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2014/01/19 (Sun.)

虚像の道化師

東野 圭吾 / 虚像の道化師 ガリレオ 7

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真夏の方程式』を観たと思ったら、以前図書館で予約しておいた本の順番がようやく回ってきたとの連絡があったので、借りてきました。というか予約したの『真夏の方程式』の原作と同時なんですけど、こっちのほうが 5 ヶ月も遅いとは(;´Д`)ヾ。

映画の原作とは違って本作はこのシリーズらしい短編集。とはいえ昨年のドラマ 2 期で映像化されてしまっているため、ストーリーとしては既に知っているものばかりです。大沢たかおが新興宗教の教祖を演じた「幻惑す」、ゲストに大島優子を迎えた「幻聴る」、同じく香椎由宇がヒロインを演じた「偽装う」、蒼井優が女優役を怪演した「演技る」の 4 編。以前のドラマ化に比べて 2 期はかなり原作を改編した脚本になっているのね、というのが改めて原作を読んだ感想で、特に「偽装う」はトリック以外は全く別の話だし、「演技る」も原作とドラマではオチが正反対。映像化にあたっては簡略化したりメリハリをつけるために多少ストーリーをいじることはあると思いますが、「演技る」は原作のほうがぜんぜん良かったなあ。ドラマでは蒼井優の芝居の迫力に圧倒されてしまいましたが、原作を読むとドラマ版の設定はただの狂人...。

原作のほうに話を戻すと、やはりシリーズを重ねるごとに物理学との関連性が薄くなり、次第に単なる推理小説になってきているのを感じます。物理学縛り、というのはネタ的に厳しいのかもしれませんが、これなら加賀恭一郎シリーズで良いのでは、という作品の割合は高まっているし、何よりも湯川学というキャラクターが初期の「変人」から、ドラマ版の福山ガリレオに近づいているのが気になるところ。
まあ面白いし文章のテンポが良いので一気に読んでしまったわけですが。ちなみに同じく図書館で予約中の続編『禁断の魔術』は、いつになったら順番が回ってくるのでしょうか(笑。

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2014/01/05 (Sun.)

小説『清須会議』

冬休みの間に読破しました。

三谷 幸喜 / 清須会議

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映画を観たときから、これの小説版ってどんな感じなんだろう?そういえば三谷幸喜の文章って読んだことないなあ、というのがずっと気になっていて、電子版で読了。

ストーリーは当然映画と同じわけですが、描き方がずいぶん違う。読む前は、台本がそのまま文章になっているような小説だったらどうしよう、という心配もありましたが(笑)そんな心配は無用でした。
物語は、基本的に登場人物の誰かのモノローグまたは手記という形で綴られていきます。それ故に、細かな場面描写よりも登場人物のその時点での心情描写に重きが置かれていて、映画で「あのときこの人物が何を考えていたのか」がより鮮明に浮かび上がってきます。羽柴秀吉のどこかとぼけた中にある狡猾さ、柴田勝家の想像以上の直情さ、丹羽長秀の苦悩、お市の恨みの深さ、そういった人物の、映画の中では描かれなかった「行間」が読めて実に面白い。読みながら、これは「小説」というよりもむしろ俳優陣に本読みの前に各キャラクターの心情を理解させるために書いた資料なのではないか、という気分にさえなりました。三谷幸喜は脚本を当て書き(配役を見て、その役者をイメージしながら書くこと)することで有名ですが、いかにもそういうキャラクター設定になっていて、読みながら役者の顔や身振りが想像できてしまう上に、にやりとさせられる場面も数多く。芝居やアニメ、漫画ならともかく、活字を読んで吹き出してしまう経験なんて滅多にないものです(笑。

映画単体でもとても面白かった作品ですが、小説を併せて読むことでより深まったように思います。もしまだ映画しか観ていないなら、これから原作も読んでみることをオススメ。

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2013/12/23 (Mon.)

バーにかかってきた電話

東 直己 / バーにかかってきた電話

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前作『探偵はバーにいる』に続いて、電子版で読了。
本作は映画『探偵は BAR にいる』の原作となった作品なので、ストーリーはひととおり把握していましたが、これが活字になったらどう見えるんだろう、というのは気になっていました。

このけっこう長い話(まあ、主人公「俺」のモノローグの中には本筋にあまり関係ない与太話も多いけど)を 2 時間の枠に収めるとあって、原作からみると映画版ではストーリー展開や人間関係を解りやすくする方向に、大胆にデフォルメされていたんですね。特に、映画では「俺」と高田が手がかりを見つけたらとにかくそこに突撃、という感じだったのが(笑)小説ではちゃんと探偵らしく、いろいろ調べたり、聞き込みに廻ったり、重要人物に揺さぶりをかけるエピソードが書き込まれていて、話の展開としては面白かったです。依頼人である「コンドウキョウコ」の正体を映画で観て知ってしまっているのでオチに至る高揚感はありませんでしたが(ただしクライマックスの大泉洋と小雪の芝居は良かった)、原作から読んでいたら騙されていたかもしれません。逆に言えば、映画版は観客にはどうしても声色で依頼人の目星がついてしまうし、そもそもキャストを見ればほぼ判ってしまうので(笑)あえて謎解きよりもそこに至るプロセスに焦点を当てたのでしょうね。

バーにかかってきた電話

話としては原作のほうが面白かったですが、映画は映画で各キャストの演技が良かった。映画版は「映画らしさ」を意識して作っているんだろうなあ。原作つきの映画って、原作を読んでしまうと映画版がどうにもチープに見えてがっかりすることが少なくないですが、このシリーズはうまく映像化を成功させていることを、原作を読んで改めて実感しました。冬休みは続編も読み進めて、映画『探偵は BAR にいる 2』とも比べてみたいと思います。

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2013/12/15 (Sun.)

顧客を売り場に直送する ビッグデータがお金に変わる仕組み

西田 宗千佳 / 顧客を売り場に直送する ビッグデータがお金に変わる仕組み

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前著『スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場』から約 1 年半ぶりとなる(途中、既存記事の再編集+書き下ろしの『加速する日本の電子書籍』はありましたが)、ジャーナリスト西田宗千佳氏の新著を読了しました。今回は紙版・電子版同時発売だったので、Reader Store で電子版を購入。

タイトルからすると、西田氏にしては珍しくマーケティング・セールス寄りの視点の話かな?と思っていました。が、実際はデータとテクノロジーをどうビジネスに活かすか、そしてそんな時代に消費者としての我々はどういう姿勢で生活すべきか、という、いつもの同氏の視点の延長線上にあるもので、ある意味安心しました(笑。ただ、クラウドとスマートデバイスの発達により、製品やサービスの価値はそれ単体で完成するものではなく、その裏にあるデータをどう使い、どう見せるかが最終的な体験価値となるのが 2010 年代。ここ数年で西田氏自身の興味や取材の対象がコンシューマー向けの IT・家電業界のみならず、IT が世の中にもたらす変化全体に拡がってきているのは、そういう世の中の変化に呼応してのことだと思います。

本書の内容は、これまでに MAGon の『西田宗千佳のRandom Analysis』に取材記事として掲載されたものを「ビッグデータの活用」という文脈で再構成したものです。なので、MAGon を購読している私としては話そのものは知っている内容だったわけですが、これまで毎回バラバラなテーマで取材しているように見えていたものが、こうやって一本のストーリーに落とし込まれると、急に繋がって見えてくる。人々の行動履歴を収集・分析し、個人情報と紐付けない形で「属性」として扱うことで分かること/提供できる価値/それを扱うリスク、そういったことを俯瞰的に整理した一冊になっています。
こういうデータの分析ってマーケティングでは日常的に行っていることで、いかに効果的・効率的に認知を得て興味を喚起し、商品の名前を覚えてもらい、欲しいと思ってもらい、最終的に買ってもらうか...という命題に対して、ではどこに需要があって、ターゲットとなるユーザー層はどんな生活や消費行動を取っていて、どういう媒体に接しているのかを把握することは必須。ビッグデータの活用分野としては重要な領域なので、『顧客を売り場に直送する』という言葉は確かに重要なキーワードのひとつではありますが、この本書のタイトルは残念ながら中身の半分も表せておらず、それがちょっともったいないなあ、と思います。西田氏が本書で言いたいことは、おそらくそういうマーケティング観点でのビッグデータの活用だけでなく、自らの行動履歴を企業に提供する消費者側にも、大切な個人情報を提供する見返りに得られる利便性はあって、個人情報を渡すリスクを自覚・自衛した上でメリットを享受すれば、豊かな人生を送ることができる...ということなのでしょう。ただ、それを一言で、読者の興味を惹くタイトルとして表すのはとても難しい。

西田氏は出版にあたりこんなツイートをされていましたが、

これには確かに同意する部分があって、マスメディアによる画一的な情報提供の時代から、人々の多様性を加速するネットの普及によって、我々は情報の取捨選択を強いられ、結果として「自分が選んだ世界しか(その外の世界をあえて意識しない限り)見えなくなった」ということであり、自分にも確かにそういう瞬間はあるな、と自覚するところでもあります、ネットの普及によってテレビを見なくなったのか、社会の成熟化に従って生活スタイルや趣味趣向が多様化した結果テレビへの依存度が下がった(と同時にネットへの依存度が上がった)のか、むしろ双方が両輪として回ることで現在の状況を生み出してきたような気もしますが。
ただ、それでも「自分の視界が狭い」ことを自覚した上で自分の視界の外にあるものもあえて視ようとすれば視れるのも、今の時代でしょう。自分の世界の外にあるものを知り、世の中の仕組みや価値観の多様さを理解することで、より豊かな人生を送ったり、社会により大きな貢献をするための視点が身につけられるのではないでしょうか。

現代のビッグデータ活用に関する状況を俯瞰的、客観的にまとめた内容だけに話が広範にわたり、なかなかひとつの結論に帰結させるのが難しい著書ではありますが、クラウド時代を生き、クラウドを活かしていくためのヒントが鏤められた一冊だと思います。

投稿者 B : 00:24 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2013/11/23 (Sat.)

探偵はバーにいる

東 直己 / 探偵はバーにいる

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映画版を観るたびに原作が読みたくなるシリーズがこれ。でも、何となく今までタイミングを逸してきていて、結局読めていませんでした。が、先日すすきので写真を撮ってきた勢いで、Reader Store で電子版を購入。Sony Reader と Xperia を乗り継ぎながら、通勤や出張の移動時間を使って読破しました。

映画第 1 弾の「コンドウキョウコ事件」は本作ではなく、2 作目の『バーにかかってきた電話』が原作になっています。なので、シリーズ 1 作目のこれは映画と同タイトルでありながら、全く別のお話。主人公「俺」の大学の後輩の恋人が行方不明になり、同時期に発生した風俗店での殺人事件との関わりに気づいた「俺」が事件の周りを洗い始める...というストーリー。と書くと、わりとオーソドックスな探偵モノに見えますが、そこは大泉洋主演で映画化する作品ですからね。常にどこかおちゃらけていて、少し下品で、そしてニヒルで、という文体で最初から最後まで通してくれます。「俺」の一人称視点で書かれている文体ですが、映画から入った私にとってはもう地の文からして大泉洋の声で脳内再生されてしまいます。それくらい、「俺」は大泉洋のハマリ役だったと言えるでしょう。

ここまで映画 2 作、小説 1 作を読み(観)終えて感じるのは、このシリーズの被害者役は、この世の汚さを身をもって知りながらも、自分なりの信念に基づいてひたむきに生きていたところを、誰かの私利私欲や嫉妬のために残酷にも殺されてしまう、というパターンのようだ、ということ。そして、事件が解決あるいは終結したところで、何かが変わるわけではなく、被害者の存在が喪われてしまった事実だけが残る...という無情さです。いや、現実の殺人事件なんて実際そんなものなんだろうと思いますが、小説としては東野圭吾の加賀恭一郎シリーズのように、クライマックスで強烈なカタルシスがもたらされる推理小説もあるだけに、対照的だなあと。でも、「俺」のシニカルな一人称視点で語られる物語としては、これでいい。

それにしても、北海道に行ってきた直後に読んだ(正確には、帰りの飛行機の中から読み始めた)のは正解でした。ちょうど写真を撮りながらぶらついていたすすきのや大通、北大キャンパスあたりが主な舞台になっていたので、具体的にイメージしながら読むことができました。そして、読んでいる間にはやっぱり道を歩いていてもどこかからならず者が襲ってくるんじゃないかという気分になるし、ついつい強い酒を飲みたくなる。自宅ではもっぱらバランタイン 12 年ですが、スーパーニッカを買ってきて 12 オンス・タンブラァになみなみと注いでロックで飲みたくなるし、久々にバーに行ってラスティ・ネイルを頼みたくなります(笑。とりあえずスーパーニッカは買ってこようそうしよう。

このままの勢いで次の『バーにかかってきた電話』も読もうと思います。
Reader Store ではここのところ月イチでポイントをくれるキャンペーンが続いているので、月に一冊ペースであれば、多少安く読んでいくことができそう。

投稿者 B : 00:25 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2013/09/14 (Sat.)

オールドレンズ・ライフ Vol.3

澤村 徹 / オールドレンズ・ライフ Vol.3

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Vol.2 以来 1 年 3 ヶ月ぶりに発売された、澤村 徹さんのオールドレンズムックの第 3 弾。オールドレンズ好きとしては迷わず手に入れました。

今回のキーワードは「オールドレンズ・フルサイズ宣言」。ライカ M、昨年一気に低価格化したフルサイズ一眼レフ、さらに Speed Booster のようなマウントアダプタを使った APS-C 機での疑似フルサイズ撮影など、この 1 年で「フルサイズ画角でオールドレンズを使う」というカメラの楽しみ方が、急に身近になってきました。この流れは今後もしばらく続くでしょうが、そういうトレンドの渦中に出た、決定版のようなムックです。

巻頭特集はライカ M Typ 240 で主に M マウントレンズを楽しむ内容ですが、本書の見どころはむしろそれ以降にあります。フルサイズ EOS で使う個性的なオールドレンズ群、METABONES Speed Booster で改めて楽しむオールドレンズ群、というパートもさることながら、「『2 万円』ではじめるオールドレンズ」特集と「ベストマウントアダプターを探せ!」特集が、初心者には初心者なりにやさしく、でも既にオールドレンズを使っているユーザーが読んでもそれなりにマニアックにまとまっているという絶妙な深さで、とても興味深く読ませていただきました。あと、ありそうでなかった「オールドレンズに効く RAW 現像テクニック」。RAW 現像を使えばオールドレンズでもそれなりに現代レンズらしくも現像できるし、あるいはレンズの「味」を残して描写上気に入らない部分だけを補正することも比較的容易。今このタイミングでオールドレンズに手を出そうというユーザーであれば、それなりに深みに入る覚悟はできているはずで(笑)、そういう人にはかなり読み応えがある一冊ではないでしょうか。

私はここまでオールドレンズといってもツァイス中心に揃えてきましたが、国産オールドレンズも安価な割になかなか面白そうなんですよね。ひさびさに中古カメラ屋を覗きたくなる、そんな一冊です。

投稿者 B : 00:29 | Book | Camera Mook | コメント (0) | トラックバック

2013/08/17 (Sat.)

真夏の方程式

東野 圭吾 / 真夏の方程式

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先日劇場版を観てきたところですが、やっぱり原作も読んでおかないといけないでしょう。とはいえ、そろそろ本棚に紙の本を増やすのは文庫本であっても躊躇します。というわけで、以前の『聖女の救済』に続いて、図書館で借りてきました(笑。これでも予約して 3~4 ヶ月くらい待たされましたが...。電子書籍さえ出してくれれば喜んでお金を払うんですけどね。この際、本棚を逼迫したくなければ新品で買って読んだらブックオフに、というのは考えませんでした。

映画館で一度観ているので、犯人とトリックを知った上で読んだことになりますが、そういう視点で読むと、あの映画は原作にかなり忠実に作られていたということが分かります。前作『容疑者 X の献身』もそうでしたが、原作に敬意を払っている証拠ですかね。架空の海岸「玻璃ヶ浦」の映像をスクリーンに合わせてイメージどおりに表現した、という点では、この作品はむしろ映像作品のほうを映画館で観るのが真の楽しみ方ではないか、とさえ思います。
とはいえ、掘り下げ方はやはり小説に分があり、原作は被害者と容疑者、そしてその家族の想いと過去、それから警察側の捜査にまつわるエピソードを丹念に描写しています。事件発生の瞬間と種明かしは逆にあっさりしていて、ちょっと拍子抜けだったほど。まあ、今回は物理法則を用いた凝ったトリックもさほどなく、人間関係の描写に重きを置いた作品なので、これでいいような気もしますが、ますますガリレオシリーズではなく加賀恭一郎シリーズでも良かったのでは...と感じました。
対して映画は湯川と少年の信頼関係や川畑家との関わりにフォーカスしている印象。2 時間という映画の枠に収めるにはちょうどいい絞り方だったと思いますが、容疑者が死体遺棄に至る動機と、そもそもの環境問題と事件との関わりに必然性が薄くなってしまった感はあります。事件と川畑家に関わる重要人物を一人まるごとカットしていますからね...。

個人的には、作中で「変人」と評される湯川学のキャラクターには共感するところが大きいです。それは、とにかく理屈で物事を考え、実践で証明していくから。これだけロジカルに物事を考える人というのは現実社会には意外なほど少ないものです(だからこそ人には湯川が「変人」に見える)。
そんな湯川の考え方を象徴するような台詞が、今までのシリーズ以上に物語の要所要所に鏤められているのが印象的でした。

「理科嫌いは結構だ。でも覚えておくことだな。わかんないものはどうしようもない、などといっていては、いつか大きな過ちを犯すことになる」
「両立させたいというのなら、双方について同等の知識と経験を有している必要がある。一方を重視するだけで十分というのは傲慢な態度だ。相手の仕事や考え方をリスペクトしてこそ、両立の道も拓けてくる」
「この世に完璧なものなどない。存在しないものを要求するのは難癖以外の何物でもない」
...科学や技術、に限らず、この社会のありようを正しく認識し、より良い社会を目指していくためには必要な態度ではないでしょうか。私はこれを読んだとき、これはもしかして東日本大震災をふまえて書かれた話なのかな、と思ったのですが、雑誌に連載されていた当時は震災前。それだけ、この言葉が真理を突いている、ということなのでしょう。

あえて不平のひとつでも言わせてもらうならば、こういう認識ができる東野圭吾氏ならば、著作の電子流通にもっと前向きになってくれてもいいんじゃないか、ということでしょうか(笑。

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2013/06/04 (Tue.)

機動戦士ガンダム UC メカニック&ワールド ep4-6

機動戦士ガンダム UC メカニック&ワールド ep4-6

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グレートメカニック DX」誌の増刊号、ガンダム UC 特集の続編が発売されたので、さっそく確保しました。

ep1-3 の発売から 1 年足らずでのリリースというのはちょっと驚きましたが、この号には最新の ep6 までの内容が含まれています。作品の基本的な部分については前号である程度網羅されていたので、この号ではそこまでネタないんじゃないの?と思っていたら、いやいやそんなことはなく。特に ep4 では旧作のモビルスーツ夢の共演状態だったので(笑)、ネタには困らなかったでしょうね...。出典が違うモビルスーツを集めて、最新の『ガンダム UC』という作品世界に登場させるにあたり、オリジナルの設定を忠実に守りながら作中での見え方を統一する、というところにかなり苦心されているのが伝わってきました。
また、映像や設定が中心になりがちなムックでありながら、SE(サウンドエフェクト)を担当したフィズサウンドの西村氏へのインタビュー記事が掲載されていたのも、こだわりの強い本書ならではだなあと感じました。内容的には ep6 Blu-ray 初回限定版の特典ディスクに収録されていた話と一部重複していますが、宇宙世紀ガンダムという世界観の表現には音も重要な役割を担っているんですね。

個人的には、ep4 に登場した旧作の MS に考証を付け加えてディテールアップしている様子が事細かに理解できるだけでも大満足。熟読すると数時間はゆうにかかってしまうであろう、非常に読み応えのある一冊になっています。UC のメカ要素のファンなら買って損はないでしょう。
でもこれ、次の ep7 で完結のはずなんですが、ep7 だけで一冊作る予定なんですかね?小説版ではこの後新しいメカは登場しないし、アニメ版でも今のところ判明しているのはフル・フロンタル用の新 MS(もしくはシナンジュの大改修版)くらいしかないはず...。まあ、それでも新メカをいろいろ登場させたがるのが UC のスタッフのやることですし、一冊作れるだけの大作に仕上がることを、今から期待してやみません。

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2013/04/25 (Thu.)

プラットフォーム ブランディング

川上 慎市郎、山口 義宏 / プラットフォーム ブランディング

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共著者の山口義宏氏から献本いただきました。

いただいたから誉めるわけではありませんが(笑)、山口氏とは今まで一緒に仕事をしたことはないながら、「日本の産業を再び競争力があり、かつ、消費者から憧れられる状態にしたい」という点で、同じ夢を持つ同志だと一方的に思っています。

「顧客体験」「UX」。Apple の iPhone が市場を席巻し始めた頃から多くの企業やメディアで盛んに使われ始め、言葉としてはそろそろ陳腐化して「ユビキタス」「CGM」「クラウド」といった単語と同様に「そういえばそんな実態のない言葉が流行ったよね」というワードの仲間入りをしようか、という段階にあると言えます。しかし、「ユビキタス」「CGM」「クラウド」といったものが、技術やインフラの進化により流行語ではなく現在では空気のような当たり前の存在として利用されているように、「UX」も単語としての流行の段階を終え、企業活動に必須な概念として定着しつつあるように見えます(企業によって温度差が激しいとは感じますが)。
いっぽうで「ブランド」という言葉の解釈にも幅があって、日本においてはバブル時代の高級ブランド・DC ブランドといった「ブランド」の印象や、トヨタに対するレクサス、あるいはファッションブランドのセカンドライン戦略、CI やタグライン...といったように「高級品の代名詞」や「デザインや外観、あるいは企業イメージに関わるもの」と理解されることが多いのではないでしょうか。私も「ブランド●●」と名のつく部署の人と仕事をすることはままありますが、そういう仕事ほど表面的で、企業ブランドに直接関与するようなものではないよなあ...というのが実感だったりします。

しかし「ブランド(商標)」は、「牛に焼き印を施し、他者が育てた牛と区別し、品質を保証するもの」が起源だと言われているとおり、その商品やサービスが提供する品質や安心感を担保する証、企業と顧客との約束とも言えるようなものです。企業側が一方的に「このロゴマークがついているものは高品質だ」と言うだけでも駄目で、消費者の側にもある程度共通した認識が必要。他者との関わりの中ではじめて「自己」というアイデンティティが確立し得るのと同様に、「ブランド」というのも顧客や見込み客との関係の中で成立するものです。とはいえ、企業の側が消費者の認識に対して何もできないわけではなくて、商品の品質を確保したりステートメントを発信することで、ある程度の方向性をつけることはできる。それが「UX によってもたらされるブランディング」というものだ、と理解しています。

そういう意味では、本書が「ブランド」という単語に与えた「顧客体験をデザインするプラットフォーム」という定義は、ブランドの本質を現代に即した形で的確に表現した言葉だなあ、と腑に落ちるわけです。

ただ、あえて本書が画竜点睛を欠く点を挙げるとすれば、この「プラットフォーム」の話と「ブランディング」の話に断絶があり、うまく連結し切れていないなあ、と感じたところでしょうか。「プラットフォーム」に関しては Amazon や楽天のような EC プラットフォームや、Facebook や GREE のようなソーシャルプラットフォームを例に挙げ、事業をプラットフォーム化して、自社の強みを活かしつつ弱みは他社の価値を取り込んで補うことで体験価値を最大化し、ブランド価値を高めることを説いています。それに対して「ブランディング」の話は、ブランドを戦略レベルから戦術、施策レベルまで落とし込み、どうやって事業関係者の上から下までにブランドを意識させながら効果的に事業を推進するか、というブランド戦略の考え方・進め方の教科書のような内容。共著者の二人の専門領域の違いがこのギャップに表れているということなのでしょうが、この二つをブリッジするための章があったほうが良かったのではないか、と感じました。
とはいえ、ブランディングに関する書籍の多くが参考になるんだかならないんだかよく判らない単なる成功事例集(こういう事例って、個別の事象ではなく成功・失敗の要因を抽象化して理解しないと意味がないと思っています)でしかない中、これだけブランド戦略の推進の手順について大真面目にブレイクダウンした書籍は稀有なのではないでしょうか。「ブランディングってヘッドクォーターのブランド担当部門が考えること」みたいな誤解もありがちですが、本書はむしろ(企業価値を高めたいと考えているならば)企業の商品・サービス企画やマーケティング、あるいは直接の顧客接点となる部門の実務担当者こそ熟読し、定期的に回帰すべき原点のような戦略書だと思います。やるべきことや手順、どういう構造で理解・分析すべきか、が図表で解りやすくまとめられているというだけでも価値があります。

ひとつ、本書の共著者に突っ込んで質問してみたいことは、前半のプラットフォームに関する記述の中で「事業をプラットフォーム化すること」について書かれていましたが、プラットフォーム化できるほどの事業規模や市場ポジションにない企業や事業カテゴリについてはどうすれば良いのか?ということです。皆が皆プラットフォーマーになれるわけではなく、App Store にアプリを提供するだけ、楽天のモールに店舗を出店するだけ、の規模の企業のほうが圧倒的に多い。あるいは自社プラットフォームを持ちたいけど OS や SNS をゼロから作ってもすぐにエコシステムができあがるわけではない。そういった場合に、自社がすがっているプラットフォーマーに価値を包含されずに強みを発揮し続ける、または逆に包含を狙っていくためには何をすれば良いのか。Amazon、Apple、Google、Facebook、Twitter といった米国発のメガプラットフォーマーに自分たちのビジネスを換骨奪胎されないためにすべきことは何か、といったことはぜひ問うてみたいですね。

最後に、終章に書かれていた内容は、個人的には 1~2 年前から悶々と思い悩んでいたことに対してヒントとなるようなメッセージをもらえたような気分です。いや、そうなんですよ。ブランドというのは「高い代金を正当化するためのマーク」ではなくて「企業価値の源泉の、その象徴」なわけです。私も特定企業という組織体のために働いているつもりはなくて、「自分を含む顧客に感動的な体験を提供してくれる存在」の価値を高めたいと思って働いているつもり。だからこそ、その価値の源泉は何で、顧客に対してその価値を高めるために何を強化しなくてはならないか、を常に考えていなければならないのです。この書籍は、私がそんな想いのよりどころにしていきたい、と思える一冊です。

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2013/03/27 (Wed.)

Kindle で『電子書籍リーダー女子 人生を楽しくする電子書籍の始め方』を読んでみた

家電女子.net » 家電女子、初めての電子書籍を出版してしまいましたの巻(前篇)
家電女子.net » 家電女子、初めての電子書籍を出版してしまいましたの巻(後篇)

blog 仲間ののぽりんさんが、Kindle で電子書籍を出版されたので、読んでみました。
彼女は「家電女子」を自称しつつも、モノの選び方や買い方、blog にかける情熱はそこらへんのガジェット男子よりもはるかに漢らしく(←誉め言葉)、中でも最近熱中されている電子書籍についての電子書籍(笑)ということで、これは期待。

のぽりん / 電子書籍リーダー女子 人生を楽しくする電子書籍の始め方

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Kindle なら以前ジョブズ本を原語で読むだけのために買って絶賛放置中(ぉ)の Kindle 4 があるし、久々に充電していざ購入!

...と思ったら、

Kindle ストア

配信先端末の選択肢で、Kindle 4 がなんかグレーアウトしてるんですけど(;´Д`)ヾ。

調べてみたら、どうも Amazon.co.jp の Kindle ストアが対応しているのは Kindle Paperwhite 以降の世代の端末と、iOS/Android 用の Kindle アプリのみで、Kindle 4 以前のハードウェアでは日本語書籍は読めない模様(´д`)。まあ、日本でサービスが始まる前に Amazon.com から輸入した端末なのでここで文句言うのも筋違いですが、半分これを期待して Kindle 4 を買った部分もあったので、残念...。

仕方がないので、iOS/Android アプリ版 Kindle に転送して、通勤中にスマートフォンとタブレットを使って読書。
ほんの 1 時間もあれば読めてしまう、とても読みやすい本でしたが、かといって内容が薄いわけではなく、2013 年現在の電子書籍界隈をユーザー視点でとてもよく総括していると感じました。だてに現存する国内向け電子書籍端末をほぼコンプしているわけじゃない(^^;;

ご本人の電子書籍端末に対する先入観からそれが拭い去られて電子書籍マニアに至るまでの顛末、電子書籍への入門のしかた、端末の種類やサイズの選びかた、今までありそうでなかった「家族で電子書籍を共用する方法」など、どちらかというとこれから電子書籍を買ってみようか、と考えている人に勧められる内容になっています。E-Ink とかクラウドとか DRM とか、とかく専門用語満載になりがちなこの手の解説書にあって、やさしくやわらかい言葉遣いでまとめられているのも、女性ならではでしょう(←冒頭で「漢らしい」とか言っちゃったのでここでフォロー(ぉ))。タイトルこそ『電子書籍リーダー女子』で表現も平易ですが、かといって特別に女性向けというわけでもなく、これから電子書籍を始めてみたい人や電子書籍を始めたばかりの人であれば、多くの人にフィットする解説書だと思います。私も電子書籍については知っているつもりでいましたが、私が持っていない視点での発見も多く、ついつい引き込まれてしまいました。

また、「電子書籍の『いま』を切り取った電子書籍」という意味では、タイミングよくこちらも読了しました。

西田 宗千佳 / 加速する日本の電子書籍 -Kindle、kobo上陸。2012年、日本になにが起きたのか

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こちらは私が以前から購読している MAGon『西田宗千佳のRandom Analysis』に掲載されてきた電子書籍関連記事を加筆した上で一冊の電子書籍にまとめたもの(今月いっぱい限定、特別価格 500 円で販売中)。これまでも、同氏の類い稀なる取材力で業界のキーパーソンから録られたインタビューは業界の本質を深く突いていましたが、散発的な記事(この EPUB マガジンは、同氏の書籍やコラム向けの取材成果をタイムリーに読者に提供する、という側面を持っているため、業界総括というよりは特定の企業に対するインタビュー記事の体裁になっていることが多い)ではなく業界を俯瞰する形でまとめることで、日本における電子書籍の現状を的確に記録していると言えます。

のぽりんさんの著書と西田さんの著書は、奇しくも同じタイミングで電子書籍の現状をユーザーの立場と業界・市場の観点でまとめた、ある意味対称的な電子書籍だと思います。その意味で、両方の書籍をまとめ読みすることで、2013 年以降の電子書籍が向かっていくべき方向が、なんとなく見えるのではないでしょうか。

電子書籍リーダー女子 人生を楽しくする電子書籍の始め方

投稿者 B : 22:41 | Book | eBook | コメント (0) | トラックバック