほど観ていないということもあって、月額 1,000 円前後をペイするとは思えないのが理由なんですが、最近あまり観てない ANIMAX に月額払い続けてるよねとか娘たちが毎週借りてる TSUTAYA の DVD を SVOD に切り替えればそれだけでお釣りが来るよねとかセルフツッコミ要素がたくさんあるのも事実です(笑。まあ娘たちの TSUTAYA に関しては、物理的な上限を設けておかないといつまででも女児アニメを見続けるからあえてそうしているというのもありますが...。
ただやっぱり、個人的にもそろそろ普段から何かしらの SVOD サービスに触れていないと何かに乗り遅れるよなあ、と思っているフシもあったりして。そろそろ本気で何か検討しますかね。

投稿者 B : 21:47 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック