b's mono-log

 1 |  2 |  3 |  4 | all

2016/04/03 (Sun.)

機動戦士ガンダム UC (11) 不死鳥狩り

本日からテレビアニメ版に再編集された『機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096』の放送が始まっていますが、これに合わせるかのように小説の第 11 巻が発売されていたので、読んでみました。

福井 晴敏 / 機動戦士ガンダム UC (11) 不死鳥狩り

B01CZALCMC

まさかこの期に及んで小説の続きが発売されるとは思っていませんでしたよ(;´Д`)ヾ。

しかし本作は書き下ろしではなく、四年前に発売された PS3 ゲーム、それと昨年発売された設定資料集、それぞれに付録として収録されていた作品を単行本としてまとめたものでした。でもどちらも相当のマニアでなければ手を出さないものだと思うので、コンプしていなくてもこうして手にできるのはありがたい。

収録されているのは、フル・フロンタル搭乗機の原型となる「シナンジュ・スタイン」強奪事件を描いた『戦後の戦争』と、サブタイトルにもなっているユニコーンガンダム 3 号機「フェネクス」にまつわるエピソード『不死鳥狩り』。『戦後の戦争』については以前書いているので省きますが、『不死鳥狩り』のほうはこれまでガンダムフロント東京関連のコンテンツとプラモでのみ展開されていたオリジナル MS が公式設定化された形と言えます。

GFT の「DOME-G」で上映されている、バンシィとフェネクスによる模擬戦の後の物語。あの後行方不明になったフェネクスを追う連邦軍の一部隊のお話です。フェネクスはどこへ消えたのか?そしてフェネクスを追う連邦軍のヨナ・バシュタ中尉とフェネクスの因縁とは...というストーリーですが、途中から全く予想もしていなかった方向にストーリーが進んでいって、かなり度肝を抜かれました。まあそのストーリーが進んでいく方向というのが、いきなり表紙を開いた後の口絵でモロにネタバレしてしまっている書籍の作りはさすがにどうかと思いますが(´д`)。
でも、戦闘シーンの描写は相変わらずの福井節で、一気に読まされてしまいました。基本的に小説版と OVA 版はパラレルワールド的な位置づけになっていますが、この小説がその小説と OVA の差違を埋める役割を担っている、と言えるでしょう。GFT の映像を観てから読むと映像を脳内補完しやすいのでオススメです。

テレビアニメのほうはまだ始まったばかりですが、どういった形で進んでいくんでしょうね。OVA 版のディテール違い程度になるのか、さらに新たなパラレルワールドが用意されているのか。これから半年ほどの放送だと思いますが、毎週楽しみにしています。

MG 1/100 RX-0 ユニコーンガンダム 3 号機 フェネクス

B00HCV6T6E

投稿者 B : 23:11 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2015/07/27 (Mon.)

猫は忘れない

東 直己 / 猫は忘れない

4150310874

二年前から読み進めていた、東直己「ススキノ探偵シリーズ」の最新巻を読了。

「俺」の学生時代を描いた前作『半端者』から打って変わって、時間軸は『旧友は春に帰る』の続き。「俺」は順当に齢を重ねて五十代半ばにさしかかっています。
いつもの仕事と同じように、知人の水商売のママが旅行中に飼い猫の世話をすることになった「俺」。飼い主の不在中に餌を与えるためにマンションに入ったところ、当の飼い主の刺殺体を発見してしまい...という、いつもとはちょっと違うところから物語は始まります。いつもススキノでグダグダしているところから始まっているので読み進めるのに時間がかかりますが、今回は最初から引き込まれた感じ。

ただ、怪しい人物は序盤にいかにもという形で登場し(しかし「俺」はそれを怪しいとは思わない)、結局その人物が犯人だった...という点で、ミステリー的にはあまり驚くような話ではありません。「俺」も歳を取ってアクション的な動きも減っているし、酒を飲むよりも飲まれるような場面は増えたし、ホームズやポワロのような推理能力でもなければ、そろそろ肉体派探偵としてやっていくのは限界じゃないですかね。このシリーズ、全般的に「俺」が主体的に事件を解決する話は少なく、むしろ「俺」が入り込むことで状況が引っかき回され、真相のほうから勝手に「俺」のところにやってくる、というスタイルが多い。今回も最終的にはそういうオチで、「俺」が謎を解く場面が今まで以上に少なくなっています。
でも、このシリーズ自体がそういうものだ、と考えると、逆に事件や推理は物語に彩りを添える要素にすぎず、「俺」とその関係者たちがススキノ周辺で生きる様子そのものを楽しむことが本質なのだということに気づけば、そういう視点で楽しめるようにも思います。このシリーズにここまで付き合ってきた読者であれば、既にそういう読み方になっているのかもしれませんが(笑。

そういえばこの作品は映画『探偵は BAR にいる』の公開後に刊行された今のところ唯一の作品ということになりますが、この物語に登場する猫のナナについ話しかけては「だからそういうのやめろって」と独りツッコミを入れる様子が、劇場版で「俺」を演じる大泉洋の姿と重なって見えました。小説版の「俺」は大泉洋とは似ても似つかぬ太った中年ですが、キャラクター的にはちょっと当て書きが入りつつあるのかな、という気がします。

長らく付き合ってきた「ススキノ探偵シリーズ」も、刊行されている分はとりあえずこれで終了。続編は番外編として JT が展開する Web 媒体「ちょっと一服ノベルズ」で一時期展開されていたようですが、その先は不明。そろそろ探偵業も限界だろうけど、製作中と言われている映画第三弾の公開に合わせて動きがあるんでしょうか。とりあえず番外編を読みながら、続報を待ちたいと思います。

投稿者 B : 23:28 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2015/06/28 (Sun.)

半端者 -はんぱもん-

東 直己 / 半端者 -はんぱもん-

4150310254

「ススキノ探偵シリーズ」の続編をひさびさに読了しました。続編といっても前作の続きではなく、シリーズ第一作『探偵はバーにいる』よりもさらに遡って、主人公「俺」がまだ北大の学生だったころのお話。あとがきによると、映画『探偵は BAR にいる』の制作を記念して書かれた物語とのことです。

このシリーズは序盤がダラダラすることが少なくなく、主人公が学生であるせいか、この物語はそのあたりが余計に強調されていたような気がします。読者としてはそのせいで序盤の進みが悪く、なかなか読み進めるモチベーションが保てずに、ちょっと時間がかかってしまいました。が、話が動き始めてからはページをめくる手(といっても電子版だけど)が止まらなかったのは、このシリーズならではと言えます。

学生時代の物語、というと派生するシリーズに登場した松井省吾君のことを思い出しますが、彼とは似ているようでいてまたずいぶんと違う。ススキノでそれなりに飲み慣れていながらも、その道に生きる人々との付き合い方はまだ知らない。その割に正義感だけは強くて妙なトラブルに首を突っ込んでばかりいる...というのはその後の作品にも通ずるところですが、そのアプローチが未熟なあたりが、タイトルの『半端者』たる所以。後のストーリーに登場する重要人物との出会いについてもいろいろと描かれており、ここまで読んできた人であれば感慨深いものを感じることでしょう。特に、後のすべてのシリーズに登場する高田や○○についてのくだりは、ファンならば読みたかった話ではないでしょうか。

「俺」がススキノで発生するいくつかの事件に首を突っ込みながらも、最終的にそれを解決するのは多くが「俺」以外の誰か、という点では後続する時間軸のストーリーと一致しています。あくまで首を突っ込んで引っかき回すまでが役割で、それをきっかけに事態が半自動的に進んでいく...というのがこのシリーズの持ち味ですが、そのルーツとして意識的に描かれた物語、という印象。でも、凄腕の探偵が推理によって難事件をどんどん解決していくよりも、こちらのほうがリアリティがあるとも感じます。
ミステリー的には、作中で発生したあれこれの事件が一つの結末に収斂していくことを想像しながら読み進めていましたが、その結末はけっこう散漫な、それぞれの話として終わった感じ。結末としてはちょっと物足りなかったものの、学生時代に起きたことって何でもけっこうこんな感じだったかもな、と思うと、妙に納得してしまうものがありました。そういう意味では、この作品は話の結末そのものよりも、「俺」の行動規範を改めて確認するための物語だった、と言えるのかも。

このシリーズも、刊行済みの作品では残すところあと一つとなってしまいました。映画は続編が作られているらしいので、小説版も映画の新作のタイミングで続きが出てくる可能性はありますが、ひとまずは残り一作。すっかりおっさんになった「俺」の物語を、続けて読んで行こうと思います。

投稿者 B : 21:56 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2015/02/03 (Tue.)

旧友は春に帰る

東 直己 / 旧友は春に帰る

4150310424

探偵、暁に走る』を読んだら気持ちが乗ってきたので、続編を勢い任せで一気に読み終えました。

今回のタイトルはシリーズの中でも特に情緒的な響きをもっています。この「旧友」というのが、なんとシリーズ第 1 作『探偵はバーにいる』でヒロイン役に位置づけられていたコールガール、通称モンロー。『バーにいる』のラストでススキノから逃げ出し、沖縄に渡った彼女が、四半世紀ぶりにススキノに戻ってきます。
しかしすっかりオジサン・オバサンになった二人がススキノで旧交を温めるしんみりした話、になるわけもなく。過去にも「俺」を引っかき回したモンローでしたが、今回も完全にモンローのペース。カーチェイスあり、海を渡る逃避行あり、今までは事件を追う側だった「俺」が暴力団に追われる側になるという展開もなかなか目新しく、手に汗握るストーリーに引き込まれました。

「俺」といえば一貫してケータイを持ち歩かないキャラとして描かれていますが、今回もそのポリシーは健在。しかしケータイメール全盛(この作品が書かれた頃はまだ SNS は一般化していなかった)の現代において、ケータイを持たずに時々刻々と変化する状況に対応する探偵を描くのはリアリティがないという判断か、定期的にネットカフェに行って PC で Web メールをチェックするようになっています。これはこれで、以前に比べればタイムリーな情報交換ができていつつも少しタイムラグがある、という状況を作り出していて、なかなか面白い。そしてメールチェックの合間に YouTube で動画を見たり、その数分間の間に二桁を超えるスパムメールが届いていたりする半端な現代っぽさが面白い(笑。

「俺」は最後まで振り回されっぱなしで結局何かを解決できたわけではない、という割り切れない結末でしたが、そういうのも含めて感傷的になれる物語でした。過去作に登場した主要キャラが多数登場することもあり、シリーズここまでの集大成と言える作品だと思います。面白かった。

投稿者 B : 22:09 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2015/01/23 (Fri.)

探偵、暁に走る

東 直己 / 探偵、暁に走る

4150309817

ちょっと間が開いてしまいましたが、「ススキノ探偵シリーズ」の続編を読了。

本作では「俺」はついに五十代に突入し、そろそろおっさんというよりも初老と言えそうなほどに老けてきました。時代もすっかり現代で、スマホこそないもののケータイは当たり前(「俺」は意地でも使わないけど)、さらに「俺」は PC さえ普通に活用しています。

今回のお話は、地下鉄の中でたまたま知り合うことになったイラストレーター・近藤雅章と意気投合した...かと思ったらその近藤が何者かに殺されてしまい、「俺」はその犯人を捜し始める、というもの。この近藤がまた独特なキャラクターで、『ライト・グッドバイ』の犯人とはまた違った種類の曲者なわけですが、なぜか「俺」は近藤に妙に肩入れしてしまいます。まあ、この近藤が今の世の中をいろいろと疑問に思い、気に入らない相手に対しては暴言を吐いたり暴力さえ振るったりするキャラクターなのに対して、前作くらいまでは世の中の変わりように対してボヤいてばかりいた「俺」がきっぱりそういうことを言わなくなったのは、おそらく東直己氏が自身のキャラクターの投映先を「俺」から近藤に移し替えたからだろうな、と思います。それくらい、不自然なほどに「俺」は近藤に入れ込んでいきます。

いつもの如く、物語の序盤はまったりとした展開。あまりに冗長でなかなか読み進まないわけですが(笑)、中盤からは怒濤の勢いで一気に読ませる作風は、東直己の持ち味でしょう。そして、今作はこれまで以上に脇役が立っています。相棒の(といってもこの頃になるとあまり活躍しませんが)高田、新聞記者の松尾、暴力団の桐原組長と相田、高田に替わってアクションを担当するようになったアンジェラ、新しい恋人役の華、「俺」を真面目に手助けする石垣など、それぞれの人間くささが今までの同シリーズよりも深く出ているのが印象深い。特に相田が病気でほぼ全身不随になりながらも最も重要なシーンで活躍するくだりは、映画版の松重豊さん演じる相田の顔を思い浮かべると余計にグッと来るものがあります。

個人的には、「俺」が気に入らないことに対してごちゃごちゃ言ってばかりいる「昔は良かったおじさん」から「友人の苦境を見過ごせない正義漢」に戻ってきてくれたことが嬉しいかな。やっぱり「ススキノ探偵シリーズ」はこうでないと。シリーズの残りも 3 冊ほどになりましたが、春くらいまでかけて読み切りたいと思います。

投稿者 B : 23:59 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2014/11/28 (Fri.)

後ろ傷

東 直己 / 後ろ傷

4575235652

ススキノ・ハーフボイルド』の続編にあたる、東直己のミステリー小説を読んでみました。これまた電子書籍が発売されていないので、図書館で...。やはり旧作は大ヒット作かメジャーなシリーズもの以外はなかなか電子化の手をつけてもらえないのが残念なところ。

時間軸は道警腐敗事件の翌年。『駆けてきた少女』『ススキノ・ハーフボイルド』に続いて 3 作目の登場となる松井省吾君は、本作では大学生になっています。が...、以前の作品では「北大合格確実」という話だったのが、どういうわけか受験に失敗してしまい、唯一滑り止めとして受けていた道央学院国際グローバル大学(通称:グロ大)に進学します。まあ、受験に最も重要な高三の夏休みにああいう事件に首を突っ込んでいてはそれもむべなるかな、という気はします。しかもグロ大は『駆けてきた少女』に登場するある事件の犯人であり被害者が通っていた、札付きの底辺大学。恋人だったホステスの麻亜とも別れています。もともと自信家で世の中を斜めに見ていた松井少年は、このことで完全にひねくれてしまい、物語の中盤までは自虐的な台詞やグダグダした行動が目につきます。中盤までに幾度となく登場する「グロダッチ(=グローバル大学の友達)」という言葉も、妙に哀愁を誘う響きで何とも言えません(笑。
個人的には、こういう生活環境が大きく変わる十代後半~二十代前半に自分の価値観を覆すような事件が起きるとしばらく自棄になって立ち直れなくなる心境は分からなくもないです。大人になった今では、逆にそうやって時間を浪費している若者の姿がもどかしくもあります。

そういう意味では、世間知らずで腕っぷしも弱いくせに正義感だけは強い松井少年の「ハーフボイルド」っぷりに、さらに磨きがかかった作品と言えるでしょう。

ただ、松井少年が『ススキノ・ハーフボイルド』と違うのは、今回は事件の渦中にいる、ということ。前作では完全に巻き込まれ、振り回される形で事件が進んでいき、結局最後まで事件の中心に立つことがありませんでしたが、今回はもろに事件の中心人物になります。この事件を通じて松井少年が自分の価値観を再認識し、進むべき道を取り戻していくのがこの物語のハイライトではないでしょうか。
ただ、事件の解決にはあの「俺」が「便利屋さん」という立場で深く絡み、なんだかんだで事件を解決したのは「俺」の立ち回りによるものだったりします。その点では結局この作品も「ススキノ探偵シリーズ」を視点を変えて描いたもの、ということになります。

この事件のあと、松井少年はどういう人生を歩んだのでしょうか。続編は書かれていないので想像するしかありませんが、結局グロ大をやめて浪人し、北大に進んだのではないかと思います。もしかすると、加齢で動きの重くなった「俺」の後を継いでススキノの便利屋稼業を始めているのかもしれません。

投稿者 B : 23:15 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2014/11/01 (Sat.)

ライト・グッドバイ

東 直己 / ライト・グッドバイ

4150309051

道警腐敗三部作を読み終えたので、通常の「ススキノ探偵シリーズ」に戻ります。今回はようやく電子書籍版に戻ってきたこともあって、サクッと読了。

前作に登場したオリジナルカクテル「サウダージ」ですが、本作では「俺」がススキノ中、いや日本中に流行らせようとして個人的にあちこちの店で飲みまくっています。まあ、流行らないわけですが(笑。自分で作って飲んでみたことで、飲むシーンが登場するたびにあの苦み走った独特の味が思い出せる、というのは試してみて良かったなと。

今回はいよいよ五十代が見えてきた「俺」。変わりゆくススキノへの落胆と世の中をさらに斜めから見るようになってしまった性格が、私からはだんだん感じ悪いおじさんだなあ、と思えるようになってきてしまいました。でも『ススキノ・ハーフボイルド』で客観的に描かれていた「一般市民ではない怪しげなおじさん像」と対比すると、やはり一人称ではそれなりにかっこいいつもりでいる「俺」が滑稽に思えてきます。

今回の事件は、過去の作品にも何度か登場している元刑事・種谷から、「俺」がある女子高生失踪事件の重要参考人・檜垣と接触するように仕向けられるという話。「俺」も「俺」なら、種谷も過去作でのキャラに輪をかけて偏屈な爺さんになっているし、問題の檜垣はもうどうしようもない人物で、檜垣から「俺」に対するコミュニケーションが、もう背中の裏側が痒くなるような感じで気持ち悪い。三人の偏屈なおっさんの掛け合いがグダグダと終盤まで続くわけですが、不思議とテンポ良く読まされてしまうあたりにこの作品の神髄を見た気がしました。少なくとも、今までの「ススキノ探偵シリーズ」とは毛色が違う作品。
気持ち悪いけど続きが読みたくなる、という変な感覚の小説でしたが、「俺」の相棒・高田に珍しくロマンス的な展開があるのが見逃せません。というか、このくだりが一番面白かった(笑

それにしても、初期の数作を除いてこのシリーズは映像化しづらそうな猟奇事件が多いので、映画化の続きはどうなるんでしょうね。中年になった「俺」のデブのおっさんキャラは今の大泉洋には合わなさそうだし、今後の映画はオリジナル脚本にせざるを得ないのかもしれません。

投稿者 B : 22:00 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2014/10/24 (Fri.)

熾火

東 直己 / 熾火

4758432295

最近東直己ばかり読んでいますが、『駆けてきた少女』『ススキノ・ハーフボイルド』に続く、道警腐敗三部作(とでもいうのでしょうか)のラストを飾る本作まで一気に読んでしまいました。これも電子化されていないようだったので、図書館で借りてきました。もう本棚に紙の本増やしたくないので...。

本作は、ススキノ探偵シリーズとは別の「探偵・畝原シリーズ」と呼ばれるシリーズもの。過去作を呼んでいないので主人公・畝原のキャラは私にとって今回が初登場ですが、三部作の他の二作にもうっすら関わっているという設定になっています。
時間軸としては他の二作より少し後の話で、これまでに登場したものとは違う事件を扱っていながらも、結果的に過去の二作に登場した重要人物の結末を描いていて、ようやく一連の事件の全体像が見えてきた感じ。とはいえ、それぞれの物語が各主人公の一人称視点で描かれているため、道警やメディアの利害を骨格とした相関の全貌は想像するしかありません。結局、構造的な不正に対して個人が糾せることなんて限られた部分でしかない、ということを、東直己はわざわざ三部作に分けて描きたかったのでしょうか。

物語は、畝原がある場所で激しい虐待の痕を残した幼女を保護するところから始まります。そして畝原の恋人未満的な女性カウンセラー・姉川が拉致され、犯人から姉川と引き換えに幼女を渡せ...という脅迫の電話がかかってきて、という話。主人公が自分とは直接関係のない事件に首を突っ込んで、道警腐敗に絡む事件に巻き込まれていく、という他の二作品とは違い、主人公自身とその家族・友人が当事者になるという点では、サスペンスらしいスリルに満ちた作品。
ただ、話はなかなか先に進まず、残りページ数だけが減っていってやきもきさせられたと思ったら、とあるキーワード(人名)が登場したところでドミノ倒しのように話が進み、ラストはかなりあっけない幕切れ。事件解決してハッピーエンド、というわけでもなければ、数々の人生に大きな影響を与えた悪党を追い詰めるカタルシスもなく、肩すかしを食らったような感覚。もしかすると、凶悪事件の被害者が解決後に抱く感慨ってこんな感じなのかもなあ...と思わされました。

冒頭と終盤に出てくる虐待や死体の描写は文字で読んでいるだけでも嫌悪感をおぼえるほどに残酷で、ハッキリ言ってこんなに後味が悪い小説を読んだことがありません。また読みたいかと言われたらもう読みたくありませんが、『駆けてきた少女』を読み終わった後のスッキリしない気分にケリをつけられただけ、良かったかな。

投稿者 B : 23:55 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2014/10/14 (Tue.)

ススキノ・ハーフボイルド

東 直己 / ススキノ・ハーフボイルド

4575514705

駆けてきた少女』がどうにも不完全燃焼な終わり方だったので、関連作品である本作も読んでみました。とはいえまだ電子化されておらず、一方で紙版は絶版状態だったので、図書館で借りて読了。

本作の主人公は『駆けてきた少女』にちょっとだけ登場した、少女の同級生である松井省吾という少年。ススキノのホステスを恋人に持つ、頭のいい・だけど世の中をどこか斜めに見たところのある高校三年生です。受験生、それもまだ未成年でありながらススキノで飲み歩く日常...というのはやや現実離れしていますが、そこは創作の世界。この少年の視点で『駆けてきた少女』の事件の反対側の側面を描く、ススキノ探偵シリーズの派生とも言える作品になっています。

この松井省吾君のキャラクター設定が、どこか若い頃の「俺」そのもの。作者が同じだからバックグラウンドが似てしまうのは仕方ないですが、どちらかというと「俺」が四十路半ばのおっさんになってしまったが故に、二十代の頃の「俺」的なキャラクターとして社会の不条理に対峙させたかったんじゃないかなあ、という気がします。「俺」の若い頃と違う点と言えば、「俺」ほど酒に強くないところ(それでも高校生としてはかなり酒に強いほうだ)、「俺」よりもさらにひねくれた視点をもっているところ、それに「俺」と同じようにハッタリをかますくせに喧嘩はからきし弱いというところ。まさに「ハーフボイルド」なのが、大人の目線から見ると危なっかしくもあり、それが本作におけるスリルを生み出しています。

事件の顛末は『駆けてきた少女』で知っているので、では『駆けてきた少女』で省略されてしまった物語の経緯のほうに焦点が移るわけです。黒幕は『駆けてきた少女』にも登場した女子高生・柏木であることは間違いないんですが、ラストのどんでん返しはハッキリ言って予想外。事件のカギを誰が握っていたか、が最後の最後で明らかになり、その可能性は完全に見落としてたわー!と推理小説好きとしては負けた気分です(´・ω・`)。ススキノ探偵シリーズにしてもそうですが、完全に一人称で語られる物語のカラクリに嵌まった格好になりました。一人称視点と言えば、ススキノ探偵シリーズで表現される「俺」と客観的に見られる「便利屋」でこうも印象が変わるのか、というのはなかなか新鮮な体験でしたね。だからこそ、完全に松井省吾視点で語られるこの物語には、それ故の見落としがある...ということに、途中で気がつくべきでした。

両作を読んで感じたのは、北海道警察と北海道日報の腐敗事件(物語の中の話です)は、社会の構造悪であり、個人がどうこう足掻いたところで大勢に影響を与えることはできない、という東直己氏自身の諦観と、それ自体に対する憤りが噴出した作品である、ということです。話は面白いんだけど、オチが自分の手の届かないところで(あるいは、誰かの掌の上で)勝手に完結してしまっているので、結果的に作者の愚痴に付き合わされている感があります。もうちょっと物語としてまとめてほしかったよなあ...とは思いますが、これも社会悪に対する怒りの発露の一つの形なんでしょうね。
ま、私は私で懲りずにこのまま三部作の最後の一つも読んじゃうんですけどね(ぉ。

投稿者 B : 23:59 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

2014/10/07 (Tue.)

駆けてきた少女

東 直己 / 駆けてきた少女

4150308659

先日再開した「ススキノ探偵シリーズ」の電子版を読み進めています。

本作は『探偵は吹雪の果てに』の 2 年後、「俺」は既に 47 歳になっています。私とはどんどん歳が離れていき、「最近のススキノの雰囲気や若者の風潮」に共感できなくなってきている「俺」にも少しずつ共感できない部分が増えてきています。偏屈なおじさんになっちゃったなあ、というか、偏屈をこじらせたまま歳を取るとこうなっちゃうんだろうなあ...という痛々しさがあります。ま、それでも独特の正義感に基づいて弱者を救おうとする姿には、共感が持てますが。

本作のストーリーは今までの作品とはちょっと毛色が違っています。今までは、自分の周囲にいる人間を助けるために行動し、対峙する悪もせいぜい数人レベルだったものが、今回は北海道警察や新聞社の腐敗という社会悪が相手。今までの「ススキノ探偵シリーズ」とはずいぶんテーマ性が変わってきたなと思ったら、これは 2003 年に実際にあった北海道警裏金事件をモチーフに書かれた作品のようですね。なるほど、やけに批判めいた言い回しが多いと思ったら、著者自身の怒りが投映されたものでしたか。
ちなみに私は 2003 年の夏から秋にかけてススキノ周辺で働いていたので、まさにこの作品の舞台になったススキノにいたことになります。まあ当時はプロジェクトルームに軟禁状態だったし、事件が明るみに出る直前くらいに東京に戻ったので、この事件自体を今まで知りませんでしたが...。

ストーリーは今までの作品に比べて幅が広く、登場人物も多いので、前半はかなり引き込まれて読んでしまいました。が、それぞれの登場人物の話の繋がりが見えにくく、最後まで繋がりきらないまま、いきなり尻切れトンボ的に物語が終わってしまいます。何この消化不良感。そりゃないよ...。
と思っていたら、この作品は単体で完結する話ではない、ということのようで。同じ東直己氏の著作である『ススキノ・ハーフボイルド』『熾火』との三部作で完結する作品だそうです。そりゃあ中途半端なわけだ。いくら「俺」といえど社会悪に一人ないし数人で対峙できるわけがないし、世の中で起きていることの全容を把握できるわけでもない...ということを、それぞれの物語の視点で描くことによりおそらく表現しようとしている、ということでしょう。確かに「自分の知らないところで物事が動いている」ということは人生においてよくあること。でも、単体の物語としてみたときに、この自分だけ置いてかれた感はどうすりゃいいの、ここまで話に付き合ったのに。

というわけで、この続きの話も読んでみることにします。ただ、残りの二作は電子化されていないんですよねえ。

投稿者 B : 23:10 | Book | Novel | コメント (0) | トラックバック

 1 |  2 |  3 |  4 | all