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2015/02/03 (Tue.)

旧友は春に帰る

東 直己 / 旧友は春に帰る

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探偵、暁に走る』を読んだら気持ちが乗ってきたので、続編を勢い任せで一気に読み終えました。

今回のタイトルはシリーズの中でも特に情緒的な響きをもっています。この「旧友」というのが、なんとシリーズ第 1 作『探偵はバーにいる』でヒロイン役に位置づけられていたコールガール、通称モンロー。『バーにいる』のラストでススキノから逃げ出し、沖縄に渡った彼女が、四半世紀ぶりにススキノに戻ってきます。
しかしすっかりオジサン・オバサンになった二人がススキノで旧交を温めるしんみりした話、になるわけもなく。過去にも「俺」を引っかき回したモンローでしたが、今回も完全にモンローのペース。カーチェイスあり、海を渡る逃避行あり、今までは事件を追う側だった「俺」が暴力団に追われる側になるという展開もなかなか目新しく、手に汗握るストーリーに引き込まれました。

「俺」といえば一貫してケータイを持ち歩かないキャラとして描かれていますが、今回もそのポリシーは健在。しかしケータイメール全盛(この作品が書かれた頃はまだ SNS は一般化していなかった)の現代において、ケータイを持たずに時々刻々と変化する状況に対応する探偵を描くのはリアリティがないという判断か、定期的にネットカフェに行って PC で Web メールをチェックするようになっています。これはこれで、以前に比べればタイムリーな情報交換ができていつつも少しタイムラグがある、という状況を作り出していて、なかなか面白い。そしてメールチェックの合間に YouTube で動画を見たり、その数分間の間に二桁を超えるスパムメールが届いていたりする半端な現代っぽさが面白い(笑。

「俺」は最後まで振り回されっぱなしで結局何かを解決できたわけではない、という割り切れない結末でしたが、そういうのも含めて感傷的になれる物語でした。過去作に登場した主要キャラが多数登場することもあり、シリーズここまでの集大成と言える作品だと思います。面白かった。

投稿者 B : 22:09 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2015/01/23 (Fri.)

探偵、暁に走る

東 直己 / 探偵、暁に走る

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ちょっと間が開いてしまいましたが、「ススキノ探偵シリーズ」の続編を読了。

本作では「俺」はついに五十代に突入し、そろそろおっさんというよりも初老と言えそうなほどに老けてきました。時代もすっかり現代で、スマホこそないもののケータイは当たり前(「俺」は意地でも使わないけど)、さらに「俺」は PC さえ普通に活用しています。

今回のお話は、地下鉄の中でたまたま知り合うことになったイラストレーター・近藤雅章と意気投合した...かと思ったらその近藤が何者かに殺されてしまい、「俺」はその犯人を捜し始める、というもの。この近藤がまた独特なキャラクターで、『ライト・グッドバイ』の犯人とはまた違った種類の曲者なわけですが、なぜか「俺」は近藤に妙に肩入れしてしまいます。まあ、この近藤が今の世の中をいろいろと疑問に思い、気に入らない相手に対しては暴言を吐いたり暴力さえ振るったりするキャラクターなのに対して、前作くらいまでは世の中の変わりように対してボヤいてばかりいた「俺」がきっぱりそういうことを言わなくなったのは、おそらく東直己氏が自身のキャラクターの投映先を「俺」から近藤に移し替えたからだろうな、と思います。それくらい、不自然なほどに「俺」は近藤に入れ込んでいきます。

いつもの如く、物語の序盤はまったりとした展開。あまりに冗長でなかなか読み進まないわけですが(笑)、中盤からは怒濤の勢いで一気に読ませる作風は、東直己の持ち味でしょう。そして、今作はこれまで以上に脇役が立っています。相棒の(といってもこの頃になるとあまり活躍しませんが)高田、新聞記者の松尾、暴力団の桐原組長と相田、高田に替わってアクションを担当するようになったアンジェラ、新しい恋人役の華、「俺」を真面目に手助けする石垣など、それぞれの人間くささが今までの同シリーズよりも深く出ているのが印象深い。特に相田が病気でほぼ全身不随になりながらも最も重要なシーンで活躍するくだりは、映画版の松重豊さん演じる相田の顔を思い浮かべると余計にグッと来るものがあります。

個人的には、「俺」が気に入らないことに対してごちゃごちゃ言ってばかりいる「昔は良かったおじさん」から「友人の苦境を見過ごせない正義漢」に戻ってきてくれたことが嬉しいかな。やっぱり「ススキノ探偵シリーズ」はこうでないと。シリーズの残りも 3 冊ほどになりましたが、春くらいまでかけて読み切りたいと思います。

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2015/01/16 (Fri.)

MOT ―テクノロジーマネジメント

グローバルタスクフォース / 通勤大学 MBA 〈11〉 MOT ―テクノロジーマネジメント

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「スマートフォンはあらゆる電気製品の価値を吸収した」と最近よく言われます。実際、スマートフォンとその先に繋がっているクラウドサービスが既存のハードウェアを代替し、スマホ一台あればかなりのことができる世の中になったことは事実でしょう。でも、IT やエレクトロニクスに携わっている人の多くが「もっと便利に、もっと効率的に、もっと楽しく」を目指していろんな価値をスマートフォンに集積していった結果、確かに便利で効率良くはなったけれどもなんだかつまらない、という状況に息苦しさを感じているのもまた事実だと思います。
一昔前だったら PC やモバイル機器に入れ込んでいた私やその周囲の人々が最近ではカメラと写真に熱を入れるようになったのも、おそらくそれがまだ物理的制約に囚われて電子化しきれない、昔ながらのハードウェアの愉しみがまだ残されているから、という側面があるのではないでしょうか。

「良いものを作りさえすれば売れた」時代はとうに過ぎ去り、技術とビジネスモデルを組み合わせてようやくモノが売れる時代。日本の製造業の凋落が叫ばれていますが、それは決して技術力が衰えたわけではなく、時代の変化に合わせたビジネスモデルを創造することと、それを推進できる経営がなされてこなかったことが原因でしょう。
ビジネスモデル創造について学んだら、次は技術を正しく活かす経営について学びたくなったので、この書物を手に取って(電子版だけど)みました。

この本は、MBA で学ぶような内容を通勤中に学んでしまおうというコンセプトで作られたシリーズのようです。これで MBA 相当の知識がついたらこんなにオイシイ話はないわけですが(笑)、概要を体系的に理解したい人にとってはちょうど良くまとめられた内容になっています。製品開発プロセスから技術戦略、R&D、知財、他社とのアライアンスや生産管理・資材調達まで、企業の開発・生産活動全般にわたってまとめられています。まあ 10 年以上前の書物なので、あくまで技術的優位性を軸にした製造業の話に終始しているのはちょっと物足りませんが、それでも現在も製造業が日本の主力産業であることは間違いないわけで、今でも十分通用する考え方だと言えます。
私自身も、今までに部分的にはいくつか関わったことがあったり知っているものはあっても、こうやって全体を俯瞰して見ることはなかったので、頭の中が整理される内容でした。

ただ、それほどページ数が多いわけでもないので、どの話も基本的にフレームワークの説明に留まっていて、具体例に乏しい=実感としての理解にはちょっと物足りないと感じました。このあたりは実際の MBA であればケーススタディやロールプレイ等を通じて腹落ちしていくところだと思うので、そのへんは独学の限界かもしれません。
あと、全体に書き方が教科書的すぎて、読んでいて眠くなるのは困りましたね(笑。

あとは自分で実地での経験をふまえ、いかに技術を活用して市場に受け容れられるビジネスモデルに結びつけるか、が勝負ですね。がんばらないと。

投稿者 B : 23:33 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2014/11/28 (Fri.)

後ろ傷

東 直己 / 後ろ傷

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ススキノ・ハーフボイルド』の続編にあたる、東直己のミステリー小説を読んでみました。これまた電子書籍が発売されていないので、図書館で...。やはり旧作は大ヒット作かメジャーなシリーズもの以外はなかなか電子化の手をつけてもらえないのが残念なところ。

時間軸は道警腐敗事件の翌年。『駆けてきた少女』『ススキノ・ハーフボイルド』に続いて 3 作目の登場となる松井省吾君は、本作では大学生になっています。が...、以前の作品では「北大合格確実」という話だったのが、どういうわけか受験に失敗してしまい、唯一滑り止めとして受けていた道央学院国際グローバル大学(通称:グロ大)に進学します。まあ、受験に最も重要な高三の夏休みにああいう事件に首を突っ込んでいてはそれもむべなるかな、という気はします。しかもグロ大は『駆けてきた少女』に登場するある事件の犯人であり被害者が通っていた、札付きの底辺大学。恋人だったホステスの麻亜とも別れています。もともと自信家で世の中を斜めに見ていた松井少年は、このことで完全にひねくれてしまい、物語の中盤までは自虐的な台詞やグダグダした行動が目につきます。中盤までに幾度となく登場する「グロダッチ(=グローバル大学の友達)」という言葉も、妙に哀愁を誘う響きで何とも言えません(笑。
個人的には、こういう生活環境が大きく変わる十代後半~二十代前半に自分の価値観を覆すような事件が起きるとしばらく自棄になって立ち直れなくなる心境は分からなくもないです。大人になった今では、逆にそうやって時間を浪費している若者の姿がもどかしくもあります。

そういう意味では、世間知らずで腕っぷしも弱いくせに正義感だけは強い松井少年の「ハーフボイルド」っぷりに、さらに磨きがかかった作品と言えるでしょう。

ただ、松井少年が『ススキノ・ハーフボイルド』と違うのは、今回は事件の渦中にいる、ということ。前作では完全に巻き込まれ、振り回される形で事件が進んでいき、結局最後まで事件の中心に立つことがありませんでしたが、今回はもろに事件の中心人物になります。この事件を通じて松井少年が自分の価値観を再認識し、進むべき道を取り戻していくのがこの物語のハイライトではないでしょうか。
ただ、事件の解決にはあの「俺」が「便利屋さん」という立場で深く絡み、なんだかんだで事件を解決したのは「俺」の立ち回りによるものだったりします。その点では結局この作品も「ススキノ探偵シリーズ」を視点を変えて描いたもの、ということになります。

この事件のあと、松井少年はどういう人生を歩んだのでしょうか。続編は書かれていないので想像するしかありませんが、結局グロ大をやめて浪人し、北大に進んだのではないかと思います。もしかすると、加齢で動きの重くなった「俺」の後を継いでススキノの便利屋稼業を始めているのかもしれません。

投稿者 B : 23:15 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2014/11/20 (Thu.)

貞本版『新世紀エヴァンゲリオン』完結

ようやく完結。

貞本 義行 / 新世紀エヴァンゲリオン (14) 【プレミアム限定版】

新世紀エヴァンゲリオン

13 巻が発売されたのが 2012 年の 11 月。去年の夏には「ヤングエース」誌での連載が完結していたからその年末くらいには発売されるのかと思っていたら、なんと今の今まで待たされました(´д`)。連載のほうは読まずにコミックスの発売を待っていたので、長かった、というかほぼ忘れかけてました(笑。

とりあえず電子版でサクッと購入したにもかかわらず、何故かプレミアム限定版も欲しくなって店頭で紙版を購入(ぉ

新世紀エヴァンゲリオン

プレミアム限定版の特典、まずはスペシャル CD とブックレット。
CD のほうは、貞本義行氏が漫画執筆中に BGM としてかけていた音楽の中から、特に思い入れのある楽曲を 4 作品収録しています。基本的に VOCALOID「IA」(私はボカロはクリプトン系しか知らなかったので、この IA という VOCALOID は初めて知った)による歌とインスト曲。まあ「ふうん」という感じではありますが、VOCALOID の無機質な歌声と綾波レイ、というのは確かに重なるところがありますね。

新世紀エヴァンゲリオン

ブックレットはイラスト集になっています。ページ数はさほど多くはありませんが、貞本氏らしい繊細なタッチが堪能できるイラストばかり。貞本氏のイラストって以前はもう少し平面的な印象でしたが、今回のは非常に立体的。これだけのベテランになってもまだまだ進化するんですね。

新世紀エヴァンゲリオン

もうひとつの特典は、コミックス全巻を収納可能な特製ブックエンド(組み立て式)。
全体的に A.T.フィールドと NERV カラーを意識した、エヴァらしいデザインになっています。

まあ、私は紙版は 13・14 巻しか持っていないので(あとは全て電子版だ)、使い道がありませんけどね!(ぉ

新世紀エヴァンゲリオン

側面には各巻の表紙イラストが。初期の表紙とか、今見るとすごく懐かしい。だってもう 20 年も前ですよ...。

肝心の内容ですが、20 年の集大成に相応しい、期待に違わぬラスト。エヴァが『まどマギ』のようなループものだとするならば、旧劇場版からさらに何度か回繰り返した世界の話、という感じで、旧劇場版のストーリーをなぞりつつ、結末に至る部分が変更されています。でも、未だに納得いかない旧劇のラストに比べれば、これがエヴァのトゥルーエンドだと言われても違和感のない、ある意味大団円。もしかしたらテレビ版の当初のプロットはこうだったのかも、というのは考えすぎでしょうが、そう思いたくもなる終わり方です。

そして驚いたのがこの単行本のために書き下ろされた EXTRA STAGE。六分儀ゲンドウと碇ユイの大学時代の物語ですが、そこに登場するのが...え、コミックスのここでそのタネ明かしをしちゃいますか、という予想外の展開で、漫画版と新劇場版をブリッジするような内容になっています。正直、これを読めただけでも最終巻を買った価値はあったかな。

貞本さん、ひとまずはお疲れさまでした。
あとは『シン・エヴァンゲリオン劇場版』で本当のラスト、になるのか、結局また終わらないのか。コミックス発売のタイミングで新劇の続報があるかと思ったのに、まだ何もないんですよね...。

貞本 義行 / 新世紀エヴァンゲリオン (14) 【プレミアム限定版】

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投稿者 B : 23:14 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2014/11/14 (Fri.)

ビジネスモデル・ジェネレーション

久しぶりにビジネス書。

アレックス・オスターワルダー、イヴ・ピニュール / ビジネスモデル・ジェネレーション

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最近の私の仕事は、純粋なマーケティングよりも戦略系とかビジネスモデル企画とかそっち寄りのものが中心になってきています。そのあたりは専門ではなかったのでいろいろと勉強ながらやっているところですが、この本に書かれている内容はその根幹とも言える部分。ビジネスモデル構築に必要な要素を分解し、客観的に評価できるフレームワーク「ビジネスモデルキャンバス」に表現した上で、そのビジネスモデルがどういった類のモデルなのか、その強みと弱みは何なのか、を把握しよう、というものです。

この手法は現代の新規ビジネス開拓においてはスタンダードになっているもので、この本で紹介されているビジネスモデルキャンバスは、多くのビジネスモデル研修等でも使用されています。聞くところによると、このフレームワークは専門領域が違ってもそのビジネスモデルの強みと弱み、リソースやお金の流れが一目瞭然に把握できるので、シリコンバレーのベンチャーキャピタルでは標準的に使われているとか。実際に私も書いてみましたが、確かに専門領域が違う人とフレームワークを見せ合っても、それのどこが強くてどこが弱点なのかが理解できます。また、自分の考えたビジネスモデルが自分では「ここがハードルだろうな」と思っていたのが、他の人からはむしろ違うところに弱点があると指摘されるなど、パワポで絵にしていただけでは分からなかった部分まで見えてきます。パワポだとどうしても自分に都合が良い前提条件で描いてしまうため、弱点が覆い隠されてしまいがちですからね。

ビジネス書とはいっても、一般的なビジネス書とはだいぶ体裁が違って、デザインや装丁が非常に凝ったものになっています。第一印象としては「広告業界系のコンサルが好きそうな体裁の本だな」という感じだったのですが(笑、ビジネス書なのに横長だしカラフルだし、内容を書かずにあくまでイメージのためのページまであるし、ビジネスにこそクリエイティビティと柔軟な発想が必要、と言われているように感じました。まあ、正直ビジネス書としては読みにくくて、独習のための本というよりはむしろセミナー用のテキストとして使うのがいいんじゃないかな、という雰囲気。フォーマットが自由すぎて、読んでて疲れます(笑。

さまざまな業界のビジネスモデルも事例として紹介されていて、近い業界でもビジネスモデルはずいぶん違うんだなとか、逆に違う業界なのにビジネスモデルとしては同じなんだなとか、そういう意味でもいろいろな発見があります。実務をやっていると、ついつい技術や商品、サービス単体の強さに依存したビジネスをやってしまいがちですが、そういうのは市場の成熟や長期戦、消耗戦に弱いもの。ビジネスモデルを周到に構築して利益をしっかり確保できる者が最終的に勝つのが現代のビジネスなわけで、私もそこをもっと磨いていきたいと思います。

投稿者 B : 23:59 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2014/11/01 (Sat.)

ライト・グッドバイ

東 直己 / ライト・グッドバイ

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道警腐敗三部作を読み終えたので、通常の「ススキノ探偵シリーズ」に戻ります。今回はようやく電子書籍版に戻ってきたこともあって、サクッと読了。

前作に登場したオリジナルカクテル「サウダージ」ですが、本作では「俺」がススキノ中、いや日本中に流行らせようとして個人的にあちこちの店で飲みまくっています。まあ、流行らないわけですが(笑。自分で作って飲んでみたことで、飲むシーンが登場するたびにあの苦み走った独特の味が思い出せる、というのは試してみて良かったなと。

今回はいよいよ五十代が見えてきた「俺」。変わりゆくススキノへの落胆と世の中をさらに斜めから見るようになってしまった性格が、私からはだんだん感じ悪いおじさんだなあ、と思えるようになってきてしまいました。でも『ススキノ・ハーフボイルド』で客観的に描かれていた「一般市民ではない怪しげなおじさん像」と対比すると、やはり一人称ではそれなりにかっこいいつもりでいる「俺」が滑稽に思えてきます。

今回の事件は、過去の作品にも何度か登場している元刑事・種谷から、「俺」がある女子高生失踪事件の重要参考人・檜垣と接触するように仕向けられるという話。「俺」も「俺」なら、種谷も過去作でのキャラに輪をかけて偏屈な爺さんになっているし、問題の檜垣はもうどうしようもない人物で、檜垣から「俺」に対するコミュニケーションが、もう背中の裏側が痒くなるような感じで気持ち悪い。三人の偏屈なおっさんの掛け合いがグダグダと終盤まで続くわけですが、不思議とテンポ良く読まされてしまうあたりにこの作品の神髄を見た気がしました。少なくとも、今までの「ススキノ探偵シリーズ」とは毛色が違う作品。
気持ち悪いけど続きが読みたくなる、という変な感覚の小説でしたが、「俺」の相棒・高田に珍しくロマンス的な展開があるのが見逃せません。というか、このくだりが一番面白かった(笑

それにしても、初期の数作を除いてこのシリーズは映像化しづらそうな猟奇事件が多いので、映画化の続きはどうなるんでしょうね。中年になった「俺」のデブのおっさんキャラは今の大泉洋には合わなさそうだし、今後の映画はオリジナル脚本にせざるを得ないのかもしれません。

投稿者 B : 22:00 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2014/10/30 (Thu.)

ザ・レンズマニアックス

澤村 徹 / ザ・レンズマニアックス ~ミラーレスと一眼レフで陶酔するオールドレンズの世界~

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デジタル一眼カメラにおけるオールドレンズ使用の第一人者・澤村徹さんの最新の著作が発売されたので、すかさず買ってきました。ここ数年、1 年に 1 冊以上のペースでオールドレンズ本を刊行し続けるペースの高さには脱帽します。

この書籍は、「日本カメラ」誌に掲載されていた同名の連載を単行本としてまとめたもの。そのため、今までのムック系の冊子とは少し毛色の違う書籍に仕上がっています。今までのムックは、ほとんどが入門書としての役割も兼ねていて、レンズマウントやマウントアダプタの解説、オールドレンズをデジタルボディにつけて撮影する手順から書かれていたので、そういうページは「うん知ってる」と思いながら読み飛ばしていました。むしろ「そういうのはいいからレンズ紹介や作例掲載にもっとページを割いてよ」と思っていたのも事実です。それに対して、今回の書籍は初心者向けの解説は最小限に留め、レンズと作例に最大限のページを割く構成になっています。
そういう意味では、今までのムックは「オールドレンズの間口を広げるために企画から練られた本」だったのに対して、この書籍はその名の通り「レンズマニアに向けて作られた本」ですね。なんたって、いきなり冒頭から CONTAX G 用 Hologon を掲載するというマニアックさなわけですから(笑。

オリジナルの連載が掲載されていたのが 2011/1~2013/12 のちょうど 3 年間。ミラーレスカメラの台頭によるオールドレンズ人気の高まりから、α7 シリーズの登場によるオールドレンズフルサイズ時代の到来まで、まさにひとつの時代をまとめた格好になります。掲載されているレンズも、メーカー・マウントともにバリエーション豊富で、ミラーレスに限らず DSLR 向きのレンズも含め実に豊富な 39 本。「なぜイエナ三兄弟(東独 Zeiss Jena の Flektogon 20mm、同 35mm、Sonnar 135mm の 3 本)を集めてしまうのか?」など、オールドレンズ好きならばニヤリとしてしまう切り口で紹介されていて、実に楽しい。でも、Jena はオールドレンズ沼でいえばまだまだ淵のほうにすぎず、Jena とか CONTAX G あたりで踏みとどまっている私はまだまだ甘いと言わざるを得ません。まあ、だってコシナ製フォクトレンダーみたいな、新品で買えて味もあるのに描写にハズレがないレンズが普通に買えてしまうと、そこだけで十分楽しかったりもしますからね。

レンズの解説としては、「昭和初期の日本文学に登場するような、深窓の令嬢がイメージだ」とか「さながら、真実だけを刻む速記者のようだ」とか、まるでワインの味や高級オーディオの音を評価するような表現で、思わず笑ってしまいますが、最近の解像度一辺倒、MTF 曲線やらチャート実写やらでレンズ性能を評価する業界やユーザーの傾向もどうかな、と思っていたので、逆に新鮮(笑。まあ、解像性能が至上であればわざわざオールドレンズに手を出す必要はないわけで、レンズのクセまで含めて愉しむ本道に鑑みれば、こういう情緒的な表現のほうが合っているのかもしれません。それぞれのレンズに対する澤村さんご本人の出会いや思い入れを絡めて書かれているので、共感も持てますね。

買ったばかりでまだあまり読み込めていませんが、じっくり読む価値のあるレンズ本だと思います。私はとりあえずイエナ三兄弟でまだ持っていない Flektogon の 2 本から物色していきますかね...。

投稿者 B : 23:28 | Book | Camera Mook | コメント (0) | トラックバック

2014/10/24 (Fri.)

熾火

東 直己 / 熾火

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最近東直己ばかり読んでいますが、『駆けてきた少女』『ススキノ・ハーフボイルド』に続く、道警腐敗三部作(とでもいうのでしょうか)のラストを飾る本作まで一気に読んでしまいました。これも電子化されていないようだったので、図書館で借りてきました。もう本棚に紙の本増やしたくないので...。

本作は、ススキノ探偵シリーズとは別の「探偵・畝原シリーズ」と呼ばれるシリーズもの。過去作を呼んでいないので主人公・畝原のキャラは私にとって今回が初登場ですが、三部作の他の二作にもうっすら関わっているという設定になっています。
時間軸としては他の二作より少し後の話で、これまでに登場したものとは違う事件を扱っていながらも、結果的に過去の二作に登場した重要人物の結末を描いていて、ようやく一連の事件の全体像が見えてきた感じ。とはいえ、それぞれの物語が各主人公の一人称視点で描かれているため、道警やメディアの利害を骨格とした相関の全貌は想像するしかありません。結局、構造的な不正に対して個人が糾せることなんて限られた部分でしかない、ということを、東直己はわざわざ三部作に分けて描きたかったのでしょうか。

物語は、畝原がある場所で激しい虐待の痕を残した幼女を保護するところから始まります。そして畝原の恋人未満的な女性カウンセラー・姉川が拉致され、犯人から姉川と引き換えに幼女を渡せ...という脅迫の電話がかかってきて、という話。主人公が自分とは直接関係のない事件に首を突っ込んで、道警腐敗に絡む事件に巻き込まれていく、という他の二作品とは違い、主人公自身とその家族・友人が当事者になるという点では、サスペンスらしいスリルに満ちた作品。
ただ、話はなかなか先に進まず、残りページ数だけが減っていってやきもきさせられたと思ったら、とあるキーワード(人名)が登場したところでドミノ倒しのように話が進み、ラストはかなりあっけない幕切れ。事件解決してハッピーエンド、というわけでもなければ、数々の人生に大きな影響を与えた悪党を追い詰めるカタルシスもなく、肩すかしを食らったような感覚。もしかすると、凶悪事件の被害者が解決後に抱く感慨ってこんな感じなのかもなあ...と思わされました。

冒頭と終盤に出てくる虐待や死体の描写は文字で読んでいるだけでも嫌悪感をおぼえるほどに残酷で、ハッキリ言ってこんなに後味が悪い小説を読んだことがありません。また読みたいかと言われたらもう読みたくありませんが、『駆けてきた少女』を読み終わった後のスッキリしない気分にケリをつけられただけ、良かったかな。

投稿者 B : 23:55 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2014/10/18 (Sat.)

機動戦士ガンダム UC メカニック&ワールド ep7

機動戦士ガンダム UC メカニック&ワールド ep7

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ep1-3ep4-6 と買ってきた「グレートメカニック DX」誌の別冊ガンダム UC 特集『機動戦士ガンダム UC メカニック&ワールド』。そのラストを飾る ep7 版が発売されたので、さっそく買ってきました。アニメは ep7 でキレイに完結したものの、メカニックや設定考証の側面から最後の一滴まで楽しみ尽くすには、このムックは欠かせないわけですよ。

これまでのムック化が ep1-3、ep4-6 という塊だったので、いくら尺が長いとはいえ ep7 一本で一冊作るのは難しくないか、と思っていましたが、十分に読み応えのあるボリュームでした。ep7 の目玉 MS であるネオ・ジオングをはじめとして、フルアーマー・ユニコーンやバンシィ・ノルン関連の追加設定、それに ep7 で登場したゲスト MS(これもグスタフ・カールとゼータプラスにはじまり、シュツルム・ガルスやズサ、バウにシルヴァ・バレト...といろいろありました)など盛り沢山。とはいえ掲載している MS の数自体は従来より少ないので、その分それぞれの MS について丁寧に解説されているのが逆に嬉しかったり。

物語が完結した後ということでネタバレを恐れず語れるようになったからか、製作陣のインタビューも充実。特にストーリーの福井晴敏氏、監督の古橋一浩氏、作画監督の玄馬宣彦氏の三巨頭のインタビューが揃っていて読み応えがあります。それぞれの話を知ることで、細かな演出の意図をより深く知ることができ、今まで気がついていなかった部分もふまえてもう一度観返したくなりました。特に、クライマックスが満月になるように全体のタイムラインを調整した...という設定考証の小倉氏の話には震えるものがありましたね...。
全体的に、製作サイドのこだわりや思い入れが強く滲み出たシリーズでしたが、オールドファンを歓喜させた MS のアクションシーンの完成度は作監の玄馬氏のこだわりによるところが大きいとのこと。玄馬氏のこだわりはこれまでもスタッフへのインタビュー等で「玄馬大戦」と呼ばれてきましたが(笑)、福井氏や古橋監督まで納得して任せさせてしまう玄馬氏のこだわりがなければ、UC の世界観はなかったと言っても過言ではないでしょう。いっぽうで UC をマニアのための作品にしないためにそこのバランスに気を遣っていた、という福井氏の話も印象的でした。

サンライズ的には、ガンダムシリーズとしてはもう『G のレコンギスタ』とアニメ版『THE ORIGIN』に主軸が移っているため、UC 関連のコンテンツはこのムックがほぼ最後でしょうか。UC にどっぷり浸かった身としてはちょっと寂しくはありますが、このムックを読んで、改めて ep1 から順番に観返したくなりました。

投稿者 B : 22:07 | Book | コメント (0) | トラックバック