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2014/03/15 (Sat.)

PlayStation 4 ができるまで -日本発売までの 367 日間

西田 宗千佳 / PlayStation 4 ができるまで -日本発売までの 367 日間

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ジャーナリスト西田宗千佳氏の新著を読みました。とはいっても前著『顧客を売り場に直送する』と同様、インプレス AV Watch の連載『西田宗千佳のRandomTracking』および MAGon『西田宗千佳のRandom Analysis』に掲載された記事の再編集で構成されたものです。電子版のみの販売で、主要な電子書籍ストアでの取り扱いがありますが、私は発売元のインプレス MAGon から直接購入。MAGon は DRM フリーの EPUB で配信してくれるので、取り回しが良いんですよね。

基本的には既出記事の焼き直しなので、MAGon を購読していればわざわざお金を払って買うほどのこともないのですが、私は去年あまりにも忙しくて IT 系のニュースを拾い切れていなかったし、MAGon もほぼ斜め読み状態だったので、改めてまとめ読みできるのはありがたい。
製品発表から日本発売までの 367 日間に、西田氏が SCE のアンドリュー・ハウス社長や PS4 アーキテクトのマーク・サーニー氏、ワールドワイドスタジオのプレジデント吉田修平氏らに対して取材したインタビューを中心に、時系列にまとめたものです。IT 系ジャーナリストの西田氏らしく、PS4 のプラットフォームやアーキテクチャ、ビジネスモデルなどが軸で、ゲーム内容に触れた話が少ないため、ゲーム好きな人よりもテクノロジー好きや業界関係者向けの内容と言えるでしょう。後半には MS の Xbox 関係者への取材も交え、PS4 と Xbox One が目指すものの共通点と相違点を整理してあるあたりも、業界が向かっていこうとする方向を把握するという点で興味深い。

PlayStation にしても Xbox にしても、PS3/Xbox 360 世代までは結局は「いかにゲーム機単体のハードウェア性能を高めてゲーム体験を向上させるか」の競争だったのに対して、スマートデバイス/ソーシャルゲームの隆盛とコンソールゲーム市場の縮小をふまえ、PS4/Xbox One では「いかにゲームを遊んでもらうまでの敷居を下げるか」「ビッグタイトル以外でもビジネスが成立するようなエコシステムを作るか」「ソーシャルネットワークをどう巻き込むか」「クラウド技術をどう利用するか」といった点に、各プラットフォームの工夫と差異化の軸が変化してきているのは事実でしょう。ソーシャルゲームに代表されるフリーミアムモデル中心のライトゲームからコンソールらしいコアゲームへのブリッジをどう架け、裾野自体は広がっているゲーム人口をいかにピラミッドの上の方に引っ張り上げるか、の戦いと言ってもいいのかもしれません。そういう意味では、プラットフォームやビジネスモデルの視点から俯瞰することで、ゲーム業界の次の未来を占う材料になる一冊と言えます。
また、既に PS4 が手許で動かせる状況で、この著書を読みながら PS4 を触ることで、発売前に示されていたビジョンがどういう形で具現化されたか、を改めて確認してみるのも面白い。

ただ、そうは言ってもまだまだ国内受けする PS4 のゲームタイトルが少ないことは事実なんですよね。買ってプレイした人たちは異口同音に『龍が如く 維新!』が面白い、と言っていたりするのですが、私は既にゲーマーでなくなって久しいからなあ...。PS4 がプラットフォームとして挑戦的であればあるほど、「自分にとってのキラータイトル」がまだ存在しないことが惜しい。ここはやはり、無料体験版や Live from PlayStation で自分が楽しいと思えるゲームを探してみるかな...。

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2014/03/01 (Sat.)

禁断の魔術

東野 圭吾 / 禁断の魔術 ガリレオ 8

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前作『虚像の道化師』に続いて、図書館の貸出順番待ちが回ってきたので、借りてきて読了。

今回も短編集で、収録されているのは「透視す」「曲球る」「念波る」「猛射つ」の 4 編。うち、ドラマ化されたのは「曲球る」「念波る」ですが...今回は、これまで以上に事件解決に物理学が関係ない話が多いです。最近の作品を読むと、東野圭吾という作家は本来の『ガリレオ』シリーズ的な謎解きのミステリーよりも、犯人や被害者の人物像に焦点を当てた物語の方が本筋なのだろうなあ、と実感します。

前の三話は、正直微妙だなあ...と思いながら読んでいたんですが、最終話「猛射つ」が良かった。書籍の約半分のボリュームがある、長編とまではいかないけどセミ長編(なんだそれ)になっていて、著者の力の入れ具合が分かります。それもそのはず、テーマは「科学や発明は使い方次第で人類を豊かにする道具にもなれば、殺傷性を伴う恐ろしい武器にもなる」という、常に科学者に突きつけられている表裏一体の理に、真正面から向き合っているから。最後の解決の仕方がいかにもガリレオらしくて(それも、福山ガリレオをイメージして書かれたんだろうな、という体で)なかなか痺れました。これ、ボリューム的には映画にはならないけれど、ドラマの 2 時間スペシャルくらい製作されてもおかしくない話。

最後の締め方が、ちょっと完結っぽいテイストだったのも少し気になりました。テレビ的にはもう少しシリーズを引っ張りたいところでしょうが、シリーズ的に避けては通れないテーマを扱ってしまったこともあり、ネタ的にはそろそろこのへんが引き際という気も。なかなか難しいですね。

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2014/02/21 (Fri.)

消えた少年

東 直己 / 消えた少年

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バーにかかってきた電話』に続くススキノ探偵シリーズ第 3 弾。前作でもののついでに助け、〈ケラー・オオハタ〉のマッチを渡した女性からの依頼で始まる物語。

タイトルにあるとおり、行方不明になった少年を探す話ですが、これが前 2 作とは違ったスリルに満ちた展開で、ハラハラしながらも一気に読み進めずにはいられないくらいに没頭しました。今までは、誰かが殺されてその真相に迫っていく...という展開だったのに対して、本作は行方不明の少年の安否が分からず、仮に生きていたとしてもいつ殺されるか分からない、そして犯人の正体も分からない...という、手に汗握るストーリー。映像化されておらず、小説で初めて読むエピソードだったこともあり、最後まで緊張感を持って読み切りました。

3 作目ということもあって、物語の常連である相棒の高田(映画でのキャストは松田龍平)、桐原組組長(同、片桐竜次)と相田(井之頭松重豊)、新聞記者の松尾(田口トモロヲ)あたりのキャラがだいぶ定着してきました。それぞれのキャラが、どういったタイミングでどう絡んでくるか、が掴めてきた感じ。

最初の被害者の殺され方だったり、真犯人の性癖だったり、クライマックスのアクションシーンだったり、文字を読んでいるだけでも気分が悪くなってしまいそうな、なかなか凄惨な話でした。映画化にあたり、このエピソードがスキップされたのも納得がいきます(笑。そして、犯人の殺人の理由が救いようのないほど身勝手なものだというのも、このシリーズに共通する要素ではありますが、それにしても狂気だなあ。だからこそ、最後まで止められずに読んでしまったわけですが。

このシリーズの文体は、辺におどけたり、皮肉ってみたり、無駄な言い回しが妙に多いのが特徴ですが、逆にその特徴こそがこのシリーズの雰囲気を作っているのだと思います。読んでいる相田は、気がつけば自分も周囲の状況をシニカルな感覚で受け止めたくなるし、人混みの中では背後からならず者の集団が襲ってくるのではないか、というありもしない緊張感に包まれがちになります(笑。
今までのシリーズとは違い、ヒロインとのロマンスの要素が入ってきているのも印象的でした。もし実写で安西春子をキャスティングするとしたら、どの女優さんがいいかなあ...。

この次は、映画『探偵は BAR にいる 2』の原作となったエピソード。むしろ結末を知らない話のほうがワクワクが持続することを今回実感しましたが、これはこれでさらっと読んでしまいたいと思います。

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2014/01/19 (Sun.)

虚像の道化師

東野 圭吾 / 虚像の道化師 ガリレオ 7

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真夏の方程式』を観たと思ったら、以前図書館で予約しておいた本の順番がようやく回ってきたとの連絡があったので、借りてきました。というか予約したの『真夏の方程式』の原作と同時なんですけど、こっちのほうが 5 ヶ月も遅いとは(;´Д`)ヾ。

映画の原作とは違って本作はこのシリーズらしい短編集。とはいえ昨年のドラマ 2 期で映像化されてしまっているため、ストーリーとしては既に知っているものばかりです。大沢たかおが新興宗教の教祖を演じた「幻惑す」、ゲストに大島優子を迎えた「幻聴る」、同じく香椎由宇がヒロインを演じた「偽装う」、蒼井優が女優役を怪演した「演技る」の 4 編。以前のドラマ化に比べて 2 期はかなり原作を改編した脚本になっているのね、というのが改めて原作を読んだ感想で、特に「偽装う」はトリック以外は全く別の話だし、「演技る」も原作とドラマではオチが正反対。映像化にあたっては簡略化したりメリハリをつけるために多少ストーリーをいじることはあると思いますが、「演技る」は原作のほうがぜんぜん良かったなあ。ドラマでは蒼井優の芝居の迫力に圧倒されてしまいましたが、原作を読むとドラマ版の設定はただの狂人...。

原作のほうに話を戻すと、やはりシリーズを重ねるごとに物理学との関連性が薄くなり、次第に単なる推理小説になってきているのを感じます。物理学縛り、というのはネタ的に厳しいのかもしれませんが、これなら加賀恭一郎シリーズで良いのでは、という作品の割合は高まっているし、何よりも湯川学というキャラクターが初期の「変人」から、ドラマ版の福山ガリレオに近づいているのが気になるところ。
まあ面白いし文章のテンポが良いので一気に読んでしまったわけですが。ちなみに同じく図書館で予約中の続編『禁断の魔術』は、いつになったら順番が回ってくるのでしょうか(笑。

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2014/01/05 (Sun.)

小説『清須会議』

冬休みの間に読破しました。

三谷 幸喜 / 清須会議

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映画を観たときから、これの小説版ってどんな感じなんだろう?そういえば三谷幸喜の文章って読んだことないなあ、というのがずっと気になっていて、電子版で読了。

ストーリーは当然映画と同じわけですが、描き方がずいぶん違う。読む前は、台本がそのまま文章になっているような小説だったらどうしよう、という心配もありましたが(笑)そんな心配は無用でした。
物語は、基本的に登場人物の誰かのモノローグまたは手記という形で綴られていきます。それ故に、細かな場面描写よりも登場人物のその時点での心情描写に重きが置かれていて、映画で「あのときこの人物が何を考えていたのか」がより鮮明に浮かび上がってきます。羽柴秀吉のどこかとぼけた中にある狡猾さ、柴田勝家の想像以上の直情さ、丹羽長秀の苦悩、お市の恨みの深さ、そういった人物の、映画の中では描かれなかった「行間」が読めて実に面白い。読みながら、これは「小説」というよりもむしろ俳優陣に本読みの前に各キャラクターの心情を理解させるために書いた資料なのではないか、という気分にさえなりました。三谷幸喜は脚本を当て書き(配役を見て、その役者をイメージしながら書くこと)することで有名ですが、いかにもそういうキャラクター設定になっていて、読みながら役者の顔や身振りが想像できてしまう上に、にやりとさせられる場面も数多く。芝居やアニメ、漫画ならともかく、活字を読んで吹き出してしまう経験なんて滅多にないものです(笑。

映画単体でもとても面白かった作品ですが、小説を併せて読むことでより深まったように思います。もしまだ映画しか観ていないなら、これから原作も読んでみることをオススメ。

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2013/12/23 (Mon.)

バーにかかってきた電話

東 直己 / バーにかかってきた電話

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前作『探偵はバーにいる』に続いて、電子版で読了。
本作は映画『探偵は BAR にいる』の原作となった作品なので、ストーリーはひととおり把握していましたが、これが活字になったらどう見えるんだろう、というのは気になっていました。

このけっこう長い話(まあ、主人公「俺」のモノローグの中には本筋にあまり関係ない与太話も多いけど)を 2 時間の枠に収めるとあって、原作からみると映画版ではストーリー展開や人間関係を解りやすくする方向に、大胆にデフォルメされていたんですね。特に、映画では「俺」と高田が手がかりを見つけたらとにかくそこに突撃、という感じだったのが(笑)小説ではちゃんと探偵らしく、いろいろ調べたり、聞き込みに廻ったり、重要人物に揺さぶりをかけるエピソードが書き込まれていて、話の展開としては面白かったです。依頼人である「コンドウキョウコ」の正体を映画で観て知ってしまっているのでオチに至る高揚感はありませんでしたが(ただしクライマックスの大泉洋と小雪の芝居は良かった)、原作から読んでいたら騙されていたかもしれません。逆に言えば、映画版は観客にはどうしても声色で依頼人の目星がついてしまうし、そもそもキャストを見ればほぼ判ってしまうので(笑)あえて謎解きよりもそこに至るプロセスに焦点を当てたのでしょうね。

バーにかかってきた電話

話としては原作のほうが面白かったですが、映画は映画で各キャストの演技が良かった。映画版は「映画らしさ」を意識して作っているんだろうなあ。原作つきの映画って、原作を読んでしまうと映画版がどうにもチープに見えてがっかりすることが少なくないですが、このシリーズはうまく映像化を成功させていることを、原作を読んで改めて実感しました。冬休みは続編も読み進めて、映画『探偵は BAR にいる 2』とも比べてみたいと思います。

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2013/12/15 (Sun.)

顧客を売り場に直送する ビッグデータがお金に変わる仕組み

西田 宗千佳 / 顧客を売り場に直送する ビッグデータがお金に変わる仕組み

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前著『スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場』から約 1 年半ぶりとなる(途中、既存記事の再編集+書き下ろしの『加速する日本の電子書籍』はありましたが)、ジャーナリスト西田宗千佳氏の新著を読了しました。今回は紙版・電子版同時発売だったので、Reader Store で電子版を購入。

タイトルからすると、西田氏にしては珍しくマーケティング・セールス寄りの視点の話かな?と思っていました。が、実際はデータとテクノロジーをどうビジネスに活かすか、そしてそんな時代に消費者としての我々はどういう姿勢で生活すべきか、という、いつもの同氏の視点の延長線上にあるもので、ある意味安心しました(笑。ただ、クラウドとスマートデバイスの発達により、製品やサービスの価値はそれ単体で完成するものではなく、その裏にあるデータをどう使い、どう見せるかが最終的な体験価値となるのが 2010 年代。ここ数年で西田氏自身の興味や取材の対象がコンシューマー向けの IT・家電業界のみならず、IT が世の中にもたらす変化全体に拡がってきているのは、そういう世の中の変化に呼応してのことだと思います。

本書の内容は、これまでに MAGon の『西田宗千佳のRandom Analysis』に取材記事として掲載されたものを「ビッグデータの活用」という文脈で再構成したものです。なので、MAGon を購読している私としては話そのものは知っている内容だったわけですが、これまで毎回バラバラなテーマで取材しているように見えていたものが、こうやって一本のストーリーに落とし込まれると、急に繋がって見えてくる。人々の行動履歴を収集・分析し、個人情報と紐付けない形で「属性」として扱うことで分かること/提供できる価値/それを扱うリスク、そういったことを俯瞰的に整理した一冊になっています。
こういうデータの分析ってマーケティングでは日常的に行っていることで、いかに効果的・効率的に認知を得て興味を喚起し、商品の名前を覚えてもらい、欲しいと思ってもらい、最終的に買ってもらうか...という命題に対して、ではどこに需要があって、ターゲットとなるユーザー層はどんな生活や消費行動を取っていて、どういう媒体に接しているのかを把握することは必須。ビッグデータの活用分野としては重要な領域なので、『顧客を売り場に直送する』という言葉は確かに重要なキーワードのひとつではありますが、この本書のタイトルは残念ながら中身の半分も表せておらず、それがちょっともったいないなあ、と思います。西田氏が本書で言いたいことは、おそらくそういうマーケティング観点でのビッグデータの活用だけでなく、自らの行動履歴を企業に提供する消費者側にも、大切な個人情報を提供する見返りに得られる利便性はあって、個人情報を渡すリスクを自覚・自衛した上でメリットを享受すれば、豊かな人生を送ることができる...ということなのでしょう。ただ、それを一言で、読者の興味を惹くタイトルとして表すのはとても難しい。

西田氏は出版にあたりこんなツイートをされていましたが、

これには確かに同意する部分があって、マスメディアによる画一的な情報提供の時代から、人々の多様性を加速するネットの普及によって、我々は情報の取捨選択を強いられ、結果として「自分が選んだ世界しか(その外の世界をあえて意識しない限り)見えなくなった」ということであり、自分にも確かにそういう瞬間はあるな、と自覚するところでもあります、ネットの普及によってテレビを見なくなったのか、社会の成熟化に従って生活スタイルや趣味趣向が多様化した結果テレビへの依存度が下がった(と同時にネットへの依存度が上がった)のか、むしろ双方が両輪として回ることで現在の状況を生み出してきたような気もしますが。
ただ、それでも「自分の視界が狭い」ことを自覚した上で自分の視界の外にあるものもあえて視ようとすれば視れるのも、今の時代でしょう。自分の世界の外にあるものを知り、世の中の仕組みや価値観の多様さを理解することで、より豊かな人生を送ったり、社会により大きな貢献をするための視点が身につけられるのではないでしょうか。

現代のビッグデータ活用に関する状況を俯瞰的、客観的にまとめた内容だけに話が広範にわたり、なかなかひとつの結論に帰結させるのが難しい著書ではありますが、クラウド時代を生き、クラウドを活かしていくためのヒントが鏤められた一冊だと思います。

投稿者 B : 00:24 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2013/11/23 (Sat.)

探偵はバーにいる

東 直己 / 探偵はバーにいる

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映画版を観るたびに原作が読みたくなるシリーズがこれ。でも、何となく今までタイミングを逸してきていて、結局読めていませんでした。が、先日すすきので写真を撮ってきた勢いで、Reader Store で電子版を購入。Sony Reader と Xperia を乗り継ぎながら、通勤や出張の移動時間を使って読破しました。

映画第 1 弾の「コンドウキョウコ事件」は本作ではなく、2 作目の『バーにかかってきた電話』が原作になっています。なので、シリーズ 1 作目のこれは映画と同タイトルでありながら、全く別のお話。主人公「俺」の大学の後輩の恋人が行方不明になり、同時期に発生した風俗店での殺人事件との関わりに気づいた「俺」が事件の周りを洗い始める...というストーリー。と書くと、わりとオーソドックスな探偵モノに見えますが、そこは大泉洋主演で映画化する作品ですからね。常にどこかおちゃらけていて、少し下品で、そしてニヒルで、という文体で最初から最後まで通してくれます。「俺」の一人称視点で書かれている文体ですが、映画から入った私にとってはもう地の文からして大泉洋の声で脳内再生されてしまいます。それくらい、「俺」は大泉洋のハマリ役だったと言えるでしょう。

ここまで映画 2 作、小説 1 作を読み(観)終えて感じるのは、このシリーズの被害者役は、この世の汚さを身をもって知りながらも、自分なりの信念に基づいてひたむきに生きていたところを、誰かの私利私欲や嫉妬のために残酷にも殺されてしまう、というパターンのようだ、ということ。そして、事件が解決あるいは終結したところで、何かが変わるわけではなく、被害者の存在が喪われてしまった事実だけが残る...という無情さです。いや、現実の殺人事件なんて実際そんなものなんだろうと思いますが、小説としては東野圭吾の加賀恭一郎シリーズのように、クライマックスで強烈なカタルシスがもたらされる推理小説もあるだけに、対照的だなあと。でも、「俺」のシニカルな一人称視点で語られる物語としては、これでいい。

それにしても、北海道に行ってきた直後に読んだ(正確には、帰りの飛行機の中から読み始めた)のは正解でした。ちょうど写真を撮りながらぶらついていたすすきのや大通、北大キャンパスあたりが主な舞台になっていたので、具体的にイメージしながら読むことができました。そして、読んでいる間にはやっぱり道を歩いていてもどこかからならず者が襲ってくるんじゃないかという気分になるし、ついつい強い酒を飲みたくなる。自宅ではもっぱらバランタイン 12 年ですが、スーパーニッカを買ってきて 12 オンス・タンブラァになみなみと注いでロックで飲みたくなるし、久々にバーに行ってラスティ・ネイルを頼みたくなります(笑。とりあえずスーパーニッカは買ってこようそうしよう。

このままの勢いで次の『バーにかかってきた電話』も読もうと思います。
Reader Store ではここのところ月イチでポイントをくれるキャンペーンが続いているので、月に一冊ペースであれば、多少安く読んでいくことができそう。

投稿者 B : 00:25 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2013/09/14 (Sat.)

オールドレンズ・ライフ Vol.3

澤村 徹 / オールドレンズ・ライフ Vol.3

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Vol.2 以来 1 年 3 ヶ月ぶりに発売された、澤村 徹さんのオールドレンズムックの第 3 弾。オールドレンズ好きとしては迷わず手に入れました。

今回のキーワードは「オールドレンズ・フルサイズ宣言」。ライカ M、昨年一気に低価格化したフルサイズ一眼レフ、さらに Speed Booster のようなマウントアダプタを使った APS-C 機での疑似フルサイズ撮影など、この 1 年で「フルサイズ画角でオールドレンズを使う」というカメラの楽しみ方が、急に身近になってきました。この流れは今後もしばらく続くでしょうが、そういうトレンドの渦中に出た、決定版のようなムックです。

巻頭特集はライカ M Typ 240 で主に M マウントレンズを楽しむ内容ですが、本書の見どころはむしろそれ以降にあります。フルサイズ EOS で使う個性的なオールドレンズ群、METABONES Speed Booster で改めて楽しむオールドレンズ群、というパートもさることながら、「『2 万円』ではじめるオールドレンズ」特集と「ベストマウントアダプターを探せ!」特集が、初心者には初心者なりにやさしく、でも既にオールドレンズを使っているユーザーが読んでもそれなりにマニアックにまとまっているという絶妙な深さで、とても興味深く読ませていただきました。あと、ありそうでなかった「オールドレンズに効く RAW 現像テクニック」。RAW 現像を使えばオールドレンズでもそれなりに現代レンズらしくも現像できるし、あるいはレンズの「味」を残して描写上気に入らない部分だけを補正することも比較的容易。今このタイミングでオールドレンズに手を出そうというユーザーであれば、それなりに深みに入る覚悟はできているはずで(笑)、そういう人にはかなり読み応えがある一冊ではないでしょうか。

私はここまでオールドレンズといってもツァイス中心に揃えてきましたが、国産オールドレンズも安価な割になかなか面白そうなんですよね。ひさびさに中古カメラ屋を覗きたくなる、そんな一冊です。

投稿者 B : 00:29 | Book | Camera Mook | コメント (0) | トラックバック

2013/08/17 (Sat.)

真夏の方程式

東野 圭吾 / 真夏の方程式

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先日劇場版を観てきたところですが、やっぱり原作も読んでおかないといけないでしょう。とはいえ、そろそろ本棚に紙の本を増やすのは文庫本であっても躊躇します。というわけで、以前の『聖女の救済』に続いて、図書館で借りてきました(笑。これでも予約して 3~4 ヶ月くらい待たされましたが...。電子書籍さえ出してくれれば喜んでお金を払うんですけどね。この際、本棚を逼迫したくなければ新品で買って読んだらブックオフに、というのは考えませんでした。

映画館で一度観ているので、犯人とトリックを知った上で読んだことになりますが、そういう視点で読むと、あの映画は原作にかなり忠実に作られていたということが分かります。前作『容疑者 X の献身』もそうでしたが、原作に敬意を払っている証拠ですかね。架空の海岸「玻璃ヶ浦」の映像をスクリーンに合わせてイメージどおりに表現した、という点では、この作品はむしろ映像作品のほうを映画館で観るのが真の楽しみ方ではないか、とさえ思います。
とはいえ、掘り下げ方はやはり小説に分があり、原作は被害者と容疑者、そしてその家族の想いと過去、それから警察側の捜査にまつわるエピソードを丹念に描写しています。事件発生の瞬間と種明かしは逆にあっさりしていて、ちょっと拍子抜けだったほど。まあ、今回は物理法則を用いた凝ったトリックもさほどなく、人間関係の描写に重きを置いた作品なので、これでいいような気もしますが、ますますガリレオシリーズではなく加賀恭一郎シリーズでも良かったのでは...と感じました。
対して映画は湯川と少年の信頼関係や川畑家との関わりにフォーカスしている印象。2 時間という映画の枠に収めるにはちょうどいい絞り方だったと思いますが、容疑者が死体遺棄に至る動機と、そもそもの環境問題と事件との関わりに必然性が薄くなってしまった感はあります。事件と川畑家に関わる重要人物を一人まるごとカットしていますからね...。

個人的には、作中で「変人」と評される湯川学のキャラクターには共感するところが大きいです。それは、とにかく理屈で物事を考え、実践で証明していくから。これだけロジカルに物事を考える人というのは現実社会には意外なほど少ないものです(だからこそ人には湯川が「変人」に見える)。
そんな湯川の考え方を象徴するような台詞が、今までのシリーズ以上に物語の要所要所に鏤められているのが印象的でした。

「理科嫌いは結構だ。でも覚えておくことだな。わかんないものはどうしようもない、などといっていては、いつか大きな過ちを犯すことになる」
「両立させたいというのなら、双方について同等の知識と経験を有している必要がある。一方を重視するだけで十分というのは傲慢な態度だ。相手の仕事や考え方をリスペクトしてこそ、両立の道も拓けてくる」
「この世に完璧なものなどない。存在しないものを要求するのは難癖以外の何物でもない」
...科学や技術、に限らず、この社会のありようを正しく認識し、より良い社会を目指していくためには必要な態度ではないでしょうか。私はこれを読んだとき、これはもしかして東日本大震災をふまえて書かれた話なのかな、と思ったのですが、雑誌に連載されていた当時は震災前。それだけ、この言葉が真理を突いている、ということなのでしょう。

あえて不平のひとつでも言わせてもらうならば、こういう認識ができる東野圭吾氏ならば、著作の電子流通にもっと前向きになってくれてもいいんじゃないか、ということでしょうか(笑。

投稿者 B : 00:00 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック