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2017/05/10 (Wed.)

飛びこめ!!沼 02

私の周囲でやたら買ってる人が多い某シグマの重要書類、ウチには今日届きました。

安倍吉俊 / 飛びこめ!!沼 02

飛びこめ!!沼 02

先日のコミティアで発売されたものが早くも COMIC ZIN での委託販売が始まったようで、さっそく注文。本当は紙の本を増やしたくないので電子版も発売してほしいところではありますが...まあ文字通り「薄い本」だしいいか(ぉ

前作もかなり濃い同人誌でしたが、本作はさらに輪をかけて深い沼に引きずり込んでくる一冊です。

飛びこめ!!沼 02

冒頭からしてこれですからね...。
基本的にはシグマユーザーによるシグマユーザーのための自虐本です(ぉ

飛びこめ!!沼 02

「OS は『重くてスイマセン』の略」、これテストに出ます(ぉ

飛びこめ!!沼 02

シグマ製品につけられがちな略語、鳴り物入りで登場した「SFD」とは何の略か?答えは本を買ってその目で確認すべし(ぉ

飛びこめ!!沼 02

出た!Foveon ユーザーのとにかく何でもカリカリに撮りたくなる病(笑。合併症としてとにかく錆を撮りたくなる病を発症する場合があります(ぉ。

いやー、今作も前作以上に濃いネタ満載でした。シグマ、愛されてるなあ。
いくら SIGMA GLOBAL VISION のレンズの評価が高いとはいえ、レンズだけではシグマもここまで愛されるメーカーになってなかっただろうなあ。極端な製品バランスの sd/dp シリーズと山木社長のキャラ(笑)があったからこそ専門の同人誌まで発売される状況になったのではないでしょうか。あの規模の会社で、ファンに支えられながら一定のポジションを築く。なかなかできることではなく、羨ましくもあります。

それとこちらも購入しました。

ていこくらんち / カメラバカにつける薬 7

カメラバカにつける薬 7

同じくコミティア向けに発売された『カメラバカにつける薬』の新刊です。
こちらは PDF 版も発売されているので、私は電子で購入。

カメラバカにつける薬 7

もともと「レンズ沼病を治療するための病院」という設定で始まったこのシリーズですが、いつの間にか病院を離れて草野球なんかもするようになったのが、7 巻では釣りまで始めてしまいました。
それにしても「インスタ川でフォロワーを釣る」とか毒が強すぎる(笑

カメラバカにつける薬 7

釣り針(笑
個人的には釣り針が鈴なりになったような投稿はあまり好きではありません。

カメラバカにつける薬 7

「なんでも東京つければいいと思ってやがる」...ああなんかインスタじゃないけど身近に思いっきりそういう例があったような...。

カメラバカにつける薬 7

うっ、何故だろう目から水が。・゜゜(っд`)゜・。

ちなみにこれは今回新登場のキャラ、華為(ファーウェイ)ちゃん。ライカ警察と仲良しです。

カメラバカにつける薬 7

絞り 11...さっき別のマンガでも見たような...?
読者層が似ていることもあって、『沼』のほうとリンクするようなネタが散りばめられていて、そういう意味でも面白かったです。

そういえばここしばらく機材買ってないなあ。手持ちのラインアップで満足しちゃってるというのもあるけど。
友人とカメラ機材の話をすることも以前よりは随分少なくなりましたが、こういうの読むと久しぶりに飲みながらカメラ談義でもしたくなりますね。

投稿者 B : 22:22 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2017/03/21 (Tue.)

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

フィリップ・K・ディック / アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

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映画『ブレードランナー』の原作となったフィリップ・K・ディックの小説、初めて映画を観たときに文庫で買って読んだのが 20 年近く前だったでしょうか。今ではあの文庫本もどこかに行ってしまいましたが、今年 11 月に映画の続編『ブレードランナー 2049』が公開予定ということで、復習も兼ねて電子書籍版で久しぶりに読み返してみました。映画のほうはもう今までに何度となく観ていますが、小説を読むのはこれで二度目。あらすじは憶えているけど細かい部分はさすがに忘れてしまったので、新鮮な気持ちで再読できました。

警官であり賞金稼ぎ(バウンティ・ハンター)であるリック・デッカードが脱走したアンドロイドを狩るというストーリーは原作小説も映画も共通していますが、描かれ方は大きく違います。リドリー・スコットによる映画版は東アジア的なサイバーパンクの世界観が印象的でしたが、原作小説は(文字だけだから当然だけど)映像美よりも SF 的な奥行きの深さや読者への哲学的な問いかけが印象に残ります。その対比は小説のタイトル『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』自体が哲学なのに対して、映画ではバウンティ・ハンターがタイトルでもある「ブレードランナー」に、アンドロイドが「レプリカント」というように、呼称が中二的な感じ(笑)に改変されているところにも現れています。

しかし両者に共通するのは「人間らしさとは何か」「本物と偽物を分けるものは何か」というテーマ。映画版はデッカードとレプリカントたちの追跡劇を軸に、それ以外の要素はほとんど切り落として構成されているのに対し(それは二時間という尺を考えればやむを得ないと思う)、原作小説はそれ以外にも複数の登場人物やエピソードを織り交ぜ、その哲学的なテーマに関してさまざまな角度から読者に考えさせるような内容になっています。映像でこれをやるとダレてしまったでしょうが、小説だからこそこういう掘り下げ方ができたと言えます。
我々の生きる現実社会では、ロボットはまだ人間と生活を共にするレベルには至っていませんが、その構成要素の一つと言える対話型 AI は着実にその精度を高めてきており、コンピュータやスマホのスクリーン越しに「人格」を感じられる程度には進化してきています。その相手を「人格」と認めるかどうかは人間側の認知の問題であるし、AI のほうが人間よりも親切な対応をしてくれる場面だってあり得る。人間の意識や行動だってそれまでの人生における経験の蓄積に立脚した判断に他ならないわけで、AI のビッグデータに基づいたアウトプットと何の違いがある?とも言えます。この疑問に、ロボットがほぼ空想の産物だった約五十年も前に取り組んだフィリップ・K・ディックという作家には改めて敬服するばかりです。

さて、映画版の続編である『ブレードランナー 2049』のほうはオリジナル脚本による完全新作とのことで、若干不安はありつつも(笑)非常に楽しみ。前作の主人公デッカード(ハリソン・フォード)も登場しつつ、新たな主人公を演じるのが『ラ・ラ・ランド』のライアン・ゴスリングというのも期待が高まるところ。果たしてあの『ブレードランナー』の 30 年後の世界を現代の CG 技術でより進化させた形で表現できるのか、あるいはやっぱり実写ベースのウェットな世界観のほうが良かったよね、となるのか。ひとまず 11 月の封切りを待ちたいと思います。

投稿者 B : 21:00 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2017/02/22 (Wed.)

『孤独の中華そば「江ぐち」』と「みたか」

『孤独のグルメ』の原作者・久住昌之先生のエッセイのひとつに『孤独の中華そば「江ぐち」』という作品があります(正式にはエッセイではなく小説らしい)。

久住昌之 / 孤独の中華そば「江ぐち」

孤独の中華そば「江ぐち」

もともとは 30 年以上前、久住さんが 26 歳のときに書いた本らしいですが、その後絶版と復刊を二度繰り返し、三度目の刊行が行われたのが 2010 年。『孤独のグルメ』が最初のドラマ化をされる前のことですが、その時点では既に知る人ぞ知る存在になっていた『孤独のグルメ』から引用する形で復刊版のタイトルがつけられたのでしょう。

この「江ぐち」というのは、三鷹にかつて実在したラーメン店のことで、三鷹生まれの久住さんが若かりし頃に日常的に通っていたお店とのこと。なんたってこんな本を勝手に出したり、久住さんのバンド・スクリーントーンズで勝手にテーマソングまで作曲してしまうくらい思い入れのあったお店のようです。この本が三度目の刊行を行われた年に閉店してしまったそうですが、本書ではその「江ぐち」の在りし日の思い出が生々しく綴られています。

孤独の中華そば「江ぐち」

といっても、エッセイの内容は久住さんと悪友たちが店員に「タクヤ」「アクマ」「オニガワラ」などという渾名を勝手につけていた話とか(それも「タクヤ」は顔が久住さんの弟に似ているから、というしょうもない理由だったりする)、基本的には大学生のだらしない日常の話と、そこから脱線(しかもかなり話題が飛ぶ感じで)した話ばかり。それでも久住さんや悪友たちがお店の様子をよーく観察し、そこから妄想を膨らませたり、自分なりの「食べ方の流儀」にこだわったりするあたりが『孤独のグルメ』の原点なんだなあ...というのがとてもよく分かるエッセイになっています。

まるでドラマの「ふらっと QUSUMI」コーナーで隣の席に座って久住さんの飲み話を聞いているような、スクリーントーンズのライブで久住さんの脱線だらけの MC を聞いているような、そんな感覚が文章を読んでいても感じられます。私は紙の本を読んでいて吹き出してしまうことってまずないんですが、この本は数ページに一度くだらなすぎて吹く(笑。

孤独の中華そば「江ぐち」

このエッセイの中でも「お店のカウンターの中で店員が険悪なムードだと、料理が全くおいしく感じられない」という話をつらつらと書いていたりして(ちなみにこのエピソードは「江ぐち」のことではなく脱線した他の店の話)、漫画『孤独のグルメ』に登場したアームロック回のような経験が本当に許せないんだなあ、というのがよく分かります。
でも基本的には全編にわたって馬鹿話と妄想と脱線が繰り広げられていて、久住さんが食事している間の頭の中を覗き込んでいるような感覚。

で、先日たまたま仕事で三鷹方面に行く用事があり、しかも帰りが半端に遅くなってしまいました。南東京の住人としては中野よりも西、というのは妙に遠くて、これは帰るまでもちそうもない。仕方ない、この辺で何か入れていくか...と考えました。三鷹周辺は久住さんのホームグラウンドだけあって『孤独のグルメ』では原作、ドラマともに登場している町だし、私も何度か聖地巡礼に訪れています(全くの余談だけどコンビニ回では跡地の写真を撮るためだけに三鷹まで行った)。
お茶漬けの「みさと」は昨年末に閉店してしまったらしいけど、久しぶりに「」に行くかなあ...というところまで逡巡したところで、この店のことを思い出しました。

中華そば みたか

「江ぐち」と同じ場所で、「江ぐち」の若手職人が、「江ぐち」の店舗を居抜きで使って、「江ぐち」の味を受け継いだ店をやっている、という話。
確かに三鷹駅の正面の道を少し歩いたところのビルの地下に、そのお店は入っていました。

中華そば みたか

中華そば みたか

階段を降りると真正面にある「中華そば みたか」。これがその「江ぐち」の後継店です。

近代的なビルの並ぶ三鷹駅前の地下に、ここだけ昭和がそのまま時間を止めているかのような空間が広がっています。
店内のレイアウトとか、調理器具の様子とか、本当に久住さんのエッセイに書いてあったそのまんまで、ちょっと笑みがこぼれてしまうほど。

中華そば みたか

とりあえず一日の仕事が終わったところなので、瓶ビールで自分にお疲れさま。
でもラーメン屋でガッツリ飲んじゃうのも粋じゃないと思い、小瓶にしてみました。

中華そば みたか

で、ラーメンをいただく前に久住さんなら軽くつまんでから本丸に行くんだろうなと思って、「竹の子」をツマミにいただいてみました。
ここが普通のラーメン屋だったら「メンマ」あるいは「シナチク」と呼ばれるところだろうけど、この店では「竹の子」。噛み応えのあるメンマに大量の白ネギ、それにラーメンの醤油だれが絡んで、これはいいツマミだ。焼豚(チャーシュー、ではなく、チャシュー)にも心惹かれたけど、これは竹の子で正解だったかも。

中華そば みたか

そしてメインはチャシューメン。ツマミを竹の子でガマンしたので、ラーメンにはガッツリチャシュー。
この店、普通のラーメンが 450 円、このチャシューメンでも 700 円。イマドキそこらのラーメン屋ならチャシューメンで 1,000 円取る店もザラにある中で、この値段は嬉しい。

中華そば みたか

スープは澄んだ色の昆布だし&野菜系。カウンター内の寸胴鍋で人参や玉葱、キャベツなんかがゴロゴロ煮込まれた、見るからに美味しそうなスープ。
味は自己主張が強すぎず、ややスッキリめのやさしい味。初めての味なのにどこか懐かしい、昭和を思い起こさせるスープです。
最近の私はガッツリ豚骨とか煮干しとかよりも、こういうシンプルな醤油スープのラーメンこそ食べたいと思います。

チャシューはしっかりと味がついているけど、あまり脂っこくなく飽きずに味わえます。これもおいしい。
エッセイには、ツマミのチャシューはラーメンのと違って脂が冷めているのが「レーズンバター的な感じでツマミにいい」という話があったけど、確かにこのチャシューならそういう楽しみ方もアリだな。

中華そば みたか

麺は角張った形の自家製・中太ストレート。こういう麺を出す店ってあまり多くない印象だけど、こういう食べ応えある麺、けっこう好き。そしてこのスープならこの麺しかないだろうと感じる相性の良さ。飽きの来ない、いくらでも食べていられそうな中華そば。
この麺、見た目の印象どおりボリュームがあるようで、食べ終わった後にはけっこうお腹いっぱいになってしまっていました。

ここは美味しかったなあ...久住さんが毎週のように通っていたのも分かる気がします。
決してインパクトのある味ではないけれど、ジワジワと良さの分かる、毎日でも食べたくなるラーメンだと思います。自分で撮った写真見てたらまた食べたくなってきた。

今度三鷹に来る機会があったら、ツマミチャシューと五目そば、いってみようかな。

久住昌之 / 孤独の中華そば「江ぐち」

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関連ランキング:ラーメン | 三鷹駅

投稿者 B : 22:56 | Book | Gourmet | KODOGURU | Ramen | コメント (0) | トラックバック

2017/02/20 (Mon.)

神々の山嶺

先日亡くなった谷口ジロー先生の追悼の意味も込めて、代表作を一つ読んでみました。

夢枕獏、谷口ジロー / 神々の山嶺

神々の山嶺

名作と呼ばれるいくつもの作品の中から、表紙に凄みを感じた『神々の山嶺(いただき)』を選びました。そういえばこれ、去年映画化されたときにちょっと気になっていたのですが、結局そのままスルーしてしまったんですよね。映画評なんかを読む限りではキャストは良いけど...という感じらしいので、観なくて正解だったかもしれません。
本作は夢枕獏氏の同名の小説を漫画化した作品で、夢枕獏氏自身からの指名で谷口ジロー先生の作画になった、と後書きに書かれていました。フィクションではありますが、実在する登山家をモチーフにした非常にリアリティと重さのある作品です。

何故山に登るのかとの問いに「そこに山があるから」と答えたという登山家ジョージ・マロリー。エベレスト山頂付近で遭難し、人類史上初のエベレスト登頂を果たしたかどうかは今でも謎に包まれています。そのときに携えていたと言われるカメラをネパールの首都カトマンドゥで偶然手に入れた日本人写真家・深町誠がその真相を追ううちに、行方不明となっていた伝説の日本人登山家・羽生丈二と出会い、彼の登山人生に引き込まれていくというストーリー。

神々の山嶺

羽生はその人生を賭けてエベレストを、それも単に登頂するわけではなく「誰も成し遂げたことのないルートと方法で」登ろうとします。作品の大半はエベレストのみならず日本や世界の険山(それも冬季)の描写に割かれます。暖房の効いた室内で読んでいても、まるで自分が冬山にいるかのような寒さや厳しさを感じてしまうほど描き込まれたコマが延々と続き、読むのにさえエネルギーを消費する感覚があります。これと比べると『孤独のグルメ』はあえて背景を白抜きにしているコマも多く、緊張感の出し方が全く異なることがよく分かります。

神々の山嶺

命を賭けるレベルの登山なので、遭難や事故による怪我や死とは常に隣り合わせ。凄惨な事故を生々しく描いたシーンも多く、読むと体力を削られる感覚。それでも物語はこちらをグイグイ引き込んでくる強さがあり、私は電子版の全巻セットを購入し、結局最後までほぼ休まずに読み切ってしまいました。そして読了後にはどっと疲れているという。

神々の山嶺

エベレストをはじめとした冬山の描写には目を見張るものがあります。『孤独のグルメ』の描き込みも半端なかったですが、その比ではない緻密さ。冬山を経験したことのない私は原作小説を読んでも情景が想像できなかったかもしれませんが、この「画の力」はやはり偉大だと思います。自然の偉大さと恐ろしさが同時に伝わってくる描写で、あまりにもちっぽけな自分を感じて涙が出そうになったほど。

神々の山嶺

ちなみに作中では、登場人物が何かに関して熱弁を振るうシーンがいくつかあり、この構図と同じようなコマがたびたび登場するわけですが、これを見るたびに

孤独のグルメ

『孤独のグルメ』のゴローの仕事仲間・滝山を思い出して吹く(笑。谷口ジロー先生的には定番の構図なんだろうなあ。

それにしても凄みのある作品でした。画力にここまで震えたのは井上雄彦先生の『バガボンド』と安彦良和先生の『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』以来かもしれません。
改めて、惜しい人を亡くしたものです。

『孤独のグルメ』とはまた違った谷口ジロー先生の世界。他にも何か読んでみようと思っています。

夢枕獏、谷口ジロー / 神々の山嶺

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投稿者 B : 22:00 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2017/02/12 (Sun.)

おくやみ:『孤独のグルメ』谷口ジロー先生

「孤独のグルメ」漫画家の谷口ジローさん死去 | NHKニュース

孤独のグルメ
(写真は『孤独のグルメ 巡礼ガイド 2』より)

漫画『孤独のグルメ』の作画で有名な、漫画家・谷口ジロー先生が昨日亡くなったとのこと。

『孤独のグルメ』ファンとしては、これで久住・谷口両先生による『孤独のグルメ』がもう読めなくなってしまうと思うと、本当に悲しい。谷口先生は 69 歳で、作家としてはまだまだ現役を張れる年齢だっただけに、残念です。

孤独のグルメ

今でこそドラマのほうが知名度が高まっていますが、そもそも『孤独のグルメ』の人気は漫画版の谷口ジロー先生によるハードボイルドな画風と「ただメシを食う」というギャップ、そして何とも言えない味わい深いセリフ回しによってジワジワと高まってきたもので、その結果としてドラマ化されたものです。原作の久住先生はご健在のため、作画担当を別の人に頼んで継続できなくもないのでしょうが、画が変わったらそれはきっと別物になってしまうんだろうなあ。ドラマ版でゴローちゃんが松重豊さんでなくなるようなものだと思います。

谷口ジロー先生

『孤独のグルメ』の魅力は井之頭五郎のキャラクターだけでなく、この緻密に描き込まれた料理や店内の再現性、風景の細かさにもあると言えます。実際に聖地巡礼してみると、本当にこの絵のまま出てくるから驚きます。実際には最近の料理作画は谷口先生ではなくアシスタントさんが描いているという話ですが、それも含めて谷口ジロー作品なわけで。

ちなみに、谷口先生は日本国内よりも海外(特にヨーロッパ)で高く評価されており、6 年前にはフランスの芸術文化勲章「シュヴァリエ」を受勲しているほどの人物です。ルイ・ヴィトンからヴェネツィアのトラベルブックも出版しており、一流の芸術家として認められていることが分かります。そう考えると日本では漫画ってまだまだ芸術作品ではなく娯楽作品としてしか見られていないのだなあ。

孤独のグルメ

遺作となった『孤独のグルメ 2』の最終話がフランス・パリ編、というのも改めて宿命めいたものを感じます。私は原作の聖地でまだ行けていないのは病院回とこのパリ回だけですが、これは何かのチャンスを見つけて巡礼するしかないかなあ...。

この機会に『孤独のグルメ』シリーズ以外の作品も読んでみようかと思います。
ご冥福をお祈りいたします。

夢枕獏、谷口ジロー / 神々の山嶺 文庫版 コミック 全 5 巻完結セット

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投稿者 B : 20:56 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2017/02/06 (Mon.)

飛びこめ!!沼 01

カメラバカにつける薬』に続いて、このカメラ系同人誌も購入しました。

安倍吉俊 / 飛びこめ!!沼 01

飛びこめ!!沼 01

通称「シグマの H 本」。あの人この人あんな経営者までも手に入れている、昨今のカメラ界の隠れベストセラーとなっている(?)一冊です。私はシグマのカメラは持っていませんが、シグマレンズファンとしては読んでおきたくて。表紙の二人からして sd Quattro とトンファーdp Quattro ですからね。シグマ純度高杉。
ちなみに『カメラバカ~』と違ってこちらは紙版しかなく、通販で買ったら少し時間がかかってしまいました。

それにしてものっけからいきなりこれですよ。

飛びこめ!!沼 01

間違いない、これは確かに H 本だ(←

カメラクラスタの人なら何のことを言っているか分かりますね。当代一の変態カメラのことです(誉め言葉

飛びこめ!!沼 01

『カメラバカ~』はカメラの(写真の、とは言わない)専門知識をベースとした機材マニアの自虐ネタを中心とした同人コミックでしたが、こちらはシグマユーザーの自虐ネタでありながら、専門知識よりもライトギャグ中心。でもシグマ愛、機材愛に溢れていてとてもイイ。
すごく力の抜けた作風ですが、全ページフルカラーでなかなか読み応えがあります。

飛びこめ!!沼 01

こっちにも出た!カメラクラスタにおけるフォトヨドバシ影響受けすぎ問題(笑
フォトヨドなあ。いいよなあ(遠い目

「01」ということで続刊の構想もあるようなので、こちらも『カメラバカ~』と併せて楽しみにしたいと思います。

シグマ / sd Quattro H

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投稿者 B : 22:00 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2017/01/30 (Mon.)

カメラバカにつける薬

カメラ界隈のタイムラインにときどき登場する同人誌『カメラバカにつける薬』。断片的に見たコマだけでも面白くて興味を持っていたのですが、先日の某集会で某氏に実物を見せてもらったらちゃんと通しで読んでみたくなったので、買ってみました。

ていこくらんち / カメラバカにつける薬

カメラバカにつける薬

同人誌ってバックナンバーは入手困難になるものですが、pixiv が運営する通販サイト「BOOTH」で電子版を販売しているんですね...安かったこともあり、思わず「ごーがいまとめ」も含めてシリーズ 8 巻全部買ってしまいました(笑。とはいっても「薄い本」なので、さらさらっと読めてしまいます。

あとがきによると blog や SNS での作中のコマ引用歓迎とのことなので、いくつかピックアップしてご紹介。

カメラバカにつける薬

この漫画は、カメラの撮影離れを止めるべく設立された架空の心療内科、通称「カメラ内科」の女医さん・看護師さんと患者たちの話。

「あなた、レンズ沼にかかっていますね」

...我々の後を追って沼に足を踏み入れた人を見かけたら、言ってみたいセリフナンバーワンの座をもぎ取っていきました(笑

カメラバカにつける薬

治療のためにツァイスレンズを投与してくれる病院!これは入院するしかない(ぉ

カメラバカにつける薬

カメラ機材によって思考回路を狂わされてしまった重病人達の話です。
基本的に Twitter のカメラクラスタ内で日常的に繰り広げられている会話的なものが漫画化されているわけで、ほとんど共感する話しかない。

ちょうどこれを読んでいるときに、Twitter でヨドバシのカメラ沼話が RT されてきて、ここにも患者が一人...と女医さん目線で考えてしまったのは内緒です。

ヨドバシカメラによって沼に突き落とされた人 - Togetterまとめ

カメラバカにつける薬

フォトヨドバシの攻撃力高杉問題はたびたびネタにされます(笑
まあ私もフォトヨドバシの影響で買わされてしまった機材は数知れず。「天使の両翼」みたいなガジェット系ポエムは苦笑しながら流せるのに、フォトヨドバシだけは的確に物欲を抉ってくるのは何故なんだぜ。やっぱり写真の力なんでしょうか。

カメラバカにつける薬

ページをめくったらいきなりこれで、つい画面を濡らすくらい吹き出した一コマ(;´Д`)ヾ。漫画にされると破壊力ありすぎる。

カメラバカにつける薬

ネットスラングも多いので、Twitter で日常的にカメラ話をしている真のカメラバカでなければ意味不明だろうと思いますが、少しでも共感できたならきっと面白いはず。
中でも特にキヤノン、ソニー、ペンタックス、シグマのいじられ度合いが高いので、該当メーカーファンなら必読です。

これはもっと早く買っておくべきだったなあ。続刊が出たらまた買おうと思います。

投稿者 B : 23:40 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2017/01/10 (Tue.)

いいひと。

以前から電子版のリリースを待っていた漫画が、いつの間にか電子化されていたのに気がついたので買ってみました。

高橋しん / いいひと。 (1)

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もう二十年以上前の作品なので、今さら感はありますが。ビッグコミックスピリッツで連載されていて、高校~大学にかけてリアルタイムで読んでいました。今でもコミックは全巻持っているんですけどね、電子版ならどこにいても読み返せるじゃないですか。

架空の大手スポーツ用品メーカー・ライテックスに勤める若手サラリーマン、北野優二(ゆーじ)のお話。ゆーじが社内のさまざまな部署を異動しながら、多様な仕事に携わっていく話...なのですが、ゆーじは主人公でありながらあくまで狂言回しにすぎません。本当にスポットが当たるのはゆーじの仕事先で出会う多くの人々、会社の同僚や先輩後輩、顧客であり、仕事や人生について何らかの悩みを持っている彼らが、ゆーじとの仕事を通じて大切なものを見つけ、あるいは取り戻していく物語です。

漫画だけにご都合主義的な展開は多いながらも、登場人物の多くがただのお金儲けではなく働く意味や生き甲斐に悩みながら働いているのが印象的。ほわんと緩いタッチの画も作風も『島耕作』や『サラリーマン金太郎』といった典型的なビジネス漫画とは全く異なりますが、社会人として生きていく上で必要なポジティブさを、少し青臭いながらもストレートに伝えてくれます。
企業における女性社員の位置づけの違いや携帯電話が普及していないこと、代表的な野球選手がドジャース時代の野茂英雄など、今読むとさすがに時代を感じてしまう描写も少なくありませんが(笑、本質的な部分は現代でも変わっていません。私も、社会人になってからも悩んだときや岐路に立ったときになると読み返して、自分が働くことの意味を再確認しています。ある種、私が日々働く上での原点となっている作品、と言っても過言ではありません。そして、年齢や経験を経て環境や立場が変わるとまた違った見え方をしてきます。

この機会に数年ぶりに最初から読み返そうと思います。

投稿者 B : 23:11 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2016/12/25 (Sun.)

Kindle Paperwhite

小学五年生の長女へのクリスマスプレゼントはこれでした。

Amazon / Kindle Paperwhite 32GB マンガモデル (ホワイト)

Kindle Paperwhite

四年生くらいからけっこう本をよく読むようになり、当初は児童向け小説が中心だったのが、最近では『ハリー・ポッター』シリーズなんかも読んでいるようです。ただ本人は「本は図書館で借りるもの」という感覚らしく、紙の本を所有したい欲求は希薄な模様。以前からウチの奥さんが使っている Sony Reader(PRS-T2)を借りて使うこともあったので、それならと電子ブックリーダを買い与えました。
私自身はソニーの Reader Store をメインに使っていますが、これから専用機を手に入れて使い始めるのならばもはや Kindle 一択でしょう。どうせなら内蔵メモリ容量の大きなモデルを長く使ってほしいと思い、マンガはあまり読まないけどあえて 32GB 内蔵のマンガモデルを選択しました。

Kindle Paperwhite

E-Ink 方式の Kindle は五年前に自分で買った Kindle 4 以来ですが、外観は大きく変わっていなくても E-Ink の表示品位は上がっているし操作レスポンスも E-Ink 端末とは思えないほど高速(液晶ほどじゃないけど)。他車の専用端末は進化が止まって久しいですが、こういう違いを見せつけられてしまうと、ちゃんと開発が続けられている端末とサービスを使うのがユーザーとしては幸せだよなあ、と感じます。
ただ背面ロゴが Kindle ではなく Amazon になったのはちょっとどうかなあ。Amazon ベーシックのイメージが強いせいもあるけど、梱包箱ならまだしも製品に Amazon のロゴが入っているとどうも安っぽい印象を受けてしまいます。

Kindle Paperwhite

これは今後基本的に長女の専用端末となるわけで、アカウントの扱いはちょっと悩みました。私か奥さんのアカウントを使ってもいいけど、今後長く使うことを考えたらこれまでの購読履歴も含めて「自分のライブラリ」を持っておいたほうがいい。結局新規でフリーメールアドレスを用意し、長女の Amaozn アカウントを取得した上で使い始めることにしました。
機能制限に関しては、決済はクレジットカードを紐付けていないので今後必要に応じてコンビニでプラスチックカードタイプの Amazon ギフト券を買ってチャージさせることで使いすぎを防止することに。他には Web ブラウザの使用制限をかけた程度で、今後必要に応じて情報リテラシの教育はしていくことにしようかと。自宅では Xperia Z2 Tablet を家族共用にしていて、普段から Web や YouTube はある程度自由に使わせていますし。

Kindle Paperwhite

私も Kindle Paperwhite の実機をじっくり触るのはこれが初めてでしたが、コントラストの高い E-Ink ディスプレイはとても読みやすいですね。さらにフロントライトもついて、私もちょっと欲しくなってしまいました。が私は電子書籍はもうほぼタブレットかスマホでしか読んでいないので、専用機は必要ないかな。

長女にはもう少し文学系の作品を読んでほしいので、無料で入手できる青空文庫を中心に冬休みの課題図書にしようと思っています。愛用してくれるといいなあ。

Amazon / Kindle Paperwhite 32GB マンガモデル

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投稿者 B : 20:00 | Book | eBook | コメント (0) | トラックバック

2016/11/15 (Tue.)

ポケモン GO は終わらない

みなさんポケモン GO はまだ続けてますか?私は時々「まだやってんの?」と言われながらも、地道に続けています。今日の時点でトレーナーレベル 26、日本で収集可能な 142 のポケモンのうち集めた数は 138。けっこうがんばってるでしょ(笑。

西田 宗千佳 / ポケモン GO は終わらない 本当の進化はこれから始まる

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そんなポケモン GO をテーマにした西田宗千佳氏の新著が発売されたので、私も早速読了しました。マスコミを巻き込んだ、国内サービス開始時の熱狂は過ぎ去り、ブームはもう落ち着いたように思われます。が、街中では今でもそれなりの割合でポケモン GO の画面が表示されたスマホを持っている人を見かけ、お台場にはまだまだレアポケモンを求める人々が集まっています。ポケモン GO が誕生した経緯とブームの正体、そしてポケモン GO が与えた世の中への影響を一度総括するという意味では、いいタイミングなのではないでしょうか。

位置情報ゲームも、キャラ収集ゲームも、ネット対戦系の携帯/スマホゲームもそれぞれは以前から存在したものでした。それがこれだけ世界的に、しかも垂直立ち上げ的に広まったのは、ひとえに『ポケモン』という IP の強さと『Ingress』をベースとした位置情報の網羅性にあります。中でも「身の回りに存在するポケモンを捕まえる」という行為は本来の『ポケモン』が持っていた要素そのもの。今まではゲーム機の中のフィクションの世界で表現していたものを位置情報や AR を使って拡張現実の中に作り上げたことがポケモン GO の強さの秘密であり、他の IP で同じことをやってもここまでのヒットには繋がらなかったと言えます。本書ではさらに、携帯ゲーム機版のポケモンでも「思い出のポケモンは『公園で交換したポケモン』であり、『校庭で手に入れたポケモン』だった。人の記憶は、画面の中にだけあるのではない」と指摘しています。私はゲーム機版のポケモンをプレイしたことがないのでその視点がありませんでしたが、であればなおのことスマホの位置情報ゲームと相性が良かった、ということが言えるでしょう。

まあ、サブタイトルに「本当の進化はこれから始まる」とつけられたタイミングでようやく基本的な DAU(デイリーアクティブユーザー)施策が初めて導入されたり、まさに現在行われている東北復興イベントで超レアポケモンのラプラスがフィーバー状態で、これまでに苦労してゲットしたユーザーのモチベーションを殺ぐ結果を招いていたり、正直言って運営面は素人なんじゃないかと感じてしまう場面も少なくありません。が、言い換えればこれまでは運営の拙さが問題にならないほどのブームを起こせていたということであり、そのためのインフラ増強などに運営側の工数が割かれていた結果だということでもあります。

本書は Google の一部門に過ぎなかった Niantic(ポケモン GO の開発・運営元)がいかにしてポケモン GO を生み出し、世の中に大きな影響を与えたかという話にとどまらず、スマホアプリとしては他のゲーム等とは異なる特異な普及・使用・収益状況にあること、ドラマやアニメの聖地巡礼ブームとも絡めた「コンテンツ・ツーリズム」の話、さらにはこれから立ち上がってくる AR/VR との関係性、と多岐にわたる分析がなされています。ゲームライターではなく「電気かデータが流れるもの全般」を取材対象とする西田氏ならではの観点で、単なるポケモン GO の現状解説ではなく 2016 年時点での技術トレンドや社会動向を押さえるという点でも一読の価値があると言って良いでしょう。

個人的に興味深かったのはコンテンツ・ツーリズムの話。近年のアニメでは舞台となった土地の聖地化の成功例・失敗例には枚挙に暇がありません。その本質を突いているのが、まつもとあつし氏によるこのインタビュー記事ではないかと思います。

ASCII.jp:ガルパン杉山P「アニメにはまちおこしの力なんてない」 (1/6)|まつもとあつしの「メディア維新を行く」

コンテンツ自体の面白さと「聖地」になる地方の魅力、それに地元の人々の理解が全て揃わないと成功例とはなりにくく、再現性を求めることが難しいのが実際ではないでしょうか。ポケモン GO における初の公式コンテンツ・ツーリズムである東北イベントは先述のとおり必ずしもポジティブな要素ばかりではないのも事実ですが、少なくとも東北に人を呼び込むことには成功しているようです。また、今回のイベントとは直接関係ありませんが、震災で失われた東北のランドマークを「記憶のポケストップ」として拡張現実空間上に再現されていて、私も先日の東北聖地巡礼のついでにそのいくつかを実際に目にしました。本書を読む前に、たまたま別のコンテンツ・ツーリズムに乗っかった際に遭遇したというのも何かの縁でしょうが、震災から復興するにあたり「以前とは別の風景」が作られていく一方で、失われたものを追体験できる、というのは貴重であり、同時にとても重い体験でした。これは何もポケモン GO に限らず、他のアプリやソリューションにも今後波及していく可能性があり、そういう意味では「実質的にポケモン GO が世の中に与えた影響のひとつ」となることでしょう。

ポケモン GO 自体、現時点で実装されているコンテンツはゲームボーイ版の初代ポケモンの内容に過ぎず、これから新ポケモンや新機能の追加、あるいは運営の改善などを経てまだまだ進化する余地を残していると言えます。しかし、それよりも重要なことは、ポケモン GO が一般的なスマホゲームのヒット作とは(量的にも質的にも)異なる形で浸透し、一気にキャズムを超えたことで、今までは一般化してこなかった技術やその使われ方が世の中に定着する可能性を示したということだと思います。「ポケモン GO で交通事故」みたいなネガティブな事件も含めて(それはスマホ自体の使い方の問題であって「どのアプリだったか」は本質ではないと思うけど)、数年後に振り返ったときに「ポケモン GO がひとつの転換点だった」と言われるようになっているのではないでしょうか。
ある技術や概念が世の中に浸透していく瞬間に立ち会えるというのは稀有な経験です。私もここまで規模は大きくなくてもいいから、そういうことを起こせる当事者の一人になれるよう頑張らなくては、という思いを強くしました。

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2016/10/18 (Tue.)

はじめての社内起業 「考え方・動き方・通し方」実践ノウハウ

先日読んだ『ソニー復興の劇薬 SAP プロジェクトの苦闘』からの流れで...というわけでもないのですが、新規事業立ち上げ系のビジネス書を一冊読んでみました。リクルートで情報サイト「All About」等の新規事業立ち上げを多数手がけた石川明氏の著書です。

石川 明 / はじめての社内起業 「考え方・動き方・通し方」実践ノウハウ

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ここ数年、日本でもハードウェア・スタートアップなどのベンチャー企業が注目を集めています。クラウドファンディングにより以前よりも資金調達と露出の場を兼ねられるようになったことが大きな要因だと思いますが、その場を提供しているのがサイバーエージェントや Yahoo!、DMM といった影響力のあるネット企業であることも無視できません。
しかし一方で、国内の経済状況が以前よりも好転したためか、ベンチャーの起業と同じかそれ以上に、企業内での新規事業検討が行われているのも事実だと思います。ソニーの SAP なんかはその代表的な例だと言えるでしょう(SAP はソニーグループ内の R&D や製造の協力が得やすかったり、新規事業起案者向けのトレーニングを行うなどのバックアップを組織として行っているのが、他社の状況とは大きく違うとは思いますが...)。この本は、そんな「企業内で新規事業の立ち上げを任された担当者」向けの一冊だと思います。

この書籍に書かれているのは、大きく分けて以下の要素です。

  • 新規事業の担当者になったときのものの考え方
  • 新しく踏み出す事業領域の選び方
  • その領域での差異化の考え方
  • 事業プランや事業計画書の作り方
  • 社内での事業計画の通し方
新規事業の担当者に抜擢されてから実際に事業計画の承認を得るまでのプロセスに関してやるべきことを丁寧に解説してくれています。
ベンチャーであれば「これを実現したい」という明確な目的があって起業することがほとんどだと思いますが(その後の経営状況や環境の変化によってピボットする例も多いにせよ)、企業内での新規事業立ち上げはいち社員が「新規事業を立ち上げろ。目標は●年に○円の売上/利益を達成すること」という数値目標だけを与えられて途方に暮れる、ということも珍しくありません。そのため、上記の内容だけでも大いにその指針になるとは思いますが、この本のいいところは具体的な手法よりもそういう「新規事業担当者が持つべきマインド」を教えてくれるところ。いかにして状況をポジティブに捉えるか、経営者や上司・同僚、ときには社内で壁となる相手を味方につけるか、の考え方について、自身の経験や実例をふまえて教えてくれるところにあると思います。漠然とした目標や社内の高い壁に心が折れそうになったり、ともすると事業計画を通すことそのものが目的化してその後の成功のための道筋をつけられなかったりしがちな新規事業立ち上げを「これなら俺にも何とかやれそうかな」と勇気づけてくれる内容になっています。

全くの新規事業立ち上げでなくとも、新商品の企画も既存商品の正統後継でもない限り、どこかしら新しい提案や挑戦の要素が含まれているはずです。そういう企画は程度の差こそあれ、どこかで必ず商品化の壁に突き当たるもの。そういうことに関しても、この本に書かれている「考え方・動き方・通し方」を実践することで実現に近づくことができるのではないでしょうか。
いち社会人として常に傍らに置いておき、定期的に読み返すことで前向きに挑戦する姿勢を保ち続けたい。そう思わせてくれる一冊です。

投稿者 B : 23:59 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2016/08/31 (Wed.)

オールドレンズ・ライフ Vol.6

澤村 徹 / オールドレンズ・ライフ Vol.6

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今年もこの季節がやってきました。澤村徹さんのムック『オールドレンズ・ライフ』の第 6 弾。こんなマニアックなムック本を年に一冊ペースで出し続けられるのにはただただ敬意を表します。

さすがにデジタル一眼市場も成熟の域に入り、これからオールドレンズ沼に足を踏み入れようという人はもうそれほど多くないはず。だから(一応今回もマウントアダプタの基礎知識コーナーはあるものの)初心者向け記事はそこそこに、どちらかというと中級者以上がより深みにはまるため(ぉ)のコンテンツが主軸になってきた印象を受けます。毎年新製品が出続ける現行レンズと違って、オールドレンズは急激に増えるということがないので、ともするとネタが枯渇して同じことを繰り返し言い続けるだけになりがち。ですが、本書はそういうワンパターンに陥らず、多種多様なオールドレンズの中から自分好みの一本に巡り合うための特集を中心に据えています。

第一特集は「マイ・ベスト・オールドレンズ」。著名なカメラマンや業界関係者(ユリシーズの魚住氏が登場されていたのには驚いた)がお気に入りの一本を紹介してくれています。ありがちなレンズメーカー別やマウント別といった選び方ではなく、描写の好みから選ぶための特集というのは今までありそうでなかったもの。とても興味深い内容になっています。
第二特集は「フィルムメーカー製レンズの彩り」。オールドレンズというとライカやツァイス、アンジェニューは定番中の定番。オールド ZUIKO や Takumar といったレンズ、あるいはロシアレンズあたりまではよく語られますが、フィルムメーカー製レンズというのは今まであまり語られることがありませんでした。が、近年では富士フイルムの現行 X マウントレンズが高く評価されていたり、フィルムメーカー製レンズも馬鹿にできません。フィルムで出したい表現から逆算して作られたレンズは、各メーカーの「フィルムの色」がデジタルのボディで使っても見えてくるもの。この特集では富士フイルムに加えて AGFA、Kodak、ILFORD のレンズが紹介されていますが、私も富士フイルムのオールドレンズは一度試してみたいなあ。

第三特集は「ゼロからはじめるレンズ構成概論」。ある程度カメラの知識がある人でも、レンズ構成の細かい部分までは理解できていないことが少なくありません。かくいう私も「ガウスタイプ」「レトロフォーカス」あるいは「プラナー構成」など代表的なものなら知っていますが、体系的に理解できているとは言いがたい。この特集は、オールドレンズでよく出てくるレンズ構成について、その成り立ちから特性まで網羅的にまとめられていて、とても勉強になります。現代のレンズは群も枚数も多くなりすぎて構成図を見ただけでは性格が分かりづらいことが多いですが、基礎知識を持っているだけでも多少は類推が効くというもの。

そして第四特集は「これが噂のボケモンスター」。ちょっと時流に乗ればいいってもんじゃないでしょというサブタイトルですが(笑)、いわゆる「スムーズなボケ」とは対照的にクセのあるボケ方をするレンズの特集です。バブルボケ、リングボケ、ぐるぐるボケといった通常ならば「汚い」と言われがちなボケも、使いようによっては幻想的な写真に演出するための武器になります。こういうのを好み始めるのは、日本酒で言えば純米酒や吟醸酒に飽きて癖の強い二級酒に手を出す呑兵衛の心境と似ていると思いますが(ぉ)究極の嗜好品としてのオールドレンズの楽しみ方なら、それもありかと。

近年ではオールドレンズだけでなく現行マウント向けの MF レンズがリリースされるなど、この世界もかなり成熟してきました。デジタルカメラ自体の販売はもう頭打ちになり、新製品は全体的に値上がり傾向だったりもして先行きに不安感はありますが、少なくともオールドレンズは逃げない(笑。長く楽しめる趣味として、今後も携わっていきたいと思います。

投稿者 B : 22:36 | Book | Camera Mook | コメント (0) | トラックバック

2016/08/24 (Wed.)

ソニー復興の劇薬 SAP プロジェクトの苦闘

西田 宗千佳 / ソニー復興の劇薬 SAP プロジェクトの苦闘

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西田宗千佳氏の新著を電子版にて読了。一週間くらいかけるつもりで読み始めたら乗ってしまって、二時間ほどで一気に読み切ってしまいました。

「wena wrist」や「HUIS REMOTE CONTROLLER」といった新分野の商品やサービスを手がけるソニーの新規事業創出プログラム「SAP(Seed Acceleration Program)」の内側をまとめたルポルタージュです。タイトルにこそ刺激的な言葉が並んでいますが、実際の関係者への取材をもとに、西田氏自身が電機業界やハードウェア・スタートアップへの取材等を通じて得た知見を交えて、客観的にまとめた内容になっています。

「SAP」はソニー自身が大規模なリストラを敢行している段階で開始されたプログラムだけに社内外からの批判もあったようですし、「大企業がクラウドファンディングを利用するなんてただの宣伝行為だ」「SAP で生み出されている新規事業はいずれも小粒でお遊びの域を出ていない」といった言説も目にします。実際、同社の既存のエレクトロニクス事業は今後の成長が見込めるか高い利益が確保できる分野だけになってしまった印象で、IT/AV 機器の付加価値の多くをスマートフォンが吸収してしまった現在、「次のメシのタネ」を見つけるのに各社苦労しているのは事実。なので小粒でもいいから試行錯誤して、何が伸びてくるか見極めたい...というのも SAP の本音としてはあるのでしょう。
しかし、個人的には SAP の本質は次世代の事業を牽引できる人材の育成と、企業体質のゆるやかな変革にこそあると考えています。マーケティングや商品企画の仕事をしていると、「自分は新しい商品のアイデアを持っている。これは絶対売れる」と自称する人と出会うことが少なくないですが、そのほとんどが「単に自分が欲しい」の域を出ておらず、どんな人が買うのか、顧客層の規模はどれくらいあるのか、ちゃんと量産できるのか、販路や売場そしてユーザーサポートはどうするのか...ということに考えが至っていないものです。実際、世の中のハードウェアスタートアップの失敗は、大半がアイデアと原理設計・試作以降の部分に手が回っていないことが原因と言って良い。ものづくりというのは、本当はものを作ること自体よりも、それをちゃんと事業にできるだけの資金を調達して、必要な数を作って世に出すことのほうが大変なものです。

そういう意味で SAP は「ものをちゃんと作る」ための仕組みはソニーという大企業のプラットフォームを利用しながら(つまり、一般的なハードウェア・スタートアップでよくある失敗は避けられる可能性が高い)、小規模でもちゃんと事業を立ち上げて回せるだけの人材を発掘・育成するための仕組みと言って良いでしょう。人員や組織の役割を縦横に細分化した大企業では、現業は効率的に運営できても、こういう混沌とした時期に新しい事業を立ち上げる小規模なチームを組織することは難しい。一人あるいは少人数で全体を見通して事業を組み立てる経験を積むことで、たとえ今の新規事業は小粒でも、彼らが次、あるいはその次に立ち上げる事業は大きな花を咲かせるかもしれない。そういうことだと思います。ひとりの外野としては、そういうスタートアップ事業に大規模な R&D の成果を惜しみなく投入できる体制は羨ましすぎますが...。

でも、というのはあくまで SAP の目的と理念の話。現時点で世に出ているプロジェクトの中では、ちょっと面白いと思えても自分でベットしたくなるものはまだ出てきていないんですよね。
ただソニーの現業に関しても、金融とエンタメ以外はもうすっかりカメラとオーディオの会社になっちゃって、イノベーションよりは事業維持にベクトルが向いている印象。しかもどんどん高級路線に行っていて、俺の買うものがほとんどなくなってきたなあと感じてもいます。SAP から、「俺らをワクワクさせてくれるソニー」のタネがもう一度生まれてきてくれることを願ってやみません。

投稿者 B : 23:24 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2016/08/17 (Wed.)

CGWORLD 2016 年 9 月号

シン・ゴジラ』を観た興奮が冷めやらず、この本を買ってきてしまいました。

CGWORLD 2016 年 9 月号 vol.217

CGWORLD

CGWORLD なんて超久しぶりに読みました。かなり専門性が高い雑誌なので、門外漢が普段から読むようなものじゃないんですが、こういう技術面が気になる作品を観たときに特集が掲載されているとつい手を出してしまいます。
表紙からして全力でフィーチャーしていますが、冒頭から 26 ページにわたる大特集が組まれていました。

例によって未見の人はこのままブラウザそっ閉じ推奨します。





CGWORLD

ゴジラの造形は、いきなり 3DCG でモデリングしたわけではなく、まずは立体模型を作った上でそれを 3D スキャンしたデータからモデルを起こしてそれを動かしているとのこと。劇中のゴジラはカメラワークの速さもあってディテールをもっと見たい感覚があったので、ここで模型の写真がじっくり見られるのは嬉しい。こうして見ると、ゴジラの進化過程がよく解り、とても興味深いです。

CGWORLD

東京駅周辺の映像は実写に CG を合成しているのかと思ったら、実写の撮影に制限があるエリアなので全部 CG で作ったとか(!)。雑誌の属性的に特撮関連の内容がほとんどなく、CG にまつわる工程を中心に開設されていることを差し引いても、この作品は大部分が CG によって成り立っているんですね。それをあえて特撮っぽい見せ方で表現している、というのが逆説的で面白い。

CGWORLD

モニターグラフィックス好きとしては、こういうちょっとした素材まで掘り下げてあるのが嬉しい。

CG 関連の詳細だけでなく、(CG 部分中心ではあるものの)製作工程全体が解説されており、非常に興味深い特集でした。まずは全体のボリューム感やテンポを掴むためにラジオドラマを録り、それをもとに脚本を見直した上で全編のプリヴィズ(ビデオコンテ)を作成した上で本撮に挑むという、大変手の込んだ工程となっています。まあ上流に手間をかけた方が下流での手戻りが少なくクオリティも高まるというのはどんな仕事にも通じることではありますが。
このあたりの話は東洋経済オンラインにも一部掲載されているので、まずはこれを一読すると良いかも。

「シン・ゴジラ」が人々を惹きつける真の理由 | 東洋経済オンライン

劇場での展開は、来週後半からまさかの IMAX 上映が復活するらしいので、私も時間を見つけてもう一度観に行きたくなってきています(笑。

CGWORLD 2016 年 9 月号 vol.217

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2016/06/18 (Sat.)

キヤノン EF&EF-S マウントレンズ 完全レビューブック

フォトヨドバシのレンズレビューが本(別名:ヨドバシ版悪魔全書)になったよ!ということで、思わず買ってしまいました。

キヤノン EF&EF-S マウントレンズ 完全レビューブック

キヤノン EF&EF-S マウントレンズ 完全レビューブック

今までも我々の物欲を幾度となく刺激してきたフォトヨドバシ。レンズを購入検討する際には必ず参考にするサイトの一つであり、むしろこのレビューがきっかけで買ってしまったレンズも何本かあります(笑。メーカー公式作例のように「わざわざそこに行く労力をかけないと撮れない写真」ではなく、基本的には日常生活の延長線上で撮れるスナップが中心という点でユーザーの実使用感に近く、そういう意味でもとても参考になります。まあ現像で追い込んでるんだろうなと感じる部分もあるし、そもそも自分との撮影センスの決定的な差は感じますけどね!(泣
今でこそ、大手カメラ店が自社サイトにカメラやレンズの実写レビューを掲載する手法は一般的になりましたが、フォトヨドバシは掲載される写真の良さと文章のエモーショナル度で群を抜いていると思います。

これまで掲載されてきた膨大な作例の中には、「これはモニタじゃなくてプリントで見たい」と思うほどクオリティが高いものも数多くありましたが、まさかこれを本当に本にしてしまうとは。

キヤノン EF&EF-S マウントレンズ 完全レビューブック

しかし、これまでの膨大なレビューの数々を全て掲載できるわけでもなく。総ページ数 272 という分厚いムックながら、ほとんどのレンズについては写真・テキストともに抜粋版での掲載となっています。その結果、レンズの紹介ムックとしてはごく一般的な構成になってしまっているのはやや残念なところ。それでも一部のレンズに関しては数ページを費やして大判の作例が掲載されており、そうそうこうやって写真をじっくり眺めたかったんだよ、という欲求に応えてくれます。

キヤノン EF&EF-S マウントレンズ 完全レビューブック

ムックのタイトルからしてキヤノン製の EF/EF-S レンズしか掲載されていないのかと思ったら、EF/EF-S マウントに対応したツァイス、シグマ、タムロンなどの他社レンズまで網羅されている充実度。同スペックのレンズの中でどれが自分の好みに合っているかを見比べられるのはいいですね。チャートを撮ったり逆光性能をテストしたりしているわけではないのであくまで感覚として好みに近いものを、という感じですが、ヨドバシの担当者が「このレンズにはこういう被写体がいいと思うよ」というのを選んで載せているわけで、スペックで比べるよりも購入後の満足度は高そう。

キヤノン EF&EF-S マウントレンズ 完全レビューブック

このムックの内容自体は普段からフォトヨドバシを見ている人にとってはあまり新しいネタはありませんが、各章の間に挟まれているコラムは今回のための書き下ろし(たぶん)。フォトヨドバシの編集部メンバーがどのようにあのサイトを作っているかの断片が読み取れて、本編以上に興味深い(笑。

個人的には英語版サイトの翻訳担当者さんのコラムが面白かった。日本語版ではオーディオの評論にも似た抽象的な表現が多用されますが、英語版では海外のレビューサイトのようにストレートな言葉に変換されているようです。確かに、海外サイトに掲載されている「○○はこれまでで最もシャープなレンズのひとつ」みたいな表現って、国内のレビューサイトではまず見ないですからね。言われてみれば、海外では(まあ日本でも一部雑誌はそうだけど)とにかくチャートやベンチマークを使って解像度とシャープネス一辺倒なのに対して、日本は案外そうでもない、という違いはあるように思います。アマチュアの機材選びなんて結局は趣味なんだから、自分が使っていて気持ちいいと思えるものを選んだらええねん。

ちなみに今ならこのムック、EOS ユーザーだけでなく MC-11 持ちの α ユーザーにとっても、深遠な沼の入口となってくれるのではないでしょうか(笑

私もまだざっとしか読めていないので、この週末で読み込んでみたいと思います。きっと機材買ったり写真撮ったりしたくなるんだろうなあ。

キヤノン EF&EF-S マウントレンズ 完全レビューブック

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投稿者 B : 14:09 | Book | Camera Mook | コメント (0) | トラックバック

2016/04/03 (Sun.)

機動戦士ガンダム UC (11) 不死鳥狩り

本日からテレビアニメ版に再編集された『機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096』の放送が始まっていますが、これに合わせるかのように小説の第 11 巻が発売されていたので、読んでみました。

福井 晴敏 / 機動戦士ガンダム UC (11) 不死鳥狩り

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まさかこの期に及んで小説の続きが発売されるとは思っていませんでしたよ(;´Д`)ヾ。

しかし本作は書き下ろしではなく、四年前に発売された PS3 ゲーム、それと昨年発売された設定資料集、それぞれに付録として収録されていた作品を単行本としてまとめたものでした。でもどちらも相当のマニアでなければ手を出さないものだと思うので、コンプしていなくてもこうして手にできるのはありがたい。

収録されているのは、フル・フロンタル搭乗機の原型となる「シナンジュ・スタイン」強奪事件を描いた『戦後の戦争』と、サブタイトルにもなっているユニコーンガンダム 3 号機「フェネクス」にまつわるエピソード『不死鳥狩り』。『戦後の戦争』については以前書いているので省きますが、『不死鳥狩り』のほうはこれまでガンダムフロント東京関連のコンテンツとプラモでのみ展開されていたオリジナル MS が公式設定化された形と言えます。

GFT の「DOME-G」で上映されている、バンシィとフェネクスによる模擬戦の後の物語。あの後行方不明になったフェネクスを追う連邦軍の一部隊のお話です。フェネクスはどこへ消えたのか?そしてフェネクスを追う連邦軍のヨナ・バシュタ中尉とフェネクスの因縁とは...というストーリーですが、途中から全く予想もしていなかった方向にストーリーが進んでいって、かなり度肝を抜かれました。まあそのストーリーが進んでいく方向というのが、いきなり表紙を開いた後の口絵でモロにネタバレしてしまっている書籍の作りはさすがにどうかと思いますが(´д`)。
でも、戦闘シーンの描写は相変わらずの福井節で、一気に読まされてしまいました。基本的に小説版と OVA 版はパラレルワールド的な位置づけになっていますが、この小説がその小説と OVA の差違を埋める役割を担っている、と言えるでしょう。GFT の映像を観てから読むと映像を脳内補完しやすいのでオススメです。

テレビアニメのほうはまだ始まったばかりですが、どういった形で進んでいくんでしょうね。OVA 版のディテール違い程度になるのか、さらに新たなパラレルワールドが用意されているのか。これから半年ほどの放送だと思いますが、毎週楽しみにしています。

MG 1/100 RX-0 ユニコーンガンダム 3 号機 フェネクス

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投稿者 B : 23:11 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2016/02/04 (Thu.)

ランチェスター戦略「小さな No.1」企業

先日転職もしたことだし、ちょっとマーケティングの原点に帰ってみようと思って、久しぶりにランチェスター関連の本を読みました。

福永 雅文 / 45 社の成功事例をリアルに分析! ランチェスター戦略「小さな No.1」企業

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私が以前、繰り返し読んでいた『ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』『ランチェスター戦略「一点突破」の法則』の著者である福永雅文氏による、同著の続編的な位置づけの著書です。

私がマーケティングを考える上で最優先の根拠としているのは、ランチェスター戦略とそれに基づいた差異化。とても汎用性の高い考え方であり、あらゆる分野に応用できるマーケティングの基礎だと思っています。どんな市場であれ、ひとつの勝者以外は全員が敗者であり、勝者には強者の、敗者には弱者の戦略が当てはまる。基本的に強者の戦い方はミート戦略(他社に対して同質な商品を出す)によるライバルの陳腐化であり、弱者の戦い方は市場のセグメント化と差異化に尽きる。それが解っていてもそう簡単に勝てないのがビジネスの難しいところですが、解っているのと解っていないのとでは戦略の組み方が天と地ほども違うわけです。
私の今までの経験上(他社事例の分析も含め)、ある市場では弱者あるいは新参者であるにも関わらず、過去に強者だった経験や別のセグメントで強者であるが故に弱い分野でも強者の戦略を採りたがり、失敗する例には枚挙に暇がありません。業界 2 位なのに 1 位と同じようなことをやっている万年 2 番手企業というのは、誰でも一社や二社は思い浮かぶものです。また、「ターゲットを絞る」とか「ニッチ市場を狙う」という単語に拒絶反応を示す人も少なくなく、万人受け施策を採らされた結果やっぱり失敗した...というのもよくある話。正直、自分で思い出しただけでも臍を噛む思いをした経験も一度や二度ではありません。それくらい、自社の強みを把握し、狙うべき市場を限定して、そこで確実に勝ちに行くための戦略こそが、マーケティングの根幹と言えます。

そう思っているので、自分の部署に若手が入ってきたときには、必ずと言っていいほど福永氏のランチェスター戦略の著書をはじめとするマーケティングの基礎の書籍をいくつか渡してまずは勉強してみてよ、ということを長年続けてきました。が、何人もの後輩に貸すうちに手元に返ってこなくなってしまったので、続編と言えるこの著書を買ってみたというわけです。

この本はそんなマーケティングの基礎であるランチェスター戦略に関して、中小企業の事例ばかりを 45 も集めた事例集です。ランチェスター戦略そのものに関する説明も後半に書かれていますが、入門者がまず最初に読むべきは同氏の『「弱者逆転」の法則』のほう。本書はその内容を理解した上で近年の事例に関して知識のアップデートを行うための本と言って良いでしょう。

紹介されている事例は配達酒販のカクヤス、町田・でんかのヤマグチ、ヘルスメーターのタニタ、H.I.S. に買収されて復活した長崎ハウステンボス、といった時折マスメディアでも紹介されるほど有名な事例から、今回初めて名前を聞いたような企業までさまざま。共通しているのはいずれも中小企業であり、厳しい環境においても差異化と一点集中を軸とした営業戦略で生き残ってきた、という点。ポイントは「勝ち残ってきた」ではなく「生き残ってきた」というあたりで、いたずらに規模の大を追うのではなく、限定された市場でも確実に自分たちが生き残り、顧客と良好な関係を築いている企業ばかりだという点でしょう。特に経済全体の成長が止まろうとしている現代では、どうやって生き残っていくか、こそが企業にとっての懸案と言えます。

ビジネス書としては一般的なボリュームの中で 45 もの事例を紹介しているだけあって、一つ一つの事例はせいぜい 4~6 ページ。もともと雑誌連載だったものを書籍化したものなので、成功のストーリーが完結にまとめてあるだけで、それほど分析が深いとは言えません。それぞれの企業が一発で鉱脈を掘り当てたわけはないし、成功に至るまでには数々の失敗や試行錯誤があっただろうから、むしろそのプロセスこそ知りたかった。まあ、有名な成功例のいくつかは他により詳細な文献があるでしょうし、この本をきっかけにして、自社に近い事例に出会い、自分なりに深掘りするのが正しい学び方なんでしょうが。
でもやはりこれだけ中小企業の事例を見てくると、差異化と一点集中は弱者戦略の基礎としては当然重要だけど、規模が小さければ小さいほど「大手には(投資効率の面で)やれないことを差異化ポイントにする」ことと「自分たちで売り切る営業力」こそが重要なんだなあ、というのが見えてきます。これは、以前の立場で弱者戦略を考えていたときにはあまり重視していなかった部分で、そこに気づけただけでもこれを読んだ意味はあったなあ。

やりたいこととやれることの間にギャップがあるのが現実のビジネスではありますが、自社の得意分野が活きる市場と差異化、それに徹底的に集中することを、今一度じっくり考えたいと思います。

投稿者 B : 23:59 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2016/01/31 (Sun.)

孤獨的美食家

ある方より海外土産としていただきました。

久住 昌之、谷口 治郎 / 孤獨的美食家

孤獨的美食家

漫画『孤独のグルメ』の中国版です。『孤独のグルメ』は世界的にも地味な人気を誇っていて、かなり多くの国で現地語版に翻訳されて発売されていると聞いたことがありますが、まさかその実物を目にする機会があろうとは。
中国語でのタイトルは『孤獨的美食家』。何かのインタビューで、久住先生自身は「ゴローは別に美食家なわけじゃないから、このタイトルはちょっとニュアンスが違う」ということを仰っていましたが、直訳するとまあこうなりますね。

装丁は表紙からして国内版をかなり忠実に再現しています。

が、

孤獨的美食家

なんと中国版の表紙は題字とゴローちゃんのみ光沢コーティング仕様!(笑
これ、オリジナルより明らかにコストかかってます。

孤獨的美食家

帯にはなかなか壮大な謳い文句が。私は中国語は読めませんが漢字だけでだいたいわかります。
とりあえずゴローちゃんの「薄薄ーい本」ということはわかりました(違

さて、原語版は私自身熟読したと言って良いこの漫画。ゴローちゃんの「名台詞」が中国語だとどんな感じ(漢字、でもある)になるのか、見てみましょう。

孤獨的美食家

不要著急、只是肚子餓了而已。(焦るんじゃない、俺は腹が減っているだけなんだ)

おお、やっぱり漢字だけでだいたい想像できる。オリジナルの台詞を知っているからというのもあるけど。
それにしても「腹が減っている」を「肚子餓了」と書くと、もうなんか餓死しそうな勢いになってきます(笑

孤獨的美食家

外帯!原来還可以這様。(持ち帰り!そういうのもあるのか)

「持ち帰り」って「外帯」って書くのか。日本語だと着物の帯っぽい雰囲気になるけど、確かに「外に帯びる(=持って行く)」だもんなあ。勉強になります。

孤獨的美食家

最後那両盤...是致命一撃啊。(ラストの 2 枚...あれが効いたな)

「致命一撃」www
カッコつけてタバコ吸ってる場合じゃなくなってきました(笑

孤獨的美食家

哇鳴、我好像人類火力発電廠!(うおォン、俺はまるで人間火力発電所だ)

これは完全にそのまんま(笑)。ゴローの比喩表現は言語の壁を越えるのか...!

このコマではむしろ注目すべきは「嚼嚼」「呑・咬」「呑・咬」じゃないでしょうか。原語だと「もぐもぐ」「はふ・はふ」「むしゃ・むしゃ」となっているのが動詞に置き換えられています。中国語は日本語に比べて擬音語や擬態語が少ない(というか日本語がやたら多い)と言われますが、体系が違う言語に翻訳するとこうなるという例なんでしょうね。勉強になるなあ。

孤獨的美食家

這種刻意的哈蜜瓜香料味!(このワザとらしいメロン味!)

日本語だと「ワザとらしいメロン味」とちょっと婉曲に表現しているのが、「蜜瓜香料味(メロンの香料の味)」と言われてしまうとミもフタもない印象になります(笑

孤獨的美食家

進食時的気分 應該是種 不被任何人打擾、自由的...該怎麼説、要有被救贖的 感覚才行。単獨的、安静的、豊饒的...(モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ。独り静かで豊かで...)

来ましたよ、こどグル随一の名言。「単獨的、安静的、豊饒的」...やはり日本語よりもスケールが大きい感。国土の広い大陸のなせる業でしょうか、このゴローちゃんの顔が孟子か老子のように見えてきました(笑。

他にも、大阪の屋台の客が全員関西弁じゃなくて中国語でしゃべっていたり(この方言のニュアンスを中国語でどう表現しているのかはさすがに理解できなかった)、「俺は駅弁を食べ始めるのはせめて新横浜を過ぎてからだな」という台詞が中国語で表現されているのが妙にシュールだったり、これは日本語版に勝るとも劣らない独特の空気感。日本語版を読んであっても、いろいろと新たな発見があります。

そのうちドラマの聖地巡礼で台湾にも行こうと考えていますが、これで予習していけば完璧だね!(違

投稿者 B : 22:56 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2016/01/25 (Mon.)

物欲なき世界

タイトルに惹かれて読んでみました。

菅付 雅信 / 物欲なき世界

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「モノが売れない時代」と言われて久しい現代。私がいる業界も例外ではなく、先細りの業界、と言われています。まあ世界はともかくとして、日本の内需向け産業全体に言えることだと思いますが、私なりにも原因はいくつか思い当たっていて、

  • 少子高齢化に伴い、消費欲の強い若者の購買力が落ちてきた
  • スマートフォンの普及で様々なものの価値がスマホに集約され、スマホと機能が重複する機器が売れなくなった
  • 適法/違法を問わず無料で消費できるコンテンツが増えた結果、コンテンツにお金を払う動機が薄れた
  • コンテンツの電子流通が普及したことを発端に、「所有しない」価値観が徐々に一般化してきた
  • 手軽で無料/安価な娯楽が増えた結果、旅行などの「金のかかる娯楽」への需要が減った
  • 日本人の価値観が多様化し、娯楽が多様化した結果、大ヒットが生まれにくくなった=あらゆるジャンルでフォロワー層が薄くなった
  • 娯楽が多様化し、時間消費が細分化した結果、好きなモノ・コトに対するこだわりが薄れた
  • 現代の若者は物心ついたときから物質的・情報的に過多な環境にあり、欲求のもとになる枯渇感がない
  • 「実質ゼロ円」「EDLP」などの販売手法が当たり前になった結果、モノの価値が認められにくくなった
といった要素の複合要因なんだろうなあと。もちろんこれ以外にもいろいろあるとは思いますが。 ただ、これらは私の感覚や仮説に過ぎず、誰かが社会構造の変化とそれに基づいた消費構造の変化についてまとめてくれないかなあ、と常々思っていたので、これは読まざるを得ないと思ったわけです。

読んでみた結果...お、おう。言わんとしていることは分からないでもないけど、結論は「反資本主義」。資本主義のど真ん中に生きている我々からすれば、だからどうしろと、という話に感じました。地球の大きさが有限である以上永遠の成長なんてないし、いつかどこかで規模の経済からは脱却しなくてはならないけど、特に成長もなく再生産を繰り返すだけの活動に経済は耐えられるのだろうかと。まあこれ自身が資本主義の重力に魂を引かれた奴の発想なのかもしれませんが...。
「モノからコトへ」とか「商品ではなくライフスタイルを売る時代」なんてのは業界によっては十年以上前から言われ続けていることだし、拝金主義・物欲主義から脱却して、自然回帰的なゆったりとした暮らしをすべき、みたいな話もいつの時代にもある(批判的な言い方をすれば)ファッションみたいなもの。もっと、世界的な産業構造の変化が最終的な消費行動にどう変化をもたらしているのかを語らないと、単なる事例紹介で終わってしまうと思います。

個別の事例の中にはいろいろと示唆に富んだものもありましたが、全体としてはちょっと求めていたものとは違ったかな。個人的には、本書の中で紹介されていたアスキー総研・遠藤諭氏の指摘が興味深かったです。要約すると、かつての我々世代の物欲というのは、所有すること自体が自己表現の一部だったし、情報源も限定されていたから自分自身が所有していることが重要だった。が、インターネットやソーシャルメディアを通じてコミュニケーションすることが一般的になると、情報源も多様化して自分自身の価値が相対的に低下するから、所有して見せびらかすことで自己顕示欲を満たせなくなってくる。そうすると所有することに価値がなくなる、というもの。そういう点では明らかに旧世代に入る私には理解しにくい話ですが(笑)、ロジックとしては分からなくもない。まあ、それを知りたければ本書よりも遠藤諭氏の著書を読むべきだったのか(ぉ。
私は「究極のエンタテインメントはプレミアムコンテンツでもアミューズメントパークでもなく、個人同士のコミュニケーションだ」というのが持論ですが、そういう意味で考えると、あらゆるモノもコンテンツも体験も、「コミュニケーションを通じて消費するためのネタ」に過ぎないのかもしれません。物欲なき世界、というのはある種、コミュニケーションそのものがエンタテインメント化した、成熟した世の中の姿なのかも。

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2016/01/09 (Sat.)

すごい家電 いちばん身近な最先端技術

西田 宗千佳 / すごい家電 いちばん身近な最先端技術

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暮れに発売されていた西田宗千佳氏の新著を、年末年始のお休みを使って読破しました。

ビジネス書や新書が多い氏の著作としては珍しい、講談社ブルーバックスからの発売。というわけで、読者もビジネスマンや IT/家電業界関係者よりはむしろ高校生くらいを想定し、かなり読みやすい文体と噛み砕かれた表現で書かれています。
タイトルの通り家電について書かれていますが、スマホや PC といった IT カテゴリではなく、純然たる家電がメイン。テレビやレコーダのような「黒物家電」も控えめで、ほとんどがいわゆる「白物」、つまり洗濯機や冷蔵庫などの生活家電のお話。

あらゆる分野の家電に関して、そのルーツから歴史、そして最新の製品に採用されている技術までを解説しており、これさえ読めば白物家電の基本的な部分は理解できてしまいます。もっと技術トレンド寄りなのかと思ったら、かなり基本的な部分から解説されており、業界関係者でなくとも理解しやすくためになる内容。

本書はパナソニックの全面協力を得て執筆されているため、競合他社が引っ張っているトレンドに関しては弱い部分もありますが、その分パナソニックの開発陣への綿密な取材に基づいて書かれており、表面的な解説にとどまらない深みがあるのもポイントです。昨年末の小寺西田メルマガの忘年会でご本人にお会いした際にご本人からこの本の執筆にまつわるお話をいろいろ伺ったのですが、たとえばトイレ(便器)の開発には排水効率を検証するために「疑似便」を使っており、(汚い話ですみませんが)さまざまな状態を再現した疑似便の開発にも、それぞれのメーカーごとのノウハウが蓄積されている...というような話を伺いました。飲み食いしながらそんな話をするのもどうかとは思いますが(ぉ)、最終的には平易な内容にまとめられているものの、各ジャンルにおいて開発陣にそういったレベルの取材を繰り返したからこその深みが溢れています。

私はスマホや PC、カメラならばまだしも、白物家電に関しては実際に買い換える段になってようやく最新のトレンドを調べることがほとんど。三年半前に引っ越した際に大物の家電類を買い換えましたが、それ以降の状況は追いかけていませんでした。が、これを読む限りでは、現在の家電のトレンドは「ヒートポンプを活用した高効率な熱交換」と「センサと内蔵コンピュータを使った緻密な制御」で、エネルギー消費を抑えつつユーザーの利便性を高める、というのが製品カテゴリを問わず共通した方向性のようです。ちょっと前だと NFC を使ったスマホ連携みたいな派手目な(割には実利が少ない)機能ばかりが持ち上げられていましたが、実際には地味だけれど実利のある部分も着実に進化しているようですね。
白物家電というのは基本的に「家事を楽にして、生活の質を高める」という普遍的な目的によって買われるものなので、あらゆる家電が普及した現代ではもう進化の余地が少ない、あるいは進化しても買い換える必然性を感じない、と見られることが多いのが実情でしょう。が、ロボット掃除機だったり羽根のない扇風機だったり、あるいは BALMUDA のスチームトースターであったり、人間の本質的な欲求を見つめ直して新たな価値軸を提示することで、イノベーションを起こせる余地はまだまだあるはずです。そういう意味では、いったん進化の踊り場に差し掛かったスマホよりもむしろ、白物家電が今面白いのかもしれません。

大人が読んでも面白いですが、これは理工系に興味を持ち始めた中高生にこそ読んでほしい一冊だと思います。

投稿者 B : 22:32 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2015/10/25 (Sun.)

ネットフリックスの時代 配信とスマホがテレビを変える

西田 宗千佳 / ネットフリックスの時代 配信とスマホがテレビを変える

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西田宗千佳氏の新著を読了。

タイトルにこそ「ネットフリックス」と入っていますが、Netflix の話題一辺倒ではなく、むしろ Netflix の日本上陸を契機としたデジタルコンテンツ流通に起きている変化の「今この瞬間」を総合的にまとめた書物、と言えるでしょう。
電子書籍における Kindle、音楽配信における Spotify(これはまだ日本参入できていませんが)と並び、「SVOD の黒船」と言われている Netflix。この上陸によって国内の動画コンテンツ流通は大きく変わるのでは、と言われていますが、数年前に Hulu が上陸したときにも同じように騒がれたものの、Hulu によって業界構造が大きく変わったかと言われれば、実際そうはなっていません。そこには地上波という無料放送が圧倒的に強い放送事情だったり、狭い国土の至るところに TSUTAYA があるビデオレンタル事情だったり、複雑なコンテンツの権利関係だったり、アメリカと日本のお国事情の違いが反映されています。しかし、FTTH や LTE といった通信網の整備、放送や光ディスクメディアに先駆けた 4K フォーマットへの対応など、VOD に時代の追い風が吹いているのも事実。すぐに放送レンタルビデオ店がなくなって VOD が主流になるとは言いませんが、個人的には 3~5 年の間には VOD が放送やビデオレンタル業から見ても無視できない市場に育ってくるのではないか、と考えています。そういう意味で、誰かが現状をまとめてくれないかなと思っていたところに、ちゃんと出してくれるのがさすがの西田氏(笑。

書籍の内容は、宅配型 DVD レンタルから始まった Netflix のビジネスモデルの変遷、Netflix のコアコンピタンスとも言われている強力なレコメンド機能の秘密、オリジナルコンテンツ製作に注力する理由、など Netflix の(主にアメリカでの)強みを分析。その上で、Hulu・dTV・TSUTAYA といった国内の VOD サービサーを分析し、誰が勝つかではなく業界としてどこを目指し、今後の主戦場がどこになりそうかといった視点でまとめられています。
また、VOD サービスの視点だけで見ていては市場として伸びるかは断言ができないところ。そこは見逃し配信等に関連した放送局側の事情や、各個人のメインウィンドウがテレビからスマホに取って代わられてしまった現状、そして業界動向として相似形をとる音楽コンテンツ流通で何が起こったか...といったあたりからまとめられています。正直なところ、音楽の「定額聴き放題制」も実質的には今年始まったばかりなので何とも言えない市場ですが、少なくとも「光ディスクを買う/借りる」という消費スタイルを過去のものにしたという意味では、VOD の未来を占う上で重要なヒントが隠されていると思えます。

個人的に Netflix と並んで注目しているのが、Amazon プライム・ビデオの動向。本書の中ではあっさりめにしか触れられていませんが、Netflix をはじめとする通常の VOD サービスが「コンテンツ配信自体を主軸とした真っ当なサービス」であるのに対して、Amazon プライム・ビデオは SVOD サービスでありながら、ユーザーによっては「Amazon プライムに加入していれば勝手についてくる SVOD サービス」という位置づけになるわけで、これが SVOD というサービスの価値にどういう影響を与えるか、にはとても興味があります。当初「お急ぎ便無料」から始まった Amazon プライムは今や様々な付加価値サービスの集合体となっており、単体のサービスに月額を払うのはもったいないけどこんなにあるなら ¥3,900/年 は全然高くない、という消費者も少なくないのではないかと。まあ、Amazon プライム・ビデオ単体に関しては、国内版 Netflix と同様にまだまだ始まったばかりであり、これからのサービスではあるのですが。

私自身は普段からたまに TVOD(単品レンタル相当の都度課金サービス)は利用しているものの、SVOD には加入していません。普段からドラマやアニメをそれほど観ていないということもあって、月額 1,000 円前後をペイするとは思えないのが理由なんですが、最近あまり観てない ANIMAX に月額払い続けてるよねとか娘たちが毎週借りてる TSUTAYA の DVD を SVOD に切り替えればそれだけでお釣りが来るよねとかセルフツッコミ要素がたくさんあるのも事実です(笑。まあ娘たちの TSUTAYA に関しては、物理的な上限を設けておかないといつまででも女児アニメを見続けるからあえてそうしているというのもありますが...。
ただやっぱり、個人的にもそろそろ普段から何かしらの SVOD サービスに触れていないと何かに乗り遅れるよなあ、と思っているフシもあったりして。そろそろ本気で何か検討しますかね。

投稿者 B : 21:47 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2015/10/16 (Fri.)

久住昌之先生のトーク&サイン会に行ってきました

漫画『孤独のグルメ 2』の発売を記念して開催された、原作・久住昌之先生のトーク&サイン会に行ってきました。

『孤独のグルメ2』発売記念 久住昌之さんトーク&サイン会開催【三省堂書店池袋本店】|お知らせ|扶桑社

久住昌之さんトーク&サイン会

三省堂の池袋本店にて開催。ゲストは『野武士のグルメ』等で作画を担当されている、土山しげる先生。って『孤独のグルメ』に関係する人じゃないのかよ!(笑
土山先生は、どこか豪快さを感じる画風とはちょっと違って、想像以上にダンディーなおじさまでした。昔から数々のグルメ漫画を執筆してきた方ですが、最新作は『野武士のグルメ』とは真逆の、まずい店に怒りをぶつける漫画『噴飯男(フンパンマン)』とのこと(笑。(※単行本化にあたり『怒りのグルメ』に改題)

久住昌之さんトーク&サイン会

トークショーは久住先生と土山先生の掛け合いで、たっぷり一時間。登壇された瞬間、久住先生の顔がちょっと赤いように見えて「やっぱり今日も一杯ひっかけてきたんだ」と思ったのは内緒です(ぉ

トークショーの内容は、ここには書けないようなきわどい話も連発していたので(笑)基本的には参加者だけのもの、ということで。一応、差し支えなさそうな範囲からかいつまんでメモ:

■漫画の話

  • 『孤独のグルメ』における料理の作画は、谷口ジロー先生ではなくアシスタントさんが描いている
  • 単行本 1 巻と 2 巻ではそのアシスタントさんが替わっていて、先代への対抗意識からか 2 巻のほうがより描き込みが細かい。そのため、1 コマ描くのに丸一日かけることもザラ
  • 食べ物を描くのはとても大変。漫画はモノクロだから、おいしそうに見せるのが難しい
  • 土山先生は食べるまでの過程(わさびを醤油に溶く描写とか)と食べるときの表情を使っておいしさを表現している
  • 久住先生が原作を書く際には、モデル店には三回は行く
  • ドラマはお店の紹介も含めてやっているが、漫画はあくまでフィクションとして描写しているので、人気が出るに従ってやりづらくなってきた

■ドラマの話
  • ドラマの登場店にお客さんが来てくれるのは嬉しいが、増えすぎて常連さんが入れなくなるのは申し訳ない、とも思う
  • でもお店によっては常連席を別途確保してあったり、常連さんが巡礼のお客さんと仲良くなるなど、良かったこともある
  • Season2 か 3 でドラマの予算が増え、カメラをいい機材に交換したら大きくなって、狭い店内では逆に撮りにくくなった(笑
  • Season3 に登場した河津は河津桜くらいしか名物がなかったのが、今は「わさび丼の聖地」として盛り上がっている
  • Season5 で放送予定の台湾編は初の海外ロケで、極秘裏に撮影していたはずなのに、現地でロケ中に「ゴローさんだ!」といって写真が SNS にアップされ、日本のファンにもバレバレに(笑
  • 高崎で飲み屋に入ったら、他のお客さんに吉田類氏と間違えられた。その上、店主に「深夜にやってる孤独のなんとかって番組の最後に出てるよね、吉田類」と二重に間違えられた(笑

■グルメの話
  • お店を探すときは基本的に足で探す。食べログやネットで下調べしてから行くのは答を見ながら問題集を解くようなもので、力にならない
  • 店構えの印象でお店を決めることも多い。そういうのを「ジャケ買い」ならぬ「ジャケ食い」と呼んでる
  • こないだ、土山先生と一緒に行った西荻窪のおでん屋がすごくうまかった。近いうちに『野武士のグルメ』で取り上げる予定
  • ドラマのせいで「いつも昼から飲んでる人」と思われているが、仕事は飲まずにやっている。でも新宿のベルクに行ったときだけはどうしても飲んじゃう(笑。そういうときに限ってファンに見つかって「やっぱり」と思われるのが悔しい(笑

孤独のグルメ 2

トークショーの後には、単行本にサインをいただきました。先日スクリーントーンズの吉祥寺ライヴで 1 巻にもサインをいただいたところなので、2 冊合わせて家宝にします(笑

ドラマのほうは今後の台湾編も控え、いよいよ盛り上がってくるところです。今夜もこれから第 3 話・西荻窪編の放送ですが、トークに出てきたおでん屋さんもすごく気になります。これはもうちょっと寒くなったら、あの方を誘って行ってみるしかないかな。

久住 昌之、谷口 ジロー / 孤独のグルメ 2

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2015/09/28 (Mon.)

孤独のグルメ 巡礼ガイド 2

「巡礼ガイドの続編!そういうのもあるのか」

孤独のグルメ 巡礼ガイド 2

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というわけで、あの『孤独のグルメ 巡礼ガイド』の続編が発売されたので、さっそく買ってきました。まさかこれまで続編が出るとは思わなかった。
ちなみに原作 2 巻のほうは先週末にフライング販売されていましたが、こちらはフライングされていなかったので、今日買ってきました。出版社は同じなので、コミック扱いとムック(雑誌)扱いで販売解禁ルールが違う、とかそういうことですかね。

孤独のグルメ 巡礼ガイド 2

冒頭はもちろん松重さんのインタビューから。

素の松重さんらしい飾らない言葉で、撮影やそれぞれのお店に関するエピソードを話してくれていて、とても共感できる内容です。
ファンとしてはやっぱり「松重さん個人としてどの店がうまいと思ったか」は気になるじゃないですか。

孤独のグルメ 巡礼ガイド 2

箱根の「いろり家」には放送前に行った、という話は何かで読んで知っていましたが、木場の「カマルプール」と神宮前「シャンウェイ」には行きたくても混みすぎで行けてない、とは。個人的にも遠くて行けない箱根を除けば、Season4 の絶賛リピート巡礼店はこの二店と鳥越「まめぞ」なので、自分の味覚がゴローちゃん本人と同じ、というのはなんだか嬉しくなっちゃいます。
カマルプールとシャンウェイは実際に今でもなかなか予約が取れません(;´Д`)ヾ。

孤独のグルメ 巡礼ガイド 2

キャプションに誤記発見。日間賀島編でゴローが赤車海老を食べたのは、間食パートの「キッチン Barca」ではなくメインの「乙姫」のほうです。

この赤車海老、本当に濃ゆ~い味で、癖になりそうでした。

前作の巡礼ガイドが Season1~3 からのダイジェストだったのに対して、今回の巡礼ガイド 2 は Season4 をメインに、あとは前巻で収録されなかった Season1~3 と原作 1~2 巻の店舗からいくつかピックアップして掲載しています。Season4 が全 12 話中 10 話分のみの掲載で、日間賀島編と恵比寿編(+博多出張編)だけ省かれているのが微妙に気になりますが、出張費用が捻出できなかったのかな(笑

孤独のグルメ 巡礼ガイド 2

前巻からそうでしたが、「巡礼ガイド」と言いつつテキストは基本的にドラマおよび原作コミックのストーリーをなぞっているだけ。本当はもうちょっと映像外でのお店の楽しみ方とかを紹介してほしいんだけどなあ...と思います。一応、ドラマに比べると原作のほうが登場する料理が少ないからか、ゴローが食べた以外の料理に関してもいくつか紹介されていて、全店巡礼済みの私としてはむしろそっちのほうが興味深かったり(笑。下北のピザ屋のイカコンセロリ、ずっと気になってたんですよね。

孤独のグルメ 巡礼ガイド 2

あと、作中には全く登場しないけど渋谷の「魚力」は夜メニューの海鮮丼が本当に気になっていたので、この写真にはグッときてしまいました。駅から遠いけど、今度行ってみようかな...。

俺が巡礼ガイドに求めていた情報って、こういうものなんですよ。
最近、いろんな人から「全店巡礼したのなら、そろそろ本を出すべき」みたいなことを言われるようになって、どどど同人誌くらいなら...と勘違いしかかっている私ですが(ぉ)、公式の巡礼ガイドとは違う視点でまとめてみるというのも面白いのかな。

孤独のグルメ 巡礼ガイド 2

それから、コミック 2 巻の発売を記念してか、巻末のインタビューは原作コミックで作画を担当している谷口ジロー先生!まさか登場されるとは思っていなかったので、感涙です。
マンガ『孤独のグルメ』執筆のいきさつとか、食事シーンを漫画で表現することの難しさとか、緻密に書きすぎてイヤになってきた話とか(笑)これもファンなら必読のインタビューです。「SPA!」に一度掲載されたら次はいつになるのか分からないレベルでの不定期連載も、これだけ大変ならば仕方ないか、と思えてきます。

ドラマ Season5 はついに今週末からのスタート。この巡礼ガイド 2 で復習しつつ、Season5 の聖地巡礼の計画を立ててみるのも一興か。まあ既にいくつか具体的な計画を立て始めていますが(笑。

さあ、次はどの店に、何を入れに行こうか。

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2015/09/25 (Fri.)

孤独のグルメ 2

「ま、ひとり飯。誰気にすることなし」

久住 昌之、谷口 ジロー / 孤独のグルメ 2

孤独のグルメ 2

待ちに待った『孤独のグルメ 2』がついに発売されました。本来は一年ほど前の発売予定だったのが、いろいろあって延期を繰り返し、このタイミングに(ドラマのスタートに合わせたい、という営業的な意味合いもあったんでしょうけど)。公式な発売日は週明け月曜日ということになっているようですが、都内の大手書店では既に本日から販売解禁になっているようで、さっそく捕獲してきました。Amazon の発送や各電子書籍ストアでの配信はまだ始まっていないようです。

書店でお会計をする際にレジの若いお姉さんに「割り箸おつけしときますねー」という感じで一緒に袋に入れられた割り箸(コンビニかよ!)、ノーマークでしたがこれが先着特典らしいです。どことなく昨年発売されたカプセルトイシリーズに通じるものを感じます。デザインされているのは箸袋の部分だけで、割り箸そのものは普通っぽいですが、もったいなくて開封確認する勇気がありません(ぉ

孤独のグルメ 2

全 18 話+特別編という大ボリュームだった前巻(【新装版】の場合)に比べると、厚みは 2/3 くらいになってしまっています。収録されているのは全 13 話、先日「SPA!」に収録されていたパリ編を含む単行本未収録回をひととおり網羅していますが、逆に言えば単行本書き下ろしエピソードはなし。既存エピソードは全て一度読んでいた私としては新作を期待していただけに、ちょっと残念なところ。

孤独のグルメ 2

漫画の中のゴローちゃんは、1 巻に比べると饒舌で、オヤジギャグ満載のキャラになってきたように思います。昔はもっと寡黙でシブい大人の男(ただしたまに食材をダブらせたりする)だったと思うんだけどなあ...?まあ、このあたりはドラマ版松重五郎のキャラが原作にもフィードバックされてきている、ということなのでしょうか。

また、顔芸のほうにも磨きがかかっていて、

孤独のグルメ 2

なんで腹減ってるだけなのにこんな格闘マンガみたいな顔してるの!なんかオーラまで出てるし!(笑

やっぱりダジャレで笑わせるよりも、シリアスさが逆に可笑しいキャラクターのほうが、個人的には原作版ゴローに合ってるんじゃないかと思います。

孤独のグルメ 2

こちらは第 4 話の三鷹のお茶漬け回におけるひとコマですが、これ完全に「モノを食べる時はね(ry」の顔じゃないですか(トレス疑惑
この回、この表情の後に体術が飛び出すところまで含めて、1 巻の大山町ハンバーグ回の再現のようなエピソードになっています。

この店には私も実際に行きましたが、いろんな意味で聖地巡礼史上でも特にインパクトの強い店だったなあ...。

孤独のグルメ 2

余談ですが、ゴローの最新愛用カメラはどうやらソニー RX100 II のようです(アクセサリシューっぽい形から II 型と判断)。兄弟機種ユーザーとしてはとても嬉しい。久住さんも最近 RX100 シリーズ愛用してますよね。

というわけで待ちに待った最新巻、堪能しました。
収録されているお店には既にほぼ巡礼済みなので、レポート記事はこちらからどうぞ。

【飯テロ注意】『孤独のグルメ』聖地巡礼 全店レポート Season1~Season4&原作1~2巻 - NAVER まとめ

来週からはいよいよドラマ Season5 もスタート、こちらも楽しみです。

久住 昌之、谷口 ジロー / 孤独のグルメ 2

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2015/09/02 (Wed.)

オールドレンズ・ライフ Vol.5

澤村 徹 / オールドレンズ・ライフ Vol.5

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前作からちょうど一年、澤村 徹さんのムック『オールドレンズ・ライフ』の最新刊が発売されたので、さっそく購入。このシリーズも気がつけばもう 5 冊目ですが、未だとどまるところを知らない勢いを感じます。

Vol.4 の時点で α7 シリーズによる「35mm 判レンズ本来の画角での撮影」および縮小光学系マウントアダプタによる「APS-C ボディでの擬似 35mm 判画角での撮影」が可能になっており、オールドレンズ本としては一旦行き着くところまで行った感がありました。オールドレンズって毎年新製品が出てくるものでもないし(笑)、さすがにそろそろネタが枯渇してきたのでは、と思っていたら、今回の主なトピックは

  • 旧東独・ロシアレンズ特集
  • 中判オールドレンズ特集
  • 現行 MF レンズ特集
  • まだまだ出てくる新型マウントアダプタ
という、かなり上級者路線を攻めてきました。

オールドレンズの入り口といえば旭光学やオリンパスの旧ズイコー、あるいはヤシカ/コンタックス用ツァイスレンズあたりが定番ですが、ツァイス・イエナを中心とした旧東ドイツレンズや安価なツァイスコピー品であるロシアレンズ側にも、広く深い沼が広がっています。特にイエナ製レンズはオールドレンズとは思えない安定した描写を誇っており、ツァイスにしては安価なこともあって入門用として比較的手を出しやすいのも事実。私もイエナ製の MC Sonnar 135/3.5 は一本持っていたりします。
とはいえ入手性がも情報も限られているこのあたりのレンズにいきなり手を出す初心者もいないでしょう。この『オールドレンズ・ライフ』シリーズは初心者をあまり考慮せずにいきなり沼の深いところから始まることが多いですが(笑)、それでも今回のは今までよりもさらに深淵からスタートしている、と言えます。私もさすがに、中判オールドレンズに手を出す予定は今のところないかな(笑。

個人的注目はやはり現行 MF レンズ特集。少し前までは新品で買える MF レンズといえばライカかコシナ製ツァイス/フォクトレンダーくらいしか選択肢がありませんでしたが、オールドレンズブームのもとで新規に MF レンズを発売するメーカーが複数現れてきました。中でも、今回のムックは富岡光学(ヤシカ/コンタックス用ツァイスレンズを OEM 生産していたメーカー)の Tominon 55mm F1.2 の復刻版にあたる木下光学「Kistar 55mm F1.2」、そしてマウントアダプタメーカーとして有名な Hawk's Factory が Tsubasa ブランドで開発したレンズ第一弾「Swallow 35mm F2」の発表の場を兼ねています。それほど重要な媒体になったと考えると、初期の頃から応援してきたファンとしても嬉しい限り。
一口に現行 MF レンズと言っても、過去の名玉の描写を再現することにこだわったものから既存レンズにないスペックを目指したもの、そして MF でありながら現代的な高解像度を実現しようとしたものまでバラエティに富んでいます。オールドレンズはアジア方面の需要増で年々値上がり傾向にありますが、現行 MF レンズであれば価格が安定しており入手しやすいという利点もあり。いきなりオールドレンズ、ではなくまずは現行 MF レンズから始める、という選択肢もあると言えます。

個人的にはやっぱり東独かなあ。イエナの Flektogon 20/4、35/2.4 は以前から手に入れたいレンズではありました。最近、AF でラクをしてばかりだったけど、AF レンズはめぼしいところはだいたい揃えてしまったので、改めてオールドレンズ収集に走りたくなってきました。

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2015/07/27 (Mon.)

猫は忘れない

東 直己 / 猫は忘れない

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二年前から読み進めていた、東直己「ススキノ探偵シリーズ」の最新巻を読了。

「俺」の学生時代を描いた前作『半端者』から打って変わって、時間軸は『旧友は春に帰る』の続き。「俺」は順当に齢を重ねて五十代半ばにさしかかっています。
いつもの仕事と同じように、知人の水商売のママが旅行中に飼い猫の世話をすることになった「俺」。飼い主の不在中に餌を与えるためにマンションに入ったところ、当の飼い主の刺殺体を発見してしまい...という、いつもとはちょっと違うところから物語は始まります。いつもススキノでグダグダしているところから始まっているので読み進めるのに時間がかかりますが、今回は最初から引き込まれた感じ。

ただ、怪しい人物は序盤にいかにもという形で登場し(しかし「俺」はそれを怪しいとは思わない)、結局その人物が犯人だった...という点で、ミステリー的にはあまり驚くような話ではありません。「俺」も歳を取ってアクション的な動きも減っているし、酒を飲むよりも飲まれるような場面は増えたし、ホームズやポワロのような推理能力でもなければ、そろそろ肉体派探偵としてやっていくのは限界じゃないですかね。このシリーズ、全般的に「俺」が主体的に事件を解決する話は少なく、むしろ「俺」が入り込むことで状況が引っかき回され、真相のほうから勝手に「俺」のところにやってくる、というスタイルが多い。今回も最終的にはそういうオチで、「俺」が謎を解く場面が今まで以上に少なくなっています。
でも、このシリーズ自体がそういうものだ、と考えると、逆に事件や推理は物語に彩りを添える要素にすぎず、「俺」とその関係者たちがススキノ周辺で生きる様子そのものを楽しむことが本質なのだということに気づけば、そういう視点で楽しめるようにも思います。このシリーズにここまで付き合ってきた読者であれば、既にそういう読み方になっているのかもしれませんが(笑。

そういえばこの作品は映画『探偵は BAR にいる』の公開後に刊行された今のところ唯一の作品ということになりますが、この物語に登場する猫のナナについ話しかけては「だからそういうのやめろって」と独りツッコミを入れる様子が、劇場版で「俺」を演じる大泉洋の姿と重なって見えました。小説版の「俺」は大泉洋とは似ても似つかぬ太った中年ですが、キャラクター的にはちょっと当て書きが入りつつあるのかな、という気がします。

長らく付き合ってきた「ススキノ探偵シリーズ」も、刊行されている分はとりあえずこれで終了。続編は番外編として JT が展開する Web 媒体「ちょっと一服ノベルズ」で一時期展開されていたようですが、その先は不明。そろそろ探偵業も限界だろうけど、製作中と言われている映画第三弾の公開に合わせて動きがあるんでしょうか。とりあえず番外編を読みながら、続報を待ちたいと思います。

投稿者 B : 23:28 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2015/06/28 (Sun.)

半端者 -はんぱもん-

東 直己 / 半端者 -はんぱもん-

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「ススキノ探偵シリーズ」の続編をひさびさに読了しました。続編といっても前作の続きではなく、シリーズ第一作『探偵はバーにいる』よりもさらに遡って、主人公「俺」がまだ北大の学生だったころのお話。あとがきによると、映画『探偵は BAR にいる』の制作を記念して書かれた物語とのことです。

このシリーズは序盤がダラダラすることが少なくなく、主人公が学生であるせいか、この物語はそのあたりが余計に強調されていたような気がします。読者としてはそのせいで序盤の進みが悪く、なかなか読み進めるモチベーションが保てずに、ちょっと時間がかかってしまいました。が、話が動き始めてからはページをめくる手(といっても電子版だけど)が止まらなかったのは、このシリーズならではと言えます。

学生時代の物語、というと派生するシリーズに登場した松井省吾君のことを思い出しますが、彼とは似ているようでいてまたずいぶんと違う。ススキノでそれなりに飲み慣れていながらも、その道に生きる人々との付き合い方はまだ知らない。その割に正義感だけは強くて妙なトラブルに首を突っ込んでばかりいる...というのはその後の作品にも通ずるところですが、そのアプローチが未熟なあたりが、タイトルの『半端者』たる所以。後のストーリーに登場する重要人物との出会いについてもいろいろと描かれており、ここまで読んできた人であれば感慨深いものを感じることでしょう。特に、後のすべてのシリーズに登場する高田や○○についてのくだりは、ファンならば読みたかった話ではないでしょうか。

「俺」がススキノで発生するいくつかの事件に首を突っ込みながらも、最終的にそれを解決するのは多くが「俺」以外の誰か、という点では後続する時間軸のストーリーと一致しています。あくまで首を突っ込んで引っかき回すまでが役割で、それをきっかけに事態が半自動的に進んでいく...というのがこのシリーズの持ち味ですが、そのルーツとして意識的に描かれた物語、という印象。でも、凄腕の探偵が推理によって難事件をどんどん解決していくよりも、こちらのほうがリアリティがあるとも感じます。
ミステリー的には、作中で発生したあれこれの事件が一つの結末に収斂していくことを想像しながら読み進めていましたが、その結末はけっこう散漫な、それぞれの話として終わった感じ。結末としてはちょっと物足りなかったものの、学生時代に起きたことって何でもけっこうこんな感じだったかもな、と思うと、妙に納得してしまうものがありました。そういう意味では、この作品は話の結末そのものよりも、「俺」の行動規範を改めて確認するための物語だった、と言えるのかも。

このシリーズも、刊行済みの作品では残すところあと一つとなってしまいました。映画は続編が作られているらしいので、小説版も映画の新作のタイミングで続きが出てくる可能性はありますが、ひとまずは残り一作。すっかりおっさんになった「俺」の物語を、続けて読んで行こうと思います。

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2015/06/10 (Wed.)

Sony Design: Making Modern

先日行ってきた「MAKING MODERN ~原型づくりへの挑戦~」に触発されて、この写真集を購入しました。

Sony Design: Making Modern

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展示会場であるソニービルでも販売されていたんですが、配送期間が多少かかっても良ければ海外から買った方が安かったので、Amazon マーケットプレイスのイギリスの出品者から購入。2 週間ほどかかったけど、まあいいです。

Sony Design: Making Modern

現物は想像していたよりもずっと分厚く、ハードカバーであることも手伝ってずっしりとした重さ。もしこれで人を殴ったら「鈍器のようなもの」と報道されるに違いない(ぉ。高価だけど、価格に見合う内容の厚さです。

Sony Design: Making Modern

基本的には写真集だけれど、前半には少しだけソニー黎明期のエピソードが解説されています。ただ、洋書なので記載はすべて英語。でもファンならばこれくらいの英語、愛を以て読みこなせるはずだ(ぉ

Sony Design: Making Modern

さらにはソニーの前身となる東京通信工業の設立にまつわるエピソード(日本橋・白木屋の一角に最初の事務所を構えた話)が漫画(台詞は英語)で収められています。しかも、どこかで見たことのある絵柄だと思ったら、『ゴルゴ 13』のさいとう・たかを先生じゃないですか(;´Д`)ヾ。
調べてみたところ、これオリジナルは日本で『劇画 MADE IN JAPAN』として出版されていたもののようですね。これはさすがに知らんかった...。

Sony Design: Making Modern

本編は歴代の、デザインが特徴的な製品の写真がどどん、と掲載されています。洋書ながら、本編は基本的に写真がメインなので、英語が分からなくても堪能できます。

Sony Design: Making Modern

大半のページを製品写真が占めていて、ソニービルのイベントで展示されていたのはあくまで氷山の一角にすぎなかったんだなあ、ということがよく分かります。個人的に「あれが展示されてないなんて寂しい...」と思っていたものも、書籍版には多くが収録されていて、満足。自分の琴線に触れて実際に買ってしまった製品も数多く載っていて、時代のマイルストーンになる製品はデザインがうまくそれを表現し、象徴の役割を果たしていたのだろうと思います。

Sony Design: Making Modern

基本的に 1 製品に対して 1~2 枚、俯瞰のカットが載っているだけ、というのが多いですが、いくつかの製品ではディテールに大きくクローズアップして撮られた写真も掲載されています。細部の積み上げだけで良い製品は作れないと思うけど、良い製品は細部に至るまで手を抜いていない、というのは真だと思います。

Sony Design: Making Modern

歴史を変え、時代に残る製品のデザインというのはシンプルな幾何学図形の組み合わせでできていることが多い、というのが私の持論です。たとえば iPod は子どもでも描ける円と四角だけで構成されています。工業デザインにおいては、そういうアイコン的な役割も非常に重要。Apple に代表されるように、近年の工業製品のデザインは、そのことを意図的にデザインに反映して成功している例が多いように思います。

私も工業デザインとか空力デザインとかをやりたくて大学に入ったはずだったんだけどなあ。こういうのを見ると、あそこで諦めずにちゃんと勉強をしていれば良かったなあ、とちょっとだけ思います。

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2015/03/23 (Mon.)

漫画版 野武士のグルメ 2nd

久住 昌之、土山 しげる / 漫画版 野武士のグルメ 2nd

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1 巻が発売されてからちょうど 1 年。早くも『漫画版 野武士のグルメ』の単行本第 2 巻が発売されました。元祖『孤独のグルメ』だって 1 巻の発売から 28 年経ってようやく 2 巻が発売されようとしている(まだ出てない)というのに(;´Д`)。
1 巻は『孤独のグルメ』ほどの派手さはないながらもけっこう好きな作風だったので、2 巻も買ってみました。電子版がまだ出ていないようなので、紙版を...電子版は後追いで 1 巻が発売されているようですが、もともと Web 掲載のコミックなんだから、電子版も同時刊行にしてくれませんかね。

この漫画は定年後のおじさんが悠々自適な「野武士的」食生活を送る B 級グルメ漫画。『孤独のグルメ』の井之頭五郎もたいがいフリーダムな毎日を送っているように見えますが、本作の主人公「香住武」も輪をかけて自由。なんたって仕事がないわけですから、朝寝坊・昼酒・夜更かしやりたい放題、1 巻よりもさらに過激になってすらいます。出かけたついでに一杯引っかけるのは当たり前、缶入りトマトスープが不味かったといっては思いつきでカレーを作り始めるわ、深夜に目が覚めたといっては寝酒のつもりで飲み始めたビールから日本酒へ夜更けの深酒コースに突入するわ、もう展開が読めない(笑。

漫画版 野武士のグルメ 2nd

1 巻に引き続いての、酒を飲み下した直後のこの表情ですよ。『孤独のグルメ』ではついぞお目にかかれなかった、酒飲みであればこれを見ただけで自分も飲みたくなってきてしまう顔。飲んだ後に手の甲で口を拭う仕草が完全におっさんです(笑。

漫画版 野武士のグルメ 2nd

料理の描写のリアリティは谷口ジロー先生に勝るとも劣らないうまそうさ。焼きたての新サンマに箸を入れる瞬間を「プシュ」という擬音つきで表現した漫画が今までにあっただろうか(ぉ

これは深夜に読んだらアカン漫画です。

漫画版 野武士のグルメ 2nd

なにげにこの台詞、すごい名言だと思います。ドラマ版の井之頭五郎がモノローグで言いそうな台詞でもある。まさに、久住節。

『孤独のグルメ』よりはもうちょっと日常寄りなので聖地巡礼的な楽しみはあまりありませんが、逆に冷蔵庫にある食材でちょちょっと飲みたくなってしまう危険性を孕んでいます(笑。
そういえば、この作品ではあまり「どこどこの店」というのが特定できないような書き方をされていることが多いですが、唯一見つけたのが銀座すずらん通りの「そば所 よし田」。銀座で蕎麦といえば田中屋には行ったことがあるけど、今度はこっちの店に行ってみようか...と思ったら、現在休業中または閉店してしまったらしいですね(´д`)。これは残念だ...。

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2015/02/26 (Thu.)

愛蔵版 機動戦士ガンダム THE ORIGIN 特別編

安彦 良和 / 機動戦士ガンダム THE ORIGIN (24) 特別編

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アニメ ep1 の一般公開を目前に控え、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の最新刊が発売されました。とはいっても既に完結している作品なので、この 24 巻は「特別編」という位置づけ。過去に発表済みの前日譚、後日譚の詰め合わせになっています。

収録されているエピソードは「その前夜」「キャスバル 0057」「アルテイシア 0083」「アムロ 0082」の 4 本。「その前夜」は角川から関連書籍として発売された公式ガイドブックで初出(余談だけどこの公式ガイドブックだけで 3 巻も発売した角川はいくらなんでも悪どいと思う)かつ愛蔵版 VII にも収録されているもので、それ以外の三つは愛蔵版 XII で既に収録済み。初出なのは表紙イラストとカバー折り返しの作者コメント、あとちょびっと掲載されている安彦先生へのインタビューくらい?つまりは B6 判コミックスとして初収録となるだけで、愛蔵版を全巻揃えている人はあえて買う必要はありません。まあ、私は B6 判も愛蔵版も全部揃えたけどな(ぉ

という感じで相変わらず商売としては悪どいわけですが(安彦先生自身もコミック等の作者コメントイラストで編集部に対する不平は繰り返し述べています)、作品の内容は良いんですよね。サイド 7 でジーン兵長が戦功を焦り、シャアが「若さ故の過ち」を悔いるに至った経緯を描く「その前夜」。キャスバル・レム・ダイクン生誕の日を描く、どこか神話めいた雰囲気すら感じる「キャスバル 0057」。セイラのその後の人生をカイ・シデンの目線で描いた「アルテイシア 0083」。そしてちょっと異色な「アムロ 0082」。
アニメ版でルウム戦役以前のムンゾ自治共和国の映像を観た後に改めて「キャスバル 0057」を読むと、なかなか感慨深いものがあります。この中に登場する、誰得なキシリアのランドセル姿は必見と言えるでしょう(笑。ただ、「アムロ 0082」はちょっと賛否両論かもしれません。まあこれはスピンアウト作品というよりは、安彦先生自身による二次創作、と捉えたほうが良いでしょうが...。

『青い瞳のキャスバル』の一般公開まであと 1 日と少し。プレミア上映会で一度観てはいますが、改めて楽しみになってきました。

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2015/02/03 (Tue.)

旧友は春に帰る

東 直己 / 旧友は春に帰る

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探偵、暁に走る』を読んだら気持ちが乗ってきたので、続編を勢い任せで一気に読み終えました。

今回のタイトルはシリーズの中でも特に情緒的な響きをもっています。この「旧友」というのが、なんとシリーズ第 1 作『探偵はバーにいる』でヒロイン役に位置づけられていたコールガール、通称モンロー。『バーにいる』のラストでススキノから逃げ出し、沖縄に渡った彼女が、四半世紀ぶりにススキノに戻ってきます。
しかしすっかりオジサン・オバサンになった二人がススキノで旧交を温めるしんみりした話、になるわけもなく。過去にも「俺」を引っかき回したモンローでしたが、今回も完全にモンローのペース。カーチェイスあり、海を渡る逃避行あり、今までは事件を追う側だった「俺」が暴力団に追われる側になるという展開もなかなか目新しく、手に汗握るストーリーに引き込まれました。

「俺」といえば一貫してケータイを持ち歩かないキャラとして描かれていますが、今回もそのポリシーは健在。しかしケータイメール全盛(この作品が書かれた頃はまだ SNS は一般化していなかった)の現代において、ケータイを持たずに時々刻々と変化する状況に対応する探偵を描くのはリアリティがないという判断か、定期的にネットカフェに行って PC で Web メールをチェックするようになっています。これはこれで、以前に比べればタイムリーな情報交換ができていつつも少しタイムラグがある、という状況を作り出していて、なかなか面白い。そしてメールチェックの合間に YouTube で動画を見たり、その数分間の間に二桁を超えるスパムメールが届いていたりする半端な現代っぽさが面白い(笑。

「俺」は最後まで振り回されっぱなしで結局何かを解決できたわけではない、という割り切れない結末でしたが、そういうのも含めて感傷的になれる物語でした。過去作に登場した主要キャラが多数登場することもあり、シリーズここまでの集大成と言える作品だと思います。面白かった。

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2015/01/23 (Fri.)

探偵、暁に走る

東 直己 / 探偵、暁に走る

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ちょっと間が開いてしまいましたが、「ススキノ探偵シリーズ」の続編を読了。

本作では「俺」はついに五十代に突入し、そろそろおっさんというよりも初老と言えそうなほどに老けてきました。時代もすっかり現代で、スマホこそないもののケータイは当たり前(「俺」は意地でも使わないけど)、さらに「俺」は PC さえ普通に活用しています。

今回のお話は、地下鉄の中でたまたま知り合うことになったイラストレーター・近藤雅章と意気投合した...かと思ったらその近藤が何者かに殺されてしまい、「俺」はその犯人を捜し始める、というもの。この近藤がまた独特なキャラクターで、『ライト・グッドバイ』の犯人とはまた違った種類の曲者なわけですが、なぜか「俺」は近藤に妙に肩入れしてしまいます。まあ、この近藤が今の世の中をいろいろと疑問に思い、気に入らない相手に対しては暴言を吐いたり暴力さえ振るったりするキャラクターなのに対して、前作くらいまでは世の中の変わりように対してボヤいてばかりいた「俺」がきっぱりそういうことを言わなくなったのは、おそらく東直己氏が自身のキャラクターの投映先を「俺」から近藤に移し替えたからだろうな、と思います。それくらい、不自然なほどに「俺」は近藤に入れ込んでいきます。

いつもの如く、物語の序盤はまったりとした展開。あまりに冗長でなかなか読み進まないわけですが(笑)、中盤からは怒濤の勢いで一気に読ませる作風は、東直己の持ち味でしょう。そして、今作はこれまで以上に脇役が立っています。相棒の(といってもこの頃になるとあまり活躍しませんが)高田、新聞記者の松尾、暴力団の桐原組長と相田、高田に替わってアクションを担当するようになったアンジェラ、新しい恋人役の華、「俺」を真面目に手助けする石垣など、それぞれの人間くささが今までの同シリーズよりも深く出ているのが印象深い。特に相田が病気でほぼ全身不随になりながらも最も重要なシーンで活躍するくだりは、映画版の松重豊さん演じる相田の顔を思い浮かべると余計にグッと来るものがあります。

個人的には、「俺」が気に入らないことに対してごちゃごちゃ言ってばかりいる「昔は良かったおじさん」から「友人の苦境を見過ごせない正義漢」に戻ってきてくれたことが嬉しいかな。やっぱり「ススキノ探偵シリーズ」はこうでないと。シリーズの残りも 3 冊ほどになりましたが、春くらいまでかけて読み切りたいと思います。

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2015/01/16 (Fri.)

MOT ―テクノロジーマネジメント

グローバルタスクフォース / 通勤大学 MBA 〈11〉 MOT ―テクノロジーマネジメント

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「スマートフォンはあらゆる電気製品の価値を吸収した」と最近よく言われます。実際、スマートフォンとその先に繋がっているクラウドサービスが既存のハードウェアを代替し、スマホ一台あればかなりのことができる世の中になったことは事実でしょう。でも、IT やエレクトロニクスに携わっている人の多くが「もっと便利に、もっと効率的に、もっと楽しく」を目指していろんな価値をスマートフォンに集積していった結果、確かに便利で効率良くはなったけれどもなんだかつまらない、という状況に息苦しさを感じているのもまた事実だと思います。
一昔前だったら PC やモバイル機器に入れ込んでいた私やその周囲の人々が最近ではカメラと写真に熱を入れるようになったのも、おそらくそれがまだ物理的制約に囚われて電子化しきれない、昔ながらのハードウェアの愉しみがまだ残されているから、という側面があるのではないでしょうか。

「良いものを作りさえすれば売れた」時代はとうに過ぎ去り、技術とビジネスモデルを組み合わせてようやくモノが売れる時代。日本の製造業の凋落が叫ばれていますが、それは決して技術力が衰えたわけではなく、時代の変化に合わせたビジネスモデルを創造することと、それを推進できる経営がなされてこなかったことが原因でしょう。
ビジネスモデル創造について学んだら、次は技術を正しく活かす経営について学びたくなったので、この書物を手に取って(電子版だけど)みました。

この本は、MBA で学ぶような内容を通勤中に学んでしまおうというコンセプトで作られたシリーズのようです。これで MBA 相当の知識がついたらこんなにオイシイ話はないわけですが(笑)、概要を体系的に理解したい人にとってはちょうど良くまとめられた内容になっています。製品開発プロセスから技術戦略、R&D、知財、他社とのアライアンスや生産管理・資材調達まで、企業の開発・生産活動全般にわたってまとめられています。まあ 10 年以上前の書物なので、あくまで技術的優位性を軸にした製造業の話に終始しているのはちょっと物足りませんが、それでも現在も製造業が日本の主力産業であることは間違いないわけで、今でも十分通用する考え方だと言えます。
私自身も、今までに部分的にはいくつか関わったことがあったり知っているものはあっても、こうやって全体を俯瞰して見ることはなかったので、頭の中が整理される内容でした。

ただ、それほどページ数が多いわけでもないので、どの話も基本的にフレームワークの説明に留まっていて、具体例に乏しい=実感としての理解にはちょっと物足りないと感じました。このあたりは実際の MBA であればケーススタディやロールプレイ等を通じて腹落ちしていくところだと思うので、そのへんは独学の限界かもしれません。
あと、全体に書き方が教科書的すぎて、読んでいて眠くなるのは困りましたね(笑。

あとは自分で実地での経験をふまえ、いかに技術を活用して市場に受け容れられるビジネスモデルに結びつけるか、が勝負ですね。がんばらないと。

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2014/11/28 (Fri.)

後ろ傷

東 直己 / 後ろ傷

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ススキノ・ハーフボイルド』の続編にあたる、東直己のミステリー小説を読んでみました。これまた電子書籍が発売されていないので、図書館で...。やはり旧作は大ヒット作かメジャーなシリーズもの以外はなかなか電子化の手をつけてもらえないのが残念なところ。

時間軸は道警腐敗事件の翌年。『駆けてきた少女』『ススキノ・ハーフボイルド』に続いて 3 作目の登場となる松井省吾君は、本作では大学生になっています。が...、以前の作品では「北大合格確実」という話だったのが、どういうわけか受験に失敗してしまい、唯一滑り止めとして受けていた道央学院国際グローバル大学(通称:グロ大)に進学します。まあ、受験に最も重要な高三の夏休みにああいう事件に首を突っ込んでいてはそれもむべなるかな、という気はします。しかもグロ大は『駆けてきた少女』に登場するある事件の犯人であり被害者が通っていた、札付きの底辺大学。恋人だったホステスの麻亜とも別れています。もともと自信家で世の中を斜めに見ていた松井少年は、このことで完全にひねくれてしまい、物語の中盤までは自虐的な台詞やグダグダした行動が目につきます。中盤までに幾度となく登場する「グロダッチ(=グローバル大学の友達)」という言葉も、妙に哀愁を誘う響きで何とも言えません(笑。
個人的には、こういう生活環境が大きく変わる十代後半~二十代前半に自分の価値観を覆すような事件が起きるとしばらく自棄になって立ち直れなくなる心境は分からなくもないです。大人になった今では、逆にそうやって時間を浪費している若者の姿がもどかしくもあります。

そういう意味では、世間知らずで腕っぷしも弱いくせに正義感だけは強い松井少年の「ハーフボイルド」っぷりに、さらに磨きがかかった作品と言えるでしょう。

ただ、松井少年が『ススキノ・ハーフボイルド』と違うのは、今回は事件の渦中にいる、ということ。前作では完全に巻き込まれ、振り回される形で事件が進んでいき、結局最後まで事件の中心に立つことがありませんでしたが、今回はもろに事件の中心人物になります。この事件を通じて松井少年が自分の価値観を再認識し、進むべき道を取り戻していくのがこの物語のハイライトではないでしょうか。
ただ、事件の解決にはあの「俺」が「便利屋さん」という立場で深く絡み、なんだかんだで事件を解決したのは「俺」の立ち回りによるものだったりします。その点では結局この作品も「ススキノ探偵シリーズ」を視点を変えて描いたもの、ということになります。

この事件のあと、松井少年はどういう人生を歩んだのでしょうか。続編は書かれていないので想像するしかありませんが、結局グロ大をやめて浪人し、北大に進んだのではないかと思います。もしかすると、加齢で動きの重くなった「俺」の後を継いでススキノの便利屋稼業を始めているのかもしれません。

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2014/11/20 (Thu.)

貞本版『新世紀エヴァンゲリオン』完結

ようやく完結。

貞本 義行 / 新世紀エヴァンゲリオン (14) 【プレミアム限定版】

新世紀エヴァンゲリオン

13 巻が発売されたのが 2012 年の 11 月。去年の夏には「ヤングエース」誌での連載が完結していたからその年末くらいには発売されるのかと思っていたら、なんと今の今まで待たされました(´д`)。連載のほうは読まずにコミックスの発売を待っていたので、長かった、というかほぼ忘れかけてました(笑。

とりあえず電子版でサクッと購入したにもかかわらず、何故かプレミアム限定版も欲しくなって店頭で紙版を購入(ぉ

新世紀エヴァンゲリオン

プレミアム限定版の特典、まずはスペシャル CD とブックレット。
CD のほうは、貞本義行氏が漫画執筆中に BGM としてかけていた音楽の中から、特に思い入れのある楽曲を 4 作品収録しています。基本的に VOCALOID「IA」(私はボカロはクリプトン系しか知らなかったので、この IA という VOCALOID は初めて知った)による歌とインスト曲。まあ「ふうん」という感じではありますが、VOCALOID の無機質な歌声と綾波レイ、というのは確かに重なるところがありますね。

新世紀エヴァンゲリオン

ブックレットはイラスト集になっています。ページ数はさほど多くはありませんが、貞本氏らしい繊細なタッチが堪能できるイラストばかり。貞本氏のイラストって以前はもう少し平面的な印象でしたが、今回のは非常に立体的。これだけのベテランになってもまだまだ進化するんですね。

新世紀エヴァンゲリオン

もうひとつの特典は、コミックス全巻を収納可能な特製ブックエンド(組み立て式)。
全体的に A.T.フィールドと NERV カラーを意識した、エヴァらしいデザインになっています。

まあ、私は紙版は 13・14 巻しか持っていないので(あとは全て電子版だ)、使い道がありませんけどね!(ぉ

新世紀エヴァンゲリオン

側面には各巻の表紙イラストが。初期の表紙とか、今見るとすごく懐かしい。だってもう 20 年も前ですよ...。

肝心の内容ですが、20 年の集大成に相応しい、期待に違わぬラスト。エヴァが『まどマギ』のようなループものだとするならば、旧劇場版からさらに何度か回繰り返した世界の話、という感じで、旧劇場版のストーリーをなぞりつつ、結末に至る部分が変更されています。でも、未だに納得いかない旧劇のラストに比べれば、これがエヴァのトゥルーエンドだと言われても違和感のない、ある意味大団円。もしかしたらテレビ版の当初のプロットはこうだったのかも、というのは考えすぎでしょうが、そう思いたくもなる終わり方です。

そして驚いたのがこの単行本のために書き下ろされた EXTRA STAGE。六分儀ゲンドウと碇ユイの大学時代の物語ですが、そこに登場するのが...え、コミックスのここでそのタネ明かしをしちゃいますか、という予想外の展開で、漫画版と新劇場版をブリッジするような内容になっています。正直、これを読めただけでも最終巻を買った価値はあったかな。

貞本さん、ひとまずはお疲れさまでした。
あとは『シン・エヴァンゲリオン劇場版』で本当のラスト、になるのか、結局また終わらないのか。コミックス発売のタイミングで新劇の続報があるかと思ったのに、まだ何もないんですよね...。

貞本 義行 / 新世紀エヴァンゲリオン (14) 【プレミアム限定版】

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2014/11/14 (Fri.)

ビジネスモデル・ジェネレーション

久しぶりにビジネス書。

アレックス・オスターワルダー、イヴ・ピニュール / ビジネスモデル・ジェネレーション

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最近の私の仕事は、純粋なマーケティングよりも戦略系とかビジネスモデル企画とかそっち寄りのものが中心になってきています。そのあたりは専門ではなかったのでいろいろと勉強ながらやっているところですが、この本に書かれている内容はその根幹とも言える部分。ビジネスモデル構築に必要な要素を分解し、客観的に評価できるフレームワーク「ビジネスモデルキャンバス」に表現した上で、そのビジネスモデルがどういった類のモデルなのか、その強みと弱みは何なのか、を把握しよう、というものです。

この手法は現代の新規ビジネス開拓においてはスタンダードになっているもので、この本で紹介されているビジネスモデルキャンバスは、多くのビジネスモデル研修等でも使用されています。聞くところによると、このフレームワークは専門領域が違ってもそのビジネスモデルの強みと弱み、リソースやお金の流れが一目瞭然に把握できるので、シリコンバレーのベンチャーキャピタルでは標準的に使われているとか。実際に私も書いてみましたが、確かに専門領域が違う人とフレームワークを見せ合っても、それのどこが強くてどこが弱点なのかが理解できます。また、自分の考えたビジネスモデルが自分では「ここがハードルだろうな」と思っていたのが、他の人からはむしろ違うところに弱点があると指摘されるなど、パワポで絵にしていただけでは分からなかった部分まで見えてきます。パワポだとどうしても自分に都合が良い前提条件で描いてしまうため、弱点が覆い隠されてしまいがちですからね。

ビジネス書とはいっても、一般的なビジネス書とはだいぶ体裁が違って、デザインや装丁が非常に凝ったものになっています。第一印象としては「広告業界系のコンサルが好きそうな体裁の本だな」という感じだったのですが(笑、ビジネス書なのに横長だしカラフルだし、内容を書かずにあくまでイメージのためのページまであるし、ビジネスにこそクリエイティビティと柔軟な発想が必要、と言われているように感じました。まあ、正直ビジネス書としては読みにくくて、独習のための本というよりはむしろセミナー用のテキストとして使うのがいいんじゃないかな、という雰囲気。フォーマットが自由すぎて、読んでて疲れます(笑。

さまざまな業界のビジネスモデルも事例として紹介されていて、近い業界でもビジネスモデルはずいぶん違うんだなとか、逆に違う業界なのにビジネスモデルとしては同じなんだなとか、そういう意味でもいろいろな発見があります。実務をやっていると、ついつい技術や商品、サービス単体の強さに依存したビジネスをやってしまいがちですが、そういうのは市場の成熟や長期戦、消耗戦に弱いもの。ビジネスモデルを周到に構築して利益をしっかり確保できる者が最終的に勝つのが現代のビジネスなわけで、私もそこをもっと磨いていきたいと思います。

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2014/11/01 (Sat.)

ライト・グッドバイ

東 直己 / ライト・グッドバイ

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道警腐敗三部作を読み終えたので、通常の「ススキノ探偵シリーズ」に戻ります。今回はようやく電子書籍版に戻ってきたこともあって、サクッと読了。

前作に登場したオリジナルカクテル「サウダージ」ですが、本作では「俺」がススキノ中、いや日本中に流行らせようとして個人的にあちこちの店で飲みまくっています。まあ、流行らないわけですが(笑。自分で作って飲んでみたことで、飲むシーンが登場するたびにあの苦み走った独特の味が思い出せる、というのは試してみて良かったなと。

今回はいよいよ五十代が見えてきた「俺」。変わりゆくススキノへの落胆と世の中をさらに斜めから見るようになってしまった性格が、私からはだんだん感じ悪いおじさんだなあ、と思えるようになってきてしまいました。でも『ススキノ・ハーフボイルド』で客観的に描かれていた「一般市民ではない怪しげなおじさん像」と対比すると、やはり一人称ではそれなりにかっこいいつもりでいる「俺」が滑稽に思えてきます。

今回の事件は、過去の作品にも何度か登場している元刑事・種谷から、「俺」がある女子高生失踪事件の重要参考人・檜垣と接触するように仕向けられるという話。「俺」も「俺」なら、種谷も過去作でのキャラに輪をかけて偏屈な爺さんになっているし、問題の檜垣はもうどうしようもない人物で、檜垣から「俺」に対するコミュニケーションが、もう背中の裏側が痒くなるような感じで気持ち悪い。三人の偏屈なおっさんの掛け合いがグダグダと終盤まで続くわけですが、不思議とテンポ良く読まされてしまうあたりにこの作品の神髄を見た気がしました。少なくとも、今までの「ススキノ探偵シリーズ」とは毛色が違う作品。
気持ち悪いけど続きが読みたくなる、という変な感覚の小説でしたが、「俺」の相棒・高田に珍しくロマンス的な展開があるのが見逃せません。というか、このくだりが一番面白かった(笑

それにしても、初期の数作を除いてこのシリーズは映像化しづらそうな猟奇事件が多いので、映画化の続きはどうなるんでしょうね。中年になった「俺」のデブのおっさんキャラは今の大泉洋には合わなさそうだし、今後の映画はオリジナル脚本にせざるを得ないのかもしれません。

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2014/10/30 (Thu.)

ザ・レンズマニアックス

澤村 徹 / ザ・レンズマニアックス ~ミラーレスと一眼レフで陶酔するオールドレンズの世界~

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デジタル一眼カメラにおけるオールドレンズ使用の第一人者・澤村徹さんの最新の著作が発売されたので、すかさず買ってきました。ここ数年、1 年に 1 冊以上のペースでオールドレンズ本を刊行し続けるペースの高さには脱帽します。

この書籍は、「日本カメラ」誌に掲載されていた同名の連載を単行本としてまとめたもの。そのため、今までのムック系の冊子とは少し毛色の違う書籍に仕上がっています。今までのムックは、ほとんどが入門書としての役割も兼ねていて、レンズマウントやマウントアダプタの解説、オールドレンズをデジタルボディにつけて撮影する手順から書かれていたので、そういうページは「うん知ってる」と思いながら読み飛ばしていました。むしろ「そういうのはいいからレンズ紹介や作例掲載にもっとページを割いてよ」と思っていたのも事実です。それに対して、今回の書籍は初心者向けの解説は最小限に留め、レンズと作例に最大限のページを割く構成になっています。
そういう意味では、今までのムックは「オールドレンズの間口を広げるために企画から練られた本」だったのに対して、この書籍はその名の通り「レンズマニアに向けて作られた本」ですね。なんたって、いきなり冒頭から CONTAX G 用 Hologon を掲載するというマニアックさなわけですから(笑。

オリジナルの連載が掲載されていたのが 2011/1~2013/12 のちょうど 3 年間。ミラーレスカメラの台頭によるオールドレンズ人気の高まりから、α7 シリーズの登場によるオールドレンズフルサイズ時代の到来まで、まさにひとつの時代をまとめた格好になります。掲載されているレンズも、メーカー・マウントともにバリエーション豊富で、ミラーレスに限らず DSLR 向きのレンズも含め実に豊富な 39 本。「なぜイエナ三兄弟(東独 Zeiss Jena の Flektogon 20mm、同 35mm、Sonnar 135mm の 3 本)を集めてしまうのか?」など、オールドレンズ好きならばニヤリとしてしまう切り口で紹介されていて、実に楽しい。でも、Jena はオールドレンズ沼でいえばまだまだ淵のほうにすぎず、Jena とか CONTAX G あたりで踏みとどまっている私はまだまだ甘いと言わざるを得ません。まあ、だってコシナ製フォクトレンダーみたいな、新品で買えて味もあるのに描写にハズレがないレンズが普通に買えてしまうと、そこだけで十分楽しかったりもしますからね。

レンズの解説としては、「昭和初期の日本文学に登場するような、深窓の令嬢がイメージだ」とか「さながら、真実だけを刻む速記者のようだ」とか、まるでワインの味や高級オーディオの音を評価するような表現で、思わず笑ってしまいますが、最近の解像度一辺倒、MTF 曲線やらチャート実写やらでレンズ性能を評価する業界やユーザーの傾向もどうかな、と思っていたので、逆に新鮮(笑。まあ、解像性能が至上であればわざわざオールドレンズに手を出す必要はないわけで、レンズのクセまで含めて愉しむ本道に鑑みれば、こういう情緒的な表現のほうが合っているのかもしれません。それぞれのレンズに対する澤村さんご本人の出会いや思い入れを絡めて書かれているので、共感も持てますね。

買ったばかりでまだあまり読み込めていませんが、じっくり読む価値のあるレンズ本だと思います。私はとりあえずイエナ三兄弟でまだ持っていない Flektogon の 2 本から物色していきますかね...。

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2014/10/24 (Fri.)

熾火

東 直己 / 熾火

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最近東直己ばかり読んでいますが、『駆けてきた少女』『ススキノ・ハーフボイルド』に続く、道警腐敗三部作(とでもいうのでしょうか)のラストを飾る本作まで一気に読んでしまいました。これも電子化されていないようだったので、図書館で借りてきました。もう本棚に紙の本増やしたくないので...。

本作は、ススキノ探偵シリーズとは別の「探偵・畝原シリーズ」と呼ばれるシリーズもの。過去作を呼んでいないので主人公・畝原のキャラは私にとって今回が初登場ですが、三部作の他の二作にもうっすら関わっているという設定になっています。
時間軸としては他の二作より少し後の話で、これまでに登場したものとは違う事件を扱っていながらも、結果的に過去の二作に登場した重要人物の結末を描いていて、ようやく一連の事件の全体像が見えてきた感じ。とはいえ、それぞれの物語が各主人公の一人称視点で描かれているため、道警やメディアの利害を骨格とした相関の全貌は想像するしかありません。結局、構造的な不正に対して個人が糾せることなんて限られた部分でしかない、ということを、東直己はわざわざ三部作に分けて描きたかったのでしょうか。

物語は、畝原がある場所で激しい虐待の痕を残した幼女を保護するところから始まります。そして畝原の恋人未満的な女性カウンセラー・姉川が拉致され、犯人から姉川と引き換えに幼女を渡せ...という脅迫の電話がかかってきて、という話。主人公が自分とは直接関係のない事件に首を突っ込んで、道警腐敗に絡む事件に巻き込まれていく、という他の二作品とは違い、主人公自身とその家族・友人が当事者になるという点では、サスペンスらしいスリルに満ちた作品。
ただ、話はなかなか先に進まず、残りページ数だけが減っていってやきもきさせられたと思ったら、とあるキーワード(人名)が登場したところでドミノ倒しのように話が進み、ラストはかなりあっけない幕切れ。事件解決してハッピーエンド、というわけでもなければ、数々の人生に大きな影響を与えた悪党を追い詰めるカタルシスもなく、肩すかしを食らったような感覚。もしかすると、凶悪事件の被害者が解決後に抱く感慨ってこんな感じなのかもなあ...と思わされました。

冒頭と終盤に出てくる虐待や死体の描写は文字で読んでいるだけでも嫌悪感をおぼえるほどに残酷で、ハッキリ言ってこんなに後味が悪い小説を読んだことがありません。また読みたいかと言われたらもう読みたくありませんが、『駆けてきた少女』を読み終わった後のスッキリしない気分にケリをつけられただけ、良かったかな。

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2014/10/18 (Sat.)

機動戦士ガンダム UC メカニック&ワールド ep7

機動戦士ガンダム UC メカニック&ワールド ep7

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ep1-3ep4-6 と買ってきた「グレートメカニック DX」誌の別冊ガンダム UC 特集『機動戦士ガンダム UC メカニック&ワールド』。そのラストを飾る ep7 版が発売されたので、さっそく買ってきました。アニメは ep7 でキレイに完結したものの、メカニックや設定考証の側面から最後の一滴まで楽しみ尽くすには、このムックは欠かせないわけですよ。

これまでのムック化が ep1-3、ep4-6 という塊だったので、いくら尺が長いとはいえ ep7 一本で一冊作るのは難しくないか、と思っていましたが、十分に読み応えのあるボリュームでした。ep7 の目玉 MS であるネオ・ジオングをはじめとして、フルアーマー・ユニコーンやバンシィ・ノルン関連の追加設定、それに ep7 で登場したゲスト MS(これもグスタフ・カールとゼータプラスにはじまり、シュツルム・ガルスやズサ、バウにシルヴァ・バレト...といろいろありました)など盛り沢山。とはいえ掲載している MS の数自体は従来より少ないので、その分それぞれの MS について丁寧に解説されているのが逆に嬉しかったり。

物語が完結した後ということでネタバレを恐れず語れるようになったからか、製作陣のインタビューも充実。特にストーリーの福井晴敏氏、監督の古橋一浩氏、作画監督の玄馬宣彦氏の三巨頭のインタビューが揃っていて読み応えがあります。それぞれの話を知ることで、細かな演出の意図をより深く知ることができ、今まで気がついていなかった部分もふまえてもう一度観返したくなりました。特に、クライマックスが満月になるように全体のタイムラインを調整した...という設定考証の小倉氏の話には震えるものがありましたね...。
全体的に、製作サイドのこだわりや思い入れが強く滲み出たシリーズでしたが、オールドファンを歓喜させた MS のアクションシーンの完成度は作監の玄馬氏のこだわりによるところが大きいとのこと。玄馬氏のこだわりはこれまでもスタッフへのインタビュー等で「玄馬大戦」と呼ばれてきましたが(笑)、福井氏や古橋監督まで納得して任せさせてしまう玄馬氏のこだわりがなければ、UC の世界観はなかったと言っても過言ではないでしょう。いっぽうで UC をマニアのための作品にしないためにそこのバランスに気を遣っていた、という福井氏の話も印象的でした。

サンライズ的には、ガンダムシリーズとしてはもう『G のレコンギスタ』とアニメ版『THE ORIGIN』に主軸が移っているため、UC 関連のコンテンツはこのムックがほぼ最後でしょうか。UC にどっぷり浸かった身としてはちょっと寂しくはありますが、このムックを読んで、改めて ep1 から順番に観返したくなりました。

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2014/10/14 (Tue.)

ススキノ・ハーフボイルド

東 直己 / ススキノ・ハーフボイルド

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駆けてきた少女』がどうにも不完全燃焼な終わり方だったので、関連作品である本作も読んでみました。とはいえまだ電子化されておらず、一方で紙版は絶版状態だったので、図書館で借りて読了。

本作の主人公は『駆けてきた少女』にちょっとだけ登場した、少女の同級生である松井省吾という少年。ススキノのホステスを恋人に持つ、頭のいい・だけど世の中をどこか斜めに見たところのある高校三年生です。受験生、それもまだ未成年でありながらススキノで飲み歩く日常...というのはやや現実離れしていますが、そこは創作の世界。この少年の視点で『駆けてきた少女』の事件の反対側の側面を描く、ススキノ探偵シリーズの派生とも言える作品になっています。

この松井省吾君のキャラクター設定が、どこか若い頃の「俺」そのもの。作者が同じだからバックグラウンドが似てしまうのは仕方ないですが、どちらかというと「俺」が四十路半ばのおっさんになってしまったが故に、二十代の頃の「俺」的なキャラクターとして社会の不条理に対峙させたかったんじゃないかなあ、という気がします。「俺」の若い頃と違う点と言えば、「俺」ほど酒に強くないところ(それでも高校生としてはかなり酒に強いほうだ)、「俺」よりもさらにひねくれた視点をもっているところ、それに「俺」と同じようにハッタリをかますくせに喧嘩はからきし弱いというところ。まさに「ハーフボイルド」なのが、大人の目線から見ると危なっかしくもあり、それが本作におけるスリルを生み出しています。

事件の顛末は『駆けてきた少女』で知っているので、では『駆けてきた少女』で省略されてしまった物語の経緯のほうに焦点が移るわけです。黒幕は『駆けてきた少女』にも登場した女子高生・柏木であることは間違いないんですが、ラストのどんでん返しはハッキリ言って予想外。事件のカギを誰が握っていたか、が最後の最後で明らかになり、その可能性は完全に見落としてたわー!と推理小説好きとしては負けた気分です(´・ω・`)。ススキノ探偵シリーズにしてもそうですが、完全に一人称で語られる物語のカラクリに嵌まった格好になりました。一人称視点と言えば、ススキノ探偵シリーズで表現される「俺」と客観的に見られる「便利屋」でこうも印象が変わるのか、というのはなかなか新鮮な体験でしたね。だからこそ、完全に松井省吾視点で語られるこの物語には、それ故の見落としがある...ということに、途中で気がつくべきでした。

両作を読んで感じたのは、北海道警察と北海道日報の腐敗事件(物語の中の話です)は、社会の構造悪であり、個人がどうこう足掻いたところで大勢に影響を与えることはできない、という東直己氏自身の諦観と、それ自体に対する憤りが噴出した作品である、ということです。話は面白いんだけど、オチが自分の手の届かないところで(あるいは、誰かの掌の上で)勝手に完結してしまっているので、結果的に作者の愚痴に付き合わされている感があります。もうちょっと物語としてまとめてほしかったよなあ...とは思いますが、これも社会悪に対する怒りの発露の一つの形なんでしょうね。
ま、私は私で懲りずにこのまま三部作の最後の一つも読んじゃうんですけどね(ぉ。

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2014/10/07 (Tue.)

駆けてきた少女

東 直己 / 駆けてきた少女

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先日再開した「ススキノ探偵シリーズ」の電子版を読み進めています。

本作は『探偵は吹雪の果てに』の 2 年後、「俺」は既に 47 歳になっています。私とはどんどん歳が離れていき、「最近のススキノの雰囲気や若者の風潮」に共感できなくなってきている「俺」にも少しずつ共感できない部分が増えてきています。偏屈なおじさんになっちゃったなあ、というか、偏屈をこじらせたまま歳を取るとこうなっちゃうんだろうなあ...という痛々しさがあります。ま、それでも独特の正義感に基づいて弱者を救おうとする姿には、共感が持てますが。

本作のストーリーは今までの作品とはちょっと毛色が違っています。今までは、自分の周囲にいる人間を助けるために行動し、対峙する悪もせいぜい数人レベルだったものが、今回は北海道警察や新聞社の腐敗という社会悪が相手。今までの「ススキノ探偵シリーズ」とはずいぶんテーマ性が変わってきたなと思ったら、これは 2003 年に実際にあった北海道警裏金事件をモチーフに書かれた作品のようですね。なるほど、やけに批判めいた言い回しが多いと思ったら、著者自身の怒りが投映されたものでしたか。
ちなみに私は 2003 年の夏から秋にかけてススキノ周辺で働いていたので、まさにこの作品の舞台になったススキノにいたことになります。まあ当時はプロジェクトルームに軟禁状態だったし、事件が明るみに出る直前くらいに東京に戻ったので、この事件自体を今まで知りませんでしたが...。

ストーリーは今までの作品に比べて幅が広く、登場人物も多いので、前半はかなり引き込まれて読んでしまいました。が、それぞれの登場人物の話の繋がりが見えにくく、最後まで繋がりきらないまま、いきなり尻切れトンボ的に物語が終わってしまいます。何この消化不良感。そりゃないよ...。
と思っていたら、この作品は単体で完結する話ではない、ということのようで。同じ東直己氏の著作である『ススキノ・ハーフボイルド』『熾火』との三部作で完結する作品だそうです。そりゃあ中途半端なわけだ。いくら「俺」といえど社会悪に一人ないし数人で対峙できるわけがないし、世の中で起きていることの全容を把握できるわけでもない...ということを、それぞれの物語の視点で描くことによりおそらく表現しようとしている、ということでしょう。確かに「自分の知らないところで物事が動いている」ということは人生においてよくあること。でも、単体の物語としてみたときに、この自分だけ置いてかれた感はどうすりゃいいの、ここまで話に付き合ったのに。

というわけで、この続きの話も読んでみることにします。ただ、残りの二作は電子化されていないんですよねえ。

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2014/09/29 (Mon.)

探偵は吹雪の果てに

しばらく止まっちゃってましたが、「ススキノ探偵シリーズ」の読書を再開しました。

東 直己 / 探偵は吹雪の果てに

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前作にあたる『探偵はひとりぼっち』での驚きのラストを読んで、

人生最大の変化を経て、自作の「俺」がどう変わっていくのか、続きが早く読みたくて仕方がありません。
と書きましたが、本作ではそのオチに対するいきなりのちゃぶ台返しから始まっていて、再び度肝を抜かれました(;´Д`)ヾ。まあ、「俺」の性格からいって家族のあるまともな生活を送れそうにないことは判っていましたが、ここまで潔く設定を切り捨ててくるとは。そりゃ映画もヒロインを固定しない『男はつらいよ』方式を採ってくるわけだわ。 さらには時代設定も一気に 15 年流れていて、「俺」がいきなり四十代半ばのおっさんになっています。向こう見ずな正義漢という性格は変わらないまま、歳だけ食って無理が利かなくなった「俺」。ハードボイルドさよりも中年の悲哀が前面に出てき始めました(笑。

今回のストーリーは、20 年ぶりに再会した、かつて心から愛した恋人からの依頼で、斗己誕(作品オリジナルの架空の地名で、旭川より少し北くらいの設定だと思われる)に住むある人に手紙を渡してほしい、という話から始まります。その場所は少し前に少年犯罪が起き、その犯人とみられる少年は現在も行方不明のままで...というところからストーリーがからまっていくわけですが、今回の話がまた『探偵はひとりぼっち』以上に「俺」がひとりぼっち。相棒の高田は序盤にちょっと出てくるだけだし、あとは途中で桐原(映画では松重豊演じる「相田」を部下にしていたヤクザの組長)が助け船を出してくれるくらいで、斗己誕を舞台におっさんになった「俺」が一人で謎に立ち向かう話になっています。
人の出入りのほとんどない田舎では住人の全てが顔見知りというだけでなく、ほぼ全員が何らかの利害関係で繋がっていて、その利害に波風を立てる余所者は排除される...というのはよくある話です。本作では、その人間関係のすべてがちゃんと伏線になっていて、クライマックスで芋づる式に謎が解けていく、という推理小説のお手本的気持ちよさがありました。最後は例によってなんとも救われない話でしたが、構成の巧みさはここまでのシリーズで随一じゃないでしょうか。そして、ラストシーンは切ない終わり...若気の至りとは違う、歳をとってからのどうにもならない切なさ、ってのも悪くないですね。

期待以上に面白かったので、このまま続きも一気に読んでいきたいところです。でも気になるのは既に続編の製作が決まっているという映画のほう。『2』が『探偵はひとりぼっち』からの映画化だったので、そのまま引き継ぐとこの『吹雪の果てに』が次の原作ということになります。大泉洋がいきなりおっさんになってしまうのか(といっても、ご本人の実年齢は既にこの作品に近づいていますが)、もう少し若い設定のまま本作を映画化するのか、あるいは未映像化の『バーにいる』『消えた少年』のどちらかを引っ張ってくるのか。映画オリジナルストーリーだとしたら、ちょっとやだなあ。

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2014/08/24 (Sun.)

オールドレンズ・ライフ Vol.4

澤村 徹 / オールドレンズ・ライフ Vol.4

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1 年ぶりの発刊となる、澤村 徹さんの『オールドレンズ・ライフ』最新号が発売されました。年に 1 冊ペースでの刊行が続いていて、澤村さんのオールドレンズにかける情熱に感心するとともに、こういうムックが定期的に発売できる市場の熱も実感しますね。

前号のテーマは「オールドレンズ・フルサイズ宣言」でしたが、当時はフルサイズでオールドレンズを堪能できるレンズは実質的に EOS フルサイズ機かライカ M くらいしかなく、Speed Booster のような特殊マウントアダプタを用いて APS-C 機でフルサイズ相当の画角を得る、というほうが現実的だったように思います。それが今は α7 シリーズの登場により、オールドレンズを本来の画角で使える環境がぐっと身近になりました。そういう意味では、時代がこのムック創刊の志にようやく追いついた、と言えるのかもしれません。

今号は大口径オールドレンズ、特に各社のフラッグシップである F1.4 以下のものを中心に取り上げています。とはいえいずれもそうそう手が出る価格帯のレンズではありませんが、別特集として廉価な大口径オールドレンズもまとめられています。特に国産オールドレンズや望遠系レンズでは大口径であっても比較的入手しやすいものが多く、現実的にはこちらのほうが狙い目かも。1980 年のタムロン 300mm F2.8 なんかも取り上げられていて驚きましたが(笑)、超望遠系レンズの被写体は MF だと辛いことが多いので、個人的には 135mm~200mm 級の大口径レンズのほうが良さそうだなと思います。

ボディ側で取り上げられているのは α7 シリーズとニコン Df。α7 シリーズは α7S の登場によってついに Hologon が実用レベルになりました。35mm カメラ用のほぼ全てのレンズが装着できると言って良く、去年の夏までに α7 シリーズが発売されていれば、前号の内容はもっと違ったものになっていたかも。
ニコン F マウントはフランジバックの関係でレンズの選択肢が少なく、ニコンのオールドレンズか M42 マウント、あるいは Y/C やライカ R のマウント改造くらいしかありません。EOS よりも選択肢が限られるわけですが、非 Ai ニッコールレンズが自動絞り/Exif 連動で使えるのがメリットなので、実質的にはニコンのオールドレンズをデジタルで愉しむためのボディ、ということになります。

また、巻末には主要なカメラアクセサリメーカーとマウントアダプタメーカーの特集記事が掲載されています。これがまた、ちゃんとそれぞれのメーカーに取材を実施しての記事という気合いの入りよう。工房の取材や代表へのインタビューなど、それぞれを別途数ページの記事に独立して掘り下げてほしいほどの充実度です。また、マウントアダプタに関しては、各メーカーごとに発売済みのアダプタ一覧表が掲載されているのも実用度高し。

最新のカメラやレンズと違って、オールドレンズはどんどん新しいものが出てくる世界ではありませんが、技術の進歩によって次々に新しい愉しみ方が開発されていく、という状況は非常に興味深いものです。今号は同シリーズの中でも、集大成的な内容の濃さと言って良いでしょう。
私は、MF の単焦点レンズは純粋なオールドレンズよりもむしろコシナの現行フォクトレンダーのコストパフォーマンスの高さに気を取られがちでしたが、これを読んで、久しぶりに中古カメラ屋巡りをしてみたくなりました。

投稿者 B : 20:40 | Book | Camera Mook | コメント (0) | トラックバック

2014/08/23 (Sat.)

愛蔵版 機動戦士ガンダム THE ORIGIN XII めぐりあい宇宙編

安彦 良和 / 愛蔵版 機動戦士ガンダム THE ORIGIN XII -めぐりあい宇宙編-

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「我々は三年待ったのだ!!」

と言いたくなるほどに待たされた、愛蔵版ガンダム THE ORIGIN 完結巻がようやく発売。通常版コミック完結巻の発売からじつに 3 年ですよ。これまで、半年に 1 冊ペースで刊行されてきた愛蔵版ですが、完結巻だけ待てど暮らせど発売されず。まあ、通常なら単行本 2 冊分を 1 巻にまとめているところ、この巻だけボリュームが足りていませんでしたからね。加筆分等、もろもろのネタが揃うタイミングを待ってのリリースとなりました。

本編はコミック通常版で読んだので知っていましたが、やはり大判で、かつカラーページつきで読むとさらに深みが増しますね。演出ひとつとってもアニメとは異なる尺/コマ割の使い方をしていて、安彦先生的に大事にしたかったポイントはどこなのか、というのがよく伝わってきます。クライマックスで、主人公であるはずのアムロよりもむしろシャアとセイラにフォーカスしているあたり、過去編を掘り下げた『THE ORIGIN』ならではなんだろうな、と思います。

足りないページを埋めるコンテンツは予想通り外伝系エピソード。『THE ORIGIN』の前日譚と後日譚をいくつか、既存の刊行物に収録されたものも含めてまとめられています。本編だけで完成された作品なので、これは読まなくても支障ありませんが、これを読むとより理解に深みが出、なおかつ『Ζ』以降へのミッシングリンクが繋がります。特に後日譚のほうは安彦先生自身が気負わずに、自由にキャラクターを動かしてみた遊び心が滲み出ていて、楽しい。

愛蔵版がようやく終わったと思ったら、安彦氏は既にアニメ版『THE ORIGIN』の総監督として活動されています。コミックの連載開始前には病気で入院されていた時期もあるそうですし、年齢も年齢なので、体調にはくれぐれも気をつけつつ、アニメ版『THE ORIGIN』を創り上げていただきたいところです。

投稿者 B : 22:42 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2014/07/24 (Thu.)

孤独のグルメ 巡礼ガイド

巡礼ガイド!そういうのもあるのか。

というわけで、さっそく買ってきました。

孤独のグルメ 巡礼ガイド

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ちゃあんと、コミック版(新装版)と同じ判型で作ってあるところが憎いじゃないか。

まあ、Season3 までの聖地は既に巡礼コンプしてしまった私にとっては今さらガイドなんて必要ないぜ!と思っていたら、

た、確かに...(;´Д`)ヾ。

このガイドには、Season1~3 の中で特に人気の高かったお店から中心に、登場店の半分強のお店が取り上げられています。

孤独のグルメ 巡礼ガイド

写真はドラマの映像だけじゃなくて、(全てではないものの)改めてお店に取材をしたと思われる写真がたくさん使われているのが嬉しい。
ところで、Season1 に登場した東長崎の「せきざわ食堂」、最近ついに閉店されてしまったんですね...お疲れさまでした&ごちそうさまでした。

孤独のグルメ 巡礼ガイド

コンテンツはお店の紹介だけでなく、久住さん&松重さんのインタビューも掲載。松重さんのインタビューは先日の「SPA!」からの再掲でしたが、久住さんのは今回新録なのかな。
過去のドラマでの登場店で久住さんが特に気に入っているお店の話とか、それぞれの店主とのエピソードとか、「こどグルっぽい」お店の条件とか、そういうお話。

孤独のグルメ 巡礼ガイド

ファンの反響についてもけっこう言及されていて、やっぱりご本人自ら Twitter や Facebook でファンとの交流を積極的にやっているだけあって、いろいろ見てくれているんだなあ、というのを実感しますね。

孤独のグルメ 巡礼ガイド

あと、ドラマのお店だけでなく、原作に登場したモデル店に触れられているのもポイント。しかも、ここにもちゃんと取材に行っているのがエライ(笑。
漫画とドラマは基本的に別物、というスタンスでありながら、ドラマ側に原作の設定を細かく絡ませているのが本作のマニアックポイントなので(笑、より深く楽しむには原作への理解は欠かせません。

基本的にはこれから行こうと思っている人向けのガイドですが、ひととおり巡礼した後に読むのも、それぞれのお店の味が脳裏に蘇ってくる感じで、これはこれで罪作り。二巡目を巡りたくなってきてしまいます。ああ、腹が減った...。

さあ、次はどの店に、何を入れに行こうか。

投稿者 B : 21:56 | Book | コメント (0) | トラックバック

2014/06/03 (Tue.)

SPA! に『孤独のグルメ』最新作が掲載

「新橋へ ガード下ゆき ナポリタン」

ドラマ『孤独のグルメ Season4』の放送開始まであと 1 ヶ月余りとなりました。それに伴ったクロスメディア展開として、今日発売の週刊 SPA! に原作コミック『孤独のグルメ』の最新作が掲載されています。東大本郷キャンパスの学食が舞台となった前作から約 10 ヶ月ぶり、今回の舞台は:

SPA! 2014 年 6/10 号

有楽町ガード下の韓国料理

なんと有楽町ガード下!

有楽町~新橋へと続く JR ガード下といえば、サラリーマンの飲みの聖地とも言える場所。ある意味、最も「こどグルらしい」場所であるにも関わらず、これまでこの場所が舞台となることはありませんでした。ドラマ Season4 の開始に合わせて、満を持しての登場というわけです。

有楽町ガード下の韓国料理

私もいちサラリーマン、この界隈で飲むことは少なくありません。個人的には、ドイツビールがうまい「JS レネップ」がお気に入り。

でも、今回の登場店は最も飲み屋さんが密集しているこのエリアではありません。このガード下に入り、線路の真下に伸びる薄暗い通路を新橋に向かって歩いて行くと、

有楽町ガード下の韓国料理

...シャッターが並ぶ異様な光景が出現します。
このあたり、よく歩いているのに、ここに足を踏み入れたことはありませんでした。というより、入っていい場所という認識がなかった(汗

ここからさらに歩いたところに、作品のモデルとなったお店が営業しています。

有楽町ガード下の韓国料理

ゴローのこの顔ですよ!(笑

続きは、ぜひ週刊 SPA! 本誌にて(扶桑社の回し者ではありません

孤独のグルメ

本誌にはマンガ以外にも、ドラマに絡めて松重豊さんへのインタビューも掲載されています。

なるほど、Season4 のネクタイはグレードットか(意味深

孤独のグルメ

他には、マンガ・ドラマ両方の登場店で行きたいお店ランキングとか。私はだいたい行ったので、軽く優越感に浸りながら読みました(笑
上位店にはちゃんと取材が入っています。また、『孤独のグルメ』のファンブロガーさん何名かのコメントも掲載されていました。えっとウチには取材依頼来てないんですけど(←

なお、続けて来週号にも最新作がまた掲載されるということなので、忘れずに買おうと思います。

SPA! 2014 年 6/10 号

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2014/04/24 (Thu.)

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ

ガンダム UC ep7 の公開が近づいてきましたが、先日『虹にのれなかった男』を読んだら、UC の後のブライト関連の話ってどうなったんだっけ?というのが気になったので、電子版で『閃ハサ』を読んでみました。

富野 由悠季 / 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ

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富野氏の小説は『ベルチル』を読んだことがあるんですが、この作品も相変わらず読みづらいですね...。文章が分かりやすい分かりにくいというより、台本のト書きを読まされている感。まあもともと小説家ではないので、文学的なものを求めてはいけないんでしょうが。

ストーリー的にはほぼ全編にわたって宇宙にも上らず、オーストラリア大陸だけで物語が完結してしまうこと、モビルスーツ戦のシーンが少ないこと、そしてガンダムシリーズの中で最も悲惨なラスト、といったあたりで...読後の感想としては、何とも微妙。面白くないわけではありませんが、モヤモヤしてしまいますね。
まあ、先日も書いたとおり、Ζ 以降は自らの手でガンダムを壊そうとし続けてきた富野氏だからこそ、ファーストガンダムの登場人物が出てくる最後の物語をこういう終わりにしたことは、いかにも富野由悠季のやりそうなことね(←富野節)、という気もします。

それにしても、『虹にのれなかった男』を読んだ後では、『UC』の役回りが例外的だっただけで、結局ブライトは最後まで若者をよい方向に導けないまま軍務を終えることになったのだなあ、と思わずにはいられません。

タイミングのいいことに、今度の『ガンダム UC episode 7』では恒例のゲスト MS として、この『閃ハサ』に登場した連邦軍の量産機「グスタフ・カール」が登場するらしいじゃないですか。まだ正式発表ではなくて雑誌の早売りからのリークのようですが、ほかにもゼータプラスも登場するらしいし、これは期待。
まあ『閃ハサ』は『UC』の 9 年後の物語なので、ちょっと時間軸的におかしいというツッコミはありますが。ジェガンの派生機種的な位置づけなので、先行試作というような設定で出てくるんですかね。

ep7 にはもしかしたら他にも『閃ハサ』への繋ぎになるような設定が出てくるかもしれないので、そのへんも注目して鑑賞したいと思います。

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2014/03/28 (Fri.)

向う端にすわった男

東 直己 / 向う端にすわった男

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探偵はひとりぼっち』に続いて読了。物語的には前後していますが、あまりそういうことを気にせずに読める短編集になっています。『向こう端にすわった男』『調子のいい奴』『秋の終わり』『自慢の息子』『消える男』の 5 作を収録。
「ススキノ探偵シリーズ」では、主人公の「俺」が関わる事件の合間に、飲み屋のツケを回収したり、強請られて困っている人を助けたり、人捜しをしたり、知り合いのホステスの子どもの面倒を見たり、ゲームセンターでペンゴに興じたり、賭場で日銭を稼いだり、山奥で大麻を栽培したり(ダメだろ(笑))という日常を送っています。この短編集は、ある意味でそういう「俺」の日常であったり、長編にするほどではないちょっとした事件をまとめた作品。どうにも救われないオチ、がこのシリーズに共通する読後感で、本作も基本的にはそういう手触りの短編ばかりですが、悲壮感よりも軽いタッチの作品が多いのが、重い話の続く本シリーズの中にあって、少しホッとさせてくれます。たまには、こういうスタイルの作品もいい。

このシリーズ、個人的には今まで「俺」の行動理由がもうひとつ解らない部分があったのが、実は純粋に正義感や人情という部分に動かされての話なんだなあ、というのが、この短編集を読んでよく解りました。ススキノを愛し、ススキノの街で困っている人がいたら助けずにはいられないのが「俺」であり、同じ気持ちでススキノを見つめ続けているのが東直己という作家なんだろうなあ、ということです。短いエピソードの集まりだけに、そういうエッセンスが凝縮されていて、なかなか良かった。

ううむ、また、ススキノで飲みたくなってきました。

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2014/03/26 (Wed.)

機動戦士ガンダム UC 虹にのれなかった男

福井 晴敏、葛木 ヒヨン / 機動戦士ガンダム UC 虹にのれなかった男

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そういえば、一年前に一話目だけ読んでそのまま忘れていたガンダム漫画が単行本化されていたことに気づき、今さらながら読んでみました。既に電子版が発売されていたので、電子版で読了。
単行本化、というより、単行本一冊で完結。もともとそういうボリュームを前提として原作が用意されていたんでしょうね。

まず大事なことをネタバレしてしまうと、本作にはガンダム UC の登場人物は(ブライト以外)出てきません!これでタイトルに『機動戦士ガンダム UC』を冠するのはちょっと狡いんじゃないの、と思いますが、UC に至るまでのブライトの生き方と後悔の念を回想した作品という意味では、UC の世界観を裏付けることができていると言えるでしょう。歴代のガンダムパイロットと同じ艦に乗っていながら、必ずしも彼らを正しい方向に導けたことばかりではないブライトの、どちらかといえば悔恨のほうが強い想い。

「かつてガンダムに乗った者たちと同じく、君もガンダムに選ばれたのだと思いたい。いつもそれは、結果的に必然だった...良くも悪くも、だがな」
「状況に潰されるな。絶望を退ける勇気を持て。君がガンダムのパイロット――ニュータイプであるなら」

UC episode 5 でバナージ・リンクスにかけたこれらの言葉がどういう気持ちから出てきた言葉か、ということの裏を読めただけでも、この作品を読んだ意味はあったと言えます。

本作の原作は『ガンダム UC』と同じく福井晴敏氏。作品の登場人物が、半ば独白に近い形で作中に描かれなかった想いを語る、というスタイルで言えば、UC に関連して開催された朗読劇『赤の肖像 ~シャア、そしてフロンタルへ~』や『機動戦士ガンダム UC FILM&LIVE 2012 Reader's Theater "hand in hand"』(いずれも ANIMAX でたまに放送されています。後者は UC ep6 の BD 初回限定版の特典ディスクにも含まれていました)に似たようなやり方をコミックという形態で表現したもの、と言えるでしょう。文字で読むと長ったらしくて苦痛な福井節(笑)も、朗読劇や漫画だとスッと入ってきてしまうから不思議なものです。

Kindle だと明日(27 日)まで半額セールをやっているので、読むなら今のうちに(^^;;。

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2014/03/21 (Fri.)

漫画版 野武士のグルメ

久住 昌之、土山 しげる / 漫画版 野武士のグルメ

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『孤独のグルメ』原作者・久住昌之氏が関わったグルメマンガの新作単行本が発売されたので、すかさず読んでみました。
久住氏による同名のエッセイ集に基づいたコミカライズで、幻冬舎の Web サイトに連載されている作品 5 作+新規書き下ろし 4 作で構成されています。

『野武士のグルメ』試し読み第1話 九月の焼きそビール - 幻冬舎plus

Web で読んでいたから単行本はいいか...と思っていましたが、半分近くが書き下ろしとあっては、買わないわけにはいきません。電子版がないようなので、紙で購入。
原作のほうはエッセイなので久住さんご本人の話として書かれているようですが、漫画版は「香住武」という定年退職した 60 代男性が主人公。漫画版『孤独のグルメ』の井之頭五郎は個人事業主ということもあって自由人、どこかプレイボーイっぽさも漂わせたおじさんでしたが、香住武はあくまで普通の元サラリーマン。キャラの濃さはありませんが(笑)こちらのほうが、より身近に感じられます。

漫画版 野武士のグルメ

でも、台詞回しはやっぱり久住流。これこれ、これですよ!

でも、全体的にゴローよりもモノローグの口数が多い(笑。まあゴローも最近の作品ではだんだん口数が増えてきたので、ドラマを経てこれが最近の久住流、ということなのかもしれません。

漫画版 野武士のグルメ

そして『孤独のグルメ』と違って飲酒シーンが出てくるのも、いいところ。白い飯もいいけど、やっぱり酒飲みとしてはうまい肴にうまい酒。それを主人公と共感し合えるのがいい。料理の画も『孤独のグルメ』に負けず劣らず、うまそうです。
漫画版 野武士のグルメ

この飲みっぷりの良さときたら!「さぁ殺せ!!」ときましたよ(笑

でもうまい店ばかりじゃなくて、がっかりした話や失敗した話も少なくなく、やっぱりこれも『孤独のグルメ』と根っこが同じ話なんだなあ、と思います。

井之頭五郎はなかなか内面を見せない(まれに登場する小雪がらみのエピソードくらいか)うえに意外性のある言動が多いファンタジスタ(笑)ですが、香住武は「定年退職した初老オヤジの独白」という感じで内面をどんどん見せてくるので、読んでいて気持ちが入り込みやすいのが『孤独のグルメ』とは異なる『漫画版 野武士のグルメ』ならではの魅力だと思います。こどグル好きなら、一読して損はないのでは。

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2014/03/19 (Wed.)

探偵はひとりぼっち

東 直己 / 探偵はひとりぼっち

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「ススキノ探偵シリーズ」、電子版でちまちま読み進めています。今回は、映画『探偵は BAR にいる 2 ススキノ大交差点』の原作となったお話。本当は、刊行順的にはこれの前に短編集『向こう端にすわった男』というのがありますが、前作からの繋がりでは続けてこの『探偵はひとりぼっち』を読んだ方がいいという話を聞いて、順番を入れ替えてみました。

映画を観た後に原作を読んで思うのは、原作と映画では話のプロットは同じだけど、作品としての作りが随分違うこと。犯人の登場の仕方からして、原作ではある程度流れがあるのに対して、映画では伏線はあるもののいきなり現れています。それに、物語の鍵を握る女性キャラクターも原作は初老の占い師なのに対して、映画ではヒロインという扱い。やはり、映画は『寅さん』のように毎回ヒロインを代える形での長期シリーズ化を企図しているんでしょう。ただ、原作の占い師に関しても、途中からさっぱり存在感がなくなってしまい、役割が中途半端。原作も映画も、形は違えど広げた風呂敷をたたみ切れていない、という点では共通しているな、というのが私の感想です。

タイトルの『探偵はひとりぼっち』は、政治絡みの事件に首を突っ込み、自分の庭と言えるススキノで孤立していく「俺」を的確に表現していて、映画のサブタイトル『ススキノ大交差点』よりも内容に合っていると思います。また、今まではススキノの人脈を駆使して事件解決していた「俺」が、半ば孤立無援状態で謎に挑んでいくスタイルは、今までの 3 作とは随分感触が違って、真犯人を知っていても手に汗を握るものがありました。そういう従来とのスタイルの違いこそ顕著ですが、それ以外にも「俺」が徐々に歳を取って精神的・身体的に変わっていく様子や、人との出会いによってもスタンスに変化が顕れる様子が、シリーズものにありがちなマンネリ化を防いでいます。スーパーマンではなく、ちょっと喧嘩が強く、向こう見ずで熱血漢なだけの「普通の人間」が主人公だからこそ、我々もこういう変化に共感できるのでしょう。

それにしてもオチには本当に驚かされました。確かに、映画の作り的にはこういうエピソードは入れていきづらいだろうなあ、という製作サイドの大人の事情が分かる気がしました(笑)。人生最大の変化を経て、自作の「俺」がどう変わっていくのか、続きが早く読みたくて仕方がありません。

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2014/03/15 (Sat.)

PlayStation 4 ができるまで -日本発売までの 367 日間

西田 宗千佳 / PlayStation 4 ができるまで -日本発売までの 367 日間

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ジャーナリスト西田宗千佳氏の新著を読みました。とはいっても前著『顧客を売り場に直送する』と同様、インプレス AV Watch の連載『西田宗千佳のRandomTracking』および MAGon『西田宗千佳のRandom Analysis』に掲載された記事の再編集で構成されたものです。電子版のみの販売で、主要な電子書籍ストアでの取り扱いがありますが、私は発売元のインプレス MAGon から直接購入。MAGon は DRM フリーの EPUB で配信してくれるので、取り回しが良いんですよね。

基本的には既出記事の焼き直しなので、MAGon を購読していればわざわざお金を払って買うほどのこともないのですが、私は去年あまりにも忙しくて IT 系のニュースを拾い切れていなかったし、MAGon もほぼ斜め読み状態だったので、改めてまとめ読みできるのはありがたい。
製品発表から日本発売までの 367 日間に、西田氏が SCE のアンドリュー・ハウス社長や PS4 アーキテクトのマーク・サーニー氏、ワールドワイドスタジオのプレジデント吉田修平氏らに対して取材したインタビューを中心に、時系列にまとめたものです。IT 系ジャーナリストの西田氏らしく、PS4 のプラットフォームやアーキテクチャ、ビジネスモデルなどが軸で、ゲーム内容に触れた話が少ないため、ゲーム好きな人よりもテクノロジー好きや業界関係者向けの内容と言えるでしょう。後半には MS の Xbox 関係者への取材も交え、PS4 と Xbox One が目指すものの共通点と相違点を整理してあるあたりも、業界が向かっていこうとする方向を把握するという点で興味深い。

PlayStation にしても Xbox にしても、PS3/Xbox 360 世代までは結局は「いかにゲーム機単体のハードウェア性能を高めてゲーム体験を向上させるか」の競争だったのに対して、スマートデバイス/ソーシャルゲームの隆盛とコンソールゲーム市場の縮小をふまえ、PS4/Xbox One では「いかにゲームを遊んでもらうまでの敷居を下げるか」「ビッグタイトル以外でもビジネスが成立するようなエコシステムを作るか」「ソーシャルネットワークをどう巻き込むか」「クラウド技術をどう利用するか」といった点に、各プラットフォームの工夫と差異化の軸が変化してきているのは事実でしょう。ソーシャルゲームに代表されるフリーミアムモデル中心のライトゲームからコンソールらしいコアゲームへのブリッジをどう架け、裾野自体は広がっているゲーム人口をいかにピラミッドの上の方に引っ張り上げるか、の戦いと言ってもいいのかもしれません。そういう意味では、プラットフォームやビジネスモデルの視点から俯瞰することで、ゲーム業界の次の未来を占う材料になる一冊と言えます。
また、既に PS4 が手許で動かせる状況で、この著書を読みながら PS4 を触ることで、発売前に示されていたビジョンがどういう形で具現化されたか、を改めて確認してみるのも面白い。

ただ、そうは言ってもまだまだ国内受けする PS4 のゲームタイトルが少ないことは事実なんですよね。買ってプレイした人たちは異口同音に『龍が如く 維新!』が面白い、と言っていたりするのですが、私は既にゲーマーでなくなって久しいからなあ...。PS4 がプラットフォームとして挑戦的であればあるほど、「自分にとってのキラータイトル」がまだ存在しないことが惜しい。ここはやはり、無料体験版や Live from PlayStation で自分が楽しいと思えるゲームを探してみるかな...。

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2014/03/01 (Sat.)

禁断の魔術

東野 圭吾 / 禁断の魔術 ガリレオ 8

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前作『虚像の道化師』に続いて、図書館の貸出順番待ちが回ってきたので、借りてきて読了。

今回も短編集で、収録されているのは「透視す」「曲球る」「念波る」「猛射つ」の 4 編。うち、ドラマ化されたのは「曲球る」「念波る」ですが...今回は、これまで以上に事件解決に物理学が関係ない話が多いです。最近の作品を読むと、東野圭吾という作家は本来の『ガリレオ』シリーズ的な謎解きのミステリーよりも、犯人や被害者の人物像に焦点を当てた物語の方が本筋なのだろうなあ、と実感します。

前の三話は、正直微妙だなあ...と思いながら読んでいたんですが、最終話「猛射つ」が良かった。書籍の約半分のボリュームがある、長編とまではいかないけどセミ長編(なんだそれ)になっていて、著者の力の入れ具合が分かります。それもそのはず、テーマは「科学や発明は使い方次第で人類を豊かにする道具にもなれば、殺傷性を伴う恐ろしい武器にもなる」という、常に科学者に突きつけられている表裏一体の理に、真正面から向き合っているから。最後の解決の仕方がいかにもガリレオらしくて(それも、福山ガリレオをイメージして書かれたんだろうな、という体で)なかなか痺れました。これ、ボリューム的には映画にはならないけれど、ドラマの 2 時間スペシャルくらい製作されてもおかしくない話。

最後の締め方が、ちょっと完結っぽいテイストだったのも少し気になりました。テレビ的にはもう少しシリーズを引っ張りたいところでしょうが、シリーズ的に避けては通れないテーマを扱ってしまったこともあり、ネタ的にはそろそろこのへんが引き際という気も。なかなか難しいですね。

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2014/02/21 (Fri.)

消えた少年

東 直己 / 消えた少年

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バーにかかってきた電話』に続くススキノ探偵シリーズ第 3 弾。前作でもののついでに助け、〈ケラー・オオハタ〉のマッチを渡した女性からの依頼で始まる物語。

タイトルにあるとおり、行方不明になった少年を探す話ですが、これが前 2 作とは違ったスリルに満ちた展開で、ハラハラしながらも一気に読み進めずにはいられないくらいに没頭しました。今までは、誰かが殺されてその真相に迫っていく...という展開だったのに対して、本作は行方不明の少年の安否が分からず、仮に生きていたとしてもいつ殺されるか分からない、そして犯人の正体も分からない...という、手に汗握るストーリー。映像化されておらず、小説で初めて読むエピソードだったこともあり、最後まで緊張感を持って読み切りました。

3 作目ということもあって、物語の常連である相棒の高田(映画でのキャストは松田龍平)、桐原組組長(同、片桐竜次)と相田(井之頭松重豊)、新聞記者の松尾(田口トモロヲ)あたりのキャラがだいぶ定着してきました。それぞれのキャラが、どういったタイミングでどう絡んでくるか、が掴めてきた感じ。

最初の被害者の殺され方だったり、真犯人の性癖だったり、クライマックスのアクションシーンだったり、文字を読んでいるだけでも気分が悪くなってしまいそうな、なかなか凄惨な話でした。映画化にあたり、このエピソードがスキップされたのも納得がいきます(笑。そして、犯人の殺人の理由が救いようのないほど身勝手なものだというのも、このシリーズに共通する要素ではありますが、それにしても狂気だなあ。だからこそ、最後まで止められずに読んでしまったわけですが。

このシリーズの文体は、辺におどけたり、皮肉ってみたり、無駄な言い回しが妙に多いのが特徴ですが、逆にその特徴こそがこのシリーズの雰囲気を作っているのだと思います。読んでいる相田は、気がつけば自分も周囲の状況をシニカルな感覚で受け止めたくなるし、人混みの中では背後からならず者の集団が襲ってくるのではないか、というありもしない緊張感に包まれがちになります(笑。
今までのシリーズとは違い、ヒロインとのロマンスの要素が入ってきているのも印象的でした。もし実写で安西春子をキャスティングするとしたら、どの女優さんがいいかなあ...。

この次は、映画『探偵は BAR にいる 2』の原作となったエピソード。むしろ結末を知らない話のほうがワクワクが持続することを今回実感しましたが、これはこれでさらっと読んでしまいたいと思います。

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2014/01/19 (Sun.)

虚像の道化師

東野 圭吾 / 虚像の道化師 ガリレオ 7

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真夏の方程式』を観たと思ったら、以前図書館で予約しておいた本の順番がようやく回ってきたとの連絡があったので、借りてきました。というか予約したの『真夏の方程式』の原作と同時なんですけど、こっちのほうが 5 ヶ月も遅いとは(;´Д`)ヾ。

映画の原作とは違って本作はこのシリーズらしい短編集。とはいえ昨年のドラマ 2 期で映像化されてしまっているため、ストーリーとしては既に知っているものばかりです。大沢たかおが新興宗教の教祖を演じた「幻惑す」、ゲストに大島優子を迎えた「幻聴る」、同じく香椎由宇がヒロインを演じた「偽装う」、蒼井優が女優役を怪演した「演技る」の 4 編。以前のドラマ化に比べて 2 期はかなり原作を改編した脚本になっているのね、というのが改めて原作を読んだ感想で、特に「偽装う」はトリック以外は全く別の話だし、「演技る」も原作とドラマではオチが正反対。映像化にあたっては簡略化したりメリハリをつけるために多少ストーリーをいじることはあると思いますが、「演技る」は原作のほうがぜんぜん良かったなあ。ドラマでは蒼井優の芝居の迫力に圧倒されてしまいましたが、原作を読むとドラマ版の設定はただの狂人...。

原作のほうに話を戻すと、やはりシリーズを重ねるごとに物理学との関連性が薄くなり、次第に単なる推理小説になってきているのを感じます。物理学縛り、というのはネタ的に厳しいのかもしれませんが、これなら加賀恭一郎シリーズで良いのでは、という作品の割合は高まっているし、何よりも湯川学というキャラクターが初期の「変人」から、ドラマ版の福山ガリレオに近づいているのが気になるところ。
まあ面白いし文章のテンポが良いので一気に読んでしまったわけですが。ちなみに同じく図書館で予約中の続編『禁断の魔術』は、いつになったら順番が回ってくるのでしょうか(笑。

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2014/01/05 (Sun.)

小説『清須会議』

冬休みの間に読破しました。

三谷 幸喜 / 清須会議

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映画を観たときから、これの小説版ってどんな感じなんだろう?そういえば三谷幸喜の文章って読んだことないなあ、というのがずっと気になっていて、電子版で読了。

ストーリーは当然映画と同じわけですが、描き方がずいぶん違う。読む前は、台本がそのまま文章になっているような小説だったらどうしよう、という心配もありましたが(笑)そんな心配は無用でした。
物語は、基本的に登場人物の誰かのモノローグまたは手記という形で綴られていきます。それ故に、細かな場面描写よりも登場人物のその時点での心情描写に重きが置かれていて、映画で「あのときこの人物が何を考えていたのか」がより鮮明に浮かび上がってきます。羽柴秀吉のどこかとぼけた中にある狡猾さ、柴田勝家の想像以上の直情さ、丹羽長秀の苦悩、お市の恨みの深さ、そういった人物の、映画の中では描かれなかった「行間」が読めて実に面白い。読みながら、これは「小説」というよりもむしろ俳優陣に本読みの前に各キャラクターの心情を理解させるために書いた資料なのではないか、という気分にさえなりました。三谷幸喜は脚本を当て書き(配役を見て、その役者をイメージしながら書くこと)することで有名ですが、いかにもそういうキャラクター設定になっていて、読みながら役者の顔や身振りが想像できてしまう上に、にやりとさせられる場面も数多く。芝居やアニメ、漫画ならともかく、活字を読んで吹き出してしまう経験なんて滅多にないものです(笑。

映画単体でもとても面白かった作品ですが、小説を併せて読むことでより深まったように思います。もしまだ映画しか観ていないなら、これから原作も読んでみることをオススメ。

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2013/12/23 (Mon.)

バーにかかってきた電話

東 直己 / バーにかかってきた電話

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前作『探偵はバーにいる』に続いて、電子版で読了。
本作は映画『探偵は BAR にいる』の原作となった作品なので、ストーリーはひととおり把握していましたが、これが活字になったらどう見えるんだろう、というのは気になっていました。

このけっこう長い話(まあ、主人公「俺」のモノローグの中には本筋にあまり関係ない与太話も多いけど)を 2 時間の枠に収めるとあって、原作からみると映画版ではストーリー展開や人間関係を解りやすくする方向に、大胆にデフォルメされていたんですね。特に、映画では「俺」と高田が手がかりを見つけたらとにかくそこに突撃、という感じだったのが(笑)小説ではちゃんと探偵らしく、いろいろ調べたり、聞き込みに廻ったり、重要人物に揺さぶりをかけるエピソードが書き込まれていて、話の展開としては面白かったです。依頼人である「コンドウキョウコ」の正体を映画で観て知ってしまっているのでオチに至る高揚感はありませんでしたが(ただしクライマックスの大泉洋と小雪の芝居は良かった)、原作から読んでいたら騙されていたかもしれません。逆に言えば、映画版は観客にはどうしても声色で依頼人の目星がついてしまうし、そもそもキャストを見ればほぼ判ってしまうので(笑)あえて謎解きよりもそこに至るプロセスに焦点を当てたのでしょうね。

バーにかかってきた電話

話としては原作のほうが面白かったですが、映画は映画で各キャストの演技が良かった。映画版は「映画らしさ」を意識して作っているんだろうなあ。原作つきの映画って、原作を読んでしまうと映画版がどうにもチープに見えてがっかりすることが少なくないですが、このシリーズはうまく映像化を成功させていることを、原作を読んで改めて実感しました。冬休みは続編も読み進めて、映画『探偵は BAR にいる 2』とも比べてみたいと思います。

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2013/12/15 (Sun.)

顧客を売り場に直送する ビッグデータがお金に変わる仕組み

西田 宗千佳 / 顧客を売り場に直送する ビッグデータがお金に変わる仕組み

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前著『スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場』から約 1 年半ぶりとなる(途中、既存記事の再編集+書き下ろしの『加速する日本の電子書籍』はありましたが)、ジャーナリスト西田宗千佳氏の新著を読了しました。今回は紙版・電子版同時発売だったので、Reader Store で電子版を購入。

タイトルからすると、西田氏にしては珍しくマーケティング・セールス寄りの視点の話かな?と思っていました。が、実際はデータとテクノロジーをどうビジネスに活かすか、そしてそんな時代に消費者としての我々はどういう姿勢で生活すべきか、という、いつもの同氏の視点の延長線上にあるもので、ある意味安心しました(笑。ただ、クラウドとスマートデバイスの発達により、製品やサービスの価値はそれ単体で完成するものではなく、その裏にあるデータをどう使い、どう見せるかが最終的な体験価値となるのが 2010 年代。ここ数年で西田氏自身の興味や取材の対象がコンシューマー向けの IT・家電業界のみならず、IT が世の中にもたらす変化全体に拡がってきているのは、そういう世の中の変化に呼応してのことだと思います。

本書の内容は、これまでに MAGon の『西田宗千佳のRandom Analysis』に取材記事として掲載されたものを「ビッグデータの活用」という文脈で再構成したものです。なので、MAGon を購読している私としては話そのものは知っている内容だったわけですが、これまで毎回バラバラなテーマで取材しているように見えていたものが、こうやって一本のストーリーに落とし込まれると、急に繋がって見えてくる。人々の行動履歴を収集・分析し、個人情報と紐付けない形で「属性」として扱うことで分かること/提供できる価値/それを扱うリスク、そういったことを俯瞰的に整理した一冊になっています。
こういうデータの分析ってマーケティングでは日常的に行っていることで、いかに効果的・効率的に認知を得て興味を喚起し、商品の名前を覚えてもらい、欲しいと思ってもらい、最終的に買ってもらうか...という命題に対して、ではどこに需要があって、ターゲットとなるユーザー層はどんな生活や消費行動を取っていて、どういう媒体に接しているのかを把握することは必須。ビッグデータの活用分野としては重要な領域なので、『顧客を売り場に直送する』という言葉は確かに重要なキーワードのひとつではありますが、この本書のタイトルは残念ながら中身の半分も表せておらず、それがちょっともったいないなあ、と思います。西田氏が本書で言いたいことは、おそらくそういうマーケティング観点でのビッグデータの活用だけでなく、自らの行動履歴を企業に提供する消費者側にも、大切な個人情報を提供する見返りに得られる利便性はあって、個人情報を渡すリスクを自覚・自衛した上でメリットを享受すれば、豊かな人生を送ることができる...ということなのでしょう。ただ、それを一言で、読者の興味を惹くタイトルとして表すのはとても難しい。

西田氏は出版にあたりこんなツイートをされていましたが、

これには確かに同意する部分があって、マスメディアによる画一的な情報提供の時代から、人々の多様性を加速するネットの普及によって、我々は情報の取捨選択を強いられ、結果として「自分が選んだ世界しか(その外の世界をあえて意識しない限り)見えなくなった」ということであり、自分にも確かにそういう瞬間はあるな、と自覚するところでもあります、ネットの普及によってテレビを見なくなったのか、社会の成熟化に従って生活スタイルや趣味趣向が多様化した結果テレビへの依存度が下がった(と同時にネットへの依存度が上がった)のか、むしろ双方が両輪として回ることで現在の状況を生み出してきたような気もしますが。
ただ、それでも「自分の視界が狭い」ことを自覚した上で自分の視界の外にあるものもあえて視ようとすれば視れるのも、今の時代でしょう。自分の世界の外にあるものを知り、世の中の仕組みや価値観の多様さを理解することで、より豊かな人生を送ったり、社会により大きな貢献をするための視点が身につけられるのではないでしょうか。

現代のビッグデータ活用に関する状況を俯瞰的、客観的にまとめた内容だけに話が広範にわたり、なかなかひとつの結論に帰結させるのが難しい著書ではありますが、クラウド時代を生き、クラウドを活かしていくためのヒントが鏤められた一冊だと思います。

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2013/11/23 (Sat.)

探偵はバーにいる

東 直己 / 探偵はバーにいる

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映画版を観るたびに原作が読みたくなるシリーズがこれ。でも、何となく今までタイミングを逸してきていて、結局読めていませんでした。が、先日すすきので写真を撮ってきた勢いで、Reader Store で電子版を購入。Sony Reader と Xperia を乗り継ぎながら、通勤や出張の移動時間を使って読破しました。

映画第 1 弾の「コンドウキョウコ事件」は本作ではなく、2 作目の『バーにかかってきた電話』が原作になっています。なので、シリーズ 1 作目のこれは映画と同タイトルでありながら、全く別のお話。主人公「俺」の大学の後輩の恋人が行方不明になり、同時期に発生した風俗店での殺人事件との関わりに気づいた「俺」が事件の周りを洗い始める...というストーリー。と書くと、わりとオーソドックスな探偵モノに見えますが、そこは大泉洋主演で映画化する作品ですからね。常にどこかおちゃらけていて、少し下品で、そしてニヒルで、という文体で最初から最後まで通してくれます。「俺」の一人称視点で書かれている文体ですが、映画から入った私にとってはもう地の文からして大泉洋の声で脳内再生されてしまいます。それくらい、「俺」は大泉洋のハマリ役だったと言えるでしょう。

ここまで映画 2 作、小説 1 作を読み(観)終えて感じるのは、このシリーズの被害者役は、この世の汚さを身をもって知りながらも、自分なりの信念に基づいてひたむきに生きていたところを、誰かの私利私欲や嫉妬のために残酷にも殺されてしまう、というパターンのようだ、ということ。そして、事件が解決あるいは終結したところで、何かが変わるわけではなく、被害者の存在が喪われてしまった事実だけが残る...という無情さです。いや、現実の殺人事件なんて実際そんなものなんだろうと思いますが、小説としては東野圭吾の加賀恭一郎シリーズのように、クライマックスで強烈なカタルシスがもたらされる推理小説もあるだけに、対照的だなあと。でも、「俺」のシニカルな一人称視点で語られる物語としては、これでいい。

それにしても、北海道に行ってきた直後に読んだ(正確には、帰りの飛行機の中から読み始めた)のは正解でした。ちょうど写真を撮りながらぶらついていたすすきのや大通、北大キャンパスあたりが主な舞台になっていたので、具体的にイメージしながら読むことができました。そして、読んでいる間にはやっぱり道を歩いていてもどこかからならず者が襲ってくるんじゃないかという気分になるし、ついつい強い酒を飲みたくなる。自宅ではもっぱらバランタイン 12 年ですが、スーパーニッカを買ってきて 12 オンス・タンブラァになみなみと注いでロックで飲みたくなるし、久々にバーに行ってラスティ・ネイルを頼みたくなります(笑。とりあえずスーパーニッカは買ってこようそうしよう。

このままの勢いで次の『バーにかかってきた電話』も読もうと思います。
Reader Store ではここのところ月イチでポイントをくれるキャンペーンが続いているので、月に一冊ペースであれば、多少安く読んでいくことができそう。

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2013/09/14 (Sat.)

オールドレンズ・ライフ Vol.3

澤村 徹 / オールドレンズ・ライフ Vol.3

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Vol.2 以来 1 年 3 ヶ月ぶりに発売された、澤村 徹さんのオールドレンズムックの第 3 弾。オールドレンズ好きとしては迷わず手に入れました。

今回のキーワードは「オールドレンズ・フルサイズ宣言」。ライカ M、昨年一気に低価格化したフルサイズ一眼レフ、さらに Speed Booster のようなマウントアダプタを使った APS-C 機での疑似フルサイズ撮影など、この 1 年で「フルサイズ画角でオールドレンズを使う」というカメラの楽しみ方が、急に身近になってきました。この流れは今後もしばらく続くでしょうが、そういうトレンドの渦中に出た、決定版のようなムックです。

巻頭特集はライカ M Typ 240 で主に M マウントレンズを楽しむ内容ですが、本書の見どころはむしろそれ以降にあります。フルサイズ EOS で使う個性的なオールドレンズ群、METABONES Speed Booster で改めて楽しむオールドレンズ群、というパートもさることながら、「『2 万円』ではじめるオールドレンズ」特集と「ベストマウントアダプターを探せ!」特集が、初心者には初心者なりにやさしく、でも既にオールドレンズを使っているユーザーが読んでもそれなりにマニアックにまとまっているという絶妙な深さで、とても興味深く読ませていただきました。あと、ありそうでなかった「オールドレンズに効く RAW 現像テクニック」。RAW 現像を使えばオールドレンズでもそれなりに現代レンズらしくも現像できるし、あるいはレンズの「味」を残して描写上気に入らない部分だけを補正することも比較的容易。今このタイミングでオールドレンズに手を出そうというユーザーであれば、それなりに深みに入る覚悟はできているはずで(笑)、そういう人にはかなり読み応えがある一冊ではないでしょうか。

私はここまでオールドレンズといってもツァイス中心に揃えてきましたが、国産オールドレンズも安価な割になかなか面白そうなんですよね。ひさびさに中古カメラ屋を覗きたくなる、そんな一冊です。

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2013/08/17 (Sat.)

真夏の方程式

東野 圭吾 / 真夏の方程式

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先日劇場版を観てきたところですが、やっぱり原作も読んでおかないといけないでしょう。とはいえ、そろそろ本棚に紙の本を増やすのは文庫本であっても躊躇します。というわけで、以前の『聖女の救済』に続いて、図書館で借りてきました(笑。これでも予約して 3~4 ヶ月くらい待たされましたが...。電子書籍さえ出してくれれば喜んでお金を払うんですけどね。この際、本棚を逼迫したくなければ新品で買って読んだらブックオフに、というのは考えませんでした。

映画館で一度観ているので、犯人とトリックを知った上で読んだことになりますが、そういう視点で読むと、あの映画は原作にかなり忠実に作られていたということが分かります。前作『容疑者 X の献身』もそうでしたが、原作に敬意を払っている証拠ですかね。架空の海岸「玻璃ヶ浦」の映像をスクリーンに合わせてイメージどおりに表現した、という点では、この作品はむしろ映像作品のほうを映画館で観るのが真の楽しみ方ではないか、とさえ思います。
とはいえ、掘り下げ方はやはり小説に分があり、原作は被害者と容疑者、そしてその家族の想いと過去、それから警察側の捜査にまつわるエピソードを丹念に描写しています。事件発生の瞬間と種明かしは逆にあっさりしていて、ちょっと拍子抜けだったほど。まあ、今回は物理法則を用いた凝ったトリックもさほどなく、人間関係の描写に重きを置いた作品なので、これでいいような気もしますが、ますますガリレオシリーズではなく加賀恭一郎シリーズでも良かったのでは...と感じました。
対して映画は湯川と少年の信頼関係や川畑家との関わりにフォーカスしている印象。2 時間という映画の枠に収めるにはちょうどいい絞り方だったと思いますが、容疑者が死体遺棄に至る動機と、そもそもの環境問題と事件との関わりに必然性が薄くなってしまった感はあります。事件と川畑家に関わる重要人物を一人まるごとカットしていますからね...。

個人的には、作中で「変人」と評される湯川学のキャラクターには共感するところが大きいです。それは、とにかく理屈で物事を考え、実践で証明していくから。これだけロジカルに物事を考える人というのは現実社会には意外なほど少ないものです(だからこそ人には湯川が「変人」に見える)。
そんな湯川の考え方を象徴するような台詞が、今までのシリーズ以上に物語の要所要所に鏤められているのが印象的でした。

「理科嫌いは結構だ。でも覚えておくことだな。わかんないものはどうしようもない、などといっていては、いつか大きな過ちを犯すことになる」
「両立させたいというのなら、双方について同等の知識と経験を有している必要がある。一方を重視するだけで十分というのは傲慢な態度だ。相手の仕事や考え方をリスペクトしてこそ、両立の道も拓けてくる」
「この世に完璧なものなどない。存在しないものを要求するのは難癖以外の何物でもない」
...科学や技術、に限らず、この社会のありようを正しく認識し、より良い社会を目指していくためには必要な態度ではないでしょうか。私はこれを読んだとき、これはもしかして東日本大震災をふまえて書かれた話なのかな、と思ったのですが、雑誌に連載されていた当時は震災前。それだけ、この言葉が真理を突いている、ということなのでしょう。

あえて不平のひとつでも言わせてもらうならば、こういう認識ができる東野圭吾氏ならば、著作の電子流通にもっと前向きになってくれてもいいんじゃないか、ということでしょうか(笑。

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2013/06/04 (Tue.)

機動戦士ガンダム UC メカニック&ワールド ep4-6

機動戦士ガンダム UC メカニック&ワールド ep4-6

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グレートメカニック DX」誌の増刊号、ガンダム UC 特集の続編が発売されたので、さっそく確保しました。

ep1-3 の発売から 1 年足らずでのリリースというのはちょっと驚きましたが、この号には最新の ep6 までの内容が含まれています。作品の基本的な部分については前号である程度網羅されていたので、この号ではそこまでネタないんじゃないの?と思っていたら、いやいやそんなことはなく。特に ep4 では旧作のモビルスーツ夢の共演状態だったので(笑)、ネタには困らなかったでしょうね...。出典が違うモビルスーツを集めて、最新の『ガンダム UC』という作品世界に登場させるにあたり、オリジナルの設定を忠実に守りながら作中での見え方を統一する、というところにかなり苦心されているのが伝わってきました。
また、映像や設定が中心になりがちなムックでありながら、SE(サウンドエフェクト)を担当したフィズサウンドの西村氏へのインタビュー記事が掲載されていたのも、こだわりの強い本書ならではだなあと感じました。内容的には ep6 Blu-ray 初回限定版の特典ディスクに収録されていた話と一部重複していますが、宇宙世紀ガンダムという世界観の表現には音も重要な役割を担っているんですね。

個人的には、ep4 に登場した旧作の MS に考証を付け加えてディテールアップしている様子が事細かに理解できるだけでも大満足。熟読すると数時間はゆうにかかってしまうであろう、非常に読み応えのある一冊になっています。UC のメカ要素のファンなら買って損はないでしょう。
でもこれ、次の ep7 で完結のはずなんですが、ep7 だけで一冊作る予定なんですかね?小説版ではこの後新しいメカは登場しないし、アニメ版でも今のところ判明しているのはフル・フロンタル用の新 MS(もしくはシナンジュの大改修版)くらいしかないはず...。まあ、それでも新メカをいろいろ登場させたがるのが UC のスタッフのやることですし、一冊作れるだけの大作に仕上がることを、今から期待してやみません。

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2013/04/25 (Thu.)

プラットフォーム ブランディング

川上 慎市郎、山口 義宏 / プラットフォーム ブランディング

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共著者の山口義宏氏から献本いただきました。

いただいたから誉めるわけではありませんが(笑)、山口氏とは今まで一緒に仕事をしたことはないながら、「日本の産業を再び競争力があり、かつ、消費者から憧れられる状態にしたい」という点で、同じ夢を持つ同志だと一方的に思っています。

「顧客体験」「UX」。Apple の iPhone が市場を席巻し始めた頃から多くの企業やメディアで盛んに使われ始め、言葉としてはそろそろ陳腐化して「ユビキタス」「CGM」「クラウド」といった単語と同様に「そういえばそんな実態のない言葉が流行ったよね」というワードの仲間入りをしようか、という段階にあると言えます。しかし、「ユビキタス」「CGM」「クラウド」といったものが、技術やインフラの進化により流行語ではなく現在では空気のような当たり前の存在として利用されているように、「UX」も単語としての流行の段階を終え、企業活動に必須な概念として定着しつつあるように見えます(企業によって温度差が激しいとは感じますが)。
いっぽうで「ブランド」という言葉の解釈にも幅があって、日本においてはバブル時代の高級ブランド・DC ブランドといった「ブランド」の印象や、トヨタに対するレクサス、あるいはファッションブランドのセカンドライン戦略、CI やタグライン...といったように「高級品の代名詞」や「デザインや外観、あるいは企業イメージに関わるもの」と理解されることが多いのではないでしょうか。私も「ブランド●●」と名のつく部署の人と仕事をすることはままありますが、そういう仕事ほど表面的で、企業ブランドに直接関与するようなものではないよなあ...というのが実感だったりします。

しかし「ブランド(商標)」は、「牛に焼き印を施し、他者が育てた牛と区別し、品質を保証するもの」が起源だと言われているとおり、その商品やサービスが提供する品質や安心感を担保する証、企業と顧客との約束とも言えるようなものです。企業側が一方的に「このロゴマークがついているものは高品質だ」と言うだけでも駄目で、消費者の側にもある程度共通した認識が必要。他者との関わりの中ではじめて「自己」というアイデンティティが確立し得るのと同様に、「ブランド」というのも顧客や見込み客との関係の中で成立するものです。とはいえ、企業の側が消費者の認識に対して何もできないわけではなくて、商品の品質を確保したりステートメントを発信することで、ある程度の方向性をつけることはできる。それが「UX によってもたらされるブランディング」というものだ、と理解しています。

そういう意味では、本書が「ブランド」という単語に与えた「顧客体験をデザインするプラットフォーム」という定義は、ブランドの本質を現代に即した形で的確に表現した言葉だなあ、と腑に落ちるわけです。

ただ、あえて本書が画竜点睛を欠く点を挙げるとすれば、この「プラットフォーム」の話と「ブランディング」の話に断絶があり、うまく連結し切れていないなあ、と感じたところでしょうか。「プラットフォーム」に関しては Amazon や楽天のような EC プラットフォームや、Facebook や GREE のようなソーシャルプラットフォームを例に挙げ、事業をプラットフォーム化して、自社の強みを活かしつつ弱みは他社の価値を取り込んで補うことで体験価値を最大化し、ブランド価値を高めることを説いています。それに対して「ブランディング」の話は、ブランドを戦略レベルから戦術、施策レベルまで落とし込み、どうやって事業関係者の上から下までにブランドを意識させながら効果的に事業を推進するか、というブランド戦略の考え方・進め方の教科書のような内容。共著者の二人の専門領域の違いがこのギャップに表れているということなのでしょうが、この二つをブリッジするための章があったほうが良かったのではないか、と感じました。
とはいえ、ブランディングに関する書籍の多くが参考になるんだかならないんだかよく判らない単なる成功事例集(こういう事例って、個別の事象ではなく成功・失敗の要因を抽象化して理解しないと意味がないと思っています)でしかない中、これだけブランド戦略の推進の手順について大真面目にブレイクダウンした書籍は稀有なのではないでしょうか。「ブランディングってヘッドクォーターのブランド担当部門が考えること」みたいな誤解もありがちですが、本書はむしろ(企業価値を高めたいと考えているならば)企業の商品・サービス企画やマーケティング、あるいは直接の顧客接点となる部門の実務担当者こそ熟読し、定期的に回帰すべき原点のような戦略書だと思います。やるべきことや手順、どういう構造で理解・分析すべきか、が図表で解りやすくまとめられているというだけでも価値があります。

ひとつ、本書の共著者に突っ込んで質問してみたいことは、前半のプラットフォームに関する記述の中で「事業をプラットフォーム化すること」について書かれていましたが、プラットフォーム化できるほどの事業規模や市場ポジションにない企業や事業カテゴリについてはどうすれば良いのか?ということです。皆が皆プラットフォーマーになれるわけではなく、App Store にアプリを提供するだけ、楽天のモールに店舗を出店するだけ、の規模の企業のほうが圧倒的に多い。あるいは自社プラットフォームを持ちたいけど OS や SNS をゼロから作ってもすぐにエコシステムができあがるわけではない。そういった場合に、自社がすがっているプラットフォーマーに価値を包含されずに強みを発揮し続ける、または逆に包含を狙っていくためには何をすれば良いのか。Amazon、Apple、Google、Facebook、Twitter といった米国発のメガプラットフォーマーに自分たちのビジネスを換骨奪胎されないためにすべきことは何か、といったことはぜひ問うてみたいですね。

最後に、終章に書かれていた内容は、個人的には 1~2 年前から悶々と思い悩んでいたことに対してヒントとなるようなメッセージをもらえたような気分です。いや、そうなんですよ。ブランドというのは「高い代金を正当化するためのマーク」ではなくて「企業価値の源泉の、その象徴」なわけです。私も特定企業という組織体のために働いているつもりはなくて、「自分を含む顧客に感動的な体験を提供してくれる存在」の価値を高めたいと思って働いているつもり。だからこそ、その価値の源泉は何で、顧客に対してその価値を高めるために何を強化しなくてはならないか、を常に考えていなければならないのです。この書籍は、私がそんな想いのよりどころにしていきたい、と思える一冊です。

投稿者 B : 23:59 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2013/03/27 (Wed.)

Kindle で『電子書籍リーダー女子 人生を楽しくする電子書籍の始め方』を読んでみた

家電女子.net » 家電女子、初めての電子書籍を出版してしまいましたの巻(前篇)
家電女子.net » 家電女子、初めての電子書籍を出版してしまいましたの巻(後篇)

blog 仲間ののぽりんさんが、Kindle で電子書籍を出版されたので、読んでみました。
彼女は「家電女子」を自称しつつも、モノの選び方や買い方、blog にかける情熱はそこらへんのガジェット男子よりもはるかに漢らしく(←誉め言葉)、中でも最近熱中されている電子書籍についての電子書籍(笑)ということで、これは期待。

のぽりん / 電子書籍リーダー女子 人生を楽しくする電子書籍の始め方

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Kindle なら以前ジョブズ本を原語で読むだけのために買って絶賛放置中(ぉ)の Kindle 4 があるし、久々に充電していざ購入!

...と思ったら、

Kindle ストア

配信先端末の選択肢で、Kindle 4 がなんかグレーアウトしてるんですけど(;´Д`)ヾ。

調べてみたら、どうも Amazon.co.jp の Kindle ストアが対応しているのは Kindle Paperwhite 以降の世代の端末と、iOS/Android 用の Kindle アプリのみで、Kindle 4 以前のハードウェアでは日本語書籍は読めない模様(´д`)。まあ、日本でサービスが始まる前に Amazon.com から輸入した端末なのでここで文句言うのも筋違いですが、半分これを期待して Kindle 4 を買った部分もあったので、残念...。

仕方がないので、iOS/Android アプリ版 Kindle に転送して、通勤中にスマートフォンとタブレットを使って読書。
ほんの 1 時間もあれば読めてしまう、とても読みやすい本でしたが、かといって内容が薄いわけではなく、2013 年現在の電子書籍界隈をユーザー視点でとてもよく総括していると感じました。だてに現存する国内向け電子書籍端末をほぼコンプしているわけじゃない(^^;;

ご本人の電子書籍端末に対する先入観からそれが拭い去られて電子書籍マニアに至るまでの顛末、電子書籍への入門のしかた、端末の種類やサイズの選びかた、今までありそうでなかった「家族で電子書籍を共用する方法」など、どちらかというとこれから電子書籍を買ってみようか、と考えている人に勧められる内容になっています。E-Ink とかクラウドとか DRM とか、とかく専門用語満載になりがちなこの手の解説書にあって、やさしくやわらかい言葉遣いでまとめられているのも、女性ならではでしょう(←冒頭で「漢らしい」とか言っちゃったのでここでフォロー(ぉ))。タイトルこそ『電子書籍リーダー女子』で表現も平易ですが、かといって特別に女性向けというわけでもなく、これから電子書籍を始めてみたい人や電子書籍を始めたばかりの人であれば、多くの人にフィットする解説書だと思います。私も電子書籍については知っているつもりでいましたが、私が持っていない視点での発見も多く、ついつい引き込まれてしまいました。

また、「電子書籍の『いま』を切り取った電子書籍」という意味では、タイミングよくこちらも読了しました。

西田 宗千佳 / 加速する日本の電子書籍 -Kindle、kobo上陸。2012年、日本になにが起きたのか

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こちらは私が以前から購読している MAGon『西田宗千佳のRandom Analysis』に掲載されてきた電子書籍関連記事を加筆した上で一冊の電子書籍にまとめたもの(今月いっぱい限定、特別価格 500 円で販売中)。これまでも、同氏の類い稀なる取材力で業界のキーパーソンから録られたインタビューは業界の本質を深く突いていましたが、散発的な記事(この EPUB マガジンは、同氏の書籍やコラム向けの取材成果をタイムリーに読者に提供する、という側面を持っているため、業界総括というよりは特定の企業に対するインタビュー記事の体裁になっていることが多い)ではなく業界を俯瞰する形でまとめることで、日本における電子書籍の現状を的確に記録していると言えます。

のぽりんさんの著書と西田さんの著書は、奇しくも同じタイミングで電子書籍の現状をユーザーの立場と業界・市場の観点でまとめた、ある意味対称的な電子書籍だと思います。その意味で、両方の書籍をまとめ読みすることで、2013 年以降の電子書籍が向かっていくべき方向が、なんとなく見えるのではないでしょうか。

電子書籍リーダー女子 人生を楽しくする電子書籍の始め方

投稿者 B : 22:41 | Book | eBook | コメント (0) | トラックバック

2013/03/22 (Fri.)

孤独の散歩マンガ『散歩もの』

Sony Reader を新調したことだし、『孤独のグルメ』原作の電子版でも買うか、と Reader Store を覗いていたら、関連コンテンツとしてこんなものを発見しました。久住昌之・谷口ジローといえば『孤独のグルメ』の黄金コンビじゃないですか!というわけで、まとめて購入。まあ、Sony Reader の SVGA 解像度な E-Ink ではコミックを読むには物足りないので、私は Reader Store で買ったコミックは基本的にタブレットのほうで読んでいますが。

久住 昌之、谷口 ジロー / 散歩もの

散歩もの

タイトルは『散歩もの』。『孤独のグルメ』も中年オヤジがメシを求めて独り東京を彷徨い歩く、というコンセプトですが、本作はその「彷徨い歩く」の部分にフォーカスした、さらにシュールな作風になっています。掲載誌が「通販生活」だったというあたりが、さらにマニアック(笑

主人公の名前は「上野原譲二」。井之頭五郎と違って既婚者で、それなりの企業に勤める管理職、という設定ですが、やはり久住昌之氏本人のキャラクターが反映されているのか、どことなく近い、いやむしろさらに濃い性格(笑。「井之頭五郎」に「上野原譲二」、苗字がやけに凝っているところも似ています。

散歩もの

本作の主役は「街」ですが、やはりこのコンビだからか、ところどころに食事のシーンも登場します。これがまた『孤独のグルメ』っぽくてまたいい。でも、この作品の本質はやはり上野原譲二の散歩にかける異様なまでの情熱と、古いものへのこだわりでしょう。道すがら古い電球とか草履とか衝動買いするし(笑

今まで『孤独のグルメ』は山もないオチもない地味なマンガで、だがそれがいいと思っていましたが、この作品に比べればなんと盛り上がりのあることか(笑。日々のことだけど、食事って一日三回のちょっとしたイベントなんだなあ、というのを改めて感じます。だからこそ、一食たりとも無駄にせず、美味しいと思えるものを美味しいと思いながら食べたい。

散歩もの

「テレビや雑誌で見た場所へ出かけていく散歩は 散歩ではない」

...ドラマに感化されてこどグルの聖地巡礼なんかやってて本当にすいませんでした(ぉ

でも、こういういかにも名所って場所じゃないところをあてもなくぶらつく散歩もいいですよね。カメラを持って歩くとさらにいい。
この作品は、聖地巡礼とかやるのは却って作品に失礼な気がするので、自分なりの場所と散歩ルートを見つけてぶらぶらする、というのが本当のリスペクトなんでしょう。『孤独のグルメ』も、それを意識しながらその辺の地味なお店に足を向けてこそ真のファン、なんだと思います。

この『散歩もの』についてさらに詳しくは、『孤独のグルメ』のときにもその面白さを存分に伝えてくれた以下の blog にて。

孤独のグルメテイストな究極散歩マンガ 「散歩もの」:a Black Leaf

久住 昌之、谷口 ジロー / 散歩もの

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投稿者 B : 22:12 | Book | Comic | eBook | コメント (0) | トラックバック

2013/03/21 (Thu.)

Sony Reader PRS-G1

これ買いました。

ソニー / Reader RPS-G1 (ホワイト)
ソニー / ブックカバー PRSA-SC22 (ホワイト)

PRS-G1

年明けに奥さん用に買った PRS-T2 を見ていたら、私の PRS-350 が古くさく見えてきたので、値段が下がっていた PRS-G1 に買い換え。T2 よりも旧型ですが、中身はほとんど変わらないマイナーチェンジだし、3G 搭載モデルながら T2 よりも安かったので。

PRS-G1

最近の私はモバイル機器は意識的にブラック以外を買っているので、今回もホワイトにしてみました。が...白が白すぎて、ちょっと目が痛い(;´Д`)ヾ。ブックカバーは読むときには折り返すから良いんですが、本体のフレームがまぶしいのと、E-Ink の地色が白くないのが却って気になってしまうので、微妙(´д`)。おとなしくブラックを買っておけば良かったか、とちょっと後悔。フレーム部分を覆うデザインの他社製カバーでも買おうかと思案中です。

PRS-G1

T2 と並べてみると、G1 のほうが明らかにコストかかってますが、ボタンは T2 のほうが押しやすいし、T2 もコスト抑えてるわりに質感がんばってるなあ...と感じます。

でもハードは買ったものの、今のところ読みたいコンテンツが特にないんですよね(ぉ。『ガンダム UC』の小説版があれば改めて読み返してみたい今日この頃なんですが、まだ取り扱っていないようだし。東野圭吾作品が電子書籍であれば片っ端から読むところですが、当人は電子書籍反対派らしいので、当面電子化は期待できなさそうだしなあ。前から気になっていたススキノ探偵シリーズでも読んでみるかなあ...。

投稿者 B : 23:59 | Book | eBook | コメント (0) | トラックバック

2013/02/15 (Fri.)

ガンダム UC 虹にのれなかった男

ブライト主役の「機動戦士ガンダムUC」NTエースで新連載 | ホビー | マイナビニュース

『逆襲のシャア』から『機動戦士ガンダム UC』に至るまでのブライト・ノアを描いた作品、と言われたら気になるわけで。アムロを喪ってからブライトがどう生き、何を考えて、UC でのバナージにああいう言葉をかけたのか。知りたいじゃないですか。しかも脚本が UC と同じく福井晴敏、と来たら内容はもう折り紙付きと言っていいレベル。

で、読んでみましたが...、

正直、えーそこから始まって初回はそこで終わり!?

なわけですよ。ネタバレ防止のために詳細は書きませんが、初回に限っては新しいエピソードがほとんどないので、読む意味ない(;´Д`)ヾ。ニュータイプエースはこれを読むためだけに買ったので(漫画雑誌を買ったの自体、『THE ORIGIN』の最終回以来)、580 円がほぼ無駄に...あと強いて読みたいものと言ったら美樹本マクロスくらいのものだし。

まあ、作画が残念なことになりがちなこの手のコミカライズの中にあって、この作品は画はしっかりしている(少なくともアニメ版 UC の世界観をうまく踏襲している)ので、今後続いていけば面白くなっていきそうな雰囲気はあります。単行本はいずれ電子版でもリリースされるでしょうし、そしたら買っても良いかな。でもニュータイプエースはもう買わないと思う(´д`)。

ガンダム UC と言えば episode 6 の公開が近づいてきて、プラモ関連もいろいろと出てきますね。

MG 1/100 MSN-06N シナンジュ・スタイン Ver.Ka

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目玉の一つはこれでしょう。フル・フロンタルの愛機「シナンジュ」の原形。もともとユニコーンガンダム開発のためのテスト機としてアナハイムが開発していた「スタイン」を袖付きが強奪・擬装してフロンタル専用機に仕立てた、という設定です。そのあたりのお話は PS3 ゲームの特典小説で描かれていますが、このタイミングでこれの MG 化が来るとは思っていませんでした。
キットとしては MG シナンジュのフレームをベースに、私が今作っている MG v ガンダム Ver.Ka 当たりの技術をフィードバックしているようなので、完成度はかなり高そう。マイナーな機体ではありますが、組んでみたいキットではあります。あと、来月には MG ジェスタも控えているし、UC ファンモデラーとしては悩ましい時期が続きますね...去年は欲しいキットが数えるほどしか出なかったのに...。

ちなみにプレミアムバンダイ限定のこのキット↓も、実は初回ロットを発注済みだったり。

RG 1/144 MSZ-006-3 ゼータガンダム 3 号機

まあこのあたりは現実的には GW のしゅくだい、になりますかね...。

投稿者 B : 00:18 | Book | Comic | GUNPLA | Hobby | コメント (0) | トラックバック

2013/02/13 (Wed.)

オールドレンズの奇跡

上田 晃司 / オールドレンズの奇跡

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久しぶりにオールドレンズ本を買いました。最近は本で読むよりも気になった方向のレンズ群について Web で自分で調べたり、実際に店頭に行って手に取ってみたり、と自ら沼の中を突き進んでいくほうが楽しいんですが、この本は今まであまり書籍で取り上げられてこなかったオールドレンズについて触れられているようだったので。

今まであったオールドレンズ本の多くが各マウントのレンズを 1~2 本紹介する程度でどちらかというと間口の広さを重視した内容だったのに対して、この本はどちらかというと深い方向、例えば他のオールドレンズ本にはないほど多くのライツ、あるいはキヤノンでも Serenar だったり、ミノルタではなく千代田光学時代の SUPER ROKKOR だったり、本当の意味での「オールドレンズ」が多く紹介されています。これに比べたら YASHICA/CONTAX なんて全然現代のレンズですよ、と言いたくなってくるほど。
この書籍の元ネタは玄光社の『フォトテクニック デジタル』誌における同名の連載で、登場する機材(ボディ)にはちょっと旧いものもあります。また、単行本のために吟味されたレンズチョイスではないためか、レンズ選びにまつわる失敗談も多く、そういう点ではこれからオールドレンズの深い沼に足を踏み入れようとする人には注意点が分かって参考になる反面、純粋にそのオールドレンズの実力を知りたいを思っている人には向かないかもしれません(まあ、オールドレンズである時点で個体差は少なからず存在するもので、真の実力値というのは定義しづらいのも事実ですが)。

個人的には、今まであまり深掘りしてこなかった方面のオールドレンズに関する情報がいろいろ得られたのが良かったいっぽうで、レンズの評価に使われる語彙が乏しく、「空気感まで写す」みたいな表現が多用されすぎていたのがイマイチ。「レンズの味」とか「空気感」と言ってしまうと、結局主観的に好みかどうか(そこには書き手がそのレンズに払った対価に対して自己肯定したいというバイアスも含まれる)に収斂してしまって客観的な分析ができなくなってしまうので、オールドレンズ選びの参考にしたい人向けの読み物としてはどうかなあ、と思うわけです。ま、そもそもオールドレンズなんて現代的な解像力を求めて買うものじゃなし、そういう楽しみ方でいいんでしょ、という考えもアリですが。

ちなみに本書の内容は、抜粋バージョンが「Lite 版」として雑誌オンライン他で試し読みできるようになっているので、興味のある方はどうぞ。

オールドレンズの奇跡 Lite 版 (雑誌オンライン+BOOKS)

投稿者 B : 00:00 | Book | Camera Mook | コメント (0) | トラックバック

2013/01/12 (Sat.)

Sony Reader PRS-T2

年末年始は帰省しなかったので、ゆったりと過ごしていました。『ハリー・ポッター』シリーズの Blu-ray を最初から全部観直すとか、そういう長期休みでもないとできないことをやってみたりして(笑。

BD を観ていたら、ウチの奥さんが「原作を読みたい」と言い出したんですが、あの分厚い本を全巻収める余裕は我が家の本棚にはなく(『ガンダム THE ORIGIN』を全巻愛蔵版で買ってるお前が言うな、というツッコミはナシで(ぉ))、それなら電子書籍がいいんじゃない?ということで、Sony Reader を買ってきました。私が持っている PRS-350 は自分でときどき使っているので、奥さん用に。
ひとつの小説を読むためにわざわざハードウェアを買うのももったいないと言われそうですが、ハリポタのハードカバーを全巻揃えるよりも電子ブックリーダと電子版を買った方が安上がり、という結論に達し(文庫版を買え、というツッコミはナシで(ぉ))。1 月末までなら Sony Reader を買えば『賢者の石』が一冊無料というキャンペーンをやっていたことに背中を押された感じです。

ソニー / Reader RPS-T2 (レッド)icon
ソニー / ブックカバー PRSA-SC22 (レッド)icon

PRS-T2

文字を読むことを考えると本体は白か黒のほうが読書に集中できていいかな、と思っていたんですが、実物を見ると白も黒もどうも安っぽくて愛着が持てなさそうな気がしたので、赤をチョイス。カバーも同色にしました。

PRS-350 と比べると、現行機種は Android ベースになっているので UI がけっこう変わっていますね。全体的なレスポンスも PRS-350 より俊敏になっているように感じます。E-Ink ディスプレイは PRS-350 よりも一回り大きい 6inch ですが、解像度は変わらず 600×800 なので、読みやすさという点ではそれほど変わりません。もう少し解像度が向上してくれれば、私もそろそろ買い換えたかったりはするんですが。
Kindle Paperwhite だと解像度は 758×1024 だし、フロントライト内蔵なのでハードウェア的には Paperwhite のほうが魅力的ですが、肝心のコンテンツフォーマットの互換性が...。

PRS-T2

最近は電子書籍というと雑誌やコミック、有料メルマガを液晶系のデバイスで読むことが増えましたが、長編の文学はやっぱり E-Ink のほうが読みやすいですね。

子どもに触られて傷がつく可能性が高いので、保護フィルムも買ってみました。

サンワサプライ / 液晶保護指紋防止光沢フィルム PDA-FRD3KFP

PDA-FRD3KFP

ヨドバシで本体を買ったついでに、店頭に並んでいたものを適当に。

E-Ink デバイスなのに、商品名が「液晶保護~」になっていると、なんだかむずむずしますね(笑。

PRS-T2

この保護フィルム、光沢タイプなのでけっこう盛大に反射します(´д`)。でも店頭では他に選択肢がなくて...。妥協せずにいつもの OverLay Plus(ノングレアタイプ)を発注すべきだったと少し後悔。

『ハリー・ポッター』シリーズの電子書籍は Reader Store からではなく、Pottermore Shop で購入・決済する仕組みになっています。Pottermore Shop で購入して、Pottermore の ID と Reader Store(を含む各種電子書籍ストア)の ID を紐付け、購入情報を 電子書籍ストアに送るとその電子書籍ストアから対応したフォーマットのデータがダウンロードできる、という仕掛け。「読む権利」を版元から直接購入することで、異なるプラットフォームや機器をまたいで読めるとか、仮に使っている電子書籍ストアが潰れても他のストア経由で読める、というのはメリットですが、読めるようになるまでの手順が煩雑で面倒ではありますね(´д`)。Pottermore Shop から直接ダウンロードできるのが理想でしょうが、Pottermore 自体が各種のプラットフォームに直接対応するということも考えにくいので、これ以上の改善はなかなか難しそうにも見えます。

ともあれ、ハリポタは特に後半の作品が映画の尺ではいろいろなことを省略しすぎな印象を受けたので、原作を読んでみたいと思ってはいました。電子書籍はデータの貸し借りができませんが、ハードウェアごと借りてしまえばいいわけで(笑。奥さんの合間に私も読ませてもらおうかな。

ソニー / Reader RPS-T2 (レッド)icon

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投稿者 B : 14:00 | Book | eBook | コメント (0) | トラックバック

2012/11/11 (Sun.)

貞本エヴァ 13 巻・プレミアム限定版と電子書籍版

新劇場版:Q』の公開まであと 1 週間と迫って、周辺がだいぶ盛り上がってきた感のあるヱヴァンゲリヲン新劇場版。地上波でも 2 週連続で新劇場版の『序』『破』が放送されたりしますが、私は放送時間中に帰宅できなかったので、深夜にひとり Blu-ray を再視聴しました(´д`)。そうすると『Q』への期待もおのずと高まってくるものですが、そういえば貞本エヴァのコミックス最新刊が発売されていたな...というのを思い出して、買ってきました。

貞本 義行 / 新世紀エヴァンゲリオン (13) 【プレミアム限定版】

新世紀エヴァンゲリオン

なんか品薄という話もあるプレミアム限定版ですが、私は通勤ルート上の駅ビル内書店で普通に買えました。

この貞本エヴァのコミックスは大学時代に買っていたんですが、刊行が遅々として進まなかったために挫折して手放してしまったので、手に取ったのは実に十数年ぶり(´д`)。
コミカライズが今どのあたりまで進んでいるのかも把握していなかったんですが、けっこうクライマックスまで進んできているようで。ストーリーはほぼ旧劇場版のシナリオ通りに。もうちょっと変わっているかと思ったのに意外でしたが、オリジナルとはずいぶん話が変わってきてしまった新劇場版とともに、結末をどちらの方向に持って行くのか、とても気になります。

新世紀エヴァンゲリオン

「プレミアム限定版」ということで、通常版よりも少し価格が高い代わりに、特典がいろいろついています。通常版とは異なるイラストをあしらったカバー、ポストカードセット、アートワーク集、3D カード。上の写真に載せたのはそのごく一部ですが、ポストカードは別にすべてがアダルトちっくなわけではありません(笑。
特典の詳細は、私なんかよりももっとエヴァが好きすぎて自分自身がアスカやレイになってしまったこの人のエントリー↓で(ぉ

新世紀エヴァンゲリヲン13巻【プレミアム限定版】|☆★ささのま!★☆

で、貞本エヴァ。私が持っていたのは確か 5 巻くらいまでだったので、それ以降の内容がごっそり抜けています。いや正確には持っていた部分の内容も朧気にしか記憶していないし、逆に言えばテレビ版・旧劇場版をひととおり観ているのでストーリーは知っています。でもこの際だから改めて読み返してみよう...と思いつつ、これ以上本棚が埋まるのもなあ、と目を向けてみたのが電子書籍版。

新世紀エヴァンゲリオン

何の気なしに Reader Store を覗いてみたら、貞本エヴァの旧刊全品半額キャンペーンとかやってるじゃないですか!こ・れ・だ!!

というわけで、13 巻も含め大人買いしてみました(笑。

新世紀エヴァンゲリオン

ちなみに Kindle ストア でも同様の旧刊半額キャンペーンをやっているようなので、各ストアが独自にやっているわけではなく、版元の角川が仕掛けているキャンペーンなのでしょう。
どこのストアから買うかは少し迷いましたが、専用端末はともかく Android/iOS の汎用デバイス等で使う分には特にプラットフォーム依存もないので、どちらでも良いかと。私の Kindle 用アカウントは北米のサービスに紐づけられていてカスタマーセンターに電話しないと統合できないので、今回は Reader Store で買いました。本当は、どこのストアで買っても電子本棚上は一元的に管理できると理想的なんですが、まだ環境はそうは整っていないので。

あと今回気づいたんですが、以前あった講談社ほかのコンテンツのダウンロード 1 年縛りはいつの間にか解除されていたんですね。1 年半ほど前に買った『3×3 EYES』が再ダウンロード可能になっていたので、これなら今までよりも安心して使えそうかな、と感じました。

新世紀エヴァンゲリオン

電子書籍でコミックを読むならやっぱり E-Ink 端末よりも液晶系タブレットのほうが扱いやすいですね。文学と違ってコミックは特定のコマを拡大して見たいことが多く、そういうときにフリック&ピンチで操作できたほうが快適なのと、あとは手持ちの E-Ink 端末(PRS-350 と Kindle 4)だとちょっと画面サイズが物足りないので。

新世紀エヴァンゲリオン

カラーページがちゃんとカラーで読めるのもいい。E-Ink 端末は文学を読むには良いんですが、個人的にはコミック、雑誌、あと短めのビジネス書程度ならば液晶タブレットのほうが向いていると思います。ただ、持ち歩いて読むには 9~10inch クラスの端末だとちょっと厳しいので、そういう意味ではやっぱり 7inch クラスのタブレットが 1 台欲しいところですね...。iPad mini がもうちょっと高解像度だったら(あと日本でも Reader アプリ for iOS がリリースされたら)、即買いしているんだけどなあ。

貞本 義行 / 新世紀エヴァンゲリオン (13) 【プレミアム限定版】

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投稿者 B : 00:13 | Book | Comic | eBook | コメント (1) | トラックバック

2012/10/26 (Fri.)

Kindle ついに国内参入

Amazon、7型「Kindle Fire HD」などを国内発売。「Kindleストア」も25日開始 -AV Watch
Amazon / Kindle Fire HD 16GB
Amazon / Kindle Paperwhite

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iPad の発表にぶつけるような形で、Amazon.co.jp から Kindle の国内発売と Kindle Store のサービス開始がアナウンスされました。明らかに狙っていたんじゃないかというタイミングが良すぎる発表です(笑。

ハードウェアとしてはカラー液晶搭載の Kindle Fire HD/Kindle Fire と、電子ペーパーを搭載する Kindle Paperwhite/3G の 4 機種。Fire シリーズのほうは Android ベースのタブレット端末ながら、Google の CTS(認証)を通っていないがために(root でも取らない限り)Google Play ストアを利用できず、汎用タブレットとしての使用には制限があります。ただ、タブレット端末としては Nexus 7 よりもさらに安いので、Web ブラウザとベーシックなアプリさえ使えれば十分、という見方もあるでしょう。
個人的には、Kindle や Nexus 7 のような「ハードウェアの価値をゼロにするような売り方」には賛成しかねるのですが・・・、いずれにしても Kindle Fire、Nexus 7、iPad mini と出てきたことでそれ以外の Android タブレットはさらに苦しい状況に置かれたことだけは事実だと思います。

ともあれ、Kindle の本質はハードウェアではなくサービスと UX。Android タブレットや iPad さえあれば、Kindle アプリを入れることですぐにでも Kindle 端末として使い始めることができます。なので、何らかのタブレット端末さえ持っていれば、凡庸なスペックの Kindle Fire シリーズを買う意味はあまりないと言えます。

Kindle

私の場合、英語の勉強がてら『Steve Jobs』を原語で読もうと思って Amazon.com から購入した Kindle 4 もあるし、Android タブレットもあるので特にハードは買う必要がありません。まあ、Kindle 4 は『Steve Jobs』を読み切る前に忙しくなってしまってそのまま放置、電池が空っぽになって久しいですが(笑。

タブレットの Kindle アプリには Amazon.com のアカウントを登録してしまったので、現時点では

Kindle

Kindle ストアも北米版のまま。この場合、日本と米国の Amazon アカウントを結合することで日本のストアを参照できるそうですが、結合してしまうとどちらかのストアしか利用できなくなるとのこと。私は日米の Amazon で同じメールアドレスでアカウントを作ってしまったため、このままではアカウントを使い分けることもできません(´д`)。いずれにしても結合はカスタマーサービスに問い合わせなくてはならないので、すぐに試すのは諦めて自分に時間的余裕ができるまで待つことにしました。まあ、洋書を買うことも滅多にないので、結合しちゃってもいいんですけどね...。

投稿者 B : 00:16 | Book | eBook | コメント (0) | トラックバック

2012/09/25 (Tue.)

『ツァイス 激動の 100 年』、購入

アーミン・ヘルマン 著、中野 不二男 訳 / ツァイス 激動の 100 年

ツァイス 激動の 100 年

以前図書館で借りて読んだ本を、今さらながら購入。最近、あまり紙の本の在庫を増やしたくなくて、できるだけ電子版で買うようにしているんですが、さすがにこういう数の出ない旧著の電子化はあまり期待できるものではないですね。でもツァイスファン的にはこの本は持っていても良いかなと思いました。1995 年刊でとっくに絶版になっている書物ですが、古本でも良ければ Amazon マーケットプレイスにはかなりの数の出品がありました。

ツァイス 激動の 100 年

注文したのは「良い」状態の中古品。どの程度の状態なのか若干不安ではありましたが、ものすごくきれいというわけではないにせよ、まあきれいかな、と思える品でした。少なくともブックオフの棚に並んでいろんな人の手垢がついたものよりは良いでしょうし、梱包も丁寧で好感が持てました。届くまで現物が見られないデメリットはあるものの、絶版本を探して古本屋を巡る必要がないという点では、良い時代になったものです。

この本の内容については以前書いたので割愛しますが、改めて現代の、これからの日本企業のありようについて考えさせられる一冊ですね。知財とブランドだけ残れば良いとは思いませんが、何を自社の本質価値と認識して高めていくか。ツァイスが追求したこの品質をどのように自社で実現していくべきか。やはり何度読んでも、この一文が胸に刺さります。

「ずるがしこさではなく、徹底した正確さと信頼性、もういっぽうでは、商品の投げ売りではなく、安定した価格と、顧客に対する専門的アドバイスとサービス、そしていつも同じようにもうしぶんない応対」

そういえば、来年にはツァイス自身がミラーレスカメラ向けレンズ市場への参入を予定していますが、ソニーやコシナ経由ではない製造・販売がどのような形態になるのか、そしてそこからどのように上記の哲学を感じることができるのか、今から楽しみです。

投稿者 B : 23:09 | Book | Camera Mook | コメント (0) | トラックバック

2012/08/24 (Fri.)

花のズボラ飯

倉科カナがふんわり萌え系新妻役で民放連ドラ初主演!『花のズボラ飯』 | キャリア | マイナビニュース

滅多にテレビを観ない私をして聖地巡礼に駆り立て、サントラまで買わせたテレビ東京のドラマ『孤独のグルメ』に続いて、同じ久住昌之氏原作の『花のズボラ飯』が 10 月より TBS 系でドラマ化。実は密かに期待していました。
主演は誰になるのか、というより想像すらできないと思っていたら、NHK の連続テレビ小説『ウェルかめ』で主役を演じていた倉科カナさんと来ましたか。こういう配役は誰になっても賛否両論あるものですが、個人的にはこの配役はアリだ。大アリ、オオアリクイだ(ぉ。

原作コミックはちょっと前に「このマンガがすごい! 2012」オンナ編 1 位を受賞してひとしきり話題になった後だったので、今さら読むのもなあ・・・と思ってしばらく敬遠していたんですが、ドラマが始まる前にやっぱり読んでおこう、と思って買ってきました。

久住 昌之、水沢 悦子 / 花のズボラ飯 (1)
久住 昌之、水沢 悦子 / 花のズボラ飯 (2)

花のズボラ飯

既にドラマ化のオビがついて増刷かかってるし(笑。

花のズボラ飯

今やあまりにも有名になった「ウンマ~~~ッ!」。

飲みの〆として TKG(卵かけご飯)を初めて食べたときには確かに内心このくらい歓喜しましたが、卵かけご飯をここまでうまそうに食べる顔を描いたマンガを私は他に知りません(というか、マンガで卵かけご飯を食べるシチュエーションなんてそうそうないよな)。

花のズボラ飯

出ました「ミョウガって夏の番長よね!!」。「ソースの味って男のコだよな」に通ずるモノがあります。まさにオンナ版井之頭五郎。いや、どちらの作品も原作者・久住昌之氏のキャラクターを投影したものと言わざるを得ないでしょう。

花のズボラ飯

オヤジギャグ満載だし(笑。『孤独のグルメ』が基本的に全編にわたって淡々としたノリで進むのに対して、『花ズボ』は料理のシーンが始まったら食べ終わるまでずっとハイテンション。でも、どちらもひたすらモノを食べる行為を描いていて、それほど山も落ちもない、というあたりはとてもよく似ています。

そして食べ物がいちいちうまそうなんですよね。『孤独のグルメ』のほうもうまそうなんですが、あれは原画を一度見てしまうと、あの原画でのうまそうさが印刷では表現し切れていないような印象でしたが、こちらは印刷でもうまそう。基本的にズボラ飯なのでそんなに大したものが出てくるわけでもないんですが、読んでいるだけでお腹が空いてきます。

このテンションとやたらうまそうなズボラ料理たちをドラマでどう表現するのか、今からとても気になります。残念なのは、基本的におうちごはんなので聖地巡礼できないことでしょうか(笑。私は料理は一切しない派(できないわけじゃないけど)ですが、今回ばかりはドラマの影響を受けてしまうかもしれません。

久住 昌之、水沢 悦子 / 花のズボラ飯 (1)
久住 昌之、水沢 悦子 / 花のズボラ飯 (2)

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投稿者 B : 23:29 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2012/08/22 (Wed.)

子育てできれいな歯並びを!

倉治 ななえ / 子育てできれいな歯並びを! -夢は矯正いらず

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クマデジタルさんが買っていたのを見て、そういえば私も歯並びについては最近気になっていたところなんですよ・・・と思って読んでみた本。

私は歯並びはかなり悪いほうです。具体的に言うと、歯並びだけ徳永英明に激似です(ぉ。母もほぼ同じ歯並びなので、完全に遺伝なのですが、小学校高学年になっても生え替わらなかった何本かの乳歯を歯科でまとめて抜かれたりした影響もあるかもしれません。そして、最近永久歯への生え替わりが始まっている長女も、永久歯の出てきかたが私にとてもよく似ているので、同じような感じになる可能性が高いと思っています。次女は次女で、下あごを突き出して遊ぶ癖があって、噛み合わせに不安が出てきています。
春に奥歯の詰め物が取れてから通っている歯科で、矯正と親不知の抜歯を強く勧められたのですが、「その経済的余裕があるなら、むしろ娘に矯正を受けさせたい」と断ったりしたこともあって(←これは本心)、歯並びについては強い関心を持っていたところでした。

この本は、自らも子育ての経験をもつベテランの矯正歯科の先生が執筆された本で、「きれいな歯並びがいかに大切か、そしていかに矯正だけに頼らずに、子育てできれいな歯並びを作るか」について書かれています。状況によっては矯正を併用した方がいいケースはあれど、多くの場合は子育てのやりかた次第できれいな歯並びは作れる、という内容。「子育てで」という時間のかかる手段を掲げているだけあって、即効性のある話は一切ありませんが、逆に言えば歯並びというのがそれだけ時間をかけて形成され、成長期であれば日ごろの過ごしかた次第である程度コントロールできる、という話でもあります。
ただ、ここに書いてあったことは、単に歯並びのためだけではなくて、子どもが健康に成長するために必要な過ごしかたやしつけの話だったりもするので、今歯並びで悩んでいる子の親御さんが即効性がないから読む意味がない、というものでもないと思います。

我が家の場合は、遺伝によるところが大きそうなので、かりにここに書かれていることを全て実践してもいずれ歯列矯正のお世話になる必要は出てくるでしょうが、仮にそうなるとしても、矯正の苦労を少しでも和らげてあげるために今から親がしてあげられることはたくさんあるんだな、と気づかされました。現実的な話をすると、育てかたで多少なりともまともな歯並びを獲得できていれば、後の歯列矯正に必要な金銭的負担もそれだけ楽になる、ということでもありますし。

私も歯並びについてはけっこうコンプレックスだったし、ウチは特に二人とも女の子だし、いろいろと考えさせられました。

投稿者 B : 23:28 | Book | Healthcare | コメント (0) | トラックバック

2012/07/25 (Wed.)

機動戦士ガンダム UC メカニック&ワールド ep1-3

機動戦士ガンダム UC メカニック&ワールド ep1-3

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最近サイカ先生クマデジさんのエントリーを読んで「グレートメカニック DX」誌のガンダム UC のページを読みたくなったんですが、残念ながら UC 以外はマクロスとアクエリオンくらいしか興味あるタイトルがなく・・・ガンダム UC のページだけ読みたいんだよ!と思っていたら、ちょうどそのガンダム UC パートだけを合冊にしたムックが発売されたじゃないですか(笑。思わず、脊髄反射で買ってしまいました。

とはいえこのムックは基本的に同誌の過去の号に掲載されたものの再編集なので、最新号に登場している RX-0 バンシィ関連の掲載はナシ。その代わり、ep1-3 に関する内容を既刊から加筆編集したものになっていて、かなりのボリューム感があり、OVA『ガンダム UC』のメカニックおよび世界観関連の設定資料集として非常に読み応えのあるムックになっています。それぞれの機体解説というよりもアニメの設定資料集というスタイルを取っていて、あの複雑なカトキメカの面構成をどうやって雰囲気を残しつつシンプル化したかとか、変型の途中経過の設定画とか、OVA を繰り返し観たならワクワクできる深さの内容。アニメ作品としては最新の作画でありながらも、一目で宇宙世紀ガンダムとわかる濃厚な描写がどういうこだわりで生み出されたのか、という、総作画監督兼メカニカルデザインの玄馬宣彦氏ほか、主要スタッフへのインタビュー記事は非常に興味深かったです。

早く ep4 以降が読みたい、けどそれにはグレートメカニック DX 本誌を買うしかなくて、まんまと双葉社の思惑に乗せられている感が半端ありません(笑。UC の BD リリーススケジュールから考えて、このムックの続巻も来年に ep4-5、再来年に ep6-7 という感じになるのでしょうか。ep4 以降の主要メカといえば、シャンブロ、ジェスタ、バンシィ、アンクシャ、ローゼン・ズール・・・という感じでシャンブロとバンシィ以外は脇役的なモビルスーツが中心ですが、特に ep4 は旧作からの再登場 MS が多いので、メカニック的には語りどころはたくさんあるはず。やはり続巻が楽しみです。

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2012/06/20 (Wed.)

オールドレンズ・ライフ Vol.2

澤村 徹 / オールドレンズ・ライフ Vol.2

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デジタル一眼におけるオールドレンズの第一人者・澤村 徹氏の最新のオールドレンズ本が発売されたので、さっそく読んでみました。1 年前に発売された玄光社のムック『オールドレンズ・ライフ』の続編にあたる本です。

同氏の著作としてはその間に『オールドレンズ レジェンド』を挟んではいますが、この 1 年の間にオールドレンズのベースに相応しいボディも NEX-7/5N、フジ X-Pro1、GXR MOUNT A12、OM-D、Nikon 1、PENTAX Q、とかなりのバリエーションが広がりました。センササイズも APS-C や m4/3 に始まって 1inch サイズや 1/2.3inch など、オールドレンズが本来想定していたフォーマットに近いボディを選べる時代になっています。個人的には、過去の名だたる 35mm フィルム一眼レフやレンジファインダ用レンズを本来のイメージサークルに近い APS-C ボディで使ってこそとは思っていますが、実用ではなく趣味の領域としてのオールドレンズならでは、性能本位ではないレンズの「味」というものや、思い入れのあるオールドレンズの再利用という意味で、他のフォーマットにもそれなりの楽しみはあるでしょう。

ということでここ 1 年の間にボディの選択肢も広がり、かつマウントアダプタも単にマウントを変換するだけでなくティルト対応絞り内蔵AF 対応絞り・AE 連動かつ手ブレ補正対応、など信じられないほどバリエーションも豊富になっています。ネタは豊富だけどテーマを絞るのが難しい時代になってきたよなあ・・・と思っていたら、今回のムックではシネレンズにフォーカスが当たっています。シネレンズといえば、高性能にも関わらずフランジバックが短くイメージサークルが小さいせいで従来の一眼レフには使用できず、フランジバックの短いミラーレス一眼(中でもイメージサークルの小さい m4/3 以下のフォーマット)が登場して初めて脚光を浴びたカテゴリ。m4/3 に加えて Nikon 1、PENTAX Q などの小型センサを搭載したボディが増えてきた今は、そこに注目する絶好のタイミングと言えるでしょう。
ま、軽く興味を持った程度の人でもオールドレンズの世界の概要を知れる、間口の広かった前作に対して、2 冊目でいきなりこのディープな世界に誘い込むというのは、このムックのシリーズ構成としてどうなんだ?とは思わざるを得ませんが(笑。

私は APS-C 派なので個人的にシネレンズにはそれほど興味を持っていませんが、まだ見ぬ沼の淵を覗き込むことができた、という意味ではなかなか楽しめる特集ではないかと思います。ホンネを言えばもっと他のオールドレンズについても書いてほしかったところですが、代表的なマウントと銘レンズに関しては、同氏のこれまでのオールドレンズ本である程度網羅されてきた気もするので、現時点を切り取った特集としては、うまくまとまっているのではないでしょうか。逆にこれ以上深掘りしようとすると、底なしの M42 沼やライカ M マウント沼に足を踏み入れることになるので、今くらいの深さで適当に浮かんでいるほうが幸せなのかもしれないなあ・・・とも思います(^^;;

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2012/06/18 (Mon.)

『孤独のグルメ』谷口ジロー原画展

いくら好きでもそこまで行くか、と思われそうですが(笑)、『孤独のグルメ』の原画展を見に行ってきました。

米沢嘉博記念図書館|『孤独のグルメ』谷口ジロー原画展
米沢嘉博記念図書館にて「孤独のグルメ」谷口ジロー原画展開催中 | 明治大学

『孤独のグルメ』谷口ジロー原画展

会場は神保町にある、明治大学の米沢嘉博記念図書館。初めて訪れた場所ですが、コミックマーケットの創始者の一人でありマンガ評論家である故・米沢嘉博氏の蔵書を収めた記念図書館とのことです。私はコミケには行ったことがないので詳しいことは分かりませんが、正直なところ、東京六大学の一角で大真面目にサブカル系の記念館を建てているとは知らなかったので、目から鱗でした。ほーいいじゃないか、こういうのでいいn(ry

とはいえこの施設はかなりこぢんまりとした建物で、1F の半分くらいは米沢嘉博氏とコミケ関連の常設展示、残りの半分で原画展をやっている関係で、展示スペースはかなり狭いです。壁面 2 面+ショーケース展示程度なので、じっくり見ても 20~30 分程度あれば十分満足できるのでは、という規模。マンガの 4 話分に相当する原画と印刷が掲示されていて、このシーンの原画はこんなふうになっていたのか、というのを見比べることができます。また、原作の久住昌之氏が原稿用紙に書いた原稿も数枚見ることができ、久住氏の書いたセリフがそのままマンガに使われていることや、店内のレイアウトや客のディテールなどを久住氏が原稿上で補足している様子などが見て取れます。

展示されている原稿のひとつは、「うおォン」で有名な川崎の焼肉回。ドラマ版でもほぼそのまま実写化されたほど人気のある回をいきなり持ってきますか!と思いましたが、川崎の工業地帯の緻密な描写は本当に見応えがあります。

驚いたのは、印刷だと線が太めでバルキーな印象を持っていたこの作品が、原画では非常に繊細に描かれていたこと。この作品は人物にスクリーントーンをあまり使わず、井之頭五郎の髪の毛に至ってはサインペンのような太い線で描かれているので、全体的にシンプルな絵というイメージを持っていたのですが、対照的に料理の絵や背景については繊細なタッチで描きこまれ、スクリーントーンも細かく使い分けられていて、人物の描写とのコントラストが強いんですね。原画では印刷物以上にその繊細さが見えてきて、谷口ジロー氏は料理については情報量を多く立体的に見せて、それを食べる人の表情はシンプルかつ印象的に見せようとしてこう描いていたのか・・・というのがよく分かりました。まさに「ここに並んだ大量の原画がすべておかずとして立ち上がってくる」とでも言うのか(ぉ

会期は 9 月末までとのことですが、1 ヶ月単位で展示替えを行うそうで、おそらく壁面に掲示される原画が入れ替えられていくものと思われます。それほど規模の大きな展示ではないので、わざわざこのために神保町に行く、というよりは、山手線の環の中に用事があるときに、30 分ほど時間を作って立ち寄る、くらいの気安い感覚で見に行くのが良いかもしれません。神保町は渋めでうまそうな飲食店が多いので、原画展を見たら O.S.T. を聴きながら、何か入れていく店を探してそぞろ歩きしたくなること請け合い(笑。

久住 昌之、谷口 ジロー / 孤独のグルメ 【新装版】

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2012/05/16 (Wed.)

ソーシャルゲームのすごい仕組み

まつもとあつし / ソーシャルゲームのすごい仕組み

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西田宗千佳氏の『スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場』と同時発売され、一緒に買っていた本。私自身、MMORPG ならともかくソーシャルゲームはやったことがなく、でもどちらかというとスマートフォンとの親和性とかそういう観点で気になってはいた分野です。本書も買おうかどうしようか、という微妙な気持ちだったんですが、店頭でぱらぱらめくってみたら私の興味にフックするキーワードが多数目に入ってきたので、そのままレジまで持って行ってしまいました。

『ソーシャルゲームのすごい仕組み』って、いかにもソシャゲ万歳なタイトルなのがきになっていたんですが、内容はむしろソーシャルゲームの射幸心を煽る仕組みなどに対して批判的な見方が強かったり、ドラクエに代表される日本の伝統的ビデオゲームなどからソーシャルゲームに至る経緯、携帯電話キャリアやスマートフォンとの関係、SNS との関係・・・など、ソーシャルゲーム界隈をいたって客観的に見たもので、共感が持てるものでした。私はソーシャルゲームにはそこまで詳しくないので、改めての気づきが多かったのも収穫かも。
ソーシャルゲームがここ数年でここまで急激に大きくなった原因としては、ARPU の伸び悩みに苦しむ通信キャリアが請求スキームの一本化を利用してソーシャルゲームをうまく「利用した」ことや、ここ 1~2 年のスマートフォンの隆盛は無視できないでしょう。が、それ以上に、フリーミアム的な考え方やソーシャル性、ゲームクリアに対するインセンティブの与え方、確率に関して錯誤したくなる心境など、ゲームの要素をプリミティブなレベルまで分解して、そこに心理学的な要素を加えて再構築したことと、ネット企業的な巧妙なビジネスモデルが掛け合わされたことが大きいと思います。それが狙ってやったことか結果論かは判りませんが、負の側面を除いても、現在のソーシャルゲームは本書のタイトルが示すとおり「すごい仕組み」であることは確かでしょう。

今のソーシャルゲーム業界で「二強」といわれる DeNA と GREE、両社はともに最初からソーシャルゲームをメイン事業とした企業ではなかったところ、DeNA はインターネットオークション事業で Yahoo! オークションに、GREE は SNS 事業で mixi にそれぞれ敗れたことで、業態転換に近い形でソーシャルゲームに参入した、ということはよく知られた話ですが、私も特に GREE がいつの間にかケータイゲーム/ソーシャルゲームの会社に変わっていたことに気づいたときはちょっと驚きました。そして、両社ともにソーシャルゲーム事業においては訴訟であったり法的にグレーな部分で話題になることが多く、ダーティなイメージがつきまとっていることも興味深い。
まさにここ 1 週間ほどの間に話題になっているところですが、消費者庁がコンプガチャを規制するという報道→大手ソーシャルゲームプラットフォーマーが一斉にコンプガチャの廃止を発表、という流れになっているところですが、問題はコンプガチャだけなのか。今回はいかにも業界側が「従ってみせた」という姿勢に見えるので、今後消費者庁や警察がどう動くか。コンプガチャ規制は始まりにすぎないと思います。

現時点でのソーシャルゲームはどちらかというと負の側面のほうが強い。とはいえ、本書でも書かれていますが、問題点を是正することで、社会に貢献できる新しい経済圏を作り得る可能性を秘めてはいると思います。既存ゲームメーカーの多くがソーシャルゲームとの接点を持つようになってもきているところですし、そろそろ健全な体質と産業としての成長性を両立できるビジネスモデルを再構築した上で、日本発の新たな文化として外貨を獲得できる分野に育っていってほしいところですが・・・。

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2012/04/21 (Sat.)

スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場

西田 宗千佳 / スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場

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スマートテレビ。単語としては Google TV が出てくる前後くらいからありましたが、だいたい 2011 年の IFA あたりから頻繁に使われるようになったような印象です。IT/エレクトロニクスにおけるスマートフォン、(スマート)タブレットの次の潮流は間違いなくスマートテレビ、と言っても過言ではないくらいに最近スマートテレビに対する注目が高まりつつあります。
この『スマートテレビ』は、スマートフォンやタブレット、およびそれらの上で閲覧できるさまざまなコンテンツの電子流通周りを追い続けてきたジャーナリスト西田宗千佳氏の最新の著書。業界動向を表面的に追っかけたものではなく、スマートテレビが出現してきた背景を技術的、マーケット的、および業界構造的観点から掘り下げてあるので、それほど専門知識がない人でも「スマートテレビで今、何が起きているのか」をフラットに把握できるでしょう。

先日、鴻海(世界最大手の EMS として有名な Foxconn の親会社)がシャープの筆頭株主になったことを引き合いに出すまでもなく、今やテレビ事業は多くの経済誌に国内の電機メーカーの「お荷物」とまで評されるようになってしまいました。テレビにこれ以上の高画質化は求めていない、別にスマートテレビだといってアプリが使いたいとも思わない、「安ければそれで十分」という意見もあるでしょう。が、もしそれをジャーナリストや業界関係者が言っているのであれば、それは産業の「いま」しか見ていない、狭いものの見方だと思います。

スマートテレビとは何か?テクノロジー的な観点から言えば、従来よりも性能と汎用性の高い半導体と OS を搭載し、コンピュータ化してネットワークに接続されたテレビということになるでしょうか。用途の面から言えば、Web ブラウジングができるテレビ、動画配信サービスが受けられるテレビ、アプリが動かせるテレビ、従来の十字キーつきリモコン以外の新しいインターフェースで操作するテレビ、スマートフォンやタブレットと連携するテレビ、などいろいろあります。が、どれも正しいし、そのどれもが正しくない。いや、正確には「どれかだけでは正しくない」と言ったほうが良いでしょうか。
そういえば、1 年ほど前のイベントで「そもそもスマートフォンって何?スマートフォンって、ハードウェアだけ見たらそれ自体が賢いわけではなく、アプリやサービス、ネットワークとの組み合わせで賢くなれる電話」という問いかけがありましたが、それとほぼ同じことがスマートテレビにも言えると思います。

実は、用途の面から見ると、ここ 4~5 年のテレビはすでに「スマートテレビ」と言えるほどの機能性は備えていながらも、快適でない操作性、互換性の低いプラットフォーム、そして何より限られたハードウェアリソースのせいで「機能はあるのにほとんど使われない」ものがほとんどでした。この部分からしても、フィーチャーフォンとスマートフォンの対比によく似た状況にあると言えます。それが、スマートフォンの高性能化・低コスト化に伴い、テレビにも共通のプラットフォームを持ち込むことでユーザビリティと互換性の水準が一気に高まるのが、今起きようとしている「スマートテレビ」の本質と言って過言ではないでしょう。
ただ、私個人の見立てとしては、「電話機兼ハンドヘルドインターネット/メール端末」であった携帯電話からスマートフォンへのシフトや、「ノート PC のバリエーション的な存在、もしくは大画面化したスマートフォン」的なタブレットの位置づけのような明快さではなく、「基本的には放送を受像し、ときどきパッケージコンテンツを再生して楽しむもの」というテレビへの固定概念が強く、「テレビ画面を単なるディスプレイと認識して、そこで何をするか」というパラダイムシフトを起こすのに必要なカロリーが高いことが、スマートテレビの悩みの一つではないかと思っています。
とはいえ、スマートテレビにまつわる要素の全てを一気に認知させることは難しいでしょうから、その中からキラーとなり得る要素を見出して、それをテレビのパラダイムシフトの象徴にしてしまうのが最も近道でしょうが。個人的には、もしスマートテレビがスマートフォンと同じようなシナリオで普及していくとするならば、ユーザビリティ、つまり従来のテレビにはない気持ちの良い使い勝手や、常に持っているスマートフォンがそのままリモコンになるような操作性が鍵を握るような気がしているのですが。でもたぶん、それだけでも足りないような気もするし。

まあ、さっき「スマートテレビの悩み」とは書きましたが、現時点で国内において真の意味で今の「スマートテレビ」と呼べる製品は発売さえされておらず、これから、おそらく今年の夏から冬にかけて最初の製品群が出てくるでしょうから、現時点で悲観するのもどうかとは思います。実際の市場を見ると、スマートフォンは少なくとも今年はまだ成長基調にあるので、テレビ側がアナログ停波に伴う買い換え需要直後の冷え切った状況であることも併せて考えると、スマートテレビはスマートフォン市場が横ばいになる頃に初めて「ポスト・スマートフォン」的に需要が盛り上がってくるような動きをするのではないでしょうか。そういう意味では、日本におけるスマートテレビの普及は、もしかすると海外よりも遅い立ち上がりになる可能性もあると思いますし、通常のテレビの買い換えサイクルとスマートデバイスのハードウェアの陳腐化のスピードとのギャップをどう埋めるか、も課題になるでしょう。
汎用のプラットフォームと汎用のプロセッサを使う限り、スマートテレビもスマートフォンと同じく「Apple と Google 以外は誰も儲からない」市場になるリスクも高いと思います。でも、Google が今のように「UX で生活を変える」という部分に興味を持っていない限りは、それが実現できるのは Apple か、そのライバルとなる機器メーカーやサービスベンダーしかなく、それが実現さえできればメーカーもその顧客も幸せになれる目はある。そうでなければ、たとえ有機 EL テレビの低価格化が実現できたところで「安ければそれで十分」のスパイラルから脱することはできないでしょう。それはマクロ的な観点で見れば、みんなにとって不幸だと思います。

考えるべきことはたくさんあって、明確なゴールもない。潮流が来るのは判っていても、何が真の価値なのかさえ理解できていない人も少なくない。難しい分野だとは思いますが、少なくとも「進むべき方向の輪郭」は描かれている、そんな一冊だと思います。製造業に限らず、さまざまな分野でのコンバージェンスやクロスオーバーが進み、本質的な価値の再構築が求められている今だからこそ、むしろテレビ以外の産業に関わっている人に読んで、以て他山の石としてほしい書物だと感じました。

投稿者 B : 00:10 | Book | Business | コメント (3) | トラックバック

2012/03/13 (Tue.)

先月受験した TOEIC の結果

実は先月 2 年ぶりに TOEIC を受験していました。公開テストではなく勤務先での IP(Institutional Program:団体受験制度)ですが。で、近頃その結果が届きました。

去年の夏に買ったテキストは、買った直後くらいから本気で死にそうなくらい仕事が忙しくなってしまい、パラパラ読んだ程度で数ヶ月放置(汗。昨年末に、IP テストが実施されることを知って申し込み、年明けから慌ててちょっと勉強したんですが、せいぜい 2 週間くらいしかできませんでした(;´Д`)ヾ。私は通勤時間、中でも電車やバスに乗っている時間が短いので、通勤中にやるということもあまりできないんですよね・・・。

ちなみに去年の夏に買ったのはこのテキスト。

仲川 浩世 / TOEIC テストこれ 1 冊で全パートをモノにする ――500 点~860 点突破のための解法テク&実戦問題

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Amazon の評価はかなり高いこのテキストですが、Amazon のレビューといっても実際どんなレベルの人がレビューしているかまでは分からないので、あまり参考になるとも言えず(´д`)。2 週間集中的にやってみた感じでは、500~860 点という広い得点域をカバーしているため、内容のレベルが幅広い代わりに、ある程度以上のレベルの人には物足りないのではないかと感じました。私は、長文のリスニングは勉強になったけどそれ以外は「やった手応え」をあまり感じられなかったので、既に 700 点以上取れている人であれば「860 点」という謳い文句に惑わされずに、もっと難問を重点的にやるような教材を選んだほうが良いように思います。

  • 目標:700 点台前半から 750 点突破を目指したい、けど確実に取るために一応ダメモトで 800 点オーバーを目指す

  • 結果:90 点アップして 800 点台に乗りました!!!
これには自分自身正直びっくり。解いてる間は 700 点台に乗った前回のテストよりも手応えを感じなくて、これはもしかしたら点数下がっちゃうかもしれないなあ、と覚悟していたので、たいへん驚きました。
上記のテキストで付け焼き刃的に勉強した成果だとは思えないので、まぐれ当たりでなかったとすれば(笑)前回の受験時に買ったテキストで出題傾向(設問と答えの選択肢に同じ、または発音が似た単語が出てくる場合はまず引っかけで、答えは同じ意味の言葉を別の表現に言い換えているものが正解であることがほとんど、とか)を掴んでいたことと、あとは日常的に仕事で英語を使う機会が以前よりも確実に増えたことが要因じゃないかと自己分析しています。楽天やユニクロのように英語が社内公用語化されたわけではありませんが、業務メールの一部は英語で送られてくるし(以前は「Japanese Below」とかいって和文が添えられていることが多かったのに、去年くらいからなくなった)、英語の資料を日本語化する作業も定期的にあるし、年に何度かはほぼ英語しか使わない会議に出席する必要があるし(今までのところ、私が英語で発言する必要に迫られたことはありませんが、今後確実に出てくる・・・)。そんな環境で、知らず識らずのうちに英語に関する基礎体力が強化されていた、と思いたい(^^;;

ただ、社内で使う英語は業界用語の登場率が高いから理解できるだけということもあるし、何よりネイティブよりも日本人やアジア人の英語を聞く機会のほうが圧倒的に多いので、これが本当の英語力かと言われれば、自分でもちょっと疑問(笑。いずれにしても、TOEIC の点数が良ければ英語でスムーズにコミュニケーションできるというわけでもないので、個人的にはそろそろ十ウン年ぶりに英会話スクールにでも通って、自分で英語をちゃんと話せるようになる必要があるのかな、とは最近考えています。別に海外赴任したいわけじゃなくても、もう英語は避けて通れないスキルだと思うので・・・。

TOEIC のほうはとりあえず 800 点あれば、社内では海外赴任以外は何の仕事をするにしても応募資格がないということもないのですが、定期的にスコアを更新しなければ失効してしまうようなので、意識的に TOEIC 用の勉強も続けていく必要はあります。今度はもうちょっと高レベルに寄ったテキストを使って勉強してみるかな。

森川 美貴子 / TOEIC テストこれ 1 冊で全パートを完璧にする ――800 点~990 点達成のための解法テク&実戦問題&模擬試験

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投稿者 B : 00:27 | Book | コメント (0) | トラックバック

2012/01/19 (Thu.)

リアルタイムレポート・デジタル教科書のゆくえ

西田 宗千佳 / リアルタイムレポート・デジタル教科書のゆくえ

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iPad VS. キンドル』『メイドインジャパンと iPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電』『形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組』など、ここ数年 IT/家電系で注目のカテゴリについて精力的に出版を続けられている、ジャーナリスト西田宗千佳氏の新刊を読みました。
同じ「スマートデバイス」という題材を扱ってはいるものの、「デジタル教科書」が起点になっているという点で、本書は同氏の iPad やスマートフォンといった切り口の既存書籍とは少し趣が異なっています。学校は今の私には直接関係がない場所ですが、PC やタブレット、スマートフォンといったデバイスが教育の場にどう導入されていくのか?という興味はちょっと前からあったところ。

本書は慶応大学教授の中村伊知哉氏、AV/IT 系ジャーナリストの小寺信良氏、ジャーナリストの田原聡一朗氏、など私も名前を存じ上げている方から、NEC やソフトバンクのグループ会社など IT やコンテンツ流通に関わる企業の担当者、あるいは実際に教育の現場にいる方々、など幅広い関係者に対するインタビュー形式で綴られています。
中でも興味深かったのは、いろいろな立場の人が登場しているにも関わらず、大まかな方向性としては問題意識を持っている部分がほとんどの登場人物の間でかなり似通っていたこと。その山への登り方には差異があれど、「単に教科書をデジタル化すればいいという問題ではない」という点が共通だったことは、単にインタビュアーである西田氏の問題意識に引きずられてのことではないと思います。

その問題意識というのは「単に教科書をデジタル化すること」ではなく、「校務や児童生徒とのコミュニケーションに IT を導入し、効率と効果を上げること」が必要で、教育の現場においてはむしろそっちのほうが重要度が高い、ということです。単に教科書がデジタルになっただけでは、ランドセルが軽くなったり調べ物がすぐにできるようになったり、資料がインタラクティブになったりはすれど、それ以上のことは少なく、紙でなくなることで逆に失うものもある。それよりは、教材としては紙とデジタルを共存させつつ、教育のプロセスそのものに IT を取り込んでいくことのほうが、意味があると考えられます。
個人的には、「デジタル教科書の本を読んでいたはずが、いつの間にか教育論、学校経営論、教育行政論の本を読んでいた」ような状態になりましたが(笑)、設備や機材を導入して機器メーカーにお金を落として終わり、というのは今までの IT 教育行政でもさんざん行われてきたことであり、これから求められていくのはそういう話ではない、ということは理解できます。確かに、私も中学の頃に学校にコンピュータ室が作られ、そこに数人に 1 台の割合で FM TOWNS(懐)が設置されましたが、数回の授業で使ったっきり、後に続くものがなかったことを憶えています。結局、道具は使い方次第で役に立ちもするし、無用の長物と化しもする。悪用すれば悪者にもなる。そういうことなのでしょう。

インタビュー内容の解釈が読者に委ねられている本書において、数少ない西田氏ご本人の見解が直接書かれている終章でのこの一言が、本書の内容を象徴しているのではないでしょうか。

機械を変えるのでなく「プロセスを変える」こと。
そういえば、私がかつて携わっていた SI という仕事も、SIer(システム提供者)の立場からすれば「機器やソフトウェアを導入してもらい、その対価を得ること」ですが、クライアントの立場からすると「業務プロセスを改善して業務の効率や効果を上げることが目的であって、機器やソフトウェアの導入はその手段」。システムエンジニアはまずクライアントの業務プロセスを分析し、効率の悪い部分の情報フローを変えたり、機械化できるところは自分たちの機器やソフトウェアを使って機械化することを目標に、要件を定義して新しいプロセスやシステムを実装していくのが仕事でした。つまり、プロセスを変えることこそが目的であり、システム化はそれを実現するための手段にすぎません。
個人的には、教育の場を聖域としてアンタッチャブルにするのではなく、産業界と連携してより費用対効果の高い教育を目指していくことが必要(もちろん、企業の都合で教育の方向性がねじ曲げられることはあってはならない)だと思っています。が、それは「機器/サービスベンダーの目線で商品を売り込むこと」ではなく、SI のように「教育の場に求められていることを客観的に定義して、それに最適な製品を機器/サービスベンダーが提案する」という順序でなければ、成功しないのだろうなと思います。

学校教育というのは、言い換えれば「この国の未来を担う人材を育成する行為」です。その目的は予め与えられた正解を導く手法を憶えさせることでも、単に子どもを偏差値の高い大学に入れることでも、逆に半端な教養しか植え付けないことでもありません。大人たちが、10~20 年後のこの国にどんな人材が必要か?その人材を生み出すためにどんな教育が適しているか?を考え、それを実施するためのプロセスを今一度基礎から練ることが求められているのではないでしょうか。つまりは、「未来のこの国のカタチをどうしたいか」というところからスタートしなくてはならない話なのだと思います。新しい時代を創るのは老人ではない。

世代ごとの投票率に偏りがあるせいか、とかく高齢者保護的な政策ばかりが目立つ昨今ですが、若者が自立できる国にならなければ、あとは移民を受け入れるくらいしか高齢者を支える術はいずれなくなってしまいます。そういう意味で、今後のこの国の教育のあり方を考えさせてくれる本書はすごく意義のある一冊ではないでしょうか。それなりに IT 用語も出てくるので読むにはある程度のリテラシが必要ではありますが、教育の現場に関わっている人だけでなく、子どもを持つ親御さん、あるいは IT カテゴリで少しでも教育に関係しそうな仕事に就いている人であれば、一読を勧めたい書物だと思います。

投稿者 B : 00:41 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2011/11/26 (Sat.)

機動戦士ガンダム THE ORIGIN(単行本)完結

安彦 良和 / 機動戦士ガンダム THE ORIGIN (23) めぐりあい宇宙編

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2001 年に連載が始まった『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』がついに完結。最終巻を買ってきました。

連載されていた「ガンダムエース」誌のほうは読んでいなかったので(最終話が載った号だけ買いましたが)、前巻からラストまでの内容は把握しておらず。基本的には原作(アニメ)の内容を踏襲していることには変わりないのですが、アニメでは描かれなかった部分の裏付けや演出によってオリジナル以上に厚みが増していて、さらに画の力(安彦氏は漫画の全てを筆で描いている)もあって、ただただ圧倒されるばかり。
THE ORIGIN の魅力は「安彦良和氏自らが再構成して漫画化したファーストガンダム」というだけでなく、シャアとセイラの生い立ちや一年戦争の開戦前後など、アニメでは描かれていなかったエピソードを(半ば後付けながら)描かれていたり、アニメではやや無理があった設定や打ち切りに伴う終盤の唐突な展開に丁寧な補足がつけられていたり、という深み方向の充実度にあったことは間違いないと言えるでしょう。が、この最終巻に来て、ここまでの回に出てきたあの演出は、実はこれのための伏線だったのか!という驚きまで与えられ、読後の感想としては心底打ちのめされたような心境(笑。ファーストガンダムファンでこれを読んでいない人がいたとしたら、人生の半分を損していると言っても過言ではないと思います(ぉ。

私は愛蔵版も収集しているので、より大判で紙質も良く、カラー稿もちゃんとカラー収録されている愛蔵版の最終巻発売までまだしばらく楽しみが残っていますが、アニメ化プロジェクトのほうも気になります。どういう体制で制作・収録されるのか、そして公開形態はどうなるのか?これだけの作品を再映像化するというのは正直不安もありますが、多くのガンダムファンを満足させる映像作品に仕上がることを願ってやみません。

ともあれ、安彦先生、ひとまずは 10 年間本当にお疲れさまでした。ありがとうございました。

投稿者 B : 23:23 | Book | Comic | コメント (0) | トラックバック

2011/11/25 (Fri.)

オールドレンズ レジェンド

オールドレンズレジェンド 本日発売です!: metalmickey's blog
澤村 徹 / オールドレンズ レジェンド

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最近、けっこう定期的に刊行されている澤村 徹氏著のオールドレンズ本の最新刊。既刊『オールドレンズ パラダイス』『オールドレンズ パラダイス 2』『オールドレンズ・ライフ』あたりが比較的オールドレンズ初心者向けに、「沼の入り口」へと誘う書物だったのに対して、本書は沼の深みに引きずり込もうと言うのか!というマニアックな一冊になっています(笑。

従来は EOS、m4/3、NEX など書籍ごとにテーマとするマウントを決めて、それに適合するレンズを紹介する、という体裁だったのが、今回はどちらかというとレンズ軸で語っていく内容。メーカーや発売時期が異なるほぼ同スペックのレンズ同士を比較してどう違うのか?という切り口でオールドレンズを比較する、今までにありそうでなかった切り口のオールドレンズ本です。

本家 Sonnar 対「ゾナーコピー」であるロシアの Jupiter、Flektogon(モノコート)対 Flektogon(マルチコート)、Zeiss 対 Zeiss Jena といえる Distagon 対 Flektogon(ただし中判用での比較)、Zeiss T* コーティング対 Rollei HFT コーティングがキモな究極の Planar 50mm 対決、同じ Y/C マウント内での Distagon 25mm 対ヤシカ ML 24mm、など、比較してみたかったけど自腹じゃ無理だったツァイスファンにはたまらない対決が多く、非常に読み応えアリ。他にも Summicron 対 Rikenon、Elmarit 対 Rokkor といったライカレンズと国産レンズの比較や、ミラーレス機の流行で注目の高まるシネレンズ比較など、ツァイスマニアでなくとも楽しめるのではないでしょうか。個人的には、今まで買ったオールドレンズ本の中で最も写欲と物欲をくすぐられた一冊でした。

私はここのところさっぱりカメラをいじる時間が取れていませんが、これを読んで久々に中古カメラ屋巡りをしたくなりました。欲しいけど保留にしていたレンズがいっぱいあるんだよなあ・・・。

投稿者 B : 00:27 | Book | Camera Mook | コメント (2) | トラックバック

2011/11/02 (Wed.)

Kindle 4 (初期セットアップ編)

Kindle 4、昨日に引き続き初期セットアップ編をお送りします。初期セットアップにも「へええ」と思わされるところがいくつかあったので、そのあたりを中心に。

Amazon / Kindle Wi-Fi 6" E Ink Display

Kindle 4

Kindle 4 のコールドブート時の画面はこんな感じ。大きな木の下で一人本を読む少年(?)・・・という、なんか友達がいなくてさみしい感じのモチーフです(ぉ

Kindle 4

初期セットアップでは、最初に言語を選択します。最近の iOS や Android などのマルチランゲージ端末も同じような感じですね。Kindle 4 の US 版では、ドイツ語・英語・米語・スペイン語・フランス語・イタリア語・ポルトガル語から選択します。これでアメリカ大陸と西欧はだいたい網羅できるというところでしょうか?近々と言われる日本参入時には、当然日本語に対応したバージョンが投入されるはずです。

Kindle 4

言語を選んだらまずはようこそ画面。設定に必要なステップ(Wi-Fi の設定と本体の登録だけ)が示され、簡単な手順ですぐにできますよ、と伝えてくれています。まあ Wi-Fi の設定というだけでハードルが高く感じるものなので、ゴールまでの道程が見えているだけでも不安のレベルは違うものでしょう。

Kindle 4

次のステップでは、いきなり周囲の Wi-Fi アクセスポイントの SSID 一覧が出てきました。私が今まで使っていた Sony Reader はスタンドアロン版なので、電子ペーパーの画面にこういういかにもデジタル的なものが表示されると、妙に新鮮に感じます(笑。
ここでは、自分が使用したいネットワークの SSID の「connect」を選択します。ついタップしたくなる画面ですが、Reader と違ってタッチパネルではないので(笑)カーソルキーで選択します。

Kindle 4

Wi-Fi のパスワードはソフトキーで入力します。ソフトキーの配列が QWERTY ではなくアルファベット配列なので、PC 文化な私には却って入力しづらい(´д`)。でもまあ、タッチパネルなわけでもないので、多くの人にはむしろこっちのほうがいいのか・・・。

Kindle 4

で、Wi-Fi に繋がる(=その先のインターネットに繋がる)と、いきなり「この Kindle は現在この人に登録されています:」といって自分の名前が表示されました。で、この登録のまま使うのか、違うアカウントで登録し直して使うのかを選択するわけですが、これにはちょっと驚いた。

で、もしかして出荷前にユーザーアカウントを設定して発送しているのか!?と一瞬思ったのですが、ふと考え直してみて、出荷時に個体のシリアルナンバーか MAC アドレス(おそらくは前者)を発注したユーザーアカウントと紐付けているのでしょう。で、本体がネットワークに繋がったら、Amazon のサーバで個体に紐づけられているアカウントを引っ張って、デフォルトとして表示させているという仕組み。まあ単純な仕組みですが、これができている商品って意外とない。
例えば Sony Reader も今年モデルは Wi-Fi か 3G を搭載しているんだから、同じことがでてもいいんじゃない?と思いますが、そこは原則として全ての買い物がユーザーアカウントと紐付けられている Amazon と、誰でも買える量販店でも販売している家電メーカー製品との違い。メーカー製品でも直販の場合だけは事前に購入者が特定できるわけで、ソニーストアで Sony Reader を買ったらそれくらいの UX は提供してくれてもいいような気はしますが(笑)なかなか簡単にはいかないようで。
そういえば Amazon で買う場合もギフトとして買う場合は、デフォルトのユーザーアカウントを指定しない状態で贈れるんですかね?もらったはいいけど、何も考えずに設定をずんずん進めていったら、贈り主のものとして設定されてしまったら、それは嫌だ(笑

Kindle 4

話が横道に逸れてしまいましたが、初期設定としてはこの手順までで完了。あとはユーザーガイドを読むか、いきなり Kindle Store で買い物をするか、を選んで使い始められます。PC と同期したり、自分のユーザーアカウントを改めて設定したり、いろいろと面倒な手順をほぼ全て省略させてくれることがどれだけ物事を簡単にするか、というのが非常によく分かるセットアップ手順でした。Amazon のビジネスモデルだからできる、という部分はあるでしょうが、他メーカーがここから学べるものは大いにあると思う。

Kindle 4

Kindle 4 で Kindle Store を表示するとこんな感じ。モノクロですが、それほど不自由な印象は受けません。画面表示の切り替えが電子ペーパーにしては速いこともあって、この中で十分にコンテンツを検索し、購入することができると感じます(ただ、キーボードがカーソル選択式なのがネックですが)。
去年、Sony Reader を買うときに、当時は海外版と違って日本で 3G モデルがなく、スタンドアロン版しかなかったことについては「ページ切り替えの遅い電子ペーパーでストアをブラウズするなんて考えられない」と思って気にも留めませんでしたが、これなら単体でも全然問題なく書籍の購入から読書まで完結できると思います。

Kindle 4

で、いきなり端末が自分のユーザーアカウントと紐付けられているから当然なのですが、セットアップが完了した時点で、書棚(自分が所有しているアイテムの一覧)には購入済みの書籍(私の場合、Kindle が到着する前に Android 版の Kindle アプリでジョブズ伝記は購入済みだった)が表示されて、それが読みかけだった場合には開くと途中のページから始まる、という「クラウドベースのサービスだったらできて当たり前のこと」が当たり前にできるようになっています。これは気持ちいい。私が持っているスタンドアロン版の Sony Reader ではできないことです(泣。

Kindle 4

あと、書棚には自分宛(自分の名前入り)のウェルカムレターが入っていて、これも読むことができます。まあ技術的に大したことをやっているわけではありませんが、こういう細かな心遣いがファンを作るところでもあったりするので、意外に重要という。

セットアップも完了したので、これからジョブズ本を読んでいきたいと思います。基本的に私は本を読むのは遅い方ではないと思っているのですが、さすがに英語をそこまで読み慣れているわけでもないので、読破までにはけっこう時間がかかるかなあ。

しかし Kindle でこれだけ良いなら、より完成度が高まったと評判の Sony Reader の新モデルも買ってみたくなったなあ・・・。去年モデルの Pocket Edition はスタンドアロンだし、画面が小さいし、メモリ容量は小さすぎるし、で今や不満しかありません(´д`)。今後買うなら最低でも 6inch だな・・・。

Amazon / Kindle Wi-Fi 6" E Ink Display

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投稿者 B : 23:12 | Book | eBook | コメント (0) | トラックバック

2011/11/01 (Tue.)

Kindle 4 (開梱編)

スティーブ・ジョブズの伝記を読んでいる人が多いようで。私も興味はあったものの、上下巻のハードカバーを持ち歩いて読む気がしなかったので、電子書籍で読もうと考えていました。そしたら、Twitter のタイムライン上で「電子書籍で原語(英語)で読む」という意見がちらほら見受けられたので、日本語版より英語版のほうが安いし(笑)、英語の勉強がてら私も原語で読んでみようかな?と思い至りました。

ただ、いろいろ探してみた結果、私が持っている日本版 Sony Reader で英語版のジョブズ伝記を読む方法は今のところ自炊以外にはない模様。で、円高でもあるし、買ってまえ!ということで、Amazon.com から Kindle 4 を購入(笑

Amazon / Kindle Wi-Fi 6" E Ink Display

Kindle 4

Amazon.com から輸入したのはこれが初めてではないのですが、いつぶりか憶えていないくらい久々。で、パッと見では通常の Amazon のカートンと同じ段ボール箱ですが、これが Kindle の正式なパッケージです(!)。
私はあまり開梱レビューをやるほうではないのですが、珍しいパッケージなので軽く開梱レビューから。

Kindle 4

ポッキーの箱みたいな感じ(笑)でばりばりばりっと段ボールを開封して上蓋を跳ね上げると、いきなり Kindle 本体とご対面。実は開封するまで段ボールの中にちゃんとしたパッケージが入っていると思っていたので、これには驚きました(;´Д`)ヾ。まあ、極限までハードウェアコストを削った上で(というか、ハードウェアコスト的には逆ざやになっていてもおかしくない)本体をばら撒こうと思えば、このくらい徹底しなくてはならないということなのでしょうが。でも、ここまで徹底するくらいなら普段の荷物ももっと空気の少ないパッケージで送ろうよ(´д`)。

写真内で、本体の上の方についている白いものは開梱時に最初から付いていたものです。品質管理を若干疑いはしましたが、安いんだしいいよね・・・と納得した部分もあり。ただ、輸入品に白い粉ってやばいんじゃないの?と思ったのは事実です(ぉ

Kindle 4

本体を取り出すと、その下には USB ケーブルが隠れていました。同梱品はほぼこれだけ、というこの上なくシンプルな商品構成です。
しかし紙製の緩衝材とか、単純な構造ながら非常によく考えられていますね。

Kindle 4

ケーブルはなんとなく Apple を連想させるデザインイメージのもの。よく見るとコネクタ近辺に細かいバリが残っていたり、やや雑な作りではありますが、ちゃんと世界観を演出するだけのものを同梱しているあたりがニクいです。日本メーカー製品だと品質はちゃんとしててもほとんどデザインされていないケーブルが付いていて、気分的に萎えることも少なくないので。

Kindle 4

跳ね上げた箱の蓋の裏側にも、本体の固定を兼ねた緩衝構造と取説のホルダーが備えられていました。無駄のない梱包だ・・・。
ちなみに取説は各部名称と充電の仕方だけが記載された、これまたシンプルなもの。ユーザーは原則として最低限 Amazon を使って注文できるリテラシがある、ということで、チュートリアルやサポートにかかるコストを最小化しているように思えます。
取説の記載は各国語でありますが、日本国内での正規販売はまだないということで、日本語のページはなし。まあ現時点では Kindle の書籍自体に日本語版がありませんから、順当なところでしょう。

Kindle 4

本体。最初についていた画面保護用のフィルムを外した状態です。画面書き換え時以外には電力を消費しない電子ペーパーの特性を利用して、充電の仕方については最初から画面に表示された状態になっています。このあたりは Sony Reader も確か同じでしたね。

本体デザインはもう可もなく不可もなしの極致といったところで、愛着のわきようもありませんが、そこそこの質感となんと言っても安い価格が「まあ、こんなもんだよね」と思わせます。

Kindle 4

背面は滑りにくいラバー塗装が施されていて、滑りにくくなっています。Sony Reader も同じような処理がなされていましたが、私は歴代の Kindle を全て触っているわけではないので、どちらがオリジナルかは知りません(^^;;

Kindle 4

操作ボタンと microUSB 端子、および電源ボタン周り。電源ボタンは底面にあり、ディスプレイ下部には左からバックボタン、キーボード呼出ボタン、カーソルキー+決定ボタン、メニューボタン、ホームボタン。カーソルキーは書籍の表示中には左右がチャプター送り/戻し、上下がズームイン/アウトに割り当てられます。
このへんも可もなく不可もなし、といった感じですが、Sony Reader のデザイン十品ボタン配置/形状に比べればこちらのほうが使いやすいように思います。

Kindle 4

ディスプレイの左右にはこのように長めのボタンが 2 つずつついています。上の短いボタンがページ戻し、下の長いボタンがページ送りになっていて、側面を片手で掴んだ状態でもこのボタンを使ってページ操作ができるようになっているのは、よく考えられているなあ、と思いました。
Sony Reader だとページ操作キーは画面下のボタンを使うか、タッチスクリーン(光学式)を使うんですが、正直片手持ちだとどちらでも操作しにくい(´д`)。タッチ操作は「紙をめくる」動作を電子書籍の UX に取り込んだ結果でしょうが、個人的には無理に紙媒体のメタファを取り入れるより、使用方法から合理的な動作を逆算するほうが理にかなっていると思っているので・・・。

Kindle 4

Sony Reader(PRS-350)との比較。まあ Reader のほうは 5inch だし去年モデルなのでフェアな比較ではありませんが・・・。でも、電子ペーパーの質としては、写真で見ても分かるとおり、Reader のほうが白が白いというか、コントラストが高くて視認性が良いと感じます。逆に、画面の書き換えや全体的な処理については Kindle 4 のほうが高速なような・・・。Reader も今年モデルは去年よりも全体的な反応が良くなっていると(店頭展示機を触ってみた限りでは)感じたので、今年モデルと比較するとまた評価は変わるのかもしれませんが。

こうして比較してみると、キッチリとしたハードウェアの作り込みという点では Sony Reader のほうがモノとしてよくできていると感じますが、製品ではなく商品全体としての合理性や UI のこなれ具合という点ではやはり Kindle に優位性があるとも思います。個人的には Kindle のようにこなれていて Sony Reader 並みの品質を持った端末で、Reader Store や Kindle Store といったストアの垣根を越えてコンテンツを扱いたいんですが、贅沢な望みでしょうか。今のところそのベストな解は、今年モデルの Sony Reader をハックして各ストアのアプリをインストールすることなのでしょうが(笑。

Kindle 4

ということで、明日の初期セットアップ編に続きます。

Amazon / Kindle Wi-Fi 6" E Ink Display

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投稿者 B : 23:59 | Book | eBook | コメント (0) | トラックバック

2011/10/04 (Tue.)

F1 速報をスマートデバイスで読む

多くの情報がインターネットベースで済んでしまうようになった昨今、紙の雑誌を買うこともほとんどなくなりましたが、私は「F1 速報」だけは毎号買っています。F1 関連のニュースもニュースサイトで網羅されてはいますが、レースの細かい考察やマシンの技術解説、チームの裏事情といった情報はなかなかネットには出てこず、雑誌頼み。こういうのはチームやスタッフとの長年の付き合いから得られる取材の成果でしょうから、それこそ既存媒体の強みを発揮できている雑誌だなあ、と思います。

F1 速報は木曜日発売で、以前は恵比寿にある某モデルカーショップで水曜日に早売りが出ていたので、わざわざ買いに行ったものでしたが、3 年ほど前に潰れてしまって以来、発売日にしか買えなくなりました。しかも最近は忙しすぎて書店が開いている時間帯に帰れず、読みたいのに読めない・・・という状況が続いていて、この雑誌こそ早く電子版を出してほしい、と思っていたら、ようやく始まったようです。

『AS BOOKS』がiPhone/iPad用アプリをリリース - インフォメーションニュース ・ F1、スーパーGT、Fニッポン etc. モータースポーツ総合サイト AUTOSPORT web(オートスポーツweb)

AS BOOKS

三栄書房が扱うモータースポーツ誌全てが対象ということで、F1 速報だけでなく AUTOSPORT、Racing on なども電子化。しかも、紙版よりもちょっとだけ安い。対応プラットフォームは iOS、Android。ということで、私もさっそく iPad でダウンロードしてみました。

AS BOOKS

App Store で「AS BOOKS」アプリをダウンロード。ただ、このアプリは雑誌の管理と閲覧のみの機能で、購入はブラウザからオートスポーツブックスの Web サイト上で行います。ちょっと導線としては分かりづらいような・・・。

さておき、今回は F1 速報の前戦シンガポール GP 号を購入しました。
購入が完了すると、オンライン(オートスポーツブックス)の自分のアカウントの本棚に登録されて、そこから該当する雑誌のサムネイルをタップすると、AS BOOKS アプリで雑誌が開きます。雑誌の閲覧方法はいったんスマートデバイスにダウンロードするか、オンライン上の雑誌データをそのまま開くか(つまりはストリーミング)を選べます。

AS BOOKS

iPad で F1 速報を開いたときのイメージはこんな感じ。鮮やかな IPS 液晶のおかげで、カラーコンテンツもきれいに表示されています。ただサイズは紙版に比べると一回り小さく、ちょっと凝縮感がありますね。

AS BOOKS

iPad の画面に 1 ページ全体が映るように表示させたところ。紙媒体よりもちょっと小さめですが、文字の可読性はなんとか大丈夫。読めるレベルです。

※著作権保護の観点から、テキストの一部にモザイクを入れていますが、三栄書房さんから物言いがついたら取り下げます(^^;;

AS BOOKS

最大までズームしたところ。拡大するとそれなりに JPEG っぽい圧縮ノイズは目立ちます。が、実用的に閲覧するサイズ、という意味ではまあ許容範囲。

AS BOOKS

なお、iPad を横にしてやると、自動的に画面も 2 ページ見開き表示になってくれます。サイズ的にはさすがにテキストの判読が厳しいレベルになってきますが、雑誌コンテンツは特に写真の見開きが多いので、そういうものの全体像が掴めるのはありがたいです。Sony Reader でコミックを読む際にも、見開き表示に対応していないのが物足りなかったので、やっぱり雑誌やコミックを楽しむなら大画面のタブレットのほうが向いていると思います。

AS BOOKS

ただ、残念なことに、見開きは左右のページが完全にギャップレスにはなっておらず、微妙に繋がっていません。ページ間に空きピクセルはないものの、若干寸詰まりになってしまっています。例えば↑のページでは、「VODAFONE」の「F"O"N」のあたりのピクセルが数列欠落しているのが判るでしょうか。全体表示で、見開きのあくまで「雰囲気」としては楽しめるレベルではありますが、「見開きページだとページ間が切れる」という紙の特性に対する電子版のアドバンテージになり得ると思っていただけに、もったいない。

AS BOOKS

F1 速報の中でも最もフォントサイズが小さいページのひとつ、津川哲夫氏のテクニカルチェックのコーナー。単ページ表示でも読みにくいレベルですが、拡大表示なら問題なく読めます。写真に関しては、ある程度の拡大率までついてきてくれる解像度を持っているので、こういう細かい写真が重要なページでも特に不満はありません。

AS BOOKS

続いて操作性について。F 速は細かなレース展開や各種データなど、各レースごとのデータベースとしては馬鹿にできない情報量を持っています。紙媒体ならいざ知らず、電子書籍でページをぺらぺらめくりながら情報を漁っていくのでは効率が悪すぎます。が、電子版 F 速はちゃんと検索に対応しており、テキスト検索で欲しい情報を探し出すことができます。
ページを拡大したときにテキスト部分に圧縮ノイズが見えたので、単に画像データとしてしか保持されていないのかと思ったら、ちゃんとテキスト情報も埋め込まれているんですね。

AS BOOKS

検索結果をタップすると、該当ページにジャンプします。で、検索した文字列の前後を含む箇所がハイライトされています。ただ、(プラットフォームやアプリのバージョンにもよるのかもしれませんが)ページによってはハイライトの位置が該当の文字列とは少しずれた位置についていることもあり、まだまだ枯れてないアプリなんだなあ、というのが見える一面も。

AS BOOKS

前ページのサムネイル一覧も表示できます。
私は F 速を頭から順にではなく、けっこうあちこち行ったり来たりしながら読むほうです。特にレース内容についてはスカパー!で観て、かつニュースサイトでチェックした上で自分の blog に感想を書いているので、あまり重視していません(笑。雑誌にはむしろチーム事情やテクニカル情報を求めているので、買ったらまず開くページは「村山文夫のグランプリ天国」(←なぜ
さておき(笑)、そういういかにも雑誌的な行ったり来たり読みも、サムネイル一覧からなら比較的自然に行えます。

あと、読んでいて気づいたんですが、電子版には広告がほぼ入っていません。まるまる広告のページがないだけでなく、ページ半分が広告、というようなページでも、その部分が白紙になっているという徹底ぶり。広告費の問題が(紙媒体ではない、という契約の観点で)解決されていないのか、それとも電子版の販売時期と広告の有効期間とのアンマッチが原因なのかは分かりませんが、ちょっと驚きました。というか、一般誌に入っているような広告と違って、こういう専門誌の場合、私は広告を見てチームグッズの発売状況をチェックしていたりもするので、広告がないのはむしろ残念だったりして・・・。

AS BOOKS

この「AS BOOKS」アプリはマルチプラットフォームになっていて、iOS だけでなく Android 版も用意されています。なので、Xperia でも読むことができます。一度コンテンツを購入したら追加料金なしで別プラットフォームで読めるという、コンテンツ配信のあるべき姿。まあ、Xperia だとさすがに画面が小さくて読みづらいので、基本的に F 速が発売される木曜日にはカバンにタブレットを入れて通勤することになると思いますが。
ただ、悔しいことに現時点では「AS BOOKS」アプリの Honeycomb(Android 3.x)対応版がリリースされておらず、Android タブレットで F 速を読むことができません。雑誌の紙のサイズは見開き等を考えても 4:3 よりも 16:10 くらいのアスペクト比向きだし、Android タブレットは iPad よりも解像度が高いので(Retina Display な iPad HD が出るという噂もありますが)、むしろ Honeycomb 版を早く出してほしいんですけどね・・・。

あと、Web ストアで書籍を購入し、管理と閲覧をプラットフォームごとのアプリで行うという方式は(導線のわかりにくさはさておき)マルチプラットフォームへの対応のしざまとしてはよくできていると思います。が、欲を言えば、「出版社ごとに本棚がある」という仕組みはスマートではないんですよね。これは三栄書房さんの問題というよりは、出版業界側の問題だと思いますが、買う書店はバラバラでもいいけど、自分の本を管理する書棚はひとつであるべきでしょう。そもそも雑誌の電子配信そのものすらまばらにしか始まっていない状況で言うのも酷だとは思いますが、業界の人々には是非ともその実現を目指してほしいです。

ともかく、F 速の電子化は長年の希望だったので、ようやくといった感じです。F 速は毎号買うけど、かさばるのでシーズンオフには別冊の「F 速 PLUS」だけ残して棄てちゃうんですよね・・・。むしろ PLUS と毎年の総集編も、今ならキャンペーン価格で出てるし、この際電子化して本棚を空けたいほど。紙版の所有者向けにもう少しお得になるキャンペーンとか、ないものですかね・・・。

投稿者 B : 22:22 | Book | F1 | eBook | コメント (0) | トラックバック

2011/09/17 (Sat.)

形なきモノを売る時代

西田 宗千佳 / 形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組

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ジャーナリスト西田宗千佳氏の新刊を読了しました。最近、電子書籍やスマートデバイス、あるいはコンテンツのデジタル流通絡みの記事では必ずと言って良いほど名前をお見かけする西田氏ですが、本書はまさにそれらの取材の集大成といえる内容にまとまっています。また、ある意味では昨年の『世界で勝てるデジタル家電』の続編と言っても良いかも。

毎度毎度、西田氏と本田雅一氏の取材範囲の広さと掘り下げの深さには感嘆しますが、今回も内容は幅広く、スマートフォンやタブレットの話に始まって、スマートテレビ、サブスクリプション型のコンテンツ配信やクラウドサービス、グリーやモバゲーなどのソーシャルゲーム業界の話、販売・マーケティング観点でのノンパッケージコンテンツ流通の話、というように、クラウドとスマートデバイス時代に考えておくべきほぼ全てのことを網羅しています。

私はこのあたりの業界動向をかなりフォローしているほうなので、どちらかというと「識っている話を分かりやすく整理してくれる」というような意識で読んでいましたが、それでもソーシャルゲーム方面はあまり追いかけていなかったので、とても勉強になりました。ビジネスモデルを理解しているつもりでも、市場規模とか海外での状況とか知らないことも多かったので、「貧困ビジネス」と高を括らずに学ぶ必要があることを思い知りました。
実は昨日、東京ゲームショーを見に行ってきたのですが、初出展となったグリーは TGS の会場ではどう見ても異質。明らかに浮いており、客の入りもイマイチでしたが、PSP や DS のゲームにもソーシャルの要素が取り入れられたり、ソーシャルゲーム出身でありながら PSP 版が発売されるようなタイトルも増えてきているので、そう遠くない未来にソーシャルゲームと従来型ゲームの垣根はなくなっていくでしょう。

個人的には最近、クロスオーバーとかコンバージェンスといった単語でよく表現しているのですが、デバイスやソフトウェア技術の進歩、そして何よりクラウド化・・・というと大げさですが、とにかく「ネットワークに繋がること」で、いろんな製品やサービス、コンテンツのボーダーレス化が進んでいると感じています。
例えば、ひとつの動画を観る際、それがクラウドから提供されるものであれば、コンテンツを観るためのディスプレイとしてはテレビやタブレットの間で「使用時間の取り合い」が発生する(つまりテレビとタブレットが競合している)ことになるし、でもその動画が「どこまで観たかの『しおり』」を機器間で共有し、自宅のテレビで観ていた続きを外出先でタブレットで観るのであれば、テレビとタブレットは連携することになります。そんなことが普通になっていく時代に、「テレビだから、これはこういうもの」というように自分で自分に枷をつけていては、競合(それは競合他社のテレビにかもしれないし、タブレットやスマートフォンにかもしれません)に敗れることになる。自分の守備範囲を自分で規定せず、真にあるべき UX を起点としてハードウェアやソフトウェア、サービスの実装に落とし込んでいって初めて競争する資格を与えられる。そう思います。

ちなみに、この本は英題が『The Tablet Age(タブレットの時代)』となっていますが、それについて共感したのは特にこのくだり。

ネットワークの世界になり、低価格に大量のコンテンツを楽しめる世界がやってくるのは間違いなく、その受け皿として「タブレット」はきわめて有望だ。タブレットは、ディスクというメディアの存在を想定しない、史上初の「ネットネイティブ・コンテンツプレイヤー」となる。その際、メディアやデータを「所持しない」「所持できない」世界が同時にやってくることになる。
快適ではあるが今までと違う常識とルールの中で、我々はコンテンツを楽しむことになる。

日本においてはタブレットの市場はまだ立ち上がったばかりで、今後本当に成功するかどうかすらまだ判らない状況にあるのは事実だと思います。が、個人的には去年 iPad を買ってみて、多くの家庭においては PC よりもタブレットこそが主な生活空間で使うコンピュータとして相応しい、と確信しました。逆に、iPad に飽きた/使いどころがない、と言っている人は、多くがモバイル PC の代わりとして使おうとし、PC と同じことができないことに失望した人ではないでしょうか。
でも、個人的には家庭内ではタブレットが、外出先ではスマートフォンが、コミュニケーションや情報検索、コンテンツ流通の受け皿になっていくことは間違いないと思っています。いや「タブレット」「スマートフォン」とカタチを規定してしまうことさえ適切ではないのかもしれず、今後ディスプレイを備えた機器の多くが「スマートデバイス的な何か」になっていくのではないか、と思います。そこには物理的なディスプレイの大きさの違いのみが存在し、テレビ、タブレット、スマートフォンというのは機能的な差はなく、名前は大きさを示すだけの言葉になっているのかもしれません(まあ、2~3 年でそれが現実になる、とは言いませんが)。

なんか書物の感想とは直接関係のないことばかり書いてしまいましたが(笑)、本書は、本田雅一氏の最新刊『iCloud とクラウドメディアの夜明け』と似たところも多いですが、内容的にはちょうど良い補完関係にあり、まとめて読むと何かが見えてくるような気がします。この先の 2~3 年を考えるならともに必読の一冊、と言えるでしょう。

投稿者 B : 12:00 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2011/08/23 (Tue.)

Sony Reader Pocket Edition に最近物足りなくなってきた件

今月に入ってから、出張だ帰省だと長時間の移動が多くなっています。まあ最近仕事に追われているので移動時間の多くは仕事に割いてしまっているんですが、移動中は電波の通じない状況に陥ることもままあり。そういうとき、先日のコミック対応以降ようやくまともに使うようになった Sony Reader が活躍してくれます。

んが、今まで使っていなかったから気がつかなかった(当たり前だ)Reader の欠点がいろいろ見えてきてしまい、ハードウェア・・・というかファームウェアの作りに不満がたらたら。例えば、

Sony PRS-350

書籍一覧は基本はサムネイル表示なんですが、続き物だとタイトルの文字列が途中で切れてしまう(それもたったの 8 文字で切れてしまう!)ので、よっぽど表紙にでかでかと巻数が書いてないと、どれがどれだか判りません(´д`)。

じゃあ、ソートすればいいのか、と思ったんですが、

Sony PRS-350

ソートの種類はいくつかあるものの、「タイトル」でソートしても関数がきれいに並び変わるわけじゃないっぽい。なんかデータベースのつくりがまともじゃないような気がします。これは Reader のローカル DB だけじゃなくて、Reader Store の書籍一覧のソートも変な感じなので、余計にたちが悪いです。なんか 2 バイト文字の扱いをちゃんと考慮してないんじゃないかという、謎のソートをしてくれます。
他にも、「ファイル名」というユーザーには何の得にもならないソート種別があったりとか。全体的に謎。

Sony PRS-350

でも、とりあえず解決策は見つけました。書籍の一覧画面で「OPTIONS」ボタンを押すと、表示方法が「一覧」「タイトル」「サムネイル」から選択できるようになり、

Sony PRS-350

「タイトル」を選択すると、タイトルがちゃんと全部表示されるようになりました。
サムネイルがないとものすごく味気ないですが、こうじゃないと 40 巻もあるコミックはどれがどれだか判らないので・・・。

でも、やっぱりソートはタイトル順にしても変な並びで出てきます。具体的にいうと、巻数の数字(2 バイト文字)が、0、1、9、5、3、7、2、8、4、6、という順にソートされます(´д`)。あほかと・・・。

Sony PRS-350

他にも、Pocket Edition の 2GB という内蔵メモリ容量(外部メモリスロットなし)は、活字(じゃないけど)の本なら問題ない容量に思えましたが、コミックだと 1 冊当たり 40MB 前後の容量を食うので、全 40 巻のコミックだと 2GB(実効約 1.5GB)にギリギリ足りないくらい。画面サイズ的にもコミックを読むにはちょっと物足りないですし、購入時にコミックを想定していなかったとはいえ、Pocket Edition を買ったのは失敗だったかもしれません・・・。

そろそろモデルチェンジ、という噂もあるので買い換えたくなる機種の発売に期待しますが、それでも現状では単なる 3×3 EYES 専用機となっているので(ぉ)、コンテンツ側が揃わないと買い換えは厳しいかなあ。

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2011/08/19 (Fri.)

iCloud とクラウドメディアの夜明け

本田 雅一 / iCloud とクラウドメディアの夜明け

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テクニカル(だけじゃなくなりつつありますね、最近は)ジャーナリスト本田雅一氏の新書を読んでみました。
従来は Web メディアへの執筆が多かった氏も、ここのところ『3D 世界規格を作れ!』『これからスマートフォンが起こすこと。』と書籍の出版が相次いでいますね。メディアの逆行というよりは、現在の世の中が単発の記事ではなく書籍として残しておくべき転換点に来ているということなのかもしれません。また、近著 3 点ともにずいぶん違う方向性のタイトルではありますが、デジタル機器とコンテンツ流通の関係性、およびそれに関わる企業動向を追ったジャーナリズムであるという点で共通しており、繋がったストーリーになっています。個人的には、3 冊の中ではこの本が最も自分が今向いている方向性に近かったかな。

タイトルには「iCloud」が冠されていますが、本田氏ご本人曰くこれは出版サイドがつけたタイトルで、特に iCloud だけをフィーチャーした著書ではありません。主に Apple の iCloud とソニーの Qriocity の対比を軸にしながら、Google や Amazon のクラウドサービスを絡めて今後のクラウドメディア――クラウド化するメディア、ではなく、メディア化するクラウド――を読み解く内容になっています。

個人的に強く同意したのはこのくだり。

そこでアップルは、パソコンをデジタルハブとして使うことをあきらめ、従来はパソコンのコンパニオンであったデバイスと同じ位置づけとし、パソコンを含む各デバイス間の情報共有の中心をクラウドの中に置くことにした。このことをジョブズは「パソコンの格下げ」と表現した。もはやデジタルワールドはパソコンを中心に回ってはいないというのだ。

従来の iOS デバイスは「Mac の周辺機器」だったのが、iOS と Mac OS X の垣根が低くなり、iPhone や iPad と Mac でできることの差が小さくなっていくに従い、独立したデバイスとしての性格が強くなってきました。このあたりは、(iPhone や iPad が初期セットアップに Mac/PC 必須なのとは対照的に)Android が PC を必要としないデバイスとして生まれてきたことの影響も少なくないでしょう。が、先日の iCloud の発表によって、クラウドそのものを機器のハブとみなし、Mac も iOS デバイスも「クラウドのコンパニオンデバイス」として同列に扱われていくことが明らかになりました。
このあたりは PC や Android デバイスの観点から見るともっと明らかで、クラウドから見ると PC もスマートデバイスも、表示能力が違う程度で概念的には同じような情報端末にすぎません。スマートデバイスはリアルタイムコミュニケーションやコンテンツ消費に向き、PC はよりクリエイティブな作業に向いているから違うものだ、という異論はあるでしょうし、それはその通りなのですが、クラウドから見たときのクライアントとしてのレベル感は同じ。「クラウド・ブラックホール」とも表現されるように、今後あらゆる付加価値はクラウド側に吸収され、多くの人にとって PC の利点は「ハードウェアキーボードがついていること」だけになってしまう日が来ても、おかしくありません。そういう意味では、中期的には「PC」「スマートデバイス」というカテゴリ分けも、適当なものではなくなっていくのかもしれません。

では、あらゆる価値がクラウド側に吸い込まれていくと、クライアントとしてのハードウェアに残された価値は何なのか?単なるコモディティ化の未来が待っているだけじゃないのか?という話になってきますが、その問いに対する答えの一つはこれでしょう。

ソニーは特定の技術に縛られる形でコンテンツが流通する現状を是正し、ハードウェアメーカー間の競争環境を促す形でクラウドを活用しようとしている。利用者を特定のエコシステムへの依存から解放することで、新たな競争環境を作れると考えているからだ。一方、アップルは現在のダウンロード型デジタル配信での支配的な位置を引き継ぎつつ、情報リポジトリとクラウドメディアを組み合わせ、情報やコンテンツの管理からユーザーを解放しようとしている。それぞれの道を歩んでいるが、最終的に消費者の得られる利が大きい点は同じだ。

iTunes のようにサービスとハードウェアが密結合した状態は、アーキテクトの視点で見れば最も美しいですし、その囲い込みを甘受している限りはその中で過ごすのが最も気持ちが良い。ただ、例えば iOS が「Apple が作った箱庭」と呼ばれるように、不自由も多く、App Store のように自由競争が制限された環境でもある。つまりそれはある面では進化が阻害されているということでもあります。
それよりは、サービスとハードウェアの結びつきは多少緩めにして、サービスとハードウェアそれぞれの選択権をユーザーに委ね(場合によっては複数のサービスを利用しても良い)、サービスはサービスの、ハードウェアはハードウェアの完成度やコストで競争できるほうがより良い未来に近づける(あるいはハードウェア開発が得意なソニーのような企業の場合、現在の状況よりも自社の強みを発揮しやすい)、という考え方。言い換えれば、iTunes で買った曲をウォークマンで聴ければ今よりもっと嬉しいし、逆に iPhone で SME の楽曲も聴きたいでしょう?という話でもあります。以前はカセットテープなり CD なり共通のメディアがあって、どのメーカーのハードウェアでも問題なく使えていたのに、デジタル配信になって不便になったよね?という話です。

現在の iTunes のようなダウンロード型コンテンツ販売の時代は終わりを告げ、これからはサブスクリプション型のストリーミング配信の時代が来る、と言われても、多くの人にはまだまだピンと来ないかもしれません。しかし、テレビがコンテンツ配信の王者だった時代が終わり、CD や DVD といったパッケージメディアの終焉も近づき、情報端末のほとんどで Wi-Fi 搭載が当たり前になり、ハードウェアの付加価値や「ものを持つこと」の意味がどんどん認められなくなってきた今、世の中の流れは確実にそこに向かっていると言えます。私もハードウェアやパッケージメディアを収集・所有することに喜びを覚える世代なので、そんな時代が来てしまったら寂しいという思いもありますが、価値が所有から体験に移ってきていることは間違いがありません。
本書は『これからスマートフォンが起こすこと。』と同じく、2~3 年後には「もう当たり前になったことが書かれている本」になってしまうのだろうと思います。が、PC やスマートデバイスが好きな人、コンテンツ流通に関わる人、あるいはもっと大きく「ものづくりと産業」のこれからに興味がある人、であれば、一読しておく意味のある書物ではないでしょうか。

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2011/08/14 (Sun.)

TOEIC のお勉強(改めて)

最近、仕事上で英語の必要性が妙に高まってます。別に海外担当なわけでも海外赴任したいわけでもないんですし、楽天やユニクロのように社内の公用語英語になったわけでもないですが、なんか会社の流れ的に英語ベースのコミュニケーションの度合いが高まっているので、もうちょっと勉強しないとダメかなーと。
去年、3 週間の勉強で TOEIC は 700 点台に乗ったんですが、自分的にはもう少しスキルが欲しい。なので、とりあえず 750 点くらいを目指してみることにしました。

で、いろいろ探してみたら TOEIC の必勝法まとめサイトってけっこうあるもんですね。

TOEIC700点-800点を短時間で取る勉強法、参考書

とりあえずこのサイトでざっと参考書を見て、改めて基礎から整理するのに良さそうな本を一冊買ってみました。

仲川 浩世 / TOEIC テストこれ 1 冊で全パートをモノにする ――500 点~860 点突破のための解法テク&実戦問題

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500~860 点ってターゲットが広すぎて薄く浅くになりそうですが、ヤマ張りっぽくせずに全般的な復習からやるならこのくらいがいいのかな、と。ひととおりやったら次に苦手分野(自覚している限りでは、やはり長文のリスニングと読解)のテキストを買って鍛えようかなと思っています。
今はしっかり勉強する時間がちょっと取れませんが、空き時間とかにちょこちょこやりながら、最終的には仕事の状況を見ながら年明け~春くらいの受験で 750 点を目指してみたいと思います。仕事的には 800 点はないといけない部署や会社もあるので、750 点が取れたら次は 800 点かな。べつに海外赴任したいわけじゃないので、それ以上はいいや(笑。

まあ、実際の仕事上は文章はそこそこ読めるしリスニングもある程度できるので、TOEIC のようなテストよりもむしろ会話のトレーニングをする必要があるんでしょうが、英会話学校に行く余裕もなかなかないしなあ(´д`)。

投稿者 B : 23:58 | Book | コメント (0) | トラックバック

2011/06/10 (Fri.)

オールドレンズ・ライフ

澤村 徹 / オールドレンズ・ライフ

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オールドレンズ パラダイス』『オールドレンズ パラダイス 2』の澤村 徹氏の新刊。『パラダイス』はほぼ EOS ユーザーのための本、『パラダイス 2』はマイクロフォーサーズの本だったのに対して、今回の『オールドレンズ・ライフ』は NEX とマイクロフォーサーズをターゲットに書かれています。今まで、他の企画本の中で NEX+マウントアダプタも扱った本、というのはありましたが、もしかしてオールドレンズのための本で NEX をメインに扱っているのは本書が初めてではないでしょうか?というか、最近オールドレンズ本で新刊を出してくれるのは澤村氏くらいしかいないわけですが(笑。

本書を読むと現時点でこんなにあったのか!と驚くほど幅広いバリエーションのマウントアダプタが E マウント、マイクロフォーサーズマウント向けにリリースされていることが分かります。以前、CP+ で KIPON の Ivan Zhang CEO にお話を伺ったときにはマウントアダプタのメイン市場は米中欧とのことだったので、ミラーレス機の登場により世界的にマウントアダプタ遊びが流行しているのでしょう。

なお、これまでのオールドレンズ本はどちらかというと「このレンズをデジタルで使いたい!」というモノ寄りのアプローチで書かれていて、写真よりもカメラをガジェットとして楽しむカメラ好き向けの本という印象が強かったと思います。が、本書は A4 判ということもあり作例中心の作りになっていて、「このレンズを使いたいから」ではなく「こんな写真を撮りたいから、オールドレンズを使う」というレンズ選びの一助となっているところが、従来のオールドレンズ本とは一線を画しています。私はメカからでも入れますが(笑)やっぱりこれが本来のレンズ選びの順序ですよね。仮にオールドレンズに手を出さないまでも、クッキリカッチリしたデジタル向けレンズの画作りとは違う、こんな世界もあるんだーということを眺めて知るだけでも、読んでみる価値はあるんじゃないでしょうか。

という感じで、オールドレンズ初心者にもお勧めな間口の広い本だとは思いますが、既にミラーレス機でマウントアダプタ遊びをしているユーザーもなかなか侮れない深さも本書は併せ持っています(笑。ミラーレスがなかった頃は、マウントアダプタ遊びといっても EOS に Y/C マウントのツァイスレンズをつけるか、あるいは広大な M42 星雲に足を踏み入れるか、の事実上二択に近い状況でしたが、フランジバックの極端に短いミラーレス機の登場によって、私も愛する CONTAX G、あるいはキヤノン FD、ミノルタ MD という名だたる死蔵レンズ、誰もがあこがれるライカ L・M マウントレンズ、そしてマニアックなシネレンズの世界・・・など、沼の広さも深さも格段に大きくなっています(笑。そんな世界へと誘ってくれる、恐ろしい一冊でもあったりします。

友人関係を誘ってもなかなかこっちの世界に来てくれる人がいないんですが(ぉ)、ミラーレスを買って純正レンズに飽き足らなくなったら、この本をパラパラとめくってみるだけでも面白いかもしれませんよ・・・!

投稿者 B : 00:04 | Book | Camera Mook | コメント (0) | トラックバック

2011/06/01 (Wed.)

これからスマートフォンが起こすこと。

本田 雅一 / これからスマートフォンが起こすこと。 ―携帯電話がなくなる!パソコンは消える!

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去年の『3D 世界規格を作れ!』がとても良い本だったので、引き続き期待していた本田雅一氏の新著。個人的には、高画質高音質方面よりも(こっちはこっちで趣味としては好きなんですが)むしろモバイルやコミュニケーションの世界にこそイノベーションを感じる志向性なので、発売を楽しみにしていました。

内容的には例によってとても本田さんらしい、業界を幅広くかつ深く取材した上で、フラットに現状と少し先の未来を整理したものと言って良いでしょう。フィーチャーフォンとスマートフォンの違い、ハードウェア/ソフトウェア面からみたスマートフォンの性質、タブレットの台頭、PC とスマートデバイスの今後の変遷、クラウドと 4G モバイル通信、Facebook をはじめとしたソーシャルメディアの存在感が増すこれからのインターネットについて、パッケージメディアからサブスクリプション型のコンテンツ配信モデルあるいは UltraViolet などを利用した新しいコンテンツ流通モデルへの変化、そしてそれらをふまえて各分野で誰が今後の勝者になるのか・・・といったように、スマートフォンやモバイルデバイスに関わるあらゆる事象を網羅的にまとめた一冊になっています。この分野は IT 産業の中でも現在もっとも進化のスピードが速い分野なので、2~3 年後には本書の内容はもう古い、つまり現実のものとなっている可能性が高いですが、そういう意味ではある種予言的でもあり、仕事/趣味的興味を問わずこのあたりの世界に携わっている人であれば、漏れなく読んでおくべき書だと思います。
個人的には、自分自身がこのあたりの事象の渦中にいることもあって、ほとんどが知っていることではあったのですが、個々の内容としてはよく知っていることであっても、こうやって全体の構造を改めて理解させてくれるという意味で、読む意義があったと感じました。内容の深さという点では少し食い足りない部分も多かったですが、ちょうど先日のスマホ業界 楽屋裏トークが結果としてそこを掘り下げる内容だったこともあり、併せて非常に勉強になりました。

フィーチャーフォンの多くがスマートフォンに取って代わられる・・・というか、スマートフォンがフィーチャーフォン化していく流れは、端末コストの面から言ってもネットワークとサービスの独立性(による自由競争の活発化)という面から言っても理にかなったものであり、止めようがないことだと思います。また同様に、PC の多機能/高性能をそこまで必要としない多くのユーザーにとって、スマートデバイスのほうがよりライフスタイルに適した製品であることも事実だと思います。本書のサブタイトルにもなっている「携帯電話がなくなる!パソコンは消える!」というのはいかにもキャッチーさを狙ったもので、さすがに極論であり反語ですが、それでもある面での真理を突いていると言えるのではないでしょうか。コミュニケーションに PC を使わずにすべてケータイで済ませてしまう世代がいるように、フィーチャーフォンも PC も買わずにスマートフォン(またはスマートデバイス)ですべてを完結させるユーザー層、あるいは世代というものは、間違いなく出現するでしょう。

また、本格的なクラウド時代が到来し、スマートデバイスの台頭によってハードウェアそのものの存在感は薄れていく、だから Apple のようにそこそこの原価で UX に関わる部分にはコストをかけ、少品種大量生産で稼げるビジネスモデルこそ正義だ、みたいなことは最近よく言われますし、それはある種の真理ではあると思います。でも、「おわりに」に書かれていたこの言葉には、私も確信を持っていたい。

わたしはこれからしばらくの間、消費者が"装置そのもの"に強い興味を抱かなくなる時代が来るだろうと考えている。スマートフォンを通じて得られる価値は絶大だ。しかし、その価値の多くは通信の"向こう側"にある。(中略)しかし、時が経てばハードウェア、ソフトウェア、サービスが一体化することで、消費者の興味が"製品"そのものに戻ってくるとも確信している。

これは当然、「ハードとソフト、サービスが一体化した先のこと」であり、現状のままハードウェアだけを豪華にすればいいという話ではありませんし、すべてを Apple がデザインした箱庭的世界観(で、多数の熱狂的ファンを抱える現在の状況)こそこの理想的な状態だという考えかたもあるでしょう。が、我々はまだ「ハードとソフト、サービスが完全に一体化した未来」を見ていない。そのときにどんな世界が待っているか、いや、どんな世界を創れるか。

その競争は、すでに始まっています。

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2011/02/18 (Fri.)

Sony Reader 用ブックカバーをようやく入手

よーうやく入手しました。

ソニー / ブックカバー PRSA-SC35 (ブルー)icon

PRSA-SC35

Reader 本体は入手したものの、ブックカバーが在庫切れでなかなか買えず。最近ようやく少し在庫状況が改善してきたようで、やっと買えました。本当はミヤビックスあたりから互換品でよさげなのが発売されたらそっちを買おうと思っていたんですが、なかなか出てこないので・・・。

PRSA-SC35

カバーは表紙にあたる部分が合皮。背表紙と裏表紙にあたる部分がラバー風の素材でできており、質感と触感(持ちやすさ)をうまく両立していると思います。

PRSA-SC35

Reader 本体の取り付けは、内側についているこの樹脂パーツの突起に、Reader の凹みをはめ込むだけというとてもシンプルな方法。同じやり方でサードパーティからユニークなカバーが出てこないかなーと思っているんですが、なかなか出てきません(´д`)。

PRSA-SC35

こんな感じで、だいぶ本らしくなりました。カバーをつけると当然厚みは増してしまいますが、しっかりした作りの割には薄いので、ぜんぜん許容範囲。

ブックカバーにこだわらず、ソフト/セミソフトケース系ならば汎用品がいろいろ使えるんですが、移動中のスキマ時間に電車やバスの中で読むことを考えると、いちいち出し入れしなくても使えるカバータイプがいいので、そうなると現状ではこの純正ブックカバー(バリエーションとしてはライト付ブックカバーiconもある)か、ソニーストアの同時購入特典の PORTER 製カバーくらいしかないのが、ちょっと寂しいところ。

これでやっと Reader を持ち歩いて読書できる環境が整ったわけですが、相変わらず配信(Reader Store 以外のサイトも含め)されているコンテンツに自分の読みたいものがない(´д`)。今のところプリインストールされている『ソニー自叙伝』のお試し版(第一章のみ)を読んだのと、自分で転送した『3D 世界規格を作れ!』の PDF 版の見え方をチェックしたくらいしか使っていなかったりします・・・。
そこまで投資する気はなかったけど、やっぱり当面は自炊環境を整えておいたほうが良いのかなあ(´д`)。

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2011/01/24 (Mon.)

ヤマダ電機の暴走

立石 泰則 / ヤマダ電機の暴走

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人に勧めておきながら自分で読み切れていなかった書籍を、ようやく読了。

日経ビジネス・週刊ダイヤモンド・東洋経済などの経済誌でここ数年、よく特集が組まれるようになったこともあって、私もヤマダ電機の仕組みについてはある程度知っているつもりでした。この書物はそういった既知の情報が網羅されているのに加えて、創業者の山田昇氏(現会長)の生い立ちから創業期に至る話まで掘り下げられているので、知らなかった情報や観点が得られて非常に興味深い内容でした。

専門学校を卒業後ビクターに就職し、組織の限界を感じて独立、松下電器(現パナソニック)系列の販売店を経て総合家電量販店化。群馬県に生まれて現在では全国ネットワークを網羅するようになった「国内家電流通の王者」は、「安さこそ価値」という信念のもと規模の拡大と調達コストの圧縮を両輪に、ひたすら拡大路線を突き進んでいます。それは、「タイムマシン経営」という言葉が認知されるようになる遙か以前から、アメリカ最大の家電量販店 Best Buy の経営手法を日本で再現しようとしていたのかもしれません。

いっぽうで、いち顧客として見たときのヤマダ電機は、私の自宅から最も近くにある大手家電量販店の一つであり、価格も(量販店としては)最安値クラスであるにも関わらず、これだけ電気屋好きな私がなぜか積極的には行きたいと思えないお店です。それはおそらく低価格にこだわるあまり、「売れ筋のものを大量に調達して仕入れ価格を下げる代わりに、売れ筋でないものはバッサリ切る」というヤマダ電機の売り方に私の好みがあっていないからだと思います。
私はどちらかというと売れ筋 No.1 でとにかく安い商品よりも、最先端であったりハイエンドであったり何か人と違うものであったり、ニッチ商品(よく言えばこだわりの強い商品)を好む傾向があると自覚しています。それに対してヤマダ電機には「ヤマダ電機が売りたい商品」しかないから、行っても楽しくないのでしょう。こう感じるのは私や私の親しい仲間うちくらいのものかと思っていたら、本書の中にも「ヤマダ電機に行って目当ての商品がなかったらヨドバシに探しに行くけど、最初にヨドバシに行って売っていなかったらヤマダには行かない」という消費者の例が挙げられていて、そういう顧客は案外少なくないんだなあ、と改めて気づかされました。電気製品にこだわりがなく、壊れたら初めて電気店に行って、置いてある選択肢から選ぶ・・・という高齢者が多い地方(ヤマダ電機も地方発祥の電気店)と、リテラシが高く指名買い顧客の多い都市部(カメラ系量販店の出自)とで顧客(全てではないにしろ)の行動が大きく異なる、ということに気がついていないか、気がついていてもどう対応して良いか分からないのかもしれません。もしくは、そういう顧客であっても価格になびく、と考えているのか。

まあ、価格差が一定以上に大きくなれば、嗜好品以外はコモディティ的要素が強くなり、低価格に流れる顧客の割合が大きくなるのは経済の原理だと思うので、それは否定してもしょうがないですが。
でも、例えばユニクロが価格以外の価値を提案するようになって、多くの顧客がもつユニクロのイメージが変わってきたのに対して、ダイソーを「ブランド」と認知している顧客がどれだけいるか?を考えれば、「価格が最大の価値」という戦略は、諸刃の剣であると思います。

さておき、本書は家電業界関係者のみならず、家電業界(の流通寄りの部分)に興味がある人や、マーケティングや経営戦略に興味がある人も読んでおいて損はない一冊だと思います。いろいろな観点で読める本だとは思いますが、私はこの本を読んで「価値」とはどういうことか、改めて考えさせられたなあ。

投稿者 B : 00:23 | Book | Business | コメント (1) | トラックバック

2010/12/15 (Wed.)

Sony Reader

買いました。

ソニー / Reader Pocket Edition PRS-350 (ブルー)icon

Sony PRS-350

Reader Store の品揃えを見てから買うかどうか決めよう、と思っていたら案の定イマイチな品揃えでがっかりしてしまい(´д`)、もうちょっと品揃えが良くなってきたらまた検討しようか・・・と一度は思っていたんですが、噂に聞くハードウェアの利益率(量販店のポイント還元が 1% とか、から想像できますね)を考えると待ってもハードの値下がりはしないだろうし、モデルチェンジはきっと 1 年後だから半端な時期に買ったら後悔するだろうし、何しろコンテンツが揃っていない今だからこそできる試行錯誤もある、という本末転倒な結論(ぉ)でとりあえず買ってみることにしました。

サイズは小っちゃいモノ好きな私としては最初から Pocket Edition 一択で。Touch Edition のほうは大きいけど画面解像度は変わらないし、積極的に選択する理由がありませんでした。カラーは、文章に集中するなら落ち着いた色が良いよね・・・ということで、ブルーで。

Sony PRS-350

Reader に採用されている E Ink ディスプレイは表示の質感が本当に紙に似ています。初めて実機を見たときには、表示面にダミー印刷を施したモックだろうと勘違いしてしまい、動作品と聞いてブックリスタびっくりしたほど。グレースケールもそれなりに階調が出ています。5inch SVGA(800×600)という解像度は文字を読むにはまあ十分ですが、超高精細ディスプレイを見慣れてしまうと、正直なところ解像度がもう一段欲しくなってしまいます。

Sony PRS-350

Pocket Edition というペットネームながらディスプレイ面は光学式タッチパネルになっていて(この時点で「Touch Edition」「Pocket Edition」というネーミングが破綻しているなあ・・・)、本体にはスタイラスも内蔵されています。本体がそこそこ大きい分、長さがあって使いやすいスタイラスではありますが、通常の操作は指先のタッチでできてしまうので、スタイラスはまず使わないかな。手書きメモ機能では重宝するかもしれません。

Sony PRS-350

アルミ製の筐体は、前面のディスプレイベゼルがブラスト(梨地)加工、ブックカバー装着時には「ヒンジ」に相当する側面の部分はヘアライン加工、そして背面には手触りの良いラバー加工が施されていて、限られたコストの中でかけるべきところにかけているなあ、という印象。細かいところを見るとコストダウンの跡も見受けられますが、先日読んだ『メイドインジャパンと iPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電』で書かれているようなコストと品質の両立がうまいバランスでできている、非常によくできたハードだと感じます。ホント、あとはコンテンツだけだよなあ・・・。

Sony PRS-350

操作ボタンはディスプレイ下部に 5 つ並んでいます。中央がホームボタンですが、ページ送り/戻しボタンがホームボタンの左側に並んでいるので、持ち方によってはページの送り/戻しの際に不安定に感じるかもしれません。もちろんタッチパネルのスワイプでもページ操作は可能ですが、E Ink は iPhone の液晶のように操作に対して滑らかについてくるディスプレイではなく、表示切り替え時に一瞬の待ちが発生するデバイスなので、私にはスワイプよりもハードウェアボタンのほうが感覚的にしっくりきます。

また、ページの送り/戻しが横書きの書籍では「←」が戻しで「→」が送りなのに、縦書きの書籍では「←」が送りで「→」が戻し、というのは最初だけちょっと戸惑いました。確かに文字列の流れていく方向に従うとそうなんですが、Web ブラウザ等で「←は戻し、→は送り」というのが脳みそにこびりついているので、軽くショックを受けました。
まあ、デフォルトがそうなっているというだけで、設定でどうとでも変更可能ですが。

Sony PRS-350

文字サイズはデフォルトの S サイズではこんな感じ。一般的な文庫本とほぼ同じか微妙に大きいくらいの文字サイズですが、私にとってはちょっと大きすぎ(情報量が少なすぎ)。私は読むのが比較的速いほうなので、これだとページ送りの頻度が高すぎてちょっと、です。

Sony PRS-350

で、一段小さい XS サイズにしてみました(これが最小サイズ)。人によっては小さすぎて読めないと感じるかもしれませんが、私にはこのほうが読みやすい。ディスプレイの解像度が高ければもう一段小さくてもいいくらいです。

というか、紙の本の多くはプロポーショナルフォント(文字によって字幅や字詰めが調整されているフォント)なのに対して、Reader は完全に等幅フォント(原稿用紙のように 1 行の文字数が決まっていて、文字の大きさや形状によらず幅が同じ)になっているのでちょっと読みづらく、どうにも文章が間延びした印象を受けてしまいます。また、ディスプレイ上下左右のマージンももっと詰めたい。情報量と読みやすさ命の私には、この仕様はちょっといただけません。
まあフォントの話は、プロポーショナルにすると縦書き用と横書き用のフォントを両方用意しなくてはならなくなる、とかいう日本固有の事情もあって難しかったのかと想像しますが、でも文学を大切にする気があるならまずそういうところは当然考慮しなくてはならないでしょう(文学作品をあまり読まないお前が言うな、という感じですが)。

Sony PRS-350

電源をオフにすると、スクリーンセーバー的に写真が表示されます(写真は設定で任意の画像に変更可能)。画面書き換えの際だけ電力を消費するという E Ink の特性のおかげで「電源が切れているのに画面が表示されている」という、今までの電子機器の常識からするとちょっと不思議な状態になっていますが、そもそも電力を消費しないのならば「読まないときはそのまま放っておけば良くて、いちいち電源を切る必要もない」のがホント。それでもあえて電源スイッチがついていて明示的に「電源を切る」ことができるのは、読みかけの本を他人に見られたくないプライバシーの問題とか、カバンやポケットの中でも誤動作防止の意味合いとかもあるでしょうが、「使わないときは切っておかないと落ち着かない」という人間の心理を鑑みた仕様なのかな、という気がします(笑。

ちなみにキャリングケースなりカバーなり、は、完全に初動に出遅れてしまったせいで純正品がほぼ品切れ状態になっていて、まだ買えていません(´д`)。在庫が復活する前に Vis-a-Vis あたりでよさげなカバーが出てきたら、そっちを買うかもしれません。もしくは suono あたりがブックカバーをベースに作ってくれないかな・・・。つけたまま使えるブックカバータイプが欲しいんです。

で、私はそんなに本の虫ではないので、これで何を読むか・・・はこれから考えます(ぉ。

投稿者 B : 23:24 | Book | eBook | コメント (0) | トラックバック

2010/10/25 (Mon.)

フォクトレンダー VM & カールツァイス ZM レンズ WORLD

フォクトレンダー VM & カールツァイス ZM レンズ WORLD

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コシナから発売されている Voigtländer と Carl Zeiss の Leica M マウント互換レンズについてまとめたムック本が発売されたので、買ってみました。

まさにミラーレス機人気の高まっている今だからこそ出せた企画だと思います。ちょっと前であれば銀塩のレンジファインダカメラやエプソンの R-D1 シリーズでマニアな方々が細々と楽しんでいた M マウントレンズの世界が、マイクロフォーサーズと NEX の登場で一気に注目を浴びるようになっています。このムックも、一応 Leica M8/M9 や R-D1 も押さえてありますが、どちらかというとミラーレスデジタルを主眼に置いて書かれている印象を持ちました。

最近のレンズは性能(主にシャープさ)が重視され、コンピュータ設計になったこともあって個性的な製品が少なくなっています(おかげでレンズ購入時の失敗が少なく、間口が広がっているのも事実ですが)。でも Carl Zeiss や Voigtländer のブランドを受け継ぎ、カメラに対する趣味性や愛の部分を大切にしているコシナには、性能だけでなく哲学を感じるレンズがラインアップされていると思います。とはいえ今までは一眼レフ用レンズにしか興味がなかった私は、これらの VM/ZM レンズ群はバリエーションが多かったこともあり、今まであまり気にしていませんでした。が、改めてこうやって一つ一つを見ていくと、なんと個性的なレンズが揃っていることか。
また、M マウントは一眼レフ用に比べてレンズ自体が小さいせいか、スペックが高い製品でも一眼レフ用に比べれば高価くないことも重要です(笑)。例えば同じ 35mm F1.4 でも、EF マウントでは定価¥205,000 するところが、NOKTON classic なら¥75,000 しかしません。VM/ZM マウントは MF レンズだし一眼レフにはつけられないのでその点は割り引いて考える必要がありますが、明るいレンズを安く使えるというのは、サラリーマン的には非常に重要。まあ、¥75,000 のレンズを「安い」と言ってしまう感覚がすでにオカシイことは自覚しています(´д`)。

とはいえ、NEX で使える MF レンズとしては CONTAX G 用レンズのコストパフォーマンスが高すぎる(安いだけじゃなくて正真正銘の Zeiss だし、スペックも悪くない)ので、代表的な焦点距離は CONTAX G で揃えて、マニアックなスペックや独特の描写をするもの、CONTAX G には存在しない焦点距離のレンズが欲しいときに VM/ZM レンズを選ぶ、というのが NEX ユーザー的には正しいような気がします。

あと、本書で特筆すべきは単にレンズについて説明しているだけでなく、コシナのレンズ製造工場の取材記事に多くのページを割いているということ。コシナは最近ときどき工場見学を開放しているようですが、長野まではなかなか行けるものでもないので、こうやってバーチャル工場見学ができるだけでも非常に貴重だと思います。

もし、NEX やマイクロフォーサーズでレンズ沼に片足を突っ込んでいて、Zeiss や Voigtländer に興味があるなら、ご一読をオススメします。

投稿者 B : 21:54 | Book | Camera Mook | コメント (0) | トラックバック

2010/10/18 (Mon.)

世界で勝てるデジタル家電

西田 宗千佳 / メイドインジャパンと iPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電

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記憶に新しいところではこの春に『iPad VS. キンドル』を出版したジャーナリスト・西田宗千佳氏の最新の著作が発売されたので、読んでみました。

本著もキャッチーなタイトルではありますが、多面的でフラットな業界分析はさすがの一言。同じく最近出版された、本田雅一氏の『3D 世界規格を作れ!』とは扱っているテーマこそ違え、どこかのメーカーだけに肩入れすることなく(肩入れしているとしたら日本の電機メーカー全てに)、世界における日本の電機産業の現状を的確に分析した上で応援している、という点で非常に似ていると感じました。

内容的にはタイトルどおり「iPad/iPhone は何がすごいのか」をビジネス/設計/プラットフォーム/開発思想それぞれの面から分析し、Apple が仕掛ける製造業の王道「少品種超大量生産」と日本企業の「高付加価値」の対比、今後の家電産業の鍵を握るプラットフォーム戦略の重要性、日本企業の「品質」の考え方と消費者の多くが考えるプライオリティ、そしてゲームの「ルールを変える」ということ。よくもまあ、これだけ多岐にわたる事柄を整理して一冊の本にまとめた、というくらいにまとまっている本です。私も、この本に書かれていることのほとんどは知っていましたが(特によく知っていることも多く書かれていましたが)、こうやって全方位的に整理してドン!と突きつけられると、何か見えてくるものがあるような気がします。
少なくとも、ここ数年の日本メーカーが取り組んできた「多品種少量生産」による多様なニーズへの対応は、一部の市場では成功しているけれども、それだけで全ての市場をカバーできるわけではない。むしろ圧倒的マスに向けたプロダクトで量産性(裏を返せばコスト)と品質を両立することができなければ縮小均衡しか残っていない、というのは、認めざるを得ない事実だと思います。

また、最終章に書かれていた「ルールを変える」という話は、私の中でずっとモヤモヤとしていて『なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか』という書物にその答えを求めてみたけど全然書かれていなかったことがここに書かれており、胸の中が晴れ渡るような快感を覚えました(だからといって、それを実践するのは並大抵のことではないけども)。

最近は Apple の一人勝ちのような状況が(一部市場では)起きていて、大手経済紙/誌でも「強い Apple とイノベーションを起こせない日本企業」のような対比で語られることも少なくありません。ある意味、いろんな状況が重なって日本の電機産業が自信を失っているのが現在だと思いますが、これだけ客観的かつ多面的に取材を行っている西田氏に、こう断言されていることが、微かな自信に繋がるような気がします。

日本の競争力が失われた、と多くの人が言う。
しかしそれは、日本の技術力が失われたからではない。(中略)日本にはまだまだ技術力があるのだ。だが、それを日本国内で消費されるデッドエンドで浪費したことが間違いだった。
そして、こういうエールを送ってくれている下りで、私は本当に涙が出てきました・・・。
今後、家電製品や IT 機器の多くが iPhone や iPad のようなルールで作られ、販売されていくのだとすれば、勝つためには量が必要だ。その上で品質の追求をせねばならない。
日本も、高度成長期には「外」で戦ってきた。今も、ゲーム機や 3D で勝負をかける人びとは、明確に世界を視野に戦っている。
われわれに必要とされているのは、そういったジャンルをもっといくつも見つけること、そして、戦おうとする人びとの足を、無関心やつまらない利権でひっぱらないことだ。(中略)日本の技術は、僕たちが思っているほど弱くなんかない。お願いだから、彼らを全力で戦わせてあげてはくれないだろうか。
日本の製造業が再び世界で強い競争力を得るには、越えるべきハードルがいくつも存在します。また、自分たちの努力だけではなく、政府が「未来のこの国のカタチをどうしたいか」にも大きな影響を受けることも事実です。ただ、少なくとも現状に嘆き、諦めていては始まらない。再び自信を得て、(Apple や Google の真似ではない)世界で戦う戦略を編み出すことによってのみ活路が見いだせることを肝に銘じ、明日からまた歩んでいかなくてはなりません。

最後に、この一枚を貼っておきたいと思います。著者の西田氏ではなく、先日行われた本田さんの『3D 世界規格を作れ!』の発刊記念セミナー(Ustream で録画を試聴できます)において、本田さんが「伝えたかったこと」。きっと西田さんも同じ気持ちであり、日本のメーカー関係者であれば、誰もが元気になれる言葉。

僕からお伝えしたいこと:ニッポンの電機屋さん、想像するよりずっと強いんです

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2010/10/08 (Fri.)

インサイド・ドキュメント「3D 世界規格を作れ!」

本田 雅一 / インサイド・ドキュメント「3D 世界規格を作れ!」

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今週の CEATEC もまさに 3D 祭りの様相を呈していましたが、今年の家電業界全体が盛り立てようとしている 3D のこれまでを詳細にまとめた本です。といっても技術解説や製品比較ではなく、主に 3D をリードするパナソニックとソニーの製品発売に至るまでのドキュメンタリー形式になっています。

書籍のタイトルは「3D」を冠していますが、実際にはここ 7~8 年の映像業界の動きを描いた内容となっていて、実に前ページの 1/3 は Blu-ray と HD DVD が争った次世代 DVD 戦争の経緯を記したもの。この内容自体は以前東洋経済誌に掲載された同氏の記事にも書かれていたことがあり、大まかな経緯は私も知っていましたが、それをさらに詳細化した内容になっています。
映像業界がここまで 3D を志向するのは、フル HD 化をほぼ完了させた業界が 4K2K に向かっていく前のステップとして踏む必要があるためで、必然性のあるもの。それにプラズマと液晶のテレビの技術競争が絡んで現在の状況に繋がっています。そういうことが、DVD~Blu-ray 時代の家電業界とハリウッドの関係や韓国メーカーとの競争関係なども踏まえながら綴られており、非常に興味深い内容となっています。まさに 2000 年前後からこれらの業界を渡り歩き、それでいてフラットな視点で取材と執筆を続けてきた本田氏でなければ書けなかったドキュメンタリーと言えるでしょう。

しかしこの著書の特筆すべきは、3D 人気に乗って発売された技術解説書でも、メーカーの内情の暴露本でもなく、本田氏自身があとがきにおいて

日本の家電メーカーで名前も知られずに働き、日本の大きな外貨獲得手段となっている家電産業を下支えしている多数のエンジニアたちがいる。本書は、彼らがどんなことを成し遂げようとしてきたのかを記すために書き始めました。

と述べているように、日本の家電メーカーが彼らにしか生み出せない価値を実現するために努めている事実を事例として著すことで彼らを励まそうとしていることにあるのではないでしょうか。最後のくだりで、

重要なのは、手がけた技術がビジネスとして成功し続けるように画策することではない。かつての成功体験に安住せず、夢を見続けることだ。懸命に汗をかきながら、前へ前へと進む努力が"魔法"を生み続ける原動力なのだから。
(中略)われわれの想像をはるかに超えて、日本の電機メーカーが持つ底力は大きい。彼らは現代の魔法使いとして振る舞う術を、世界でもっとも知っているはずなのだから。

という一節を読み、私でさえ失いかけた自信を取り戻させてくれるような熱さを感じました。

残念ながら最近の私はあまり思うような仕事につけていないのですが、近いうちにきっとまた業界の先端、切っ先の部分で世の中の(一部でも良い)パラダイムを先に進めるための仕事についていたい。その渦中において、人類の進歩に少しでも貢献できた実感が得られるならば、この著書に描かれているエンジニアやビジネスマンたちのような過酷な状況で働くことになっても構わない、とすら思います。

3D や AV 家電に興味がある人に限らず、国内の製造業やハイテク産業に何かしらの形で携わっているならば、一読して損はない良著ではないでしょうか。

ちなみにこの書籍は、購入者限定で全文 PDF の無償配布を行っています。入手には購入者のみに提供されるダウンロードコードが必要ですが、ダウンロードさえしてしまえば PDF なので、後の取り回しは非常に自由度が高いです。

たとえば iPhone/iPad への持ち出しならば、iTunes に PDF ファイルをドラッグ&ドロップするだけで、

3D 世界規格を作れ!

自動的にライブラリに追加されます(「ブック」カテゴリがない場合は自動的にカテゴリが追加される)。あとは iPhone と同期すれば、

3D 世界規格を作れ!

「iBooks」アプリに表示されるという仕掛け。

3D 世界規格を作れ!

ただ、iPhone 3GS ではちょっと画面の解像度が低すぎて、ページ全体表示では可読性に難あり。ピンチインで拡大すれば読めますが、そうするとスクロールの回数が多くなってしまうので、それはそれで読みづらい。iPhone 4 の Retina Display なら読めそうな気がしますが、私は結局紙の本+PC 上の PDF で読みました。ただ、今後は電子書籍に適したモバイル端末がいろいろと出てきそうなので、この試みには素直に賛同します。

3D が題材であるだけでなく、国内の書籍としては珍しいこうした試みまで含めて、まさに「今」が凝縮された一冊ですね。

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2010/08/17 (Tue.)

オールドレンズ パラダイス 2

澤村 徹 / オールドレンズ パラダイス 2

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澤村 徹氏のオールドレンズ本の新著が発売されたので、読んでみました。

フォーマット的には前作『オールドレンズ パラダイス』のそれを踏襲しており、今回はマイクロフォーサーズ機で使えるオールドレンズとマウントアダプタについての解説が網羅されています。紹介されているレンズは従来の DSLR ではフランジバックの都合で使用できなかったミノルタ MD やキヤノン FD、あるいは各社のレンジファインダー機やシネレンズ、マニアックなところではオリンパス PEN F やペンタックス auto110 といった「マイクロフォーサーズならでは」のオールドレンズ群にフォーカスしており、M42 や Y/C などの代表的なオールドレンズマウントについては省略されているため、前作と併せて読むのが良いかと。
個人的には NEX では CONTAX G レンズをひととおり試してから他のレンズに手を出してみたいと思っていますが、MC ROKKOR-PG 58mm F1.2 とか New FD85mm F1.2 あたりのレンズは試してみたいところ。レンズの「味」がオールドレンズの醍醐味ではありますが、逆に最近ではなかなか製品化されない・あるいは発売されていても高くて手が出ないスペックのレンズが比較的安価に楽しめるのも、オールドレンズの良さじゃないかと思います。
あとは NEX で使うならミノルタの M-ROKKOR(ミノルタが Leitz と共同開発したレンジファインダー機「ライツミノルタ CL」用の M マウントレンズ)を使うのも粋かもしれません。

澤村氏にはこの勢いで旬の NEX を題材に『パラダイス 3』を執筆してほしいところではありますが、レンズチョイスが m4/3 とかなりかぶるので、難しいかなあ。

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2010/08/01 (Sun.)

ソニー NEX-5 NEX-3 ナビゲーションガイド

ソニー NEX-5 NEX-3 ナビゲーションガイド

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NEX のムックはソニースタイルでの購入特典でもらったのが 1 冊あるので買わないつもりでいましたが、ちょっと異色とも言える興味深いムックが出たので買ってみました。

デジタルカメラのムックというと、たいていは使い方の解説とプロカメラマンによる作例、そして純正レンズ(まれにレンズメーカー製の互換レンズ)の紹介、というつくりが典型的で、私も新しいカメラを買ったら 1 冊記念買いする程度でした。
でもこのムックは、通常とはやや異なった構成で、初心者向けの内容も押さえてはあるものの、作例はより具体的に実際のシチュエーション(使いかた)を想定したもので既にカメラをある程度知っている人でも参考になるし、なんといっても後半のオールドレンズ特集が圧巻。

オールドレンズ特集はもはや今この人を置いてオールドレンズは語れないという澤村 徹氏の監修で、単にオールドレンズの紹介に留まらず、オールドレンズ+カメラドレスアップを組み合わせたデジカメ Watch の連載「デジカメドレスアップ主義」の出張拡大版といった雰囲気になっています。
ここで紹介されているマウントアダプタは現在国内で正規流通している製品に限られるので、残念ながら KIPON の CONTAX G-NEX マウントアダプタ(現時点ではネットオークション等でしか入手できない)が掲載されていないのが残念ですが、それでも現状の NEX でのマウントアダプタ遊びの概要を把握するには十分な内容じゃないかと。一部デジカメ Watch の連載と重複している内容もありますが、サードパーティ製のストラップ/ケースも数多く紹介されているので、買って損はないと思います。
このムックの実に約 1/3 の分量がオールドレンズ+ドレスアップに割かれているのには正直恐れ入りました(笑。

NEX でのオールドレンズ遊びのために近々発売される『オールドレンズ パラダイス 2』も購入するつもりでいますが、こちらも楽しみ。

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2010/07/23 (Fri.)

マーケティングはつまらない?

関橋 英作 / マーケティングはつまらない?

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元 docomo の夏野剛氏のツイートで知って読んでみた著書。マーケティング全般に関わる本で、もとは日経ネットマーケティング内の連載「マーケティング・ゼロ」を要約し書籍化したもののようです。
内容に関しては徳力さんの読書メモが秀逸にまとまっているので省きますが、これを読んで私が感じたことなどを少し。感想文というよりも、むしろ私のマーケティング観みたいな話になりますが。

そもそもマーケティングとは何のことかというと、教科書どおりに説明するならば、「企業の活動の全て」。私は「マーケティングは経営そのもの」と理解しています。
といっても抽象的ですかね。はてなキーワードの解説がとても端的に表していたので引用すると、

マーケティングとは - はてなキーワード

製品、流通、価格、販促・広告、これら全ての要素をいかに組み合わせるかが「マーケティング」である。
とのこと。つまりは「何を」「誰に」「どうやって」作って売るか、という企業活動全般を指すことだと分かるでしょう。

でも、「マーケティング」と名のつく会社や部署は実際には広告宣伝やマーケティング・リサーチ、販売などといった、得てして狭義の「マーケティング」業務しか負っていないことが多いのが現実だと思います。逆に言えば、「マーケティング」的な考えかたは、「マーケティング」と名のつく会社や部署に所属する人だけでなく、その事業に携わる全ての従業員が持っている必要がある、と私は考えています。
さらに言えば、単に自分に与えられた目先の仕事だけでなく、その企業の思想や市場にもたらす価値といった創業者/経営者的な視点をどれだけ多くの社員が持てているか、が企業の競争力、もしくは社会的価値を決めると言っても過言ではないと思います。以前読んだ『ランチェスター戦略「一点突破」の法則』に書いてあった言葉を引用するなら、「企業の持つ理念こそが最大の差異化要素であり、最強の武器」だと思っています。

話を本書の内容に戻すと、そういった広い意味での「マーケティング」の観点から、広告宣伝や PR、コミュニケーション戦略といったことを語っているのが本書。紹介されている事例が多い割に説明がシンプルなので行間を読まなければちょっと理論が飛躍して感じる部分もありますし、Web 連載からの抜粋再編集なのでやや話題が散漫な印象も受けます。また、著者の出自ゆえか「代理店の人」っぽい言葉遣いが慣れない人には鼻につくかもしれませんが、変に奇をてらった内容ではなく、真っ当なことが平易な言葉で表現されているため、確かに腹に落ちるものが多いです。また、海外事例を多数挙げてトレンド紹介に終始しがちなこのジャンルにおいて、ほとんどが日本国内の事例で、日本人を相手にしたマーケティングに絞って書かれているのも、意外と珍しいながらも貴重だと思います。
中でも、私が特に共感したのはこのくだり。

もともとマーケティングとは、今生きている人が潜在的に欲しいと願っているものを具現化させて、世の中の役に立つこと。消費者に「うれしい!」「ありがとう!」と言ってもらえるものを提供すること。その行為を通して、メーカーと消費者が Win-Win の関係になること。私はそう思っています。
とすれば、メーカーが開発したものを効率的に売っていくことをデザインするだけではなく、消費者の心に眠っているものを探し出して実現することが求められます。

マーケティングの神髄は「緻密な人間観察」にある、という私の信念は間違っていないんだよね!と自信を持たせてくれる言葉です。そう、マーケティングとは「人間賛歌」なのだッ!(ぉ

いっぽうで、私も常に気をつけていなくてはならない・・・と思いながらも、気がつくと囚われているのが、これ。

これが、人間の敵であり、マーケッターの敵でもある「固定観念」です。(中略)もちろん、世の中には常識が必要です。それがなければ大混乱が起きてしまうでしょう。しかし、その必要な常識が、いつの間にか固定観念化して、マーケッターの脳をセメント状態にしているのです。

ちょうど、BS hi で放送中の『スター・ウォーズ』を観ていて、ヨーダの台詞に対して

固定概念を捨てる。やってみるのではなくやる。フォースもモバイラー道もマーケティングも同じだ(笑。

とつぶやいた直後にこれを読んだので、あまりのタイミングの良さに自分で驚きました(笑。

最近、また前職のシステム屋っぽい仕事の割合が増えていて、マーケティングや商品企画っぽいことを考える時間が減っているので、またいずれそんな仕事をする日のために、錆びつかないように自分を磨いておかなくては。

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2010/07/10 (Sat.)

小さなお店のツイッター繁盛論

豚組のオーナー @hitoshi さんの『ツイッター繁盛論』を読みました。

中村 仁 / 小さなお店のツイッター繁盛論 お客様との絆を生む 140 文字の力

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ここまでバラしちゃって良いの!?と思うくらい、豚組の Twitter 活用法について解説された著書です。おそらくお店のクオリティに高い自信があること、そして何より他店にはなかなか真似のできない「顧客との信頼関係」が築けていて、ツールや手法だけ真似してもそう簡単に追いつかれないからこそ、ここまで暴露してしまっているのだろうと思います。
また、飲食業を始める前はマーケティングやブランディングの仕事をされていたこともあり、Twitter を通じてやっていることは全て深い洞察と理論だった信念に基づいているのだろうな、と感じていましたが、その根拠が改めて綴られている本でもあります。

店舗を「コミュニティ」を深める場ととらえ、顧客との信頼関係を軸に商売を成立させていく、という考え方は、私が今の仕事においてライフワークと考えていることにかなり近く、ああ、この思想があるから私は @hitoshi さんという方に共感できるのだな、と思いました。

私にとっては、お店に来てくれた人をお客様と呼んでいるだけであって、それが私とその人との関係のすべてを言い表すものではない。その人はときには友人であり、そしてときにはお客様となる。無理を承知でひと言でその人との関係を定義するなら、その人は私の「仲間」だ。

こういう考え方は、解釈によってはもしかしたら企業においては問題視されてしまうかもしれませんが、私もこういう考え方をベースに顧客と付き合いたいと思っています。
お互いに敬意と礼儀に基づいた対等な関係で、変にへつらうこともなく、気持ち良く付き合っていける間柄。そういう敬意があるからこそ、「安ければいい」ではなくて、商品やサービスに見合うだけの対価を「進んで払いたい」と思える間柄。そういう関係性が、私にとっての理想です。「CR」とか「CS」という言葉にすると最近ではむしろ「マイナスにならない」ことが目的だったりしてしまうので、あえて言うなら「顧客エンゲージメント」のほうが概念的には近いかもしれません。

閑話休題。最近では Twitter に代表されるようなソーシャルメディア・マーケティングは特殊なスキルが求められるものと思われがちですが、私の持論は「ソーシャルメディアといっても単なる媒体に過ぎず、取るべき振る舞いはその他のマーケティング活動一般と何ら変わることはない。もっと言えば、人間同士の関わりの普遍的なありようそのものである」だと思っています。そういう意味では、この著書は『ツイッター繁盛論』というタイトルがつき、Twitter を使ったマーケティング活動のノウハウ集という体裁を取っていますが、小さなお店でなくても、飲食業でなくても、さらにはツールが Twitter でなくても、商売を「コミュニティ=顧客との信頼関係」をベースに成立させたい、と考える人であれば、誰にでもお勧めできる内容だと思います。

ということで、この著書を読んだちょうど直後のタイミングで、豚組 [しゃぶ庵]にお邪魔してきました。

@hitoshi さん

例によって @hitoshi さんがご挨拶に来てくださったので、私が買った著書に特製のはんこを押していただきました。相変わらず、この柔らかい笑顔が良いじゃないですか。

ちなみに今年に入ってから月に一度は豚組のどれかのお店に行っているという状態ですが、いつも大人数なこともあり、意外にも[しゃぶ庵]で個室を利用したのは今回が初めて。

豚組 [しゃぶ庵]

そして、オーナーから特製チャーシューとローストポークのサービス(いつもありがとうございます)。毎度のことながら、これがまたうまい。

豚組 [しゃぶ庵]

今回いただいたのは、現在口蹄疫で大変な苦労を強いられている宮崎県へのチャリティを含み、かつ現在入手困難な宮崎産豚を使った「宮崎応援特別コース」。少し赤みが残るくらいに軽くしゃぶしゃぶする程度のほうが柔らかくて美味。

豚組 [しゃぶ庵]

あと、しゃぶしゃぶじゃないけど気になった銘柄豚のメンチカツ食べ比べ。CoMOX とバスク豚という銘柄で、私の印象ではバスク豚は肉汁がジューシー、CoMOX は「肉の味が濃い」と感じましたが、どちらも美味。とんかつ 3cm 祭りのときもそうでしたが、こういうのは美味しいだけでなく、豚肉への知識も深まって、さらにお店のファンになってしまいます。

調子に乗ってボトルワインを入れたりしたら過去最高額の一人¥10,000 コースになってしまいましたが(汗)、それだけの価値はある時間を過ごさせていただきました。今後とも通わせていただきます。

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2010/06/27 (Sun.)

ツァイス 激動の 100 年

アーミン・ヘルマン 著、中野 不二男 訳 / ツァイス 激動の 100 年

ツァイス 激動の 100 年

ツァイスファンなら読んでおかないと、というこの書物。それでも正直「重そう」なイメージが強かったのでここまで避けてきましたが、ふくいのりすけ氏の blog で紹介されていたので、改めて読んでみようと思い、手に取ってみました。とはいえ書籍はもう絶版になっているので、図書館で借りてきました。

カール・ツァイスとエルンスト・アッベによって設立された Carl Zeiss。その光学工場の設立から第二次世界大戦に伴う受難、東西ドイツの分割からベルリンの壁崩壊後の統一までの長い長い、それこそ激動の歴史を綴った書物です。と書いただけでも「重い内容」っぽいですが、冒頭がドイツ敗戦後の米軍のツァイス本社への進駐から始まるあたり、気合い入れないと読めません(笑。

この書物には残念ながらカメラ好きが期待するようなカメラの話はほとんど出てきませんが(Zeiss Ikon や Voigtländer、Tessar といった固有名詞は一応出てくるけど、それらについて深く解説されることはない)、逆に Carl Zeiss という企業がその長い歴史の中で、光学技術をもって科学や医学、工業や軍需産業といった産業に多大な貢献をしてきたことが述べられています。例えばコッホの結核菌の発見には Zeiss の顕微鏡が使われたことや、現代のプラネタリウムの原理は Zeiss が開発したものであること、という例を出すだけでも、Carl Zeiss という企業の偉大なる実績が分かることでしょう。
また、研究や製品だけでなく、現代企業の雇用制度の多くは Zeiss の創始者の一人であるエルンスト・アッベが長い時間をかけて作り上げた定款を参考にしており、雇用や厚生といった制度面でも社会の近代化に大きな影響を与えたのも事実です。

私が Zeiss というブランドに惹かれる最大の理由はそのレンズが描く画ですが、その背景にあるのはやはり企業全体として科学者や技術者に最大限の敬意を払っていることに、元いちエンジニアとして共感できるからではないでしょうか。かつての Zeiss の役員であるショーメルスの言葉にあるとおり、

「ずるがしこさではなく、徹底した正確さと信頼性、もういっぽうでは、商品の投げ売りではなく、安定した価格と、顧客に対する専門的アドバイスとサービス、そしていつも同じようにもうしぶんない応対」
を実直に実践しようとする姿勢そのものに、賛同できるからだと思います。
もちろん、この書物の中で書かれていることには多少の美化は含まれているでしょうし、最近ではコンデジだけでなくケータイや PC 用の Web カメラにも「Carl Zeiss」の名が入ったものが存在するように、分野においては名ばかりの存在になっている側面も否定はできません。が、訳者の中野不二男氏もあとがきで触れているように、日本の産業の直面する状況をも示唆しています。
この本に描かれているツァイスの姿は、そういう紆余曲折を経て成熟した技術立国になりつつある現在の日本の姿と、オーバーラップする部分があまりに多い。科学と、そして技術という、まさに名前だけの「無形の価値」で世界のトップを走りつづけてきたツァイスが、コンタックス製造の場を日本に移したように、日本の産業の海外移転が各分野ですすんでいるのもその一例だ。
今日のツァイスの姿は、もしかしたら明日の日本の工業界の姿なのかもしれない。しかし、かりにそうであるとするならば、日本には名前だけで残すことのできるものが、はたしてどれだけあるのだろうか。
この書物(日本語版)が出版されて 15 年もの歳月が経った今、それがより現実のものとして突きつけられています。単にカメラ好きがきっかけで読み始めた書物でしたが、日本の産業に携わるいち企業人として、価値のありようというものを深く考えさせられた一冊でした。

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2010/06/10 (Thu.)

iPad VS. キンドル

西田 宗千佳 / iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏

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電子書籍のまさに「今」を切り取った書物。読みたいと思っていたけど業界動向系の本はすぐに陳腐化するし・・・と思っていたら図書館にあったので、借りて読んでみました。

内容はざっくりこんな感じ。

  • Kindle のビジネスモデル
  • Sony Reader および iPad との比較
  • 電子書籍がこれまで歩んできた歴史
  • 電子書籍のビジネスモデルについて、アメリカの事例を引用しながら整理
  • 日本の電子書籍/出版業界が置かれた現状と、今後の展望
『iPad VS. キンドル』といういかにもキャッチーなタイトルがつけられてはいますが、そんな表面的でうすっぺらい内容の本ではなくて、電子書籍の過去現在未来についてかなり多角的かつフラットに捉えた非常に良いテキストにまとまっています。

私も個人的に興味があって電子書籍関連の情報をそれなりに追いかけているので、もしかしたら知ってる内容ばかりかなというのを少し危惧していたのですが(実際ソーシャルメディア関連の書籍はそうやって買ってがっかりしたものが少なくない)、本書には私にとって新しい情報もけっこう充実していました。
電子書籍の歴史の話(アラン・ケイの Dynabook 構想から始まるとは恐れ入った)については過去の事例はほとんど網羅され、関係者にも直接取材を行っているほか、筆者とエンターブレインによるアンケート調査の結果、そして出版社側で始まっている動きに関する解説はなかなか他では読めない話。特に Web の情報に頼ると出版社側の動きの実態は正確には見えにくいので(出版社=既得権者=悪もしくは旧態保守という構図で表現されがち)、そのあたりまでしっかり取材して、機器やサービス提供側/出版社側/消費者側のいずれにも寄らずに客観的に示したという点では、非常に価値のある書物だと思います。

また、主題とは少しずれますが、「著作権は『銭金の問題』だ」とハッキリ書かれていることも重要だと思いました。著作権が単に金銭の問題かどうかは議論の余地があるとは思いますが、著作権が問題になる原因のほとんどは金銭。他業界で起きている「銭金と文化のすり替え」ではなく「収益の再分配」に主眼を置くことが、その業界がビジネスとして存続していくために必要なのだろうと思います。

本書に関しては筆者の主張がない、という批判もあるようですが、個人的にはこの書物は西田氏らしく客観的かつフラットに電子書籍の現状を分析したことに価値があり、そこから何を考えるかは読者に委ねられているのだと感じました。
ビジネスで関係する/しないに関わらず、電子書籍やコンテンツの電子化といった問題に興味がある人ならば一読して損はない良著だと思います。私も業界動向本ならお金を払うまでもないかなと思っていましたが、手元に置いて何度も参照する価値はあると思いました。この本こそ電子書籍で欲しいんですが、どうやら発売が遅延しているよう。電子書籍版が発売されたら、改めて購入したいと思います。

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2010/05/19 (Wed.)

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

岩崎 夏海 / もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

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話題の著書、今さらではありますが私も読んでみました。

表紙のインパクトが強いですが、萌えライトノベルとかでは全然なくて、中身はとても硬派なビジネス書。そりゃドラッカーの『マネジメント』を題材にした著書なので、軟派になりようがないのですが(笑。

タイトルにあるとおり「もし高校野球の女子マネージャーが『マネジメント』を読んだら」という設定は単なるオヤジギャグですが(笑、リアルなビジネスに携わってる人じゃなく、普通ならマネジメントになんて縁のない若者がマネジメントに取り組んだら・・・という仮定なのが、逆に『マネジメント』の内容をデフォルメ化してこれだけ読みやすい(多少強引な設定もあるけど、それはそれ)内容にまとまっているんだろうな、と感じました。

本著で示されているのは『マネジメント』の中でも要点だけをさらっとなめたにすぎない内容だと思いますが、例えば企業活動は「顧客の要望を聞くところから始まる」「顧客の期待に応える」ことが最も重要ではあるけれど、でもそれは「言われたことをその通りにする」ではなく「本質的な欲求がどこにあるか」を見極めて、それに応えていくことが本質で、それを実現するための方法論が『マネジメント』には書かれているんだろう、ということがよく解りました。

この本のおかげで自分が今やっていることはきっと間違っていないという確信が持てたと同時に、これは改めてドラッカーを勉強してみる価値はあるなあ、と思ったのですが、一般論として書かれている(場合によっては単なる正論にしか聞こえないようなことを)自分の周囲に起きている具体的な事柄に当てはめて考えていくのってけっこう骨が折れるんですよね。私は転職したての頃、それでコトラーを途中でストップしてしまったので、今回も最後までいけるかどうか。とりあえず書店に行ってパラパラめくってみてこよう・・・。

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2010/05/07 (Fri.)

ずるい!? なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか

ここしばらくアウトプットするばかりだったので、ちょっといろいろなことを吸収したくなって、最近ひさびさにビジネス書を読んでいます。まずは Twitter で紹介いただいたこの本から。

青木 高夫 / ずるい!? なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか

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ホンダで海外営業を経験し、現在は渉外部で対政府関係の仕事もしている著者の経験に基づいた、主にビジネスの場での欧米と日本の「ルール」に対する考え方・取り組み方の違いに関して述べた本です。かいつまんで説明すると、日本人は「ルールはお上が決めるもので一般人は策定のプロセスに関与する必要はなく、一般人はそれを守るもの」という考えが刷り込まれているのに対して、欧米人は「ルールは策定する段階から参画するもの。場合によっては自分が有利になるようにルールを変更すべき」というマインドで、基本的には日本人ももっとルール作成プロセスへの関与を積極的にしていくべきだ、というお話。

ビジネスの場に限らず、例えばスポーツ界でもこういうことは日常茶飯事で、本書の中でも柔道の国際ルール変更の話や、1980 年代後半の F1 ターボ禁止ルール(当時はホンダエンジンの黄金期だった)など、「欧米は日本人が勝ち始めるとルールを歪めて欧米人に有利にする」という話はよく聞きます。最近ではフィギュアスケートの採点ルール変更が問題視されましたが、個人的には(フィギュアという「スポーツ」にとっての現行ルールには強く疑問を抱いているものの)とにかく金メダルを獲らせるために国を挙げて最大限のアプローチをした韓国と、選手に全て任せて何もしなかった日本・・・という対比を見るにつけ、やはり多くの日本人にとっての「スポーツ」って所詮その程度のものでしかないんだろうな、と少し絶望的な思いを抱いています。また、F1 からのホンダやトヨタの相次いだ撤退も、やはり「F1 の一員」としての自覚に欠けあくまで参加者にすぎず、ある面では F1 に体よくお金を奪われただけ、という見方もできます。
原理主義的に考えればそりゃスポーツに政治を持ち込むのはフェアではないのかもしれませんが、ある程度はそのスポーツに注目を集める活動(より観る側にとって面白くなるルール作りも含む)は必要で、そういうものも含めてそのスポーツの発展があるのも事実。まあ日本人は伝統的に「●道」というスポーツ、というより自己鍛錬のための競技が主流だったので、こういう考え方はそれこそ邪道と言われかねませんが。
でも、F1 で例えるならば、純粋にマシン+ドライバーの速さだけで予選も決勝もやったら今年の開幕戦のように全く面白くないレースばかりになるのも事実でしょうし、ある程度古くから F1 を観ている人にとっては「コース外での駆け引きまで含めて F1、むしろグランプリが始まるまでのプロセスが重要」というのも事実だと思います。

さておき、個人的には最近「ビジネスのルールを変える」ことをよく考えているのですが、私はこういう本当の意味での「ルールや法律」を変えることを考えているというよりは、むしろイノベーションによって生活や市場にパラダイムシフトを起こすという意味での「ルール変更」のほうに興味を持っています。例えば、音楽と言えば家で聴くものだった時代に「外で歩きながら音楽を聴く」という文化を創ったり、紙媒体やパッケージメディアを電子媒体化することで流通だけでなく言論やコミュニケーションのあり方を変える、といったような。それによって経済の構図が変わる=ルールが変わる、ということを考えています。既存のルールの中で最大限に勝率を上げるためのアプローチも重要ですが、そういうのを考えるのが得意な人は他にいくらでもいるので。

そういう意味では、本書は私が求めていた内容とはちょっと方向性が違ったのですが、それでも今まであまり持っていなかった観点が身についたり、ちょっとした発見がいろいろ得られたり、読んだ価値はありました。私はあまり政府や業界団体に関係する仕事をしていませんが、それでも例えば「自分がやりたい仕事をするために、社内の業務プロセスやルールを変えることを考える」ということに対して少し前向きになれたり、とか。

平易な文章で書かれていて比較的短時間でも読みやすい本なので、興味があれば一読をおすすめします。

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2010/03/11 (Thu.)

Sony Chronicle 2010

だいぶ前に注文していたものが届きました。

Sony Chronicle 2010

Sony Chronicle 2010

この手のムック本は初代と 2006、そして去年の Walkman Chronicle を合わせて 4 冊目。私も毎回律儀に買うわと我ながら思いつつ(´д`)。あ、2006 はプレゼントだったか・・・。

さすがに初版は 2002 年、8 年も経過するとそれだけ掲載製品が増えるわけで、

Sony Chronicle 2010

もう VAIO X より厚いんですけど(笑。

Sony Chronicle 2010

この長い歴史の中で直近の 15 年ほどは間違いなく私の人生とオーバーラップしているので、製品の一つ一つにいろんな思い出が。

私も胸を張って経歴語れるような人物にならないとなー・・・・・・。

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2010/03/08 (Mon.)

写真派のためのパソコンがよく分かる本

こんな本を買いました。

澤村 徹 / 写真派のためのパソコンがよく分かる本

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オールドレンズとかカメラの外観カスタマイズといった私好みのマニアックネタを提供し続けてくださっている(笑)澤村 徹氏の著。

この本自体は銀塩からデジタルに移行したばかりの人とか、今までデジタル一眼を使っていたけどプリントはお店任せにしていてこれから PC を買って自分でプリントしてみようという人に向けて書かれた本のようです。私は真逆で写真素人、PC プロ級を自認しているので(笑)まったく対象からは外れるのですが、これを買った目的は 6 章「見た目通りにプリントしたい」が全て。PC によるカラーマネジメントを自分で試したり、場合によっては人に教えたりしなくてはならないことがあるんですが、分かりやすく伝えるのが案外難しく、また自分でも狙った色がちゃんと出せず混乱することもしばしば。そういうことが整理できると良いな、と思って買ってみたというわけです。

本書での解説のしかたは「カラーマネジメント」(色の管理)ではなく「カラーマッチング」(モニタと印刷物での色の一致)に主眼を置いたもので、確かにそこに論点を絞れば考え方はずっとシンプル。また、モニタ(RGB かつ自発光)と印刷物(CMYK かつ反射光)ではそもそもの表現方法が違うので完全に色を合わせることはまず不可能、という前提に立った上でできる限り目に見える色味を合わせる、という意識であれば、なかなか完璧に色が揃わずイライラすることも減りそうです。

モニタのキャリブレーションやプリンタのカラーマネジメント印刷も、メーカーごとに手順が解説されていて非常に親切。とはいえ PC 初心者がどこまでついていけるかは疑問ですが、逆にこの章は PC のスキルがそこそこある人こそ読む価値があるように思いました。
ただ、残念なのはキャリブレータ等についてもう少し突っ込んだ解説が欲しかったところ。カラマネに関しては難しい割に文献が少ないので、個人的にはこの 6 章だけ抜粋追補した書物が欲しいです。

でもこの機会に私も重い腰を上げてちょっとちゃんとカラマネやってみるか。

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2010/01/22 (Fri.)

TOEIC のお勉強(結果報告)

冬休み明けに受けた TOEIC の結果が届きました。

  • 目標:600 点台半ばから 5 点アップしたい、けど確実に取るために 50 点アップ目標

  • 結果:70 点アップして 700 点台に乗りました!!!
受験した時点で多少の手応えはあったものの、まさかここまで上がると思っていなかったので、通知見て自分で驚きました(^^;

宣伝するわけじゃないですが、やっぱりこのテキストの効果かなー。

小山 克明、姜 英徹 / 3 週間で攻略 新 TOEIC テスト 730 点! (残り日数逆算シリーズ)

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実質勉強したのは 3 週間弱、短期集中でこの本の目標点にかなり近いところまで到達できました。本当に直前しか勉強できなかったので、リスニング力や語彙力が根本的に向上しているわけではないはず(短い間ながら、耳や目が英語に慣れた効果は多少あったかもしれませんが)。ということは、基本的にはこれくらいの点数が取れるポテンシャルがありながら、今までは解き方や TOEIC 独特の引っかけ問題でそれだけの点数を落としてしまっていたということなのかもしれません。

私の場合、米国に旅行する程度の意思疎通ならば何とかできる程度の基礎は持っていたので、あとはビジネス的な言い回しや TOEIC そのものの解き方を学ぶことがスコア向上に効いたのだろうと思います。全く何もないところから解き方だけ学んでもスコアは上がらないんじゃないかと思いますが、このシリーズはスコア帯ごとの解説書が用意されているので、それらはもう少し上/下の点数に合った内容になっているはずです。

とりあえずテスト対策としては成功しましたが、今回の結果で自分の得手不得手も明確に分かったので、今度はちゃんと基礎体力をアップさせる勉強をしないとなー。でも日常的に/業務上英語をそんなに必要とされてるわけでもないので、そのモチベーションがなかなか持てないのが悩みですが(^^;

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2010/01/06 (Wed.)

TOEIC のお勉強

年末から英語の勉強をちょこっとしていました。業務上英語を使ってコミュニケーションする機会はほとんどないのですが、カイシャの人事評価的に英語のスキルが必須とされたので。

TOEIC である程度の点数を取る必要があったのですが、あまりじっくり勉強に取り組む時間もなかったので、とりあえず TOEIC の傾向と対策をつかむためにテキストを買ってみました。

小山 克明、姜 英徹 / 3 週間で攻略 新 TOEIC テスト 730 点! (残り日数逆算シリーズ)

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実は半年前に素の状態で受けてみて、目標点数に 5 点だけ足りなかったのですが(´д`)、何となく出題の傾向は掴めたので基礎からやるよりは設問の解き方を覚えたほうが手っ取り早く目標点数に到達できるかなと思い、そういうテキストを探していました。書店で適当に漁ってみたらけっこうみっちりやる系のテキストが多かったんですが、このテキストは最も短期間で(笑)効率的に「TOEIC の解法」を解説してくれそうだったので、選びました。もちろんちゃんと語彙・文法・リスニングのスキルを身につけるべきなのは分かってますが、今回は効率重視で・・・。

このテキストで勉強してみて分かったのは、まさに私のように生半可な英語スキルを持っている人ほどハマりやすい引っかけ問題がたくさん出題されているということです。特にリスニング問題で、本文中に出てきた単語と同じ、もしくは発音が似た単語が選択肢に並んでいることが多く、過去の受験で私も少なからずこの罠にはまっていたはず。
また、リスニング中はマークシートを塗りつぶさず印をつける程度にしておいて、リーディング問題に取りかかる前に塗りつぶすことで、リスニングに集中するというテクニックも、言われてみれば確かに理に適っていますが、言われるまでは気づきませんでした・・・。

実は今日が試験日だったんですが、前回よりは多少手応えがあったように思います。結果が出るのはもう少し先だけど、これでダメだったら改めて基礎からちゃんとやろう・・・。

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2009/12/01 (Tue.)

Twitter 社会論

『Twitter 社会論』読了。

津田 大介 / Twitter 社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流

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Twitter のスピード感的には少し旬を逃したかなと思いつつも、一応読んでみました。

内容や感想については Twitter 上で津田氏本人に RT されてしまったので今更多くを語るものではないですが、Twitter の成り立ちから現状、社会に及ぼしつつある影響までを解説しつつ、いわゆる「tsudaる」テクニックや勝間和代氏との対談までを網羅した、現時点での(主に日本での)Twitter の現状をうまく輪切りにした書物だと思います。逆に tsuda 氏をフォローして氏のつぶやきを毎日目にしている読者の視点では、やや発言がおとなしすぎて物足りない側面はありますが(笑。

でも、読んでいる間ずっと感じていたのは、Twitter の歴史はインターネットが十数年の時間をかけて辿ってきた歴史の縮図であり、そしてこれからその先に向かおうとしているのでは?ということ。Twitter が築いてきたコミュニケーションのあり方は、CGM の観点から見た Web コミュニケーションのそれを凝縮したようなもので、違いといえば Twitter のほうがまだオープン性とボトムアップ性を強く保っていて、かつ時間の尺度がずっと短い(リアルタイム性が高い)ということくらい。
インターネット上のリアルタイムコミュニケーションが今後 Twitter に集約されるとは必ずしも言えず、Twitter を補完/代替するサービスが出てくる可能性も十分に考えられますが、Twitter が Web のリアルタイム性という点で新たなパラダイムをもたらしたと言っても過言ではないでしょう。1990 年代が ARPANET から Yahoo! に至るスタティック Web の時代、2000 年代が Google を中心としたダイナミック Web の時代、2010 年代は Twitter をはじめとするリアルタイム Web の時代、というのは大げさかもしれませんが、そういう観点で本著の『新たなリアルタイム・ウェブの潮流』というサブタイトルは、実によくつけたものだなと感心させられます。

そういう意味で、今までインターネットが辿ってきた歴史になぞらえて Twitter の歴史を振り返ってみると本著の内容はそれほど目新しいものばかりでもないような気はします。が、そこから先に期待される未来、という意味では、この本を読んで Twitter に限らずリアルタイム Web の可能性をもう少し探ってみたい、と思わせてくれるだけのものはありました。個人的にはその点、「あとがき」が一番面白かったかもしれません。

Twitter のヘビーユーザーで、ネット上のコミュニケーションの可能性だったりそこから発生するビジネスチャンスを(流行りとしてでなく)探りたいと考えている人なら、一読の価値ありかと思います。

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2009/11/23 (Mon.)

聖女の救済

東野 圭吾 / 聖女の救済

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ガリレオの苦悩』と一緒に図書館で予約していた本が入荷したとの連絡を受けたので、借りてきました。こちらの待ち人数も同じくらいだったので、近い時期に回ってきたもよう。

この作品は、作中の時間軸的には『ガリレオの苦悩』の第一話「落下る(おちる)」と第二話「操縦る(あやつる)」の間くらいに位置するエピソードだと思われます。ガリレオシリーズ的には『容疑者 X の献身』に続く、二作目の長編。

「完全犯罪」「この事件の答えは虚数解」「草薙刑事の恋」といったキーワードから、もしかすると『容疑者 X』を超える傑作になるのか!?とワクワクしながら読みましたが、あまり科学とは関係のないオチでちょっと肩透かしを食ったこともあり、個人的には『容疑者 X』ほどではなかったように感じました。それでも、犯人の悲愴なまでの決意や登場人物の心理的な駆け引き、そしてガリレオ本人よりも内海や草薙の視点を中心に描かれるストーリー、といったところは十分に楽しめました。あと今まさに事業仕分けで話題になっている「スプリング 8」(和歌山のヒ素カレー事件の成分分析にも使われた放射光実験施設)が登場するところもタイムリーで興味深かったですね。

でもやっぱり東野圭吾の作品は心理描写にこそその真髄があると思います。個人的には『容疑者 X』以降の作品のほうが好み。続編にも期待ですが、違うシリーズも読んでみたくなってきました。

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2009/11/11 (Wed.)

ガリレオの苦悩

久々に活字の本を読みました。

東野 圭吾 / ガリレオの苦悩

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ちょうど私が『容疑者 X の献身』を読んでいた頃に出版された探偵ガリレオシリーズの最新作ですが、今年の春頃に図書館に行ったついでに借りてみようと思ったら、確か 600~700 人待ちという状態(;´Д`)ヾ。とはいえおそらく区内の図書館で何冊かを回しているはずなので、700 人に順番に回るのを待つというわけではないだろうと思ってそのまま予約。そしたら半年以上経って完全に忘れていた今頃になって、図書館から入荷連絡が・・・(´д`)。
小説はハードカバーで買うと置き場所に困るので、基本的には文庫しか買わないんですが、こんなに待つなら(というか忘れていた)買ってしまえば良かったかなあ。

小説の内容はガリレオシリーズらしい、知的好奇心をくすぐる謎解きが散りばめられていますが、当初の「オカルト事件を科学的に解決する」というストーリーから徐々に「科学的事件を科学的に解決する」という組み立て方に変わってきていますね。これはこれで好きですが。
あと、『ガリレオの苦悩』というタイトルのとおり、前作『容疑者 X の献身』でかつての親友の罪を暴いてからのガリレオ=湯川の苦悩や、それに呼応してか従来よりも湯川自身にゆかりある人物にまつわる事件が増えていることなど、ずいぶん作風が変わってきていますが、やっぱり私は『容疑者 X』以降のこのタッチのほうが好み。あと、ガリレオの相棒役がテレビ版のヒロインである内海薫(柴咲コウ)にバトンタッチしているのも興味深いですね。私はテレビ版観てませんが・・・。

ちなみに本作と同時に貸出予約した長編『聖女の救済』のほうは、未だに図書館から入荷連絡がありません(´д`)。いつになることやら・・・。

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2009/05/30 (Sat.)

増補改訂 フィールドベスト図鑑

フィールドベスト図鑑の増補改訂版がまた刊行されていたので、すかさず購入しました。

矢野 亮 / 日本の野草 夏 (増補改訂 フィールドベスト図鑑)

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既に夏の草花が咲き始めているので、若干後追い気味ですが。

ただこれだけではツツジやアジサイなどのポピュラーな花木が含まれていないので、こちらも。

西田 尚道 / 花木・庭木 (増補改訂 フィールドベスト図鑑)

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ツツジって意外と種類が多いのね・・・。

秋口には『日本の野草 秋』も増補改訂版に切り替わるはずなので、そしたらまた買おう。

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2009/05/27 (Wed.)

グランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略

シャーリーン・リー、ジョシュ・バーノフ / グランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略

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この分野で私淑する人たちが挙って奨めていたので、前々から気になっていた一冊です。2 月に買っていたんですが、流し読みではなく熟読が必要な内容だと感じたので、時間がかかってしまいました。
「グランズウェル」といっても何のこっちゃ、という人も多いと思いますが、Web 2.0 とか CGM/WOM と呼ばれているものをテクノロジーでもなく、「いわゆる」マーケティングでもなく、もっと企業活動全体に影響する大きなうねりとしてとらえる、といったあたりの意味です。

私もここ 2 年ほどこの分野の書籍を読み漁っていますが、単純な事例紹介のサマリーでお金を取る本が多くてうんざりしたのは事実。でもこの書籍は事例から抽象化して「企業はどうあるべきか」ということを、グランズウェル活用/共存の各局面に対してまとめてくれている、とても良いテキストだと思います。この種の書物の中では、『ウェブ進化論』と同じくらい共感し、勇気づけられたような気がします。自分自身で経験してきたことも多いので、ものすごく新しい発見があったというわけではありませんが(むしろその経験が間違っていなかったことを再確認した感じ)、企業人として会社のプロセスにどうやってグランズウェルを融合していったらいいか、ということについては、保証をもらえたような気がしています。個人的には、数年で陳腐化する技術の話よりも、経営的観点でどうグランズウェルと向き合うか・・・的な言論を読みたいと思っていたので、とてもためになりました。

分厚いハードカバーで内容も多岐にわたるため、個別の引用なんかは行いませんが、この分野について真剣に取り組む覚悟がある人なら、読んでみて損はないと思います。私も自分で貼った付箋をつけたまま、職場のマネージャー陣に回したいくらいの書物です。

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2009/05/01 (Fri.)

野鳥・野草図鑑を購入

さて、GW。私はあくまでカレンダーどおりのお休みなのですが、このご時世、仕事があるだけでありがたいというもので、5 連休もあれば十分。今年は帰省の予定もないんですが、近場でも普段行かないような場所に写真でも撮りに行きたいと思っています。
で、それに先だって以前から買おうと思っていた野鳥図鑑・野草図鑑を購入しました。

小宮 輝之 / 日本の野鳥 (フィールドベスト図鑑)

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図鑑といっても種類はたくさんあってどれを選んだらいいか迷ったのですが、最近の写真仲間である daizo さんがお使いの「フィールドベスト図鑑」シリーズが使いやすそうだったので、同じのにしてみました。
この図鑑、生息地別・大きさ別になっているので、検索性がすこぶる良いのが長所だと思います。一般的な図鑑は種類別に分類されているものがほとんどだと思いますが、勉強するにはそっちのほうが体系立てて読めるから良いにしても、野鳥撮影の中で「この鳥なんていうんだっけ」と調べるならこっちの方が便利。
図鑑なんて買ったの小学生以来だと思いますが、やっぱりこういう知的好奇心を満たしてくれる文献は好きですね。写真もけっこうキレイなので、野鳥撮りのアングルの参考にもなりそうです。

で、野草図鑑はこちら。

矢野 亮 / 日本の野草 春 (増補改訂 フィールドベスト図鑑)

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この「フィールドベスト図鑑」シリーズ、去年から少しずつ改訂しているらしく、春の野草は新装版になっていました。こちらも花の色別に分類されているので、とても実用的。
季節的にはちょうど春から夏の野草に移り変わる時期なので、早めに夏版も欲しいんですが、こっちはまだ改訂版が出てないんですよね。ニーズがありそうな夏に向けて出るんじゃないかと思っているので、ちょっと待ち中。

連休はこれらの図鑑とカメラを持って出かけたいと思います。図鑑を読んでみて、私はけっこうヒタキ系の鳥が好きかも、と気づいたので、ヒタキに出会えないかなあ。

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2009/04/22 (Wed.)

世界の M42 マウントレンズ

さらなる沼の深淵。

写真工業出版社 / 世界の M42 マウントレンズ

世界の M42 マウントレンズ

最近またレンズが欲しい病なんですが、先日の 70-300G で資金を出し切ってしまったので、レンズ本で気を紛らわせています(ぉ。

オールドレンズ パラダイス』がマウントアダプタを前提としたあらゆるマウントの名レンズカタログ兼マウントアダプタ入門書、『定番カメラの名品レンズ』がマウントアダプタ愛好家も応用できる銀塩時代の名レンズカタログだとすれば、この本はまさしくマウントアダプタマニアにとっての最大の沼である「M42 沼」の深さを物語った本といって良いでしょう。M42 ならほとんどの DSLR で使え、なおかつレンズの種類も膨大なので、マウントアダプタ遊びに興味があるならとても参考になる資料だと思います。
内容も 50 年以上前のヴィンテージレンズから最新のコシナ製ツァイス ZS マウントシリーズまでの 70 本を幅広く揃え、『世界の~』の名に恥じない厚い内容と言えます。アサヒペンタックス全盛期の日本、Zeiss Jena 時代の東独、現在でも製造が続けられているロシアンレンズが M42 の三大勢力だと思いますが、第二次大戦から東西ドイツ分割、ロシアへの光学技術流出とそれに巻き込まれた Zeiss、Voigtländer、Rollei の変遷についてはこの本ではあまり深く触れられていませんが、そのあたりの歴史を改めて紐解いてみるだけでもまた面白そうです。

最近中古カメラ屋巡りが趣味になりつつあるキケンな私ですが、先立つものはなくても M42 のオールドレンズなら一万円以下で買えるものもゴロゴロあるので、そういう楽しみ方もアリかも。でも、これを読んでたらレンズよりもむしろ Bessaflex あたりのボディが欲しくなってきて、それもそれでキケンな限り(;´Д`)。

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2009/04/10 (Fri.)

定番カメラの名品レンズ

フィルムαを使い始めてから興味がどんどん古いほうに行っていて、マウントアダプタ本やクラシックカメラ本を読み漁っている私(;´Д`)ヾ。今度はこんな本を読んでみました。

赤城 耕一 / 定番カメラの名品レンズ

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娘の絵本を返却に行った図書館で見つけて借りてみた本です。図書館を覗いてみて気づいたんですが、一般的な書店にはあまり並んでいないようなクラカメ本が充実していたりして、意外と図書館は穴場かも。たまたま近所の図書館のライブラリアンがカメラ好きなだけかもしれませんが。

オールドレンズ パラダイス』のほうはマウントアダプタで主に東西ドイツやフランス、ロシアといった舶来オールドレンズを楽しむ本でしたが、こちらはライカ以外はほぼ国産のクラシックカメラが中心。初版がちょっと古い(2000 年)こともあり、DSLR でオールドレンズを楽しもう!ではなくて、レンズから入るボディ選びにまで一部踏み込んだ、ストレートなレンズ本です。
最近のカメラ雑誌あたりはとかく MTF 曲線やシャープネス、ボケの大きさ、逆光性能といったスペック偏重の風潮がありますが、この本はその真逆を行く、言ってみれば著者の純粋な趣味による「レンズの味を楽しむ」ための本です。私はどちらかというとカメラを描写性能よりも趣味性の高さで楽しんでいるほうだと思うので、このスタンスがなかなか心地よく、楽しんで読むことができました。だんだん銀塩沼のほうにも興味が出てきて、手持ちの Distagon を起点に CONTAX のボディにも手を出してみようかと妄想する始末(ぉ。

でも見方によってはマウントアダプタ前提で DSLR のためのオールドレンズ本的な読み方もできる本だと思います。特にニコン、CONTAX、ペンタックス(TAKUMAR)あたりは割と普通に DSLR でも使えるし。α使いとしてはミノルタの Rokkor とかも使ってみたいんですが、フランジバックの関係上ミノルタ MD をまともに使えるマウントアダプタがあるのはフォーサーズくらいしかないのが、残念でなりません。

うーん手を出すならやっぱり Zeiss Jena かな(ぉ。

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2009/03/23 (Mon.)

オールドレンズ パラダイス

さらなる沼の入り口。

澤村 徹 / オールドレンズ パラダイス EOS DIGITAL とマウントアダプタで遊ぶ

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PCfan などに連載を持つ澤村 徹氏(というか個人的には GR DIGITAL や Leica M8 をひたすらカスタマイズする metalmickey 氏、といったほうが馴染みがある)のオールドレンズ本。EOS DIGITAL にマウントアダプタをつけてオールドレンズを楽しもう!という本です。

私も既に M42、Y/C マウントアダプタを使っていますが、その他のレンズに関する知識がないので、勉強になりました。実際に自分で使うことを考えると、レンズの入手性やマウントアダプタの価格から、やっぱり M42 か Y/C に落ち着くと思いますが・・・。
でも沼を超えて「M42 星雲」とすら呼ばれる M42 マウントの世界はやっぱり広いですねー。特に東独やロシアレンズがおもしろそうです。Y/C だと事実上 EOS でしか使えないので、今度非互換レンズを買うときがあれば M42 マウントのものを買ってαでも使ってみたいと思っています。ツァイス信者としては、やっぱり狙い目は Carl Zeiss Jena のレンズかなあ。MC Flektogon や MC Sonnar あたりは、かなり惹かれます。あと、使用頻度が低い割に高価な魚眼レンズなんかは、ロシアレンズで安くあげるという手もありそう。

ということで、銀塩ボディに続きレンズも深い沼にハマりつつある最近の私(;´Д`)ヾ。

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2009/02/27 (Fri.)

V 字回復の経営 ――2 年で会社を変えられますか

上司の薦めで読んでみました。

三枝 匡 / V 字回復の経営 ――2 年で会社を変えられますか

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「赤字事業を短期間でいかに建て直すか」にフォーカスした経営術の本。組織改革のメソドロジーをモデルケースで描いた書物で、ある企業の経営改革をサクセスストーリー的読み物としてまとめつつ、合間に要点を差し込む形で編集されているので、とても読みやすいです。

経営の本というと、ちょっと身構えなくては読めない小難しさを感じてしまいますが、この本が示す道は非常にシンプル。いかに社員の共感を得て、モチベーションを高めて改革を成功させるかに至るリーダー論と、そのためにはシンプルで明快なプロセスが示される必要があることを繰り返し述べています。
同じようなことでも、ロジックが通っていないと単なる浪花節になったり、体育会的な精神論だけに終始して実効は何もない・・・みたいなことは、ちょっと周りを見渡してみただけでも溢れかえっていますが、そういうケースは得てして「誰にでも納得できて実行可能な改革プランの提示」がないものです。

実話をもとにしたというモデルケースはちょっとあまりにもフィクション的展開すぎて、「できすぎ」と突っ込みたくなる部分も多少ありますが、大事なのはこの例で示されている考え方。この考え方をいかに自分の中で消化して、自分の会社に適用できるかという目線で読むと、たくさんのヒントが隠されています。あと、自分がいる組織の現状のダメさ加減も(汗。また、同時にそれを他人事ととらえるのではなくて、翻って自分自身に落ち度はなかったのか、を省みることができなければ、何も変えられないのも事実。

私は転職するときに、外部からの改革者のつもりで今の職場に飛び込んだつもりでしたが、いつの間にか単なる「状況の一部」となっていないか?正しいと信じていたことが、本当は全く間違っていたのではないか?
経済環境的には、ここ数年の不況なんて戯れ言に過ぎなかったくらい「未曾有の危機」が訪れている状況だから、もっと、あらゆることを根本から疑ってかかるくらいの気持ちで、根本的な改革を考える必要があるのだと思います。
いろんな企業で「お客様目線」が叫ばれる近年ですが、たぶんそれだけでは足りなくて、いち社員に至るまで、経営者視点と顧客視点の両方をもってひとつひとつの状況に対処する必要があるのだと思います。でも、口先だけでなく意識の根底にその考えを徹底させるには、多少のショック療法は免れないだろうなあ・・・。

この本に書かれていることは「至極まっとうなこと」ばかりですが、シンプルにわかりやすくまとまっているというだけで、ここまで多くの気づきを与えてくれる、という点では、ビジネスの世界に身を置く人間であれば一読して損はないと思います。

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2009/02/16 (Mon.)

次世代マーケティングプラットフォーム

最近、目先の大きな仕事がようやく一段落したので、次への仕込みを始めつつ、また自分の頭の養分を吸収するべくいろいろ勉強中。タイトルに惹かれてこんな本を読んでみました。

湯川 鶴章 / 次世代マーケティングプラットフォーム 広告とマスメディアの地位を奪うもの

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うーん・・・ちょっと物足りないというか何というか。「マーケティング」という企業活動の認識の違いですかね?
著者は新聞社の方らしいので、どうしても広告宣伝の側面が主になっているのだと思いますが、一般的に言っても「マーケティング」を「広告宣伝・販促関連だけに関わる仕事」と定義している企業もおそらく少なくないのでしょうね。むしろ、国内における一般論としてはそちらの認識のほうが多そうな気もします。ただ、個人的には、この内容ならばタイトルは『次世代マーケティングプラットフォーム』ではなくて、『次世代 Web アド・プロ・セールスプラットフォーム』としてくれたほうが、すんなり飲み込めたと思います。

内容的には、少し前に流行った Google・Apple 礼賛本に近い勢いで Omniture すげー、Salesforce.com すげー、Amazon すげー、というものです。具体例が多いので、既存のフレームワークを応用した Web セールス/プロモーションプラットフォームをこれから立ち上げよう、あるいは改善しよう、という人にはかなり参考になるような気はします。まだあまり日本には導入されていないアメリカでの事例が主なので、目新しいものも多いですし。

でも私が求めていたものはもうちょっと違って、どちらかというと、もっと全体を俯瞰した意味での「マーケティング・プラットフォーム」を期待したので、そういう意味ではあまり参考になりませんでした。具体的には、Web と既存媒体、マスコミュニケーションとカンバセーショナルコミュニケーション、イノベーターからラガードまでといったマーケット全体をより体系的にとらえて、どうクロスコミュニケートしていくか、そのときのプラットフォームや(もっと言うと)企業のあり方はどうあるべきか・・・みたいな内容を求めていたのですが、ちょっと大きすぎましたかね。

でも、参考になった話もいくつかあって、特にそれは序章と終章に集約されていました。序章の「イノベーションは周縁から起こる」という話は、まあ一般論ではあるのですが、確かにどんな世界でも革命というのはその世界のど真ん中ではなくて周縁から起こり、真ん中にいる人たちはそのイノベーションを受け入れようとせず、気がつけば立場が逆転している、という話。業界や社会の常識に縛られず、フラットな視点で流れを読む力を磨きたいものです。
また、終章の

ターゲットメディアになるということは、一方通行のマスメディアとは異なり、ターゲットとなる顧客と向き合うということでもある。(中略)一対多の関係であっても、一方的に情報を出すのではなく、メディア側が出す情報を核にユーザーが情報を交換し合うようなコミュニティを作る営みなのだ。
には、個人的に激しく同感。でも、それを実現するのがとてつもなく高い壁だったりもするので、むしろその壁を越えるヒントを書いてくれよ!!!と思いましたが・・・。

そういう意味では、全般的に至極もっともな話ばかりなのですが、もう一つ高いレイヤーであったり、もう一歩踏み込んでほしいところがことごとくその手前で止まってしまっているのが非常に残念でした。既存の事例や小手先の手法じゃなく、もっと普遍的な考え方について「共感」して「納得」しつつ、さらに「発見」がある書物こそ読みたいのです。何か良い本ないかなー。変に書物に頼るより、同じような分野で活躍している人と議論するほうが、最近は得るものが多いとは思っていますが。

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2008/11/30 (Sun.)

白夜行

東野 圭吾 / 白夜行

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ガリレオシリーズに続いて、東野圭吾の代表作を読んでみました。ガリレオのほうは新刊が出ていますが、ハードカバーの本を置くスペースがあまりないので(笑、文庫でこちらを。ガリレオとはだいぶ印象が違う作風ですが、それぞれの事件にちゃんと東野圭吾らしいトリックも仕込まれています。

予備知識全くなし(以前に山田孝之主演でテレビドラマ化されたことだけは知っていた)で読んだんですが、この物語すごいですね・・・。壮絶で救いようのない話を壮大なスケールで描いていますが、途中で嫌になることなく最後まで一気に読んでしまいました。
約 20 年前に発生したひとつの殺人事件、その被害者の息子と容疑者の娘。その後約 20 年にわたり、二人の周囲で巻き起こるいくつもの不可解な事件。接点がないように見えながら、どこかで奇妙な交わりをもつ二人の人生・・・。ガリレオシリーズではそれぞれの事件に明確な解が用意されていましたが、この作品では全てが推理や状況証拠にすぎず、真実は最後まで謎のまま。主人公であるはずの二人の主観では一切描かれず、すべて彼らに関わる誰かの視点で語られるという手法が、その印象を強烈に残しています。
結局二人の目的は何だったのか?それすらも分からない結末ではありますが、それもすべて読者の想像に任されています。深読みすればするだけ読める、実に深いミステリー。ちょっと軽い気持ちで読み始めた作品でしたが、良い意味で裏切られました。

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2008/11/15 (Sat.)

容疑者 X の献身

東野 圭吾 / 容疑者 X の献身

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探偵ガリレオ』『予知夢』ときて、一気に読んでしまったガリレオシリーズの三作目。短編が基本だと思っていたこのシリーズで、初の長編になっています。一作目を読んだときに、

個人的にはもっと犯人との駆け引きや、犯人側の心理も描いたような作風のほうが好きなのですが、

と書きましたが、いきなりその想いが叶ってしまいました^^;
それまでの短編からするとかなり長い作品ですが、湯川の親友であり最大のライバルでもある数学者が犯人、という、ガリレオシリーズらしいといえばらしいストーリー。ガリレオが主人公でありながら、常に犯人や草薙刑事の目線で物語が描かれるというこのシリーズの作り方のせいか、むしろこの作品の主人公は犯人である石神の方ではないかと感じたほど、犯人側をしっかり描写しているのが、私好み。

絶対こういう作品は冒頭に最大の伏線が張られているのだろう、と先読みしながら読んでいったんですが、えーそういうオチなの!というすさまじいトリックにしてやられました。最後まで読まないとそのトリックが解けないようになっているというのは推理小説としてはちょっと反則っぽいけど、目から鱗。で、トリックが明らかになったら唐突に物語も終わる、というあっさり感も、却って読後の余韻を煽っています。

まちがいなくここまで三作のベストはこれ。続編としてはつい最近新刊が二冊出たばかりらしいですが、文庫になるまで待つか否か、迷うところ・・・。

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2008/11/09 (Sun.)

予知夢

探偵ガリレオ』から、続けて一気に読んじゃいました。

東野 圭吾 / 予知夢

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福井晴敏も好きなんですが、大作が多いので読むのにそれなりに体力が要るのと、独特の歴史観・戦争観を受け止めなくてはならないので、ちょっと構えてしまうんですね。それに対してこのガリレオシリーズは、頭は使うけどどんどん読み進めていけるので、けっこう気に入りました。
前作に比べると、扱う内容が「難事件」から「オカルト事件」に寄ってきていて、より『トリック』然としてきた(初出はガリレオシリーズのほうが先ですが)ような気がします。いや、個人的にはどっちも好きなんですが。

非科学的と思われる事件を科学的もしくは論理的な推理によって解決する、がこのシリーズの醍醐味だと思いますが、最後のエピソード「予知る(しる)」の結びでは必ずしもそうではない(事件の解決そのものには論理的な説明がつけられているが、予知能力の実在を想起させるような)神秘的な表現がされていたり、こういうのもけっこう好み。

東野圭吾の作品、気に入ったので、あといくつか読んでみたいと思います。

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2008/11/08 (Sat.)

探偵ガリレオ

流行りだからってわけじゃないですが、富士に行くときに道中の暇つぶしに何となく買った小説。結局行きも帰りも待ち時間ゼロだったので、読む機会がなかったんですが、最近の通勤で読破しました。

東野 圭吾 / 探偵ガリレオ

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推理小説=長編という先入観があったので、読んでみて短編だったのにはちょっと驚きました。でも、それが却ってとっつきやすく、かつ簡潔な内容や文体にも似合っていると思います。テレビドラマのほうは、1 回だけ(しかも途中まで)しか見ておらず、『トリック』的な謎解きと『古畑任三郎』的な変キャラ主人公の話かと高を括っていたら、原作に良い意味で裏切られましたね。

東野圭吾は理系の技術者出身らしく無駄な表現のない(というか私は理系出身なのに文章が無駄に長すぎだ)あっさりとした文体で、物語もさほど抑揚なく淡々と進むし、犯人や犯行の描写も客観的であっさりしているので、小説としてはあまりドラマチックではない(そのわりに、犯行現場やタネ明かしの映像的表現は秀逸)ですが、この淡々とした描き方によって、逆に人はこんなに単純なことで人を殺せてしまう、という生々しさが浮き彫りになっている気がします。
個人的にはもっと犯人との駆け引きや、犯人側の心理も描いたような作風のほうが好きなのですが、でも、それは科学的なトリックを主役に据えたこの作品には相応しくないのかもしれません。

巻末の解説によると、ガリレオのモデルは佐野史郎だとか(!)。ドラマの福山雅治とは全然イメージが違いますが・・・。

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2008/11/01 (Sat.)

私塾のすすめ

齋藤 孝、梅田 望夫 / 私塾のすすめ ──ここから創造が生まれる

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最近よく読んでいる梅田望夫氏の著作、4 冊目。ここらで一段落かな。今回は齋藤孝氏との対談ですが、基本的に論旨は今までの 3 冊と大きくは変わりません。それに加えて教育論、リーダー論、みたいなものが付加された内容になっています。

何かを勉強しようと思うときに、その領域の本を全部入手して、あっちに行ったりこっちに行ったりしながら自分のスタイルで勉強したいと思うタイプの人は、ウェブの世界を、たいへんな能力の増幅器だと認識していると思います。

私はどちらかといえば、紙媒体を与えられると最後まで精読しようとしてしまうタイプなのですが、Web だと逆だったりします。Wikipedia なんかが良い例ですが、途中で他に知るべき情報があったり、興味を惹かれる話があったりすると、果てしなく寄り道して寄り道したほうを突き詰めてしまうタイプかもしれません。
そういう意味では、Web は人の学びのスタイルをも変える可能性を持ったツールだと言えますね。

インターネットがわれわれの能力の増幅器であるということですよね。蒸気機関や自動車が人間の筋肉の能力を増強したように、ネットが脳とか人間関係を増幅する。距離と時間と無限性の概念をゆるがしているわけです。リアルの限定されたコミュニティだけにとらわれず、未知との遭遇のありようががらりと変わってくると、いろいろな可能性が出てきます。

もはや言うまでもない話かもいれませんが、こういう話には深く共感します。インターネット上の誰かの知識や考えが、自分の知や学びの加速器になるという話。場合によっては、知識だけではなく精神的な救いにもなってくれたりする。まあ、必ずしもバーチャルでの出会いだけで全てが完結するわけではなく、リアルのやりとりとの補完によって成り立つものも多いですが。でも、それを体験したことのない人にはなかなか理解されない話であるのも事実だったり。

「ここにチャンスがあるんだし、一生懸命努力すれば・・・」と言ったときに、「そんなこと俺にはできないよ」「興味ないよ」という人のところまで下りていって、「さあやろうよ」とまで自分にはできないなと感じました。ウェブに取り組む態度でも、受動的にユーチューブをただボーっと見ているだけの人ではなく、じゃあブログを書いてやってみようという人、好きなことに能動的に取り組んでなにかをやっていこう、という人たち。そういう人たちなら、学校の勉強ができるできないにかかわらず、つきあっていけると思いました。

これは近年の私がかなり悩んでいることの一つ。最近は「そういうものだ」と少し諦めもつきましたが、興味のない他人を引っ張り上げることがいかに難しいか・・・そうしないと自分(たち)の目標が達成できない、となると特に。
こういう話は Web という大海を自分なりに流浪れて、自らと志向性を同じくする誰かと出会った人ならではの物言いだと思うので、そうでない人にとって見方によってはその気がない人は切り捨ててもやむなし、という話に聞こえてしまいそうですが、そこは志向性の違いなので自分の価値観を誰かに強制するのもどうかと思うし。だからこそ、そこで共感して一緒に何かを目指そうという人に出会えたときに、強い力になる実感を得られるものだとも思うので、最近はどちらかというと無理して手近な誰かに過剰な期待をかけるより「共感してもらえる仲間を見つける」ことのほうが重要なのだろうな、と考えるようにしています(もちろん、近くにいる人に同じ志向性を持ってもらえるよう、ある程度の種まきまでは自分がやる前提で)。

だから僕は、大組織にせよ、組織以外での仕事にせよ、自分とぴったりあったことでない限り、絶対に競争力が出ない時代になってきていると思います。朝起きてすぐに、自分を取り巻く仕事のコミュニティと何かやりとりすることを面白いと思える人でなければ、生き残れない。これが幸せな仕事人生になるのか、不幸なのかは一概に言えないのだけれど、いま、過渡状態で起きていることというのは、そういうことだと思う。自分の志向性とぴったりあったことをやっている人は、自然にすごい長時間仕事をするものだから、会社でもコミュニティでも重宝されるというか、「いい仕事しているな」ということになる。
僕が「好きなことを貫く」ということを、最近、確信犯的に言っている理由というのは、「好きなことを貫くと幸せになれる」というような牧歌的な話じゃなくて、そういう競争環境のなかで、自分の志向性というものに意識的にならないと、サバイバルできないのではないかという危機感があって、それを伝えたいと思うからです。

このあたりにも深く共感。近年の高度に複雑化した世の中では、様々なことが単純な数字やデータだけでは読み取れなくなってきており、同時にその仕事に対してどれだけ気持ちが込められているか、を世の中が敏感に感じ取るようになってきているのではないかと感じています。そういう世の中で、いかに知識や技術だけを身につけようと、「想い」を持たなければ人も企業も生き残れない時代になっているのだと思っています。
そうはいっても会社/社会はそういう人たちだけで回っているわけではない、というのも真理なのですが、自分の理想と現実に折り合いをつけるだけではダメで、少しでも現実を自分の理想に近づけようと足掻く、時にはポジションを変える諦めの悪さを、少なくとも持っていなくてはならないのでしょうね。それでも、転職する前の私であったら、そんなことを言われたら「そう言われても・・・」と言っていたか、「そうか、じゃあそういうことなら」となっていたか、判らないわけですが。

まとめとして、従来読んだ 3 冊と基本的な内容は変わっていないので特に新しく得るものはありませんでしたが(『フューチャリスト宣言』と同様に、人と違う生き方をしてきて成功した人同士の対談なので、志向性の異なる人が読んだらむしろネガティブな感想を抱くかもしれません)、今までと同じく自分が今やっていることについて自信を深めさせてくれる書物でした。対談ものはそろそろお腹いっぱいですが(脱線気味に展開する話も多いので・・・)、梅田氏の書き下ろしが発売されたらまた読んでみたいと思います。ってしばらく本出さないんでしたっけ・・・。

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2008/10/06 (Mon.)

ランチェスター戦略「一点突破」の法則

福永 雅文 / ランチェスター戦略「一点突破」の法則

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こないだ読んだ『「弱者逆転」の法則』の続編。「弱者逆転」のためのカギとなる「一点突破」の必勝法を伝授する・・・という内容を期待して読んでみたら、基本的な論旨は前著と大差なく、一部事例を最近のものに差し替えたアップデート版的な内容になっていました。
大筋は前著と同じなので、個人的にはちょっと期待外れ。事例としても「後付けで何とでも言えるよねー」と前から思っていたので、そういう意味でも目からウロコ的な発見は特にありませんでした。最初に手に取る一冊としてなら良いと思いますが、続編・掘り下げ編的な内容を期待すると、裏切られるかもしれません。

ただ、このくだりには少し勇気づけられましたね。

さらにもうひとつ、究極の差別化の方法を伝授しましょう。それは理念です。私は理念こそが究極の差別化方法、すなわち最強の武器であると主張しています。
理念とは企業経営の原点であり根幹です。何のために事業をなし自社は存在するのか、社会に対しての存在意義を表明するものです。顧客に対しても存在価値を伝え、愛され尊敬され信頼される企業になる。社員に対しても心の拠り所となり自信と誇りを与え使命感をもって働く"錦の御旗"になる。経営者にとっては創業の原点。(中略)
このように重要な理念はライバルに対しても最強の競争力となり、真似のされない本質的な差別化戦略となるのです。
多くの企業では、どうしても「儲かるかどうか」という観点ばかりでビジネス戦略が語られがちだと思いますが、企業価値とか企業としての存在意義みたいなもの(広報アピール的なものではなく、もっと根源的欲求みたいなもの)がもっとフォーカスされても良いと思うんですよ。少なくとも私はそういうことを求めて転職したつもりでいるので、カイシャでは実際には歯がゆい思いをすることも少なくない。なので、そういう考えを持って良いんだ、それこそが真実には差異化ための武器になるんだ、と言ってもらえたことで、ちょっと勇気がもらえた気がしました。

とりあえずもうちょっとそれを信じてやってみることとします。でも、まだまだいろいろ勉強しないとなあ。ただ、最近は自分の弱点を補うようなスキルを身につけていこうとしていますが、ランチェスター的に考えるとむしろ強みを伸ばす方向に舵を取り直したほうが良いのか、悩みどころだったりします(笑。

投稿者 B : 22:15 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2008/09/05 (Fri.)

ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則

しばらく Web 関連の書籍が続いてたんですが、今度は思いっきり現実路線のお勉強。

福永 雅文 / ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則

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大学時代はずっとエンジニアになるつもりだったので(いや、実際に一度なったわけだけど)、一般教養系のマクロ経済学とか輸送問題みたいな科目は軽くスルーしてたんですが、最近になってそういう文系スキルの必要性を痛感(ノ∀`)。マジメに勉強しておけばよかったー。
# まあ、経済学に限らず、大学時代の私は学校の勉強そっちのけで PC・ネット系と音楽の独学ばかりしてましたが・・・。

ということで、今年はそっち系のスキルも身につけないと、と思って雑誌や本を読んだり、Web で勉強したり、研修を受けたりしてます。このランチェスター本はこないだ読んだ『改訂 シンプルマーケティング』と『孫子の兵法』に続いて、読んでおくべきと思って手に取った書物。

シェアの考え方は『シンプルマーケティング』でも基礎的な部分を説明されていますが、これはそのあたりを掘り下げつつ、戦略的な「戦い方」についてより実戦的にまとめた本です。基本的には戦争の戦い方を理論化した法則を経済に応用したものなので、『孫子の兵法』と考え方が似ている部分も多いですが、やはりそれだけ普遍的な法則だということなのでしょう。

ランチェスター戦略自体はもう経営戦略のバイブルみたいなものなので、経営企画やマーケティングに関わる人ならば基礎くらいは知っているべき話だと思いますが、それにしても世の中「強者の戦略」と「弱者の戦略」のどちらを取るべきなのか見誤っている失敗事例がいかに多いことか。特に、2 位以下であるにも関わらずフルラインアップを揃えて戦線を全面展開する企業は枚挙に暇がありません。戦略の王道を知らない企業ばかりではないはずなのに、こういうことが起きてしまうのは、いかに理論を学んでいても、実はそれ以上にそれを応用すべき「局面の認識」が重要だからだろうな、と思います。
実際に、この本を読んでアタマで分かったつもりになっていても、果たして自社が置かれているのはどんな局面なのか?冷静に分析しようとすると、これが実は難しい。マクロ的に見れば確率戦の戦略に出るべきように見えても、ミクロ的には競合他社が絶対的な市場を作っており、むしろ弱者の戦略で武器効率を高める方向に行くべきに見えたり。

本書の中でも過去の成功事例(実際の企業の事例と、戦国大名の戦いにおける事例)が数多く挙げられていますが、やや後付け感があるかなと。特に戦国時代の話については、無理矢理っぽいものも見受けられます。まあ、「過去の成功者も改めて見てみると、こういう合理的な法則を体で解っていた」という話だとは思いますが。
ということで、この本を一冊読んでみて、むしろランチェスター戦略の応用の仕方であったり、逆を行った失敗例なんかを学んでみたくなりました。世の中往々にして成功事例よりも失敗例からのほうが学ぶべきことが多いものですし、どのようなシチュエーションで状況を見誤るのか?など、現状分析と把握、そして打つべき手の選択こそ重要かなと思うので、そういうケーススタディをしてみたいです。まあ、そのへんはむしろ実際に経験していくべきことなのかもしれないですが、かといって現代の企業でそうそう失敗が許されるようなこともないし。

ううむ、この分野は今まで手を出していなかったけれど、もう少し本気で勉強してみる必要があるかなあ・・・。

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2008/08/29 (Fri.)

「みんなの知識」をビジネスにする

珍しくタイトル買いしてしまった書物。

兼元 謙任・佐々木 俊尚 / 「みんなの知識」をビジネスにする

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「みんなの知識をビジネスにする」というと、「他人のナレッジを利用して一儲けする」という意味合いに聞こえがちですが、たぶんそういうことじゃなくて、Web 上に構成される「群衆の叡智」をもっと誰でも手軽に利用(受け取り側だけでなく、発信するという意味でも)できるような仕組みを提供して、運営側はその対価を何らかの形(広告モデル含む)で得ることによって生活の糧とする、くらいのニュアンスでしょう。嫌儲という言葉があるから、というわけではないですが、お金儲けよりもまずはみんなに便利なモノ・コトを提供して、でも完全なボランティアじゃ成り立たないから、ちゃんと回るように仕組み化する、くらいのニュアンスかなと。

さすがにこういう考えかたになってくると、なかなか仕事と絡ませることが難しいので個人的な妄想や夢みたいな話になってきますが、かつて個人の Web サイトをビジネスに昇華させたい、「Web の力を使って新しい『ものづくり』の形を作りたい」「企業とユーザーの関係を変えたい」と考えていた私には、けっこう響くものがある本でした。当時私が運営していたサイトはユーザー間の情報交換が中心だったので、もしかしたら OKWave の兼元氏とは目指していたところが近かったのかもしれません。
結局、(Web 系のサービスプロバイダーや ISP みたいな、コンシューマー向けサービスもやっている IT・ネット系企業でもない限り)大企業ベースではなかなかこういうことを本格的にやりたくても、実現が難しいのが事実。OKWave なんかは企業のカスタマーサポートの受け皿になりつつうまくやっているようですが、そういう感じでネットベンチャーや中小のサービスプロバイダーが大企業の Web コミュニケーションをアウトソースする、みたいなスタンスが現在は主流なんですかね。
私が転職に絡んでそういうこと(個人サイトのビジネス化)を考えていた 3~4 年前には「大きなうねり」と言えるほどのものはなかったんですが、今ならアジャイルメディアさんあたりがやりたいことに近いのかな。もう少し、タイミングが違っていれば・・・と最近ときどき思わなくはないです。

本書の内容的には、兼元・佐々木両氏がいくつかの「集合知」をビジネスにできている企業の代表や担当者にインタビューし、対談形式でまとめたものになっています。登場人物によって「集合知」やそのビジネス化のしかたに対する捉えかたが異なるので、やや内容が散漫になっている印象は拭えない(モデレーターの両氏がむしろ発散方向に話を振っている印象もなくはない)ですね。読む前はもっと明確な方法論が定義されているのかと期待していたのですが、少し肩透かしを食ったかも。
とはいえ、こういうビジネスの現状や将来像みたいなものが、おぼろげではあるけど感じられたのは確かです。業界や職種によって読みかたも変わってくると思いますが、私がいる業界で参考にできそうなこともいくつかありました。ただ、それを自分の仕事に取りこんでいこうとか、将来の事業化を視野に入れて個人ベースで活動するとなると、かなり大変そう・・・。とりあえず、淡い希望だけを抱きつつ、本書の内容は心の片隅に置いておくことにします。

投稿者 B : 00:33 | Book | Business | コメント (1) | トラックバック

2008/07/29 (Tue.)

ウェブを変える 10 の破壊的トレンド

最近 Web 本に偏ってますが、これはタイトル買いした本。

渡辺 弘美 / ウェブを変える 10 の破壊的トレンド

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ウェブ進化論』からさらに直近のトレンドを掘り下げる本としては、比較的よくまとまっているのではないかと。
Web 上で広がるトレンドを「ダイレクト」「フリー」「クラウドソーシング」「プレゼンス」「ウェブオリエンテッド」「メタヴァース」「ビデオ」「インターフェース」「サーチ」「セマンティックテクノロジー」の 10 のカテゴリに分類し、それぞれに代表的な Web サービスやテクノロジーを紹介しています。『ウェブ進化論』と重複する内容もありますが、多くは補完的に各カテゴリを掘り下げるような内容になっています。
「破壊的トレンド」というとてもセンセーショナルなタイトルがついていますが、確かに従来も産業構造を変えるような破壊的革命は数多くあったものの、Web の時代になって源流が起きてから既存ビジネスを破壊する閾値を越えるまでの動きは確かにダイナミックになっているので、「破壊的トレンド」という表現は的を射ていると思います。

現在の Web に発生しつつある新しい萌芽をざっと一覧するにはとても良いテキストだと思いますが、個人的に残念なのはこれがアメリカ発のものがほとんどであること(Web の先端はアメリカにあるのはもちろんだけど、アメリカが全てじゃないよね?という)、サービスの紹介に終始して本質を突くような分析があまり見られないこと(まあ、意図的にそういうまとめ方にしたんでしょうが)、根本的にこれが紙媒体のテキストであるということ。常に動いている Web のトレンドの、ある一時点をキャプチャした情報でしかないので、出版されると同時に陳腐化が始まる紙媒体とはもともと相性が良い題材ではないのです。まあ、誰もが海外の Web サービスにまで常にアンテナを張っておけるわけではないので、一時点での情報であっても、こういう一覧性の良い紙媒体にまとまっている意味はあるのかもしれませんが。でも、こういうテキストこそ、梅田望夫氏の Web ブックのような編集手法が適しているのではないかなと思います。

個人的に、あまり新しい発見があったというわけではないですが、アタマの整理には良かったのではないかと。どちらかというと、これをふまえてこの先来るであろう流れを予見させてくれる(あるいはそのヒントをくれる)ところまで突っ込んでほしかった気がします。
うーん、最近読んでいる紙媒体は総じて、新しい知識の吸収よりも結果的に考えの整理になるものばかりで、ちょっと残念。でも、今はやっぱり新しい知識を得るのは Web のほうが適しているんでしょうねー。

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2008/07/19 (Sat.)

フューチャリスト宣言

梅田 望夫・茂木 健一郎 / フューチャリスト宣言

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ウェブ進化論』『ウェブ時代をゆく』に続いて。

梅田望夫氏と脳科学者・茂木健一郎氏の対談を書籍にまとめたものですが、これがなかなか Web の未来の正鵠を射ている。茂木氏のクオリア本は以前読んだことがあって、アハ体験以前から「感情の成り立ちを研究する脳科学の第一人者」というイメージはあったんですが、こんなに Web に入れ込んでいる人だとは知りませんでした。
この本には梅田氏の先の二冊以上に、私に気づきというか「自分がこうしたいと思っていたこと」を改めて自覚させてくれるポイントが多く記されていると思います。

以下、いくつか引用。

インターネット、それからリナックスのような「オープンソース」に若いときに触れた人は、その影響を強く受けます。インターネットの成り立ちのところに、利他性というかボランティア精神的なものがかかわっている。インターネットという素晴らしいものが毎日動いている裏には、いろんな人のただ働きがある、無償の奉仕をしている人がいる。

そう、こういう感覚は実際にネットの中に生きて、ネットの「善の側面」を体感してきた人じゃないとなかなか理解されないものです。
でも、こういう奉仕の精神ってリアル世界にも本当はたくさん転がっているものだと思うんですが。それが、一般的には「ネット=悪」みたいな縮図で表現されてしまうのは、ネットの反対側にいる表現者たち(もう少しネガティブな表現をすると、旧来の情報流通の利権を握った人たち)がネットに対する危機感を抱いているからに他ならないからじゃないでしょうか。

情報というのはもともと自らが流通したがるもの。(中略)一方、もちろんインフォメーションにはパワーがあるわけで、自分だけがあるインフォメーションを持っていることは自らの権威につながる。日本の学者はそれによって生きてきたわけです。

2001 年頃に「情報は情報のあるところに集まりたがる習性をもっている=『情報の万有引力』」に気づき、国内で情報の最も集まる東京に戻ってきた私には、ものすごく実感のある言葉です。ただ、情報というものには金銭と同じような価値・経済への影響力があるため、それを独占して利権につなげようという考えが生まれがちなことも事実。それをある程度自由流通させて、向上心のある人々で世界をより良くしていこう、というのが、「インターネットの意志」みたいなものなんじゃないかと思っています。

インターネットに個がぶら下がっているときの「ぶらさがり方のかたち」を考えたときに、僕のイメージは、日本はぶどうでアメリカはリンゴだというものなんです。(中略)組織の構造で言っても、日本はぶどうの房。アメリカはリンゴの木という組織に、個人が一個一個のリンゴ。そういう感じを受けますね。

そうか、私はリンゴになりたかったんだ。日本企業(前職は外資系でしたが、資本が海外というだけで組織構造はかなり日本的だった)の中での立ち振る舞いに妙な違和感を持ち続けている根本には、こういう思いがあったからだと気づかされました。ネット上で固有名詞(本名じゃないけど)をもって活動してきた結果、組織よりも個人志向が強くなってきたと言えばいいのか。
日本の社会も、もっと「組織の中の個人の生き方、考え方」にフォーカスを当てても良いような気がするんですが。でも、それは「個人が責任を取る」ことに直結するので、(悪い意味で)伝統的な日本社会には馴染まないんだろうとも思います。

ところが今は URL、ブログがあればいい。ネット上のプレゼンスがその個人を支えるインフラ。それを見てもらえばどういう人かわかるから。(中略)つまり、ある組織に所属するということで完結している人は、これからは輝かない。

上記のようなことを、簡潔にまとめてくれたのがこの文章。
リアル社会をそう簡単に変えることはできないから、当面できることと言えば blog などで個人(リアル社会での立場を明かすかどうかに関係なく)の考え方を発信して、自分の立ち位置をハッキリさせていくこと。それでも私はネット上での情報発信を比較的リアル社会への足がかりにできたほうだとは思いますが、こういうことってもっと当たり前になっても良いはずです。極論すれば、名刺代わりに blog の URL を交換するみたいなことが。

インターネットの一二年の歴史の中で、悪ってあちこちにありますが、それはこそこそやるもので、悪が連鎖して膨れ上がっていく感じがあまり無い。(中略)「知の喜び」「学習の喜び」のほうが奥が深く、普遍性があるから、トータルでインターネットのインパクトを考えたときに、善性が自己増殖してくるほうが表にでてくる。そういう仮説を僕はもっています。

あ、これ私も全く同じ立場。

ネットが人間の脳に対して、なんでそんなに相転移的に働くのか、ということについて考えていくと、一つのビジョンが見えてくる。それは、われわれの脳自体が、まさにウィズダム・オブ・クラウズだということです。というのは、脳の神経細胞は、一つひとつが、それぞれ一万くらいのシナプス結合を結んでいて、情報を自由にやりとりしているんですが、神経細胞一個一個のレベルは、たいした知恵はない。人間の脳って、これまでのフィジカルなコンテンツのなかでは、それほどの情報交換をしていないんですよ。(中略)ただ、ブログやメーリングリストやスカイプなんかを使いまくると、(中略)脳同士のインタラクションが、いままでとは比べものにならないくらいの複雑なネットワークを織り成すようになるんですね。そこで生まれてくるウィズダムというものが、人類を次のステージに連れて行く。

うわー、『ウェブ進化論』を読んで私が感じたことがそのまま活字になってる(笑。やっぱり進化の行く先は、全体が一つの「個」になるような繋がりが生まれることだと思うんですよ。人類全体にとっての神みたいなものがいるとすれば、きっとそれは人類の総体のことを指すんだと思うんです。近年の SF 作品で数多くこういったメタファーが用いられるのは、むしろ人間が潜在的にもっているそういう意識がもたらした預言と言ってもいい。

他にもいくつか気づきとなるフレーズはありましたが、ざっとこんなところ。別に私のために書かれた本ではありませんが、まさに「私のココロがわかるなんて」と言いたくなりました。

投稿者 B : 23:59 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2008/07/10 (Thu.)

ウェブ進化論/ウェブ時代をゆく

ワーたんが繰り返し勧めるので、読んでみました。

梅田 望夫 / ウェブ進化論 ――本当の大変化はこれから始まる

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梅田 望夫 / ウェブ時代をゆく ――いかに働き、いかに学ぶか

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正直言って、この本(『ウェブ進化論』のほう)は、当時流行っていた「Web 2.0 本」の類だろうと思って食わず嫌いしてました。どうせ Google とか Ajax とかの事例を並べて持ち上げた本だろうと。でも、実際は書き手なりの真摯な想いの込められた良書だと想います。

連作っぽくなっていますが、『ウェブ進化論』は 2006 年当時の Web の世界の状況を、単なるテクノロジーとかビジネスチャンス切り口ではなく、その先端を生きる人の観点でまとめた技術・企業論。『ウェブ時代をゆく』は、前作を受けてそんな時代を「個性」として生きる生き方を説いた職業・人生論。ベースは共通ながら、論調は大きく違います。

内容としては Google のビジネスモデルやインターネット的な企業姿勢を大きくフィーチャーしていますが、読み方によっては最近流行りの「Google 礼賛」と取れなくもないのがちょっと残念なところ。まあ、信じるネットの未来を「インターネット神」という絶対的なものとして捉えるか、インターネット自体を「そこに繋がる人々の思惟の集合体」と捉えて「インターネットの意志=人類の総体的/潜在的な意志」として考えるか、という立場の違いだけという気もしますが。Google も企業である以上、そして巨大な組織になってしまった以上、少なくとも創業者が去った後の企業姿勢は保証されていないはずです。
まあ、Google の未来はさておき、私もインターネットとの出会いによって人生を大きく変えられたクチなので、そのインターネット(特に Web 2.0 以後の)が掲げる「オープン化」と「マス・コラボレーション」の波はきっと今以上に大きなうねりとなってリアルの世界をも巻き込み、その先にある「集合知」が全ての人々にとっての福音になる、と信じています。そういう意味では、根本的な部分でおそらく私は梅田望夫氏に近い価値観を持っているのだと思います。私自身、大学生から社会人になるまでの時間をインターネットの成長と共にしてきたので、『ウェブ進化論』の内容はあらかじめ知っていたことのほうが多かったですが、『ウェブ時代をゆく』の考え方には共感するところが多くありました。

この 2 冊の書物で書かれている「Web の進化」というのは、究極の形を考えるとそれはある種「人類の種としての進化」を意味するのではないかと思います。こういうことを言うと何だか宗教じみてますが、個々の人間の知がそれぞれ一つのシナプスとなって互いに結合し、全体として大きな「知性」というべき集合知を形成する、というのが、「Web の進化」の究極の到達点なのではないかと。
私もネットに繋がったこの十数年の間に、こうやって何人もの人と知を共有するだけでなく、心を通わせられたと感じることが何度もありました。それはまるで脳味噌にケーブルを挿して直接ネットに接続する感覚、あるいは精神が肉体を離れてネットの海の中を泳ぎ回る感覚に近い。極論すると、「Web の進化」とはヒトの革新にも繋がっていく話ではないかと考えています。

ちょっと話が大きく飛躍したので、元に戻します。

でも、こういう想像が生まれ、『ウェブ進化論』がもてはやされた理由は、インターネットの魅力に取り憑かれた人々が、オプティミスティックにその可能性を信じ、そのような未来が訪れる「願望」を抱いたからだろうと思います。生まれつきの境遇など何も関係なく平等なスタートラインに立ち、その気さえあれば自分で自分をどんどん高めていくことができる。先入観や政治的なしがらみを離れて対等なコミュニケーションができる。
現実の社会に当てはめてみると、そういう願望は資本主義経済の原理や企業の体面や「モラル」といったある種脊髄反射的な防衛本能によって却下、もしくは否定されるのが現代の(少なくとも日本的社会の)壁ではありますが、インターネットの可能性はそれすら超えられるんじゃないかというオプティミズムを、それを信じる者に与えてくれる気がします。

転職して今の仕事に就くことを決めたときから、この仕事には(正直、やり甲斐を感じてはいるものの)おそらく骨を埋めることはないんだろうな、自分の区切りがつくところまでやったらネット上の「形のないもの」をつくる仕事、もしくは社内にそういう役割があればそこに移るんじゃないかな、ということを頭の片隅で考え続けています。でも、だからこそ、ネットの「あちら側」(この blog で表現する上では「こちら側」なのだろうけど、『ウェブ進化論』と表現を合わせてあえて「あちら側」)と「こちら側」(同じく、ここから見れば「あちら側」)の距離を縮めることが、今の仕事における自分のミッションだと思っています。そうしなければ、旧世代の企業はおそらく、Web 2.0 の先に来るべき時代を受け止めることができないだろうから。
ただ、それはものすごく骨の折れる作業で、自分の気持ちさえあればどんどん独りで先に進んでいくことができる「あちら側」に、ともすると逃げ込みたくなります。でも、仕事を離れてでも私に共感し、力を合わせようとしてくれる人が近くに一人でもいる限り、諦めずにやってやろう、と思えるのも、その同志がおそらくネットの可能性をオプティミスティックに信じているからなんじゃないかと思います。

組織だって人が作るもの。あまりそれに縛られずに、自分が正しいと信じることをやっていけば、(管理職の見る目が間違っていなければ)組織は後からついてくる。私も諦めずにやってみようと思います。

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2008/07/04 (Fri.)

終戦のローレライ

4 月に読み始めたこの小説、ようやく読破しました。

福井 晴敏 / 終戦のローレライ (1)
福井 晴敏 / 終戦のローレライ (2)
福井 晴敏 / 終戦のローレライ (3)
福井 晴敏 / 終戦のローレライ (4)

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今まで読んだ福井作品の中でも最も長い作品です。でも、その分読み応えはありました。自分自身がどうしても文章を子細かつ冗長に書いてしまうタチなので、こういう作風には理解があるというか(笑。

映画の予告であらすじというか大まかな設定は知っていたので、「ローレライ・システム」というある種トンデモな設定ってどうなの、とちょっと不安ではありましたが、実際に読んでみたらとんでもない、面白いじゃないですか。前半はあまりストーリーの進展がないのですすみも遅かったですが、後半は一気に読んでしまいました。

太平洋戦争終結の間際、超能力を身につけた少女とドイツから持ち込まれたローレライ・システム、潜水艦《伊 507》が「第三の原子爆弾」を止めるために戦う、というストーリーだけ見ると明らかに B 級ですが、物語にリアリティを持たせる精緻な描写(まあ、ローレライ・システムだけはどんなに設定をつけても無理がある話ではありますが)と人間の描き方でここまで壮大な物語に作り上げてしまうか、と驚嘆させられる小説でした。背信や艦の乗っ取り、残酷とも言える極限状態や死の描写、主人公と対役以外はほぼ全員が死んでしまうクライマックスなど、福井作品らしい展開が満載で、この作品を読んだら『亡国のイージス』も『月に繭 地には果実』も読まなくても良いかも(笑。

太平洋戦争が舞台なだけあって、物語の中から現代の日本を透視させるような書き方になっているせいか、もしかしたら終章は蛇足だったのではないかと思います。彼らのその後は、読者の想像の中で決着させておいても良かったような(まあ、登場人物に何かしらの「救い」を与えてあげるのが福井晴敏の優しさだと思うので、これはこれで良いんですが)。
誰も責任を取ることをしようとしない、日本という国の社会・組織論とか、やはり日本的な組織のあり方では、「カイゼン」はできても無から有を生み出すような真似はできないんだろうとか、でもそれも旧来のムラ社会に明治維新以降のシステムだけの資本主義と民主主義、押しつけられた非戦が混ざり合って培われてしまった精神性なのだろうとか、最近自分が日々痛感させられている日本社会の負の側面が嫌でものしかかってくるような気がしました。
でも、この作品を通じて、良くも悪くも私の中の戦争観がちょっとだけ変わったような気がします。あと、何かに命を懸けることの意味とか。読むのにけっこう体力が要る作品でしたが、読んで良かったかな。

ただ、日本で映画化されたこれの DVD を観るのは、ちょっと怖いですね(;´Д`)ヾ。

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2008/06/27 (Fri.)

しおんの王

安藤 慈朗 / しおんの王 (8)

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去年の秋~今年の春にかけてフジテレビの深夜枠で放送されていたのを、EPG で見つけてふと観てしまったアニメの原作(笑。全 8 巻完結ということで、一気に読んでしまいました。

最初は『ヒカルの碁』の女の子・将棋版かなあと軽い気持ちで見始めて、ある意味当たっていたものの、別に平安時代の棋士の幽霊は出てこないし、将棋漫画というよりは半分サスペンス漫画で、タイトルだけに惹かれて中身にあまり期待していなかった分(ぉ)意外と面白かったです。クライマックスで明らかになる真犯人の動機については、ちょっと理解不能な部分があるけど・・・。原作のかとりまさるって誰かと思ったら、元女流棋士の林葉直子なんですね。

アニメの方は作画にバラツキがあってちょっとしんどい回もありましたが、声優陣が川澄綾子(『のだめカンタービレ』の野田恵)、朴ろ《王路》美(『∀ガンダム』のロラン・セアック/『鋼の錬金術師』のエドワード・エルリック)、中尾隆聖(『ドラゴンボールZ』のフリーザ/『にこにこぷん』のぽろり/『それいけ!アンパンマン』のばいきんまん)、とどめに郷田ほづみ(『装甲騎兵ボトムズ』のキリコ)は最重要キャラの役兼音響監督(笑)という豪華キャスト。っていうか声優陣の過去作品を並べるとこのアニメがどんな作品なのかよく分からなくなりますが(ぉ。

どちらかというとマイナーな作品ではありますが、漫画・アニメともにけっこう楽しめました。

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2008/06/06 (Fri.)

Web コミュニティでいちばん大切なこと。

最近どうも、あがいている割に仕事が思ったような方向に進まなくて、悶々としてます。一歩一歩前進している感はあるんですが、もう少しドライブしてほしい。自分なりに何かブレイクスルーしたくて、代償行為じゃないけど本を読み漁ってます。本当はこういうときこそどんどんアウトプットしていった方が良いのかもしれませんが、まずは自分の中にいろんな経験を取りこんでいってレベルアップしたい、と思うのは性格なのでしょうか。そういう意味では、書物というのは他人の経験を手っ取り早く疑似体験して自分のものにできる、良いツールなんだと思います。

古川 健介 ほか / Web コミュニティでいちばん大切なこと。 CGM ビジネス"成功請負人"たちの考え方

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この本もそんな思いで読んでみたものの一つ。最近、Web コミュニティに再び積極的に関わりたい(SNS をやってお金にしたい、というわけじゃなく、そこに集まってくる人の力を前向きな方向で活かしたい)と感じている私にとって、興味を惹くタイトルだったので、手に取ってみました。
Web コミュニティビジネスで成功事例をもつ 8 人の著者が各々のテーマで論旨を展開する本です。ジャンルやステージの異なる 8 人がそれぞれの内容を発表し、全体として一つのテーマをなしているという意味では、本を読むというよりはカンファレンスに参加して有料セミナーを受講してきたような気分になります。「コミュニティ」と一口に言ってもさまざまな形態があるので、私には興味がないカテゴリやそれってどうなの?と思う部分も確かにありましたが、chapter 3 あたりまでは私もかなり共感できる内容でした。
私も Web の世界に足を踏み入れてもう 12 年になりますし、コミュニティ的サイトを運営した経験もあるので、特に新規性のある話はさほど多くありませんでしたが、いくつかの気づきと他人に説明/説得するための材料をもらえた気がします。ビジネス本の受け売りをするつもりはありませんが、ハードルを越えるためのヒントにはなったかな。

ビジネス/ライフワーク/趣味のどれであっても、「Web 上で人が集まって何かする」何らかの仕組みに関わっている人なら一読して損はない書物だと思います。

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2008/05/31 (Sat.)

孫子の兵法 ―ライバルに勝つ知恵と戦略

守屋 洋 / 孫子の兵法 ―ライバルに勝つ知恵と戦略

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「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」などで知られる孫子(孫武)の兵法書、の解説書。二千年以上も前に書かれた兵法ながら、現代にも通じる示唆が多く含まれています。といっても現代の日本ではそうそう戦う機会はないので、主にビジネスの場でということになりますが。
いかに戦いに勝つか(というより「負けないか」)、ということをとにかく冷静に分析して書かれた兵法ですね。また、この兵法から転用されている言葉や故事があまりにも多いため、さらっと読んだだけでは「当たり前のこと」が多くて一般教養の復習としか感じないかもしれませんが、視点を変えて自分の仕事や生き方の書として捉えると、学ぶべきものを確かに多く感じます。この本はそんな『孫子』の原文を紹介し、背景を解説しながら現代にどう活かすか、を説いた本で、原文じゃさすがに読めない『孫子』の考え方を簡単に身につけさせてくれる良書だと思います。ほんの¥500 で買えてしまう文庫なので、興味がある方は是非。

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2008/05/07 (Wed.)

そんなんじゃクチコミしないよ。

ビジネス書というか、ライフワークの参考書というか。

河野 武 / そんなんじゃクチコミしないよ。 ネットだけでブームは作れない!新ネットマーケティング読本

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なんか、いろんな意味で先日読んだ『その 1 人が 30 万人を動かす! 影響力を味方につけるインフルエンサー・マーケティング』とは対極にあるような本ですが、読み込んでみると同じことを正反対のアプローチで書いているだけだというのがよく分かります。要はネットを使ったクチコミって可能性はあるけれど、広報や広告などの認知プロセスと組み合わせた設計がちゃんとなされてなければ意味がなくて、なおかつ当初リーチできるセグメントも限られる(そもそもがイノベーター~インフルエンサーを中心にクチコミを広げていくためのものなんだから、そりゃそうだ)ということ。現実には、クチコミは未だにマス広告に代わる低コストなメディアか、認知アップの魔法かのような誤解がなかなか解けない部分があるのですが、偉い人にはそれがわからんのですよ。実際にアウトライン描いてみたら意外と工数がかかることが分かって尻込みされる、なんてことも少なくないし。でもそれこそ工数かけずにクチコミを起こす魔法なんてないんだから、というのがホンネだったり。

「クチコミ」って言うけど別に新しい分野でも何でもなくて、ツールとしてインターネットが使われるようになっただけで本当はずっと昔からある考え方に過ぎないわけで。こういう本を読めば読むほど「マーケティングのキソ」を改めて教わっているような気がしてなりません。ネットを媒介に One to One を改めて考える、というのはもう 2000 年頃から普通にある概念だし。でも実はそれがなかなか理解されないのは、ちょうど最近この方面がもてはやされているからなんですかね。

個人的には、こっち方面を学び&経験すればするほど CGM や WOM といったメディアをプロモーションツールとしてではなく CR/CS やフィードバックのためのツールとして活用すべきでは、という思いを強くするんですが、これもまた直接売上を伸ばすものではないというのがサラリーマン的にはつらいところ。本書にもありますが、一般的に企業の評価基準が半年~一年単位というのも、時間がかかる「クチコミ」を相手にする上では悩ましいですね。対象とする市場規模や社内コンセンサスの取りやすさ、という意味でもこういう分野はベンチャー企業のほうが手がけやすいんだろうなあ、と思います。

WOM メディアの目指すべきところや「身の丈」を知り、無謀なプランに陥らないようにする、という部分をきちんと押さえつつ、その上でクチコミの可能性を信じる、という意味では、本書は非常に良い文献だと思います。smashmedia の中の人が書いている blog を再編集した書物なので非常に読みやすい(文体や内容という意味だけでなく、blog の該当エントリーを拾って読むよりはるかに整理されているという意味でも)という点も○。たぶんこの分野に(仕事としてでなくても)多少なりとも携わった経験がなければ実感として理解するのは難しいかもしれませんが、この分野を仕事にするなら『その 1 人が 30 万人を~』の次に読んでおくべき良書だと思います。

投稿者 B : 00:15 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2008/05/01 (Thu.)

機動戦士ガンダム UC (4) パラオ攻略戦 特装版

最近ハマッている福井作品の新刊が出たので購入。

福井 晴敏 / 機動戦士ガンダム UC (4) パラオ攻略戦 特装版

私が福井作品にハマるきっかけになった UC の最新巻です。通常版ではなく、オマケプラモつきの「特装版」。
物語は徐々に核心に迫りつつあり、「えーこのキャラってこういう設定だったの-!」的なサプライズもありながら、どんどん読ませる福井節は健在。タイトルからしてそうですが、宇宙世紀の各シリーズとのリンクがちゃんと張り巡らされているので、宇宙世紀ファンにはたまらない内容といえると思います。かつ、他の福井作品を読んでいればニヤリとする設定も多く、そっち方面からのファンでも満足できる内容と言えるでしょう。あと、各キャラのセリフ回しは明らかにトミノ節を意識してますね。

で、これ、物語には確かに面白いんですが、なんか今回からいきなり挿絵が変わってるんですけど(;´Д`)ヾ。知らない間に安彦良和氏が降板していたらしい・・・正直言って安彦キャラをきっかけにこの作品に入った身としては、(小説自体の面白さはともかく)挿絵が違うと魅力半減なんですけど・・・。今後は挿絵は今の人で、安彦氏は表紙だけ担当になるみたいですが、むしろこれなら挿絵なしのほうが良いような。

オマケプラモも組み立ててみました。あくまでオマケはオマケなので、10 分もあれば組めてしまうものでしたが。

MG ユニコーンに装備できるビームガトリングガンのプラモです。今作にゲスト的に登場する武器ですが、重装感が出てかっこいいですね。ビーム兵器でガトリングガンタイプである必要性がイマイチ分からないんですが(ぉ、見た目のゴツさ的にはシールドよりも気に入ったかも。

投稿者 B : 23:54 | Book | GUNPLA | Hobby | Novel | コメント (0) | トラックバック

2008/04/19 (Sat.)

文庫版 ストーンオーシャン

荒木 飛呂彦 / ジョジョの奇妙な冒険(文庫) (40):Part6 「ストーンオーシャン」 (1)

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『倫』(ethics)――(1) 人の示すべき道 (2) なかま

第 6 部の文庫版刊行がスタート。私は高校卒業のタイミングで週刊少年ジャンプを読むのをやめてしまった(大学のときもサークルの部室にあったのをたまに読んでたけど)ので、ジョジョは第 5 部の序盤までしかリアルタイムで読んでません。でも、第 6 部は承太郎の娘が主人公ということで、読んでみたかったシリーズ。

舞台は主人公・空条徐倫が無罪の罪で投獄された刑務所(現時点で私は物語の結末を知らないので、最後までここが舞台となるかは不明)。『ジョジョ』というと第 2 部や第 3 部に代表される冒険とアクションのイメージが強いですが、第 4 部と第 6 部は限られた空間が舞台となっており、広い意味での「密室劇」と言えます。個人的に昔から密室劇が好きなので、この第 6 部の設定も好み。特に刑務所は誰が信頼できるか分からず、脱出も困難という場所なので、緊張感という意味ではこの上ないシチュエーションです。『ジョジョ』は第 5 部以降キャラクターの個性が(それまでのシリーズに比べて)薄くなっている印象がありますが、舞台設定がそれを補完してくれそうな予感。

投稿者 B : 23:34 | Book | Comic | コメント (2) | トラックバック

2008/04/13 (Sun.)

家を買いたくなったら

長谷川 高 / 家を買いたくなったら

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2~3 年後を目標に家(戸建てかマンションかは未定)を買おうかな、とぼんやり考え始めたところで、書店で読みやすそうな本を見つけたので、買ってみました。不動産購入というと大きなお金のやりとりとか、最近だとマンションの構造計算とか、いろいろ面倒そうなことが多くて考えるのを避けてきたんですが、少しずつ勉強しておかないと。
この本は別に条件の良い物件を格安で購入するハウツー本、みたいなキャッチーだけど怪しげな内容というわけではなくて、どうやったら自分の人生にフィットした不動産を納得する形で購入できるか、そのためには何をしたら良いか、ということを教えてくれる本です。平易な言葉で書かれているため、2 時間もあれば読めてしまいますが、納得感は高い。
本格的に購入を考えるにあたってはもう少ししっかりした本を読む必要があるとは思いますが、導入としてはとても良い書だと思います。

投稿者 B : 18:20 | Book | コメント (5) | トラックバック

2008/04/09 (Wed.)

知識デザイン企業

紺野 登 / 知識デザイン企業 ART COMPANY

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昔からモノのデザイン(美装・加飾だけでなく、ユーザビリティとかアフォーダンスとかいった機能に結びつく部分、もっといえばより広いビジネスモデルまで)に興味を持ってきた私としてはちょっと読んでみずにはいられないタイトルの本でした。「iPod の裏はなぜきれいに磨かれているのか」という派手なキャッチコピーがオビに踊っていたのが心配でしたが、本質はもっと深いことを言いたいんだよね?と思い。

冒頭の「日本企業はモノづくりだけに『ひきこもって』いてはいけない」というくだりにものすごく肯けるものを感じたので、どんどん読んでいくつもりでいたんですが、この本ものすごく読みにくいですね・・・。他からの引用がかなり多く、それぞれにほとんど解説もないままどんどん進んでいくので、(私がこの本が想定する読者層ではなく、前提知識がなさすぎるだけかもしれませんが)関連文献を 10 本以上読んで理解していなければ本書の深いところは理解できない、という印象を受けました。

個人的に理解したところと言えば

  • 技術志向や品質改善にみられるような、いわゆる「モノづくり」的アプローチだけでは、企業は今後生き残っていけない

  • 企業はハードからソフト、サービスに至るまでを総合的にデザインし、「エクスペリエンス」として顧客に提供していくことが求められている

  • つまりボトムアップ的なアプローチよりもビジョンある経営者のトップダウン、あるいはナレッジワーカーのコラボレーションによって総体的なエクスペリエンスをデザインすべきだ

  • 企業の価値基準は経済的価値だけでなく美的価値、知識的価値、社会的価値、創造的価値にあり、今後はそれらの価値を重視する企業が支持される
といったところで OK?もしかしたら全然違っているかも。
なんだかインパクトのある言葉だけがどんどん踊っていくような印象で、言いたいこととしては良いと思うけど、本の書き方としてどうかなーと思います。何となく著者が考えていることは分かるような気はするけど、それぞれの意味するところの深いところが分からないので「納得」しながら読めないんですよね。あと、おそらくこの本自体が経営者向けに書かれたものだからだと思うんですが、これを読んで私自身が企業や社会に対して働きかけることができる要素が少ないのも、納得感に欠ける一因なのかも。

表紙のピクトグラムからして、私が知りたいことを分かりやすく書いてくれている本かと期待したんですけどね。求めていたものとは違い、ちょっと残念でした。

投稿者 B : 23:59 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2008/03/18 (Tue.)

改訂 シンプルマーケティング

1 年以上前に買っておきながら、忙しさにかまけて埃をかぶっていた本をようやく読破。

森 行生 / 改訂 シンプルマーケティング

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「勉強しなきゃ」と思って何冊か買った本のうち、コトラーから手をつけたのが間違いだったのかも。確かにマーケティングのバイブル的書籍ではあるものの、読んでみると「そりゃ、そうだよね」という一般論的な話が多く、半分ほどで挫折してしまいました。今思えば、こっちを先に読めば良かった。

この本はタイトル通り「シンプル」に、実例を交えながらマーケティングの基礎をまとめてくれる本です。この本のキモである「プロダクトコーン」「DCCM 理論」「クープマンの目標値」が理解できただけでも読んだ価値はあったかと。確かに今まで経験的に感じていたことばかりではありますが、こうやっていったん抽象化して理解すると以後は様々なケースに応用が効きます。

あえて言えばサンプルとして取りあげられていた事例の紹介の仕方がシンプルすぎて、もっと他にも成功/失敗の要因はあったんじゃないかと突っ込みたくなるのと、方法論を理解しても「いつ、どんな場合にどの方法論を適用すべきか」までは示してくれないので、ただ読んだだけでは応用の仕方はそれこそ勘と経験に頼りがちになりそうなところが気になりましたが、まあそれはこの本に限ったことじゃない(どんなに優れた武器を持っていても、使い方を身につけなければ意味がない)かと。
確かに周りを見回してみても、この本に書かれているような失敗例の典型のような商品戦略(いわゆる「ミニ大企業」的戦略)は枚挙に暇がないし、そういう意味では「マーケティングのプロ」と呼べるマーケッターって、日本に限って言えば正直あまり多いとは言えないんじゃないですかね。

まあ私も偉そうなことを言える身分ではなく、むしろこれから勉強しないといけない立場だったりしますが、全く違う業種・職種に転職した身としては、周囲より遅れているとも言えるわけで。そんな自分の付加価値って何だろう・・・と自問自答する昨今ではありますが、あえて挙げるなら今の仕事に関しては自分は「客のプロ」にもなれる(もちろん、すべての種類の顧客を代表できるわけではないけど)というところが最大の付加価値なのかな、と考えていたりします。そこに答えがあると思うから転職したわけでもあるし。

とにかく、もっと精進ですかね。この本に加えて、少なくともランチェスター理論と孫子の兵法くらいは読んでおきたいと思います。

投稿者 B : 23:59 | Book | Business | コメント (2) | トラックバック

2008/03/12 (Wed.)

その 1 人が 30 万人を動かす! 影響力を味方につけるインフルエンサー・マーケティング

たまにはビジネス書も。

本田 哲也 / その 1 人が 30 万人を動かす! 影響力を味方につけるインフルエンサー・マーケティング

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このへんは今年の個人的テーマ。数年前からいろいろ考えてはいるけど、今年はより具体的に結果を出そうと思って公私ともにあれこれ動いています。まあ、本当はこういうセールスプロモーション系だけじゃなくて、もっと企業とユーザーのインタラクティブな関係を模索したいんですが、会社を動かすにはまず結果が客観的に見えやすい方向からアプローチする必要があるわけで。

内容的にはこれまで自分が独学+仕事等を通じて知っていることがほとんどで、それほど目新しいものはなかったんですが、具体例を挙げつつ平易な言葉でまとめられているので非常に読みやすく、頭の整理になりました。事例も「ああ、あれね」というメジャーなものからこれを読んで初めて知ったものまで列挙されていて、理解の助けになった感じ。確かに直接商品やサービスのプロモーションに結びつけたくなるのは心理だけれど、社会的な演出というか空気作りも大切だなあと。

インフルエンサー・マーケティングの入門書としてはとても良い本だと思います。マスマーケティングだけじゃだめだけど WOM マーケティングってどうやったら良いか・・・という段階の人なら必読の一冊。表紙は真っ赤だし、タイトルはセンセーショナルですが、中身はいたってマジメな本です。

投稿者 B : 22:42 | Book | Business | コメント (0) | トラックバック

2008/03/07 (Fri.)

亡国のイージス

福井 晴敏 / 亡国のイージス (上)
福井 晴敏 / 亡国のイージス (下)

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月に繭 地には果実』に続いて読んでみずにはいられなかった作品。福井晴敏の代表作でもあります。

自衛隊ものって全く興味がなかったので、読み始めるまではモチベーションが続くか心配だったんですが、いやいやいや。むしろ一気に読んでしまいました。
序盤は説明的な部分が多く、小難しくてちょっと辛かったんですが、ある程度背景と主要キャラの人物像が分かってきたら急に面白くなりました。それぞれに抱えるものがある人々が、護衛艦という密室を舞台に繰り広げる群像劇。というのは前半だけで、それぞれの登場人物に感情移入し始めた頃に事件が起き、彼らが皆凄惨な結末に向かっていくさまは、まるで自分自身が「如月行」が「組織」の訓練の最終試験を受けたときに近い感情を抱かされました。

クライマックスはまさに(スケールやリアリティは異なるものの)『月に繭~』に勝るとも劣らない凄惨さで、ちょっと想像したくなくなるほどの残酷さ。平気でこんな表現ができてしまう精神には畏怖すらおぼえますが、その凄惨さがあるからこそ結末のカタルシスに至れるのかもしれません。ちょっとばかり浪花節的なクサさを感じさせる展開はありましたが、でも、個人的にはこういう男臭い展開はキライじゃない(笑。
長い歴史の中で、一部の人間が世の中に与える影響なんて小さなものだけど、その中で各個人が真実を見つけることこそが大切――というテーマは、舞台や表現手法こそ違えど『月に繭~』と同じで、福井晴敏が作品を通して人々に伝えたいことそのものなのかもしれません。

これがどんなふうに映像化されているかと想像すると、日本の映画界ではちょっと無理だろうと期待できない部分はあるけど、一応 DVD も観てみようかと思います。

投稿者 B : 23:39 | Book | Novel | コメント (2) | トラックバック

2008/02/19 (Tue.)

月に繭 地には果実

MG を作りながら読んでいた小説を読み終えました。

福井 晴敏 / 月に繭 地には果実 (上)
福井 晴敏 / 月に繭 地には果実 (中)
福井 晴敏 / 月に繭 地には果実 (下)

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序盤はテレビ版に忠実に展開しますが、中巻以降は全くと言って良いほど違う作品になっていました。テレビ版の初期プロットをベースに書かれた小説なので、ストーリー展開に従ってテレビ版から逸れていったんですかね。テレビ版で登場した主要キャラの何人もが登場しませんでしたが、テレビ版はやや中だるみを感じる部分もあったのに対して、福井版は明確な主題に沿って最後までストーリーが進む感じで、こちらのほうが「ターンエーガンダム」という作品が描きたかったことをストレートに表現している気がします。

主役級キャラがあまりわがままを言わなかったテレビ版に対して、この福井版は人の理念とエゴの表裏一体、そして誰の心にも巣食う魔物について真正面から向き合った作品だと思います。最もギャップが大きかったのはキエル・ハイムじゃないでしょうか?テレビ版ではディアナ・ソレルと共感、共鳴するさまばかりが描かれていましたが、この作品ではむしろ同じ顔を持つキエルとディアナの違いの部分がクローズアップされていたように思います。終盤のキエルはむしろ軽くカテジナさん入ってるんじゃないかと思ったほど(ぉ。でも、テレビ版ではいろいろ曖昧だったそれぞれのキャラ(特に月側の人々)の行動の動機とか、謎の多かった MS やマウンテンサイクルの背景とか、ちゃんと描かれていてやっと消化できた感じ。
それにしても下巻の文章表現は強烈で、読んでいてちょっと辛かったです。たくさんの人が死ぬけど全体的には「優しい」と表現できるテレビ版と違い、命が失われるときの表現は遠慮なく残酷で、オブラートに包んだり変に美化したりすることがないのが「福井節」というんですかね。小説を読んで緊張したのは(緊張の種類が違いますが)鈴木光司の『リング』以来かもしれません。

オリジナルとは全く違うラストにちょっと愕然としましたが、これはこれで良い結末だったような。テレビ版で報われなかった想いが福井版で報われ、福井版で遂げられなかった想いがテレビ版で遂げられているという、互いが互いの救いになっている作品だと思いました。

投稿者 B : 21:36 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2006/03/29 (Wed.)

Sony Chronicle 2006

帰宅したら、ソニスタからのお届けものが。

Sony Style / Sony Chronicle 2006

ソニー 60 周年を記念して、4 年前に刊行された「Sony Chronicle」の 2006 年版でした。ソニスタで 10,000STAR 以上持ってる人は無料でもらえるらしい。確かこれ、発売当時¥1,800 くらい出して買った気が・・・。

内容は 2002 年版にここ 3 年あまりの情報を追加した単純な増補版といったところ。改訂の都合上 2003~2005 年の分が 1~2 ページにまとめられている箇所が多いので、2002 年版からの差分も一目瞭然なんですが、ここ 3 年のラインアップとか、撤退したブランドとかを改めて眺めてみるとけっこうため息が出ますね(´д`)。

投稿者 B : 21:40 | Book | コメント (1) | トラックバック