b's mono-log

2015/10/25 (Sun.)

ネットフリックスの時代 配信とスマホがテレビを変える

西田 宗千佳 / ネットフリックスの時代 配信とスマホがテレビを変える

4062883406

西田宗千佳氏の新著を読了。

タイトルにこそ「ネットフリックス」と入っていますが、Netflix の話題一辺倒ではなく、むしろ Netflix の日本上陸を契機としたデジタルコンテンツ流通に起きている変化の「今この瞬間」を総合的にまとめた書物、と言えるでしょう。
電子書籍における Kindle、音楽配信における Spotify(これはまだ日本参入できていませんが)と並び、「SVOD の黒船」と言われている Netflix。この上陸によって国内の動画コンテンツ流通は大きく変わるのでは、と言われていますが、数年前に Hulu が上陸したときにも同じように騒がれたものの、Hulu によって業界構造が大きく変わったかと言われれば、実際そうはなっていません。そこには地上波という無料放送が圧倒的に強い放送事情だったり、狭い国土の至るところに TSUTAYA があるビデオレンタル事情だったり、複雑なコンテンツの権利関係だったり、アメリカと日本のお国事情の違いが反映されています。しかし、FTTH や LTE といった通信網の整備、放送や光ディスクメディアに先駆けた 4K フォーマットへの対応など、VOD に時代の追い風が吹いているのも事実。すぐに放送レンタルビデオ店がなくなって VOD が主流になるとは言いませんが、個人的には 3~5 年の間には VOD が放送やビデオレンタル業から見ても無視できない市場に育ってくるのではないか、と考えています。そういう意味で、誰かが現状をまとめてくれないかなと思っていたところに、ちゃんと出してくれるのがさすがの西田氏(笑。

書籍の内容は、宅配型 DVD レンタルから始まった Netflix のビジネスモデルの変遷、Netflix のコアコンピタンスとも言われている強力なレコメンド機能の秘密、オリジナルコンテンツ製作に注力する理由、など Netflix の(主にアメリカでの)強みを分析。その上で、Hulu・dTV・TSUTAYA といった国内の VOD サービサーを分析し、誰が勝つかではなく業界としてどこを目指し、今後の主戦場がどこになりそうかといった視点でまとめられています。
また、VOD サービスの視点だけで見ていては市場として伸びるかは断言ができないところ。そこは見逃し配信等に関連した放送局側の事情や、各個人のメインウィンドウがテレビからスマホに取って代わられてしまった現状、そして業界動向として相似形をとる音楽コンテンツ流通で何が起こったか...といったあたりからまとめられています。正直なところ、音楽の「定額聴き放題制」も実質的には今年始まったばかりなので何とも言えない市場ですが、少なくとも「光ディスクを買う/借りる」という消費スタイルを過去のものにしたという意味では、VOD の未来を占う上で重要なヒントが隠されていると思えます。

個人的に Netflix と並んで注目しているのが、Amazon プライム・ビデオの動向。本書の中ではあっさりめにしか触れられていませんが、Netflix をはじめとする通常の VOD サービスが「コンテンツ配信自体を主軸とした真っ当なサービス」であるのに対して、Amazon プライム・ビデオは SVOD サービスでありながら、ユーザーによっては「Amazon プライムに加入していれば勝手についてくる SVOD サービス」という位置づけになるわけで、これが SVOD というサービスの価値にどういう影響を与えるか、にはとても興味があります。当初「お急ぎ便無料」から始まった Amazon プライムは今や様々な付加価値サービスの集合体となっており、単体のサービスに月額を払うのはもったいないけどこんなにあるなら ¥3,900/年 は全然高くない、という消費者も少なくないのではないかと。まあ、Amazon プライム・ビデオ単体に関しては、国内版 Netflix と同様にまだまだ始まったばかりであり、これからのサービスではあるのですが。

私自身は普段からたまに TVOD(単品レンタル相当の都度課金サービス)は利用しているものの、SVOD には加入していません。普段からドラマやアニメをそれほど観ていないということもあって、月額 1,000 円前後をペイするとは思えないのが理由なんですが、最近あまり観てない ANIMAX に月額払い続けてるよねとか娘たちが毎週借りてる TSUTAYA の DVD を SVOD に切り替えればそれだけでお釣りが来るよねとかセルフツッコミ要素がたくさんあるのも事実です(笑。まあ娘たちの TSUTAYA に関しては、物理的な上限を設けておかないといつまででも女児アニメを見続けるからあえてそうしているというのもありますが...。
ただやっぱり、個人的にもそろそろ普段から何かしらの SVOD サービスに触れていないと何かに乗り遅れるよなあ、と思っているフシもあったりして。そろそろ本気で何か検討しますかね。

投稿者 B : 21:47 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2015/10/16 (Fri.)

久住昌之先生のトーク&サイン会に行ってきました

漫画『孤独のグルメ 2』の発売を記念して開催された、原作・久住昌之先生のトーク&サイン会に行ってきました。

『孤独のグルメ2』発売記念 久住昌之さんトーク&サイン会開催【三省堂書店池袋本店】|お知らせ|扶桑社

久住昌之さんトーク&サイン会

三省堂の池袋本店にて開催。ゲストは『野武士のグルメ』等で作画を担当されている、土山しげる先生。って『孤独のグルメ』に関係する人じゃないのかよ!(笑
土山先生は、どこか豪快さを感じる画風とはちょっと違って、想像以上にダンディーなおじさまでした。昔から数々のグルメ漫画を執筆してきた方ですが、最新作は『野武士のグルメ』とは真逆の、まずい店に怒りをぶつける漫画『噴飯男(フンパンマン)』とのこと(笑。(※単行本化にあたり『怒りのグルメ』に改題)

久住昌之さんトーク&サイン会

トークショーは久住先生と土山先生の掛け合いで、たっぷり一時間。登壇された瞬間、久住先生の顔がちょっと赤いように見えて「やっぱり今日も一杯ひっかけてきたんだ」と思ったのは内緒です(ぉ

トークショーの内容は、ここには書けないようなきわどい話も連発していたので(笑)基本的には参加者だけのもの、ということで。一応、差し支えなさそうな範囲からかいつまんでメモ:

■漫画の話

  • 『孤独のグルメ』における料理の作画は、谷口ジロー先生ではなくアシスタントさんが描いている
  • 単行本 1 巻と 2 巻ではそのアシスタントさんが替わっていて、先代への対抗意識からか 2 巻のほうがより描き込みが細かい。そのため、1 コマ描くのに丸一日かけることもザラ
  • 食べ物を描くのはとても大変。漫画はモノクロだから、おいしそうに見せるのが難しい
  • 土山先生は食べるまでの過程(わさびを醤油に溶く描写とか)と食べるときの表情を使っておいしさを表現している
  • 久住先生が原作を書く際には、モデル店には三回は行く
  • ドラマはお店の紹介も含めてやっているが、漫画はあくまでフィクションとして描写しているので、人気が出るに従ってやりづらくなってきた

■ドラマの話
  • ドラマの登場店にお客さんが来てくれるのは嬉しいが、増えすぎて常連さんが入れなくなるのは申し訳ない、とも思う
  • でもお店によっては常連席を別途確保してあったり、常連さんが巡礼のお客さんと仲良くなるなど、良かったこともある
  • Season2 か 3 でドラマの予算が増え、カメラをいい機材に交換したら大きくなって、狭い店内では逆に撮りにくくなった(笑
  • Season3 に登場した河津は河津桜くらいしか名物がなかったのが、今は「わさび丼の聖地」として盛り上がっている
  • Season5 で放送予定の台湾編は初の海外ロケで、極秘裏に撮影していたはずなのに、現地でロケ中に「ゴローさんだ!」といって写真が SNS にアップされ、日本のファンにもバレバレに(笑
  • 高崎で飲み屋に入ったら、他のお客さんに吉田類氏と間違えられた。その上、店主に「深夜にやってる孤独のなんとかって番組の最後に出てるよね、吉田類」と二重に間違えられた(笑

■グルメの話
  • お店を探すときは基本的に足で探す。食べログやネットで下調べしてから行くのは答を見ながら問題集を解くようなもので、力にならない
  • 店構えの印象でお店を決めることも多い。そういうのを「ジャケ買い」ならぬ「ジャケ食い」と呼んでる
  • こないだ、土山先生と一緒に行った西荻窪のおでん屋がすごくうまかった。近いうちに『野武士のグルメ』で取り上げる予定
  • ドラマのせいで「いつも昼から飲んでる人」と思われているが、仕事は飲まずにやっている。でも新宿のベルクに行ったときだけはどうしても飲んじゃう(笑。そういうときに限ってファンに見つかって「やっぱり」と思われるのが悔しい(笑

孤独のグルメ 2

トークショーの後には、単行本にサインをいただきました。先日スクリーントーンズの吉祥寺ライヴで 1 巻にもサインをいただいたところなので、2 冊合わせて家宝にします(笑

ドラマのほうは今後の台湾編も控え、いよいよ盛り上がってくるところです。今夜もこれから第 3 話・西荻窪編の放送ですが、トークに出てきたおでん屋さんもすごく気になります。これはもうちょっと寒くなったら、あの方を誘って行ってみるしかないかな。

久住 昌之、谷口 ジロー / 孤独のグルメ 2

4594073379

投稿者 B : 23:56 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2015/09/28 (Mon.)

孤独のグルメ 巡礼ガイド 2

「巡礼ガイドの続編!そういうのもあるのか」

孤独のグルメ 巡礼ガイド 2

459461017X

というわけで、あの『孤独のグルメ 巡礼ガイド』の続編が発売されたので、さっそく買ってきました。まさかこれまで続編が出るとは思わなかった。
ちなみに原作 2 巻のほうは先週末にフライング販売されていましたが、こちらはフライングされていなかったので、今日買ってきました。出版社は同じなので、コミック扱いとムック(雑誌)扱いで販売解禁ルールが違う、とかそういうことですかね。

孤独のグルメ 巡礼ガイド 2

冒頭はもちろん松重さんのインタビューから。

素の松重さんらしい飾らない言葉で、撮影やそれぞれのお店に関するエピソードを話してくれていて、とても共感できる内容です。
ファンとしてはやっぱり「松重さん個人としてどの店がうまいと思ったか」は気になるじゃないですか。

孤独のグルメ 巡礼ガイド 2

箱根の「いろり家」には放送前に行った、という話は何かで読んで知っていましたが、木場の「カマルプール」と神宮前「シャンウェイ」には行きたくても混みすぎで行けてない、とは。個人的にも遠くて行けない箱根を除けば、Season4 の絶賛リピート巡礼店はこの二店と鳥越「まめぞ」なので、自分の味覚がゴローちゃん本人と同じ、というのはなんだか嬉しくなっちゃいます。
カマルプールとシャンウェイは実際に今でもなかなか予約が取れません(;´Д`)ヾ。

孤独のグルメ 巡礼ガイド 2

キャプションに誤記発見。日間賀島編でゴローが赤車海老を食べたのは、間食パートの「キッチン Barca」ではなくメインの「乙姫」のほうです。

この赤車海老、本当に濃ゆ~い味で、癖になりそうでした。

前作の巡礼ガイドが Season1~3 からのダイジェストだったのに対して、今回の巡礼ガイド 2 は Season4 をメインに、あとは前巻で収録されなかった Season1~3 と原作 1~2 巻の店舗からいくつかピックアップして掲載しています。Season4 が全 12 話中 10 話分のみの掲載で、日間賀島編と恵比寿編(+博多出張編)だけ省かれているのが微妙に気になりますが、出張費用が捻出できなかったのかな(笑

孤独のグルメ 巡礼ガイド 2

前巻からそうでしたが、「巡礼ガイド」と言いつつテキストは基本的にドラマおよび原作コミックのストーリーをなぞっているだけ。本当はもうちょっと映像外でのお店の楽しみ方とかを紹介してほしいんだけどなあ...と思います。一応、ドラマに比べると原作のほうが登場する料理が少ないからか、ゴローが食べた以外の料理に関してもいくつか紹介されていて、全店巡礼済みの私としてはむしろそっちのほうが興味深かったり(笑。下北のピザ屋のイカコンセロリ、ずっと気になってたんですよね。

孤独のグルメ 巡礼ガイド 2

あと、作中には全く登場しないけど渋谷の「魚力」は夜メニューの海鮮丼が本当に気になっていたので、この写真にはグッときてしまいました。駅から遠いけど、今度行ってみようかな...。

俺が巡礼ガイドに求めていた情報って、こういうものなんですよ。
最近、いろんな人から「全店巡礼したのなら、そろそろ本を出すべき」みたいなことを言われるようになって、どどど同人誌くらいなら...と勘違いしかかっている私ですが(ぉ)、公式の巡礼ガイドとは違う視点でまとめてみるというのも面白いのかな。

孤独のグルメ 巡礼ガイド 2

それから、コミック 2 巻の発売を記念してか、巻末のインタビューは原作コミックで作画を担当している谷口ジロー先生!まさか登場されるとは思っていなかったので、感涙です。
マンガ『孤独のグルメ』執筆のいきさつとか、食事シーンを漫画で表現することの難しさとか、緻密に書きすぎてイヤになってきた話とか(笑)これもファンなら必読のインタビューです。「SPA!」に一度掲載されたら次はいつになるのか分からないレベルでの不定期連載も、これだけ大変ならば仕方ないか、と思えてきます。

ドラマ Season5 はついに今週末からのスタート。この巡礼ガイド 2 で復習しつつ、Season5 の聖地巡礼の計画を立ててみるのも一興か。まあ既にいくつか具体的な計画を立て始めていますが(笑。

さあ、次はどの店に、何を入れに行こうか。

投稿者 B : 23:56 | Book | コメント (0) | トラックバック

2015/09/25 (Fri.)

孤独のグルメ 2

「ま、ひとり飯。誰気にすることなし」

久住 昌之、谷口 ジロー / 孤独のグルメ 2

孤独のグルメ 2

待ちに待った『孤独のグルメ 2』がついに発売されました。本来は一年ほど前の発売予定だったのが、いろいろあって延期を繰り返し、このタイミングに(ドラマのスタートに合わせたい、という営業的な意味合いもあったんでしょうけど)。公式な発売日は週明け月曜日ということになっているようですが、都内の大手書店では既に本日から販売解禁になっているようで、さっそく捕獲してきました。Amazon の発送や各電子書籍ストアでの配信はまだ始まっていないようです。

書店でお会計をする際にレジの若いお姉さんに「割り箸おつけしときますねー」という感じで一緒に袋に入れられた割り箸(コンビニかよ!)、ノーマークでしたがこれが先着特典らしいです。どことなく昨年発売されたカプセルトイシリーズに通じるものを感じます。デザインされているのは箸袋の部分だけで、割り箸そのものは普通っぽいですが、もったいなくて開封確認する勇気がありません(ぉ

孤独のグルメ 2

全 18 話+特別編という大ボリュームだった前巻(【新装版】の場合)に比べると、厚みは 2/3 くらいになってしまっています。収録されているのは全 13 話、先日「SPA!」に収録されていたパリ編を含む単行本未収録回をひととおり網羅していますが、逆に言えば単行本書き下ろしエピソードはなし。既存エピソードは全て一度読んでいた私としては新作を期待していただけに、ちょっと残念なところ。

孤独のグルメ 2

漫画の中のゴローちゃんは、1 巻に比べると饒舌で、オヤジギャグ満載のキャラになってきたように思います。昔はもっと寡黙でシブい大人の男(ただしたまに食材をダブらせたりする)だったと思うんだけどなあ...?まあ、このあたりはドラマ版松重五郎のキャラが原作にもフィードバックされてきている、ということなのでしょうか。

また、顔芸のほうにも磨きがかかっていて、

孤独のグルメ 2

なんで腹減ってるだけなのにこんな格闘マンガみたいな顔してるの!なんかオーラまで出てるし!(笑

やっぱりダジャレで笑わせるよりも、シリアスさが逆に可笑しいキャラクターのほうが、個人的には原作版ゴローに合ってるんじゃないかと思います。

孤独のグルメ 2

こちらは第 4 話の三鷹のお茶漬け回におけるひとコマですが、これ完全に「モノを食べる時はね(ry」の顔じゃないですか(トレス疑惑
この回、この表情の後に体術が飛び出すところまで含めて、1 巻の大山町ハンバーグ回の再現のようなエピソードになっています。

この店には私も実際に行きましたが、いろんな意味で聖地巡礼史上でも特にインパクトの強い店だったなあ...。

孤独のグルメ 2

余談ですが、ゴローの最新愛用カメラはどうやらソニー RX100 II のようです(アクセサリシューっぽい形から II 型と判断)。兄弟機種ユーザーとしてはとても嬉しい。久住さんも最近 RX100 シリーズ愛用してますよね。

というわけで待ちに待った最新巻、堪能しました。
収録されているお店には既にほぼ巡礼済みなので、レポート記事はこちらからどうぞ。

【飯テロ注意】『孤独のグルメ』聖地巡礼 全店レポート Season1~Season4&原作1~2巻 - NAVER まとめ

来週からはいよいよドラマ Season5 もスタート、こちらも楽しみです。

久住 昌之、谷口 ジロー / 孤独のグルメ 2

4594073379

投稿者 B : 23:56 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2015/09/02 (Wed.)

オールドレンズ・ライフ Vol.5

澤村 徹 / オールドレンズ・ライフ Vol.5

4768306527

前作からちょうど一年、澤村 徹さんのムック『オールドレンズ・ライフ』の最新刊が発売されたので、さっそく購入。このシリーズも気がつけばもう 5 冊目ですが、未だとどまるところを知らない勢いを感じます。

Vol.4 の時点で α7 シリーズによる「35mm 判レンズ本来の画角での撮影」および縮小光学系マウントアダプタによる「APS-C ボディでの擬似 35mm 判画角での撮影」が可能になっており、オールドレンズ本としては一旦行き着くところまで行った感がありました。オールドレンズって毎年新製品が出てくるものでもないし(笑)、さすがにそろそろネタが枯渇してきたのでは、と思っていたら、今回の主なトピックは

  • 旧東独・ロシアレンズ特集
  • 中判オールドレンズ特集
  • 現行 MF レンズ特集
  • まだまだ出てくる新型マウントアダプタ
という、かなり上級者路線を攻めてきました。

オールドレンズの入り口といえば旭光学やオリンパスの旧ズイコー、あるいはヤシカ/コンタックス用ツァイスレンズあたりが定番ですが、ツァイス・イエナを中心とした旧東ドイツレンズや安価なツァイスコピー品であるロシアレンズ側にも、広く深い沼が広がっています。特にイエナ製レンズはオールドレンズとは思えない安定した描写を誇っており、ツァイスにしては安価なこともあって入門用として比較的手を出しやすいのも事実。私もイエナ製の MC Sonnar 135/3.5 は一本持っていたりします。
とはいえ入手性がも情報も限られているこのあたりのレンズにいきなり手を出す初心者もいないでしょう。この『オールドレンズ・ライフ』シリーズは初心者をあまり考慮せずにいきなり沼の深いところから始まることが多いですが(笑)、それでも今回のは今までよりもさらに深淵からスタートしている、と言えます。私もさすがに、中判オールドレンズに手を出す予定は今のところないかな(笑。

個人的注目はやはり現行 MF レンズ特集。少し前までは新品で買える MF レンズといえばライカかコシナ製ツァイス/フォクトレンダーくらいしか選択肢がありませんでしたが、オールドレンズブームのもとで新規に MF レンズを発売するメーカーが複数現れてきました。中でも、今回のムックは富岡光学(ヤシカ/コンタックス用ツァイスレンズを OEM 生産していたメーカー)の Tominon 55mm F1.2 の復刻版にあたる木下光学「Kistar 55mm F1.2」、そしてマウントアダプタメーカーとして有名な Hawk's Factory が Tsubasa ブランドで開発したレンズ第一弾「Swallow 35mm F2」の発表の場を兼ねています。それほど重要な媒体になったと考えると、初期の頃から応援してきたファンとしても嬉しい限り。
一口に現行 MF レンズと言っても、過去の名玉の描写を再現することにこだわったものから既存レンズにないスペックを目指したもの、そして MF でありながら現代的な高解像度を実現しようとしたものまでバラエティに富んでいます。オールドレンズはアジア方面の需要増で年々値上がり傾向にありますが、現行 MF レンズであれば価格が安定しており入手しやすいという利点もあり。いきなりオールドレンズ、ではなくまずは現行 MF レンズから始める、という選択肢もあると言えます。

個人的にはやっぱり東独かなあ。イエナの Flektogon 20/4、35/2.4 は以前から手に入れたいレンズではありました。最近、AF でラクをしてばかりだったけど、AF レンズはめぼしいところはだいたい揃えてしまったので、改めてオールドレンズ収集に走りたくなってきました。

投稿者 B : 21:55 | Book | Camera Mook | コメント (0) | トラックバック

2015/07/27 (Mon.)

猫は忘れない

東 直己 / 猫は忘れない

4150310874

二年前から読み進めていた、東直己「ススキノ探偵シリーズ」の最新巻を読了。

「俺」の学生時代を描いた前作『半端者』から打って変わって、時間軸は『旧友は春に帰る』の続き。「俺」は順当に齢を重ねて五十代半ばにさしかかっています。
いつもの仕事と同じように、知人の水商売のママが旅行中に飼い猫の世話をすることになった「俺」。飼い主の不在中に餌を与えるためにマンションに入ったところ、当の飼い主の刺殺体を発見してしまい...という、いつもとはちょっと違うところから物語は始まります。いつもススキノでグダグダしているところから始まっているので読み進めるのに時間がかかりますが、今回は最初から引き込まれた感じ。

ただ、怪しい人物は序盤にいかにもという形で登場し(しかし「俺」はそれを怪しいとは思わない)、結局その人物が犯人だった...という点で、ミステリー的にはあまり驚くような話ではありません。「俺」も歳を取ってアクション的な動きも減っているし、酒を飲むよりも飲まれるような場面は増えたし、ホームズやポワロのような推理能力でもなければ、そろそろ肉体派探偵としてやっていくのは限界じゃないですかね。このシリーズ、全般的に「俺」が主体的に事件を解決する話は少なく、むしろ「俺」が入り込むことで状況が引っかき回され、真相のほうから勝手に「俺」のところにやってくる、というスタイルが多い。今回も最終的にはそういうオチで、「俺」が謎を解く場面が今まで以上に少なくなっています。
でも、このシリーズ自体がそういうものだ、と考えると、逆に事件や推理は物語に彩りを添える要素にすぎず、「俺」とその関係者たちがススキノ周辺で生きる様子そのものを楽しむことが本質なのだということに気づけば、そういう視点で楽しめるようにも思います。このシリーズにここまで付き合ってきた読者であれば、既にそういう読み方になっているのかもしれませんが(笑。

そういえばこの作品は映画『探偵は BAR にいる』の公開後に刊行された今のところ唯一の作品ということになりますが、この物語に登場する猫のナナについ話しかけては「だからそういうのやめろって」と独りツッコミを入れる様子が、劇場版で「俺」を演じる大泉洋の姿と重なって見えました。小説版の「俺」は大泉洋とは似ても似つかぬ太った中年ですが、キャラクター的にはちょっと当て書きが入りつつあるのかな、という気がします。

長らく付き合ってきた「ススキノ探偵シリーズ」も、刊行されている分はとりあえずこれで終了。続編は番外編として JT が展開する Web 媒体「ちょっと一服ノベルズ」で一時期展開されていたようですが、その先は不明。そろそろ探偵業も限界だろうけど、製作中と言われている映画第三弾の公開に合わせて動きがあるんでしょうか。とりあえず番外編を読みながら、続報を待ちたいと思います。

投稿者 B : 23:28 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2015/06/28 (Sun.)

半端者 -はんぱもん-

東 直己 / 半端者 -はんぱもん-

4150310254

「ススキノ探偵シリーズ」の続編をひさびさに読了しました。続編といっても前作の続きではなく、シリーズ第一作『探偵はバーにいる』よりもさらに遡って、主人公「俺」がまだ北大の学生だったころのお話。あとがきによると、映画『探偵は BAR にいる』の制作を記念して書かれた物語とのことです。

このシリーズは序盤がダラダラすることが少なくなく、主人公が学生であるせいか、この物語はそのあたりが余計に強調されていたような気がします。読者としてはそのせいで序盤の進みが悪く、なかなか読み進めるモチベーションが保てずに、ちょっと時間がかかってしまいました。が、話が動き始めてからはページをめくる手(といっても電子版だけど)が止まらなかったのは、このシリーズならではと言えます。

学生時代の物語、というと派生するシリーズに登場した松井省吾君のことを思い出しますが、彼とは似ているようでいてまたずいぶんと違う。ススキノでそれなりに飲み慣れていながらも、その道に生きる人々との付き合い方はまだ知らない。その割に正義感だけは強くて妙なトラブルに首を突っ込んでばかりいる...というのはその後の作品にも通ずるところですが、そのアプローチが未熟なあたりが、タイトルの『半端者』たる所以。後のストーリーに登場する重要人物との出会いについてもいろいろと描かれており、ここまで読んできた人であれば感慨深いものを感じることでしょう。特に、後のすべてのシリーズに登場する高田や○○についてのくだりは、ファンならば読みたかった話ではないでしょうか。

「俺」がススキノで発生するいくつかの事件に首を突っ込みながらも、最終的にそれを解決するのは多くが「俺」以外の誰か、という点では後続する時間軸のストーリーと一致しています。あくまで首を突っ込んで引っかき回すまでが役割で、それをきっかけに事態が半自動的に進んでいく...というのがこのシリーズの持ち味ですが、そのルーツとして意識的に描かれた物語、という印象。でも、凄腕の探偵が推理によって難事件をどんどん解決していくよりも、こちらのほうがリアリティがあるとも感じます。
ミステリー的には、作中で発生したあれこれの事件が一つの結末に収斂していくことを想像しながら読み進めていましたが、その結末はけっこう散漫な、それぞれの話として終わった感じ。結末としてはちょっと物足りなかったものの、学生時代に起きたことって何でもけっこうこんな感じだったかもな、と思うと、妙に納得してしまうものがありました。そういう意味では、この作品は話の結末そのものよりも、「俺」の行動規範を改めて確認するための物語だった、と言えるのかも。

このシリーズも、刊行済みの作品では残すところあと一つとなってしまいました。映画は続編が作られているらしいので、小説版も映画の新作のタイミングで続きが出てくる可能性はありますが、ひとまずは残り一作。すっかりおっさんになった「俺」の物語を、続けて読んで行こうと思います。

投稿者 B : 21:56 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2015/06/10 (Wed.)

Sony Design: Making Modern

先日行ってきた「MAKING MODERN ~原型づくりへの挑戦~」に触発されて、この写真集を購入しました。

Sony Design: Making Modern

0847844994

展示会場であるソニービルでも販売されていたんですが、配送期間が多少かかっても良ければ海外から買った方が安かったので、Amazon マーケットプレイスのイギリスの出品者から購入。2 週間ほどかかったけど、まあいいです。

Sony Design: Making Modern

現物は想像していたよりもずっと分厚く、ハードカバーであることも手伝ってずっしりとした重さ。もしこれで人を殴ったら「鈍器のようなもの」と報道されるに違いない(ぉ。高価だけど、価格に見合う内容の厚さです。

Sony Design: Making Modern

基本的には写真集だけれど、前半には少しだけソニー黎明期のエピソードが解説されています。ただ、洋書なので記載はすべて英語。でもファンならばこれくらいの英語、愛を以て読みこなせるはずだ(ぉ

Sony Design: Making Modern

さらにはソニーの前身となる東京通信工業の設立にまつわるエピソード(日本橋・白木屋の一角に最初の事務所を構えた話)が漫画(台詞は英語)で収められています。しかも、どこかで見たことのある絵柄だと思ったら、『ゴルゴ 13』のさいとう・たかを先生じゃないですか(;´Д`)ヾ。
調べてみたところ、これオリジナルは日本で『劇画 MADE IN JAPAN』として出版されていたもののようですね。これはさすがに知らんかった...。

Sony Design: Making Modern

本編は歴代の、デザインが特徴的な製品の写真がどどん、と掲載されています。洋書ながら、本編は基本的に写真がメインなので、英語が分からなくても堪能できます。

Sony Design: Making Modern

大半のページを製品写真が占めていて、ソニービルのイベントで展示されていたのはあくまで氷山の一角にすぎなかったんだなあ、ということがよく分かります。個人的に「あれが展示されてないなんて寂しい...」と思っていたものも、書籍版には多くが収録されていて、満足。自分の琴線に触れて実際に買ってしまった製品も数多く載っていて、時代のマイルストーンになる製品はデザインがうまくそれを表現し、象徴の役割を果たしていたのだろうと思います。

Sony Design: Making Modern

基本的に 1 製品に対して 1~2 枚、俯瞰のカットが載っているだけ、というのが多いですが、いくつかの製品ではディテールに大きくクローズアップして撮られた写真も掲載されています。細部の積み上げだけで良い製品は作れないと思うけど、良い製品は細部に至るまで手を抜いていない、というのは真だと思います。

Sony Design: Making Modern

歴史を変え、時代に残る製品のデザインというのはシンプルな幾何学図形の組み合わせでできていることが多い、というのが私の持論です。たとえば iPod は子どもでも描ける円と四角だけで構成されています。工業デザインにおいては、そういうアイコン的な役割も非常に重要。Apple に代表されるように、近年の工業製品のデザインは、そのことを意図的にデザインに反映して成功している例が多いように思います。

私も工業デザインとか空力デザインとかをやりたくて大学に入ったはずだったんだけどなあ。こういうのを見ると、あそこで諦めずにちゃんと勉強をしていれば良かったなあ、とちょっとだけ思います。

投稿者 B : 23:45 | Book | コメント (0) | トラックバック

2015/03/23 (Mon.)

漫画版 野武士のグルメ 2nd

久住 昌之、土山 しげる / 漫画版 野武士のグルメ 2nd

4344027396

1 巻が発売されてからちょうど 1 年。早くも『漫画版 野武士のグルメ』の単行本第 2 巻が発売されました。元祖『孤独のグルメ』だって 1 巻の発売から 28 年経ってようやく 2 巻が発売されようとしている(まだ出てない)というのに(;´Д`)。
1 巻は『孤独のグルメ』ほどの派手さはないながらもけっこう好きな作風だったので、2 巻も買ってみました。電子版がまだ出ていないようなので、紙版を...電子版は後追いで 1 巻が発売されているようですが、もともと Web 掲載のコミックなんだから、電子版も同時刊行にしてくれませんかね。

この漫画は定年後のおじさんが悠々自適な「野武士的」食生活を送る B 級グルメ漫画。『孤独のグルメ』の井之頭五郎もたいがいフリーダムな毎日を送っているように見えますが、本作の主人公「香住武」も輪をかけて自由。なんたって仕事がないわけですから、朝寝坊・昼酒・夜更かしやりたい放題、1 巻よりもさらに過激になってすらいます。出かけたついでに一杯引っかけるのは当たり前、缶入りトマトスープが不味かったといっては思いつきでカレーを作り始めるわ、深夜に目が覚めたといっては寝酒のつもりで飲み始めたビールから日本酒へ夜更けの深酒コースに突入するわ、もう展開が読めない(笑。

漫画版 野武士のグルメ 2nd

1 巻に引き続いての、酒を飲み下した直後のこの表情ですよ。『孤独のグルメ』ではついぞお目にかかれなかった、酒飲みであればこれを見ただけで自分も飲みたくなってきてしまう顔。飲んだ後に手の甲で口を拭う仕草が完全におっさんです(笑。

漫画版 野武士のグルメ 2nd

料理の描写のリアリティは谷口ジロー先生に勝るとも劣らないうまそうさ。焼きたての新サンマに箸を入れる瞬間を「プシュ」という擬音つきで表現した漫画が今までにあっただろうか(ぉ

これは深夜に読んだらアカン漫画です。

漫画版 野武士のグルメ 2nd

なにげにこの台詞、すごい名言だと思います。ドラマ版の井之頭五郎がモノローグで言いそうな台詞でもある。まさに、久住節。

『孤独のグルメ』よりはもうちょっと日常寄りなので聖地巡礼的な楽しみはあまりありませんが、逆に冷蔵庫にある食材でちょちょっと飲みたくなってしまう危険性を孕んでいます(笑。
そういえば、この作品ではあまり「どこどこの店」というのが特定できないような書き方をされていることが多いですが、唯一見つけたのが銀座すずらん通りの「そば所 よし田」。銀座で蕎麦といえば田中屋には行ったことがあるけど、今度はこっちの店に行ってみようか...と思ったら、現在休業中または閉店してしまったらしいですね(´д`)。これは残念だ...。

投稿者 B : 23:57 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2015/02/26 (Thu.)

愛蔵版 機動戦士ガンダム THE ORIGIN 特別編

安彦 良和 / 機動戦士ガンダム THE ORIGIN (24) 特別編

4041027942

アニメ ep1 の一般公開を目前に控え、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の最新刊が発売されました。とはいっても既に完結している作品なので、この 24 巻は「特別編」という位置づけ。過去に発表済みの前日譚、後日譚の詰め合わせになっています。

収録されているエピソードは「その前夜」「キャスバル 0057」「アルテイシア 0083」「アムロ 0082」の 4 本。「その前夜」は角川から関連書籍として発売された公式ガイドブックで初出(余談だけどこの公式ガイドブックだけで 3 巻も発売した角川はいくらなんでも悪どいと思う)かつ愛蔵版 VII にも収録されているもので、それ以外の三つは愛蔵版 XII で既に収録済み。初出なのは表紙イラストとカバー折り返しの作者コメント、あとちょびっと掲載されている安彦先生へのインタビューくらい?つまりは B6 判コミックスとして初収録となるだけで、愛蔵版を全巻揃えている人はあえて買う必要はありません。まあ、私は B6 判も愛蔵版も全部揃えたけどな(ぉ

という感じで相変わらず商売としては悪どいわけですが(安彦先生自身もコミック等の作者コメントイラストで編集部に対する不平は繰り返し述べています)、作品の内容は良いんですよね。サイド 7 でジーン兵長が戦功を焦り、シャアが「若さ故の過ち」を悔いるに至った経緯を描く「その前夜」。キャスバル・レム・ダイクン生誕の日を描く、どこか神話めいた雰囲気すら感じる「キャスバル 0057」。セイラのその後の人生をカイ・シデンの目線で描いた「アルテイシア 0083」。そしてちょっと異色な「アムロ 0082」。
アニメ版でルウム戦役以前のムンゾ自治共和国の映像を観た後に改めて「キャスバル 0057」を読むと、なかなか感慨深いものがあります。この中に登場する、誰得なキシリアのランドセル姿は必見と言えるでしょう(笑。ただ、「アムロ 0082」はちょっと賛否両論かもしれません。まあこれはスピンアウト作品というよりは、安彦先生自身による二次創作、と捉えたほうが良いでしょうが...。

『青い瞳のキャスバル』の一般公開まであと 1 日と少し。プレミア上映会で一度観てはいますが、改めて楽しみになってきました。

投稿者 B : 22:00 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック