b's mono-log

2014/09/29 (Mon.)

探偵は吹雪の果てに

しばらく止まっちゃってましたが、「ススキノ探偵シリーズ」の読書を再開しました。

東 直己 / 探偵は吹雪の果てに

4150307490

前作にあたる『探偵はひとりぼっち』での驚きのラストを読んで、

人生最大の変化を経て、自作の「俺」がどう変わっていくのか、続きが早く読みたくて仕方がありません。
と書きましたが、本作ではそのオチに対するいきなりのちゃぶ台返しから始まっていて、再び度肝を抜かれました(;´Д`)ヾ。まあ、「俺」の性格からいって家族のあるまともな生活を送れそうにないことは判っていましたが、ここまで潔く設定を切り捨ててくるとは。そりゃ映画もヒロインを固定しない『男はつらいよ』方式を採ってくるわけだわ。 さらには時代設定も一気に 15 年流れていて、「俺」がいきなり四十代半ばのおっさんになっています。向こう見ずな正義漢という性格は変わらないまま、歳だけ食って無理が利かなくなった「俺」。ハードボイルドさよりも中年の悲哀が前面に出てき始めました(笑。

今回のストーリーは、20 年ぶりに再会した、かつて心から愛した恋人からの依頼で、斗己誕(作品オリジナルの架空の地名で、旭川より少し北くらいの設定だと思われる)に住むある人に手紙を渡してほしい、という話から始まります。その場所は少し前に少年犯罪が起き、その犯人とみられる少年は現在も行方不明のままで...というところからストーリーがからまっていくわけですが、今回の話がまた『探偵はひとりぼっち』以上に「俺」がひとりぼっち。相棒の高田は序盤にちょっと出てくるだけだし、あとは途中で桐原(映画では松重豊演じる「相田」を部下にしていたヤクザの組長)が助け船を出してくれるくらいで、斗己誕を舞台におっさんになった「俺」が一人で謎に立ち向かう話になっています。
人の出入りのほとんどない田舎では住人の全てが顔見知りというだけでなく、ほぼ全員が何らかの利害関係で繋がっていて、その利害に波風を立てる余所者は排除される...というのはよくある話です。本作では、その人間関係のすべてがちゃんと伏線になっていて、クライマックスで芋づる式に謎が解けていく、という推理小説のお手本的気持ちよさがありました。最後は例によってなんとも救われない話でしたが、構成の巧みさはここまでのシリーズで随一じゃないでしょうか。そして、ラストシーンは切ない終わり...若気の至りとは違う、歳をとってからのどうにもならない切なさ、ってのも悪くないですね。

期待以上に面白かったので、このまま続きも一気に読んでいきたいところです。でも気になるのは既に続編の製作が決まっているという映画のほう。『2』が『探偵はひとりぼっち』からの映画化だったので、そのまま引き継ぐとこの『吹雪の果てに』が次の原作ということになります。大泉洋がいきなりおっさんになってしまうのか(といっても、ご本人の実年齢は既にこの作品に近づいていますが)、もう少し若い設定のまま本作を映画化するのか、あるいは未映像化の『バーにいる』『消えた少年』のどちらかを引っ張ってくるのか。映画オリジナルストーリーだとしたら、ちょっとやだなあ。

投稿者 B : 00:00 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2014/08/24 (Sun.)

オールドレンズ・ライフ Vol.4

澤村 徹 / オールドレンズ・ライフ Vol.4

4768305474

1 年ぶりの発刊となる、澤村 徹さんの『オールドレンズ・ライフ』最新号が発売されました。年に 1 冊ペースでの刊行が続いていて、澤村さんのオールドレンズにかける情熱に感心するとともに、こういうムックが定期的に発売できる市場の熱も実感しますね。

前号のテーマは「オールドレンズ・フルサイズ宣言」でしたが、当時はフルサイズでオールドレンズを堪能できるレンズは実質的に EOS フルサイズ機かライカ M くらいしかなく、Speed Booster のような特殊マウントアダプタを用いて APS-C 機でフルサイズ相当の画角を得る、というほうが現実的だったように思います。それが今は α7 シリーズの登場により、オールドレンズを本来の画角で使える環境がぐっと身近になりました。そういう意味では、時代がこのムック創刊の志にようやく追いついた、と言えるのかもしれません。

今号は大口径オールドレンズ、特に各社のフラッグシップである F1.4 以下のものを中心に取り上げています。とはいえいずれもそうそう手が出る価格帯のレンズではありませんが、別特集として廉価な大口径オールドレンズもまとめられています。特に国産オールドレンズや望遠系レンズでは大口径であっても比較的入手しやすいものが多く、現実的にはこちらのほうが狙い目かも。1980 年のタムロン 300mm F2.8 なんかも取り上げられていて驚きましたが(笑)、超望遠系レンズの被写体は MF だと辛いことが多いので、個人的には 135mm~200mm 級の大口径レンズのほうが良さそうだなと思います。

ボディ側で取り上げられているのは α7 シリーズとニコン Df。α7 シリーズは α7S の登場によってついに Hologon が実用レベルになりました。35mm カメラ用のほぼ全てのレンズが装着できると言って良く、去年の夏までに α7 シリーズが発売されていれば、前号の内容はもっと違ったものになっていたかも。
ニコン F マウントはフランジバックの関係でレンズの選択肢が少なく、ニコンのオールドレンズか M42 マウント、あるいは Y/C やライカ R のマウント改造くらいしかありません。EOS よりも選択肢が限られるわけですが、非 Ai ニッコールレンズが自動絞り/Exif 連動で使えるのがメリットなので、実質的にはニコンのオールドレンズをデジタルで愉しむためのボディ、ということになります。

また、巻末には主要なカメラアクセサリメーカーとマウントアダプタメーカーの特集記事が掲載されています。これがまた、ちゃんとそれぞれのメーカーに取材を実施しての記事という気合いの入りよう。工房の取材や代表へのインタビューなど、それぞれを別途数ページの記事に独立して掘り下げてほしいほどの充実度です。また、マウントアダプタに関しては、各メーカーごとに発売済みのアダプタ一覧表が掲載されているのも実用度高し。

最新のカメラやレンズと違って、オールドレンズはどんどん新しいものが出てくる世界ではありませんが、技術の進歩によって次々に新しい愉しみ方が開発されていく、という状況は非常に興味深いものです。今号は同シリーズの中でも、集大成的な内容の濃さと言って良いでしょう。
私は、MF の単焦点レンズは純粋なオールドレンズよりもむしろコシナの現行フォクトレンダーのコストパフォーマンスの高さに気を取られがちでしたが、これを読んで、久しぶりに中古カメラ屋巡りをしてみたくなりました。

投稿者 B : 20:40 | Book | Camera Mook | コメント (0) | トラックバック

2014/08/23 (Sat.)

愛蔵版 機動戦士ガンダム THE ORIGIN XII めぐりあい宇宙編

安彦 良和 / 愛蔵版 機動戦士ガンダム THE ORIGIN XII -めぐりあい宇宙編-

4041017572

「我々は三年待ったのだ!!」

と言いたくなるほどに待たされた、愛蔵版ガンダム THE ORIGIN 完結巻がようやく発売。通常版コミック完結巻の発売からじつに 3 年ですよ。これまで、半年に 1 冊ペースで刊行されてきた愛蔵版ですが、完結巻だけ待てど暮らせど発売されず。まあ、通常なら単行本 2 冊分を 1 巻にまとめているところ、この巻だけボリュームが足りていませんでしたからね。加筆分等、もろもろのネタが揃うタイミングを待ってのリリースとなりました。

本編はコミック通常版で読んだので知っていましたが、やはり大判で、かつカラーページつきで読むとさらに深みが増しますね。演出ひとつとってもアニメとは異なる尺/コマ割の使い方をしていて、安彦先生的に大事にしたかったポイントはどこなのか、というのがよく伝わってきます。クライマックスで、主人公であるはずのアムロよりもむしろシャアとセイラにフォーカスしているあたり、過去編を掘り下げた『THE ORIGIN』ならではなんだろうな、と思います。

足りないページを埋めるコンテンツは予想通り外伝系エピソード。『THE ORIGIN』の前日譚と後日譚をいくつか、既存の刊行物に収録されたものも含めてまとめられています。本編だけで完成された作品なので、これは読まなくても支障ありませんが、これを読むとより理解に深みが出、なおかつ『Ζ』以降へのミッシングリンクが繋がります。特に後日譚のほうは安彦先生自身が気負わずに、自由にキャラクターを動かしてみた遊び心が滲み出ていて、楽しい。

愛蔵版がようやく終わったと思ったら、安彦氏は既にアニメ版『THE ORIGIN』の総監督として活動されています。コミックの連載開始前には病気で入院されていた時期もあるそうですし、年齢も年齢なので、体調にはくれぐれも気をつけつつ、アニメ版『THE ORIGIN』を創り上げていただきたいところです。

投稿者 B : 22:42 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2014/07/24 (Thu.)

孤独のグルメ 巡礼ガイド

巡礼ガイド!そういうのもあるのか。

というわけで、さっそく買ってきました。

孤独のグルメ 巡礼ガイド

4594609228

ちゃあんと、コミック版(新装版)と同じ判型で作ってあるところが憎いじゃないか。

まあ、Season3 までの聖地は既に巡礼コンプしてしまった私にとっては今さらガイドなんて必要ないぜ!と思っていたら、

た、確かに...(;´Д`)ヾ。

このガイドには、Season1~3 の中で特に人気の高かったお店から中心に、登場店の半分強のお店が取り上げられています。

孤独のグルメ 巡礼ガイド

写真はドラマの映像だけじゃなくて、(全てではないものの)改めてお店に取材をしたと思われる写真がたくさん使われているのが嬉しい。
ところで、Season1 に登場した東長崎の「せきざわ食堂」、最近ついに閉店されてしまったんですね...お疲れさまでした&ごちそうさまでした。

孤独のグルメ 巡礼ガイド

コンテンツはお店の紹介だけでなく、久住さん&松重さんのインタビューも掲載。松重さんのインタビューは先日の「SPA!」からの再掲でしたが、久住さんのは今回新録なのかな。
過去のドラマでの登場店で久住さんが特に気に入っているお店の話とか、それぞれの店主とのエピソードとか、「こどグルっぽい」お店の条件とか、そういうお話。

孤独のグルメ 巡礼ガイド

ファンの反響についてもけっこう言及されていて、やっぱりご本人自ら Twitter や Facebook でファンとの交流を積極的にやっているだけあって、いろいろ見てくれているんだなあ、というのを実感しますね。

孤独のグルメ 巡礼ガイド

あと、ドラマのお店だけでなく、原作に登場したモデル店に触れられているのもポイント。しかも、ここにもちゃんと取材に行っているのがエライ(笑。
漫画とドラマは基本的に別物、というスタンスでありながら、ドラマ側に原作の設定を細かく絡ませているのが本作のマニアックポイントなので(笑、より深く楽しむには原作への理解は欠かせません。

基本的にはこれから行こうと思っている人向けのガイドですが、ひととおり巡礼した後に読むのも、それぞれのお店の味が脳裏に蘇ってくる感じで、これはこれで罪作り。二巡目を巡りたくなってきてしまいます。ああ、腹が減った...。

さあ、次はどの店に、何を入れに行こうか。

投稿者 B : 21:56 | Book | コメント (0) | トラックバック

2014/06/03 (Tue.)

SPA! に『孤独のグルメ』最新作が掲載

「新橋へ ガード下ゆき ナポリタン」

ドラマ『孤独のグルメ Season4』の放送開始まであと 1 ヶ月余りとなりました。それに伴ったクロスメディア展開として、今日発売の週刊 SPA! に原作コミック『孤独のグルメ』の最新作が掲載されています。東大本郷キャンパスの学食が舞台となった前作から約 10 ヶ月ぶり、今回の舞台は:

SPA! 2014 年 6/10 号

有楽町ガード下の韓国料理

なんと有楽町ガード下!

有楽町~新橋へと続く JR ガード下といえば、サラリーマンの飲みの聖地とも言える場所。ある意味、最も「こどグルらしい」場所であるにも関わらず、これまでこの場所が舞台となることはありませんでした。ドラマ Season4 の開始に合わせて、満を持しての登場というわけです。

有楽町ガード下の韓国料理

私もいちサラリーマン、この界隈で飲むことは少なくありません。個人的には、ドイツビールがうまい「JS レネップ」がお気に入り。

でも、今回の登場店は最も飲み屋さんが密集しているこのエリアではありません。このガード下に入り、線路の真下に伸びる薄暗い通路を新橋に向かって歩いて行くと、

有楽町ガード下の韓国料理

...シャッターが並ぶ異様な光景が出現します。
このあたり、よく歩いているのに、ここに足を踏み入れたことはありませんでした。というより、入っていい場所という認識がなかった(汗

ここからさらに歩いたところに、作品のモデルとなったお店が営業しています。

有楽町ガード下の韓国料理

ゴローのこの顔ですよ!(笑

続きは、ぜひ週刊 SPA! 本誌にて(扶桑社の回し者ではありません

孤独のグルメ

本誌にはマンガ以外にも、ドラマに絡めて松重豊さんへのインタビューも掲載されています。

なるほど、Season4 のネクタイはグレードットか(意味深

孤独のグルメ

他には、マンガ・ドラマ両方の登場店で行きたいお店ランキングとか。私はだいたい行ったので、軽く優越感に浸りながら読みました(笑
上位店にはちゃんと取材が入っています。また、『孤独のグルメ』のファンブロガーさん何名かのコメントも掲載されていました。えっとウチには取材依頼来てないんですけど(←

なお、続けて来週号にも最新作がまた掲載されるということなので、忘れずに買おうと思います。

SPA! 2014 年 6/10 号

B00KCUXZZ0

投稿者 B : 23:17 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2014/04/24 (Thu.)

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ

ガンダム UC ep7 の公開が近づいてきましたが、先日『虹にのれなかった男』を読んだら、UC の後のブライト関連の話ってどうなったんだっけ?というのが気になったので、電子版で『閃ハサ』を読んでみました。

富野 由悠季 / 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ

B00B48DQE4

富野氏の小説は『ベルチル』を読んだことがあるんですが、この作品も相変わらず読みづらいですね...。文章が分かりやすい分かりにくいというより、台本のト書きを読まされている感。まあもともと小説家ではないので、文学的なものを求めてはいけないんでしょうが。

ストーリー的にはほぼ全編にわたって宇宙にも上らず、オーストラリア大陸だけで物語が完結してしまうこと、モビルスーツ戦のシーンが少ないこと、そしてガンダムシリーズの中で最も悲惨なラスト、といったあたりで...読後の感想としては、何とも微妙。面白くないわけではありませんが、モヤモヤしてしまいますね。
まあ、先日も書いたとおり、Ζ 以降は自らの手でガンダムを壊そうとし続けてきた富野氏だからこそ、ファーストガンダムの登場人物が出てくる最後の物語をこういう終わりにしたことは、いかにも富野由悠季のやりそうなことね(←富野節)、という気もします。

それにしても、『虹にのれなかった男』を読んだ後では、『UC』の役回りが例外的だっただけで、結局ブライトは最後まで若者をよい方向に導けないまま軍務を終えることになったのだなあ、と思わずにはいられません。

タイミングのいいことに、今度の『ガンダム UC episode 7』では恒例のゲスト MS として、この『閃ハサ』に登場した連邦軍の量産機「グスタフ・カール」が登場するらしいじゃないですか。まだ正式発表ではなくて雑誌の早売りからのリークのようですが、ほかにもゼータプラスも登場するらしいし、これは期待。
まあ『閃ハサ』は『UC』の 9 年後の物語なので、ちょっと時間軸的におかしいというツッコミはありますが。ジェガンの派生機種的な位置づけなので、先行試作というような設定で出てくるんですかね。

ep7 にはもしかしたら他にも『閃ハサ』への繋ぎになるような設定が出てくるかもしれないので、そのへんも注目して鑑賞したいと思います。

投稿者 B : 00:33 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2014/03/28 (Fri.)

向う端にすわった男

東 直己 / 向う端にすわった男

4150305641

探偵はひとりぼっち』に続いて読了。物語的には前後していますが、あまりそういうことを気にせずに読める短編集になっています。『向こう端にすわった男』『調子のいい奴』『秋の終わり』『自慢の息子』『消える男』の 5 作を収録。
「ススキノ探偵シリーズ」では、主人公の「俺」が関わる事件の合間に、飲み屋のツケを回収したり、強請られて困っている人を助けたり、人捜しをしたり、知り合いのホステスの子どもの面倒を見たり、ゲームセンターでペンゴに興じたり、賭場で日銭を稼いだり、山奥で大麻を栽培したり(ダメだろ(笑))という日常を送っています。この短編集は、ある意味でそういう「俺」の日常であったり、長編にするほどではないちょっとした事件をまとめた作品。どうにも救われないオチ、がこのシリーズに共通する読後感で、本作も基本的にはそういう手触りの短編ばかりですが、悲壮感よりも軽いタッチの作品が多いのが、重い話の続く本シリーズの中にあって、少しホッとさせてくれます。たまには、こういうスタイルの作品もいい。

このシリーズ、個人的には今まで「俺」の行動理由がもうひとつ解らない部分があったのが、実は純粋に正義感や人情という部分に動かされての話なんだなあ、というのが、この短編集を読んでよく解りました。ススキノを愛し、ススキノの街で困っている人がいたら助けずにはいられないのが「俺」であり、同じ気持ちでススキノを見つめ続けているのが東直己という作家なんだろうなあ、ということです。短いエピソードの集まりだけに、そういうエッセンスが凝縮されていて、なかなか良かった。

ううむ、また、ススキノで飲みたくなってきました。

投稿者 B : 00:06 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2014/03/26 (Wed.)

機動戦士ガンダム UC 虹にのれなかった男

福井 晴敏、葛木 ヒヨン / 機動戦士ガンダム UC 虹にのれなかった男

B00HA7E32C

そういえば、一年前に一話目だけ読んでそのまま忘れていたガンダム漫画が単行本化されていたことに気づき、今さらながら読んでみました。既に電子版が発売されていたので、電子版で読了。
単行本化、というより、単行本一冊で完結。もともとそういうボリュームを前提として原作が用意されていたんでしょうね。

まず大事なことをネタバレしてしまうと、本作にはガンダム UC の登場人物は(ブライト以外)出てきません!これでタイトルに『機動戦士ガンダム UC』を冠するのはちょっと狡いんじゃないの、と思いますが、UC に至るまでのブライトの生き方と後悔の念を回想した作品という意味では、UC の世界観を裏付けることができていると言えるでしょう。歴代のガンダムパイロットと同じ艦に乗っていながら、必ずしも彼らを正しい方向に導けたことばかりではないブライトの、どちらかといえば悔恨のほうが強い想い。

「かつてガンダムに乗った者たちと同じく、君もガンダムに選ばれたのだと思いたい。いつもそれは、結果的に必然だった...良くも悪くも、だがな」
「状況に潰されるな。絶望を退ける勇気を持て。君がガンダムのパイロット――ニュータイプであるなら」

UC episode 5 でバナージ・リンクスにかけたこれらの言葉がどういう気持ちから出てきた言葉か、ということの裏を読めただけでも、この作品を読んだ意味はあったと言えます。

本作の原作は『ガンダム UC』と同じく福井晴敏氏。作品の登場人物が、半ば独白に近い形で作中に描かれなかった想いを語る、というスタイルで言えば、UC に関連して開催された朗読劇『赤の肖像 ~シャア、そしてフロンタルへ~』や『機動戦士ガンダム UC FILM&LIVE 2012 Reader's Theater "hand in hand"』(いずれも ANIMAX でたまに放送されています。後者は UC ep6 の BD 初回限定版の特典ディスクにも含まれていました)に似たようなやり方をコミックという形態で表現したもの、と言えるでしょう。文字で読むと長ったらしくて苦痛な福井節(笑)も、朗読劇や漫画だとスッと入ってきてしまうから不思議なものです。

Kindle だと明日(27 日)まで半額セールをやっているので、読むなら今のうちに(^^;;。

投稿者 B : 00:00 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2014/03/21 (Fri.)

漫画版 野武士のグルメ

久住 昌之、土山 しげる / 漫画版 野武士のグルメ

4344025539

『孤独のグルメ』原作者・久住昌之氏が関わったグルメマンガの新作単行本が発売されたので、すかさず読んでみました。
久住氏による同名のエッセイ集に基づいたコミカライズで、幻冬舎の Web サイトに連載されている作品 5 作+新規書き下ろし 4 作で構成されています。

『野武士のグルメ』試し読み第1話 九月の焼きそビール - 幻冬舎plus

Web で読んでいたから単行本はいいか...と思っていましたが、半分近くが書き下ろしとあっては、買わないわけにはいきません。電子版がないようなので、紙で購入。
原作のほうはエッセイなので久住さんご本人の話として書かれているようですが、漫画版は「香住武」という定年退職した 60 代男性が主人公。漫画版『孤独のグルメ』の井之頭五郎は個人事業主ということもあって自由人、どこかプレイボーイっぽさも漂わせたおじさんでしたが、香住武はあくまで普通の元サラリーマン。キャラの濃さはありませんが(笑)こちらのほうが、より身近に感じられます。

漫画版 野武士のグルメ

でも、台詞回しはやっぱり久住流。これこれ、これですよ!

でも、全体的にゴローよりもモノローグの口数が多い(笑。まあゴローも最近の作品ではだんだん口数が増えてきたので、ドラマを経てこれが最近の久住流、ということなのかもしれません。

漫画版 野武士のグルメ

そして『孤独のグルメ』と違って飲酒シーンが出てくるのも、いいところ。白い飯もいいけど、やっぱり酒飲みとしてはうまい肴にうまい酒。それを主人公と共感し合えるのがいい。料理の画も『孤独のグルメ』に負けず劣らず、うまそうです。
漫画版 野武士のグルメ

この飲みっぷりの良さときたら!「さぁ殺せ!!」ときましたよ(笑

でもうまい店ばかりじゃなくて、がっかりした話や失敗した話も少なくなく、やっぱりこれも『孤独のグルメ』と根っこが同じ話なんだなあ、と思います。

井之頭五郎はなかなか内面を見せない(まれに登場する小雪がらみのエピソードくらいか)うえに意外性のある言動が多いファンタジスタ(笑)ですが、香住武は「定年退職した初老オヤジの独白」という感じで内面をどんどん見せてくるので、読んでいて気持ちが入り込みやすいのが『孤独のグルメ』とは異なる『漫画版 野武士のグルメ』ならではの魅力だと思います。こどグル好きなら、一読して損はないのでは。

投稿者 B : 00:12 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2014/03/19 (Wed.)

探偵はひとりぼっち

東 直己 / 探偵はひとりぼっち

4150306818

「ススキノ探偵シリーズ」、電子版でちまちま読み進めています。今回は、映画『探偵は BAR にいる 2 ススキノ大交差点』の原作となったお話。本当は、刊行順的にはこれの前に短編集『向こう端にすわった男』というのがありますが、前作からの繋がりでは続けてこの『探偵はひとりぼっち』を読んだ方がいいという話を聞いて、順番を入れ替えてみました。

映画を観た後に原作を読んで思うのは、原作と映画では話のプロットは同じだけど、作品としての作りが随分違うこと。犯人の登場の仕方からして、原作ではある程度流れがあるのに対して、映画では伏線はあるもののいきなり現れています。それに、物語の鍵を握る女性キャラクターも原作は初老の占い師なのに対して、映画ではヒロインという扱い。やはり、映画は『寅さん』のように毎回ヒロインを代える形での長期シリーズ化を企図しているんでしょう。ただ、原作の占い師に関しても、途中からさっぱり存在感がなくなってしまい、役割が中途半端。原作も映画も、形は違えど広げた風呂敷をたたみ切れていない、という点では共通しているな、というのが私の感想です。

タイトルの『探偵はひとりぼっち』は、政治絡みの事件に首を突っ込み、自分の庭と言えるススキノで孤立していく「俺」を的確に表現していて、映画のサブタイトル『ススキノ大交差点』よりも内容に合っていると思います。また、今まではススキノの人脈を駆使して事件解決していた「俺」が、半ば孤立無援状態で謎に挑んでいくスタイルは、今までの 3 作とは随分感触が違って、真犯人を知っていても手に汗を握るものがありました。そういう従来とのスタイルの違いこそ顕著ですが、それ以外にも「俺」が徐々に歳を取って精神的・身体的に変わっていく様子や、人との出会いによってもスタンスに変化が顕れる様子が、シリーズものにありがちなマンネリ化を防いでいます。スーパーマンではなく、ちょっと喧嘩が強く、向こう見ずで熱血漢なだけの「普通の人間」が主人公だからこそ、我々もこういう変化に共感できるのでしょう。

それにしてもオチには本当に驚かされました。確かに、映画の作り的にはこういうエピソードは入れていきづらいだろうなあ、という製作サイドの大人の事情が分かる気がしました(笑)。人生最大の変化を経て、自作の「俺」がどう変わっていくのか、続きが早く読みたくて仕方がありません。

投稿者 B : 01:25 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック